中国漁船による犯罪に「撤収」しかできないタテ割り日本
昨日、『中国漁船や韓国海軍の蛮行は日本が舐められている証拠』でも触れたとおりが、今年11月上旬、日本のEEZ内で違法操業していた中国漁船が日本の水産庁職員を乗せたままで半日間逃走していたことが、産経ニュースの報道により明らかになりました。本日の産経ニュースにその続報が掲載されているのですが、冷静に考えてみたら、これは単に「中国が日本の領土、領海、EEZを侵犯している」というだけの問題ではなく、むしろ日本側の憲法に加え、政府のタテ割り組織の在り方などにも大きな問題があるように思えてならないのです。むしろ批判されるべきは水産庁ではなく私たち日本国民の国防に対する意識のほうでしょう。
中国漁船団の接近
昨日の『中国漁船や韓国海軍の蛮行は日本が舐められている証拠』のなかで、産経ニュースが報じた「11月5日、日本の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業していた中国漁船が、日本の水産庁職員を乗せたままで半日間逃走していた」という事件を紹介しました。
これ自体、極めて悪質で許せない犯罪行為ですが、昨日の報道によれば、結局、水産庁職員は中国漁船から撤収したとされています。これについての続報が、またしても産経ニュースに掲載されています。
中国漁船団が大接近 水産庁側、危険回避で撤収(2018.12.28 07:24付 産経ニュースより)
産経ニュースによれば、漁船を追跡する取締船に多数の中国漁船と見られる船団が接近しており、漁船団と対峙すれば船舶事故など大きなトラブルになる可能性があるとの判断から、取締船が職員らの収容を優先せざるをえなかった、としています。
この水産庁の判断は止むを得ないものだといえるでしょう。
よくインターネット上では、「悪質な中国漁船を撃沈しろ」、といった勇ましい(?)極論が渦巻いていますが、これらの意見のなかには、水産庁の漁業取締本部による漁業取締船と海上保安庁の巡視船、海上自衛隊の艦船などの区別すらついていないものもあります。
あくまでも水産庁に与えられている権限はEEZ漁業法(正式名称:『排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律』)に基づく取り締まり権限であり、中国漁船などが違法な漁業などをしていた場合に限られます。
そして、水産庁に所属する取締船は数も装備も限られており、今回、中国漁船団と対峙した白鴎丸の場合だと、別に機関銃やミサイルなどの武器を搭載しているわけでもなく、相手が武装漁船だった場合には逆に沈められてしまう可能性だってあったわけです。
日本政府もタテ割りの弊害認識を
そもそも論として、日本の海の安全を管轄する役所は、
- 農林水産省の外局である水産庁
- 国土交通省の外局である海上保安庁
- 防衛省
- 水上警察
といった具合に、一元的ではありません。当然、担当する大臣等も、農林水産大臣、国土交通大臣、防衛大臣、国家公安委員長や各都道府県知事など、バラバラです。
もちろん、日本は法治国家であり、役所の組織も予算もさまざまな法律に基づいて編成されますし、事態に応じて出動する官庁も異なるため、法律を無視して、水上警察と海上保安庁と水産庁と海上自衛隊を一元的に運営するということはできません。
ちなみに、水上警察を除く各省庁の使命・任務は、次のとおりです。
- 水産庁:水産資源の適切な保存及び管理、水産物の安定供給の確保、水産業の発展並びに漁業者の福祉の増進を図ること(農林水産省設置法第30条)
- 海上保安庁:海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧すること(海上保安庁法第1条)
- 防衛省:わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、これがため、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊を管理し、及び運営し、並びにこれに関する事務を行うこと(防衛庁設置法第3条)
つまり、これらの省庁はいずれも目的が異なるため、バラバラに組織が存在しているのです。中国漁船団が「どうせ日本は絶対に物理的な攻撃をしてこない」などとタカを括っている理由は、日本政府の組織における「ヨコの連携」にも問題があるためだと思わざるを得ないのです。
日本国憲法前文を読んでみよう
さて、唐突ですが、ここで日本国憲法の前文の二段落目を、ここで改めてしっかりと読んでみましょう。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
ここで、「平和を愛する諸国民」とありますが、はて、いったいどこの国民のことでしょうかね?
他国のEEZ内で違法操業をする漁船を派遣して来るような国が「公正」で「信義」を持っているのでしょうかね?
私の目には、中華人民共和国という国が、「平和を維持」しようとしているとも思えませんし、「専制と隷従、圧迫と偏狭」を地上から永遠に除去しようとしているようにも思えません。むしろやっていることは正反対でしょう。
しかし、逆に言えば、日本の隣国が「平和を愛する国」ではないこと、「信頼に値する公正と信義」を持っていないこと、「平和を維持」しようとしていないこと、「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上に植え付けようと努めてゐる」ことを考えるならば、日本国憲法の偽善と偏狭を認識する良い機会でもあります。
もちろん、私自身はこの外国船舶の侵入が常態化している問題については、憲法を改正したら済む話だとは思っていません。むしろ、既存の法律のうえに、政府の各組織がきちんと連携しなければならないという点に加え、「海の安全」に対する私たち国民の意識が高まらねばならないと思います。
今回の中国漁船による日本のEEZでの不法操業事件で批判されるべきは、撤収した水産庁職員ではありません。政府の組織が縦割りであること、国防や安全に関する予算配分を仕切る財務省、そして何より欠陥のある日本国憲法を放置し続けている、私たち日本国民です。
その意味では、日本国民が平和ボケから目を覚ますうえで良いビンタだと思っているのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
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日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
会計士様の仰る通りです。
保安庁をはじめとした当局は、現行法規の仕組みの上では、非難されるべきことはしていないと思います。
現行憲法の大きな欠陥を延々と放置させている政治家と国民に責が大。
さらに大きな責任は、わかっていながら正確な情報も流さない宿痾となりはてたメディアの妨害。
他国や戦前の日本であれば、海軍の第一線を外れる艦艇が、沿岸警備艇として使用されましたが、武装の関係などからか、それもやりませんので、予算的にも無駄。
亡くなられた三宅代議士が、NHK職員と海上保安庁職員の報酬を比べ、3倍近い差があったことを国会で追及しましたが、それを報じるメディアも皆無に近かった。
会計士さん書かれたように、目覚めの良いビンタになってくれるといいのですが。
「平和を愛する諸国民」とは連合国民の事でしょう。
戦勝国に日本国民の生存権を委ねる。
日本国は日本国民を守らないと宣言しています。
朝鮮戦争の勃発と掃海艇部隊の派兵。
竹島への侵略と漁師の殺害拉致監禁。
警察予備隊の創設。
「平和憲法」は成立まもなく破綻しています。
それをこれまで放置してきたのは日本国民ですね。
同じく敗戦国である独伊はとっくの昔に軍を持ち
国民を守っています。
日本国民を守らないと宣言している憲法を放置しているのですから
水産庁を責める資格を国民は持ちません。
少子高齢化するこの国には守るべき未来はありません。社会保障にリソースをふんだんに使い滅ぶしかありません。
悲観的になる気持ちは分かりますが、その言説を広める事に何か意義があるのでしょうか。
何が怖いか、それは嘘がまかり通ること、その嘘が日本を毀損し、世界中に流布され続けることです。
何から始まったのか?
泣く泣くに?結んだ(自称)日韓慰安婦合意の事実上の破棄に始まり、その後も(自称)慰安婦像の乱立、旭日旗、さらには竹島上陸、旧朝鮮半島労出身者問題、そこにきて次はレーダー照射ですか、どこから問題提起すれば良いでしょうか。
問題は関心が薄れることです、何がいけないか?全ていけません。どれも何もかも風化させてはならない問題であり、ここが正念場であると考えます。
「今」これらの問題が通り過ごされれば、韓国の勝ちです。外交は単なる勝ち負けではない?
その通りです、その通りですが、最終的には二元論になります。
日本は毀損された言われも事実もない嘘を受け入れたのです、それは外交の問題でもあり、識者を選ばなかった我々国民の罪です。
だから、今が正念場です、このサイトから日本中に、世界に向けて発信していきたい、日本の正しさと進むべき道を皆で考えていきたい、そう強く願うばかりであります。
安倍首相でなければここまで、確かにその通りでしょう。でも、足りません。
もう十分に耐えたでしょう、遺憾に思ったでしょう。そろそろ具体的な制裁に移行する時期ではないでしょうか。
更新ありがとうございます。
そしたら、海上保安庁の艦艇や海上自衛隊の戦闘艦、フリゲートをこの際増やしましょうよ(簡単に言うな!カネがかかる、ですね)。
海保(海自)と水産庁の船舶とを2隻で行動する事になる。広い日本海、東シナ海、琉球諸島南方が特に重点マークだが、太平洋も遊弋したら、中国、北朝鮮、南朝鮮という蛮国にも理解出来る。武器無しではゴロツキ海賊(シーシェパードもか?)には言うこときかせられない。
哨戒機狙撃(と同じ意味のロックオン)は、韓国はうやむやにするつもりかもしれないが、そうは絶対にさせんぞッ!31日迄に返事なければ、期限を区切り制裁する、提訴もする、と日本政府、防衛省、外務省はしっかり伝えて欲しい。
あと半分本気ですが、来年に皇太子が天皇陛下となられ、即位の礼とかに、各国来賓が来日される。
その際、日本政府は北は勿論だが韓国も呼ばない方針でどうでしょうか。嫌々来て貰い、わざわざ来てやったから何かオネダリなんて、私ら国民も腹が立つだけです。
日本は格下と思うんだったら、北の金日成の誕生祭や正恩の就任何周年の式に行って貰ったほうが、敵味方が分かりやすい。ま、敵国は確定ですが。
平和ボケとは誠に恐ろしいものでして、骨の髄までボケてしまうと、何が是で何が非かを見失ってしまいます。危機に瀕してもなお危機だと認識できないのです。私の旧友の中にも九条信者がおります。「憲法九条があったから日本は平和でいられたんだよ」と真顔で言われ、返す言葉を失いました。
話は変わりますが、子供の通う公立中学校で学級崩壊が起こったことがあります。PTA役員だった私は、事態の収拾に奔走しました。肝心の学校側が「穏便に」「内密に」を繰り返すので、何度も手をこまねき、教育委員会にも訴えましたが、「事態は収拾しつつあると報告を受けています」の一点張り。目の前の問題に目をつぶって無いことにしたいのです。徹夜で教職員を(穏やかな言葉遣いで)どやしつけ、PTA主催で保護者会を開催し、校長から保護者に状況説明と今後の対策を述べさせ、知り合いのツテで学校区内の市議会員から教育委員会に圧力をかけて貰い、一年がかりで事態を収拾しました。結局は問題のある教師を異動させて解決です。彼らが異動した先に問題を押し付けただけかもしれません。
問題を問題として認識したくない、故に問題は存在しないというロジック。何という無気力、何という無責任。危機意識の対極を見ました。どうしたら彼らが変われるのか、思いつきません。