海上警備で進む米台協力、武器使用もままならない日本

「日米台3ヵ国連携」構想はわが国の海上安全にとっても有意義な議論

中国海警法が日本の海上の安全にいかなる影響を与えるのか。これへの対応を考えるには、中国海警船が海上保安庁の船を沈めてからでは遅すぎます。それなのに、国会では野党が「もり・かけ・さくら・接待・文言ミス」で審議拒否で大暴れ中。こうしたなか、米国と台湾が海上警備で覚書を締結したとする話題も出て来ました。

ブリンケン国務長官「台湾は国」発言

先日の『米国務長官が台湾を「国」と呼称』では、台湾英字新聞のこんな報道記事を取り上げました。

US secretary of state calls Taiwan ‘country’ / ‘Country’ label for Taiwan breaks longstanding US State Department taboo

―――2021/03/12 11:22付 台湾英文新聞より

これは、アントニー・ブリンケン米国務長官が3月10日の下院外交委員会で、韓国系のヤング・キム下院議員(共和党)のやり取りの中で、台湾を「国」と呼称した、とする話題です。この発言は、米国の政治専門ケーブルチャンネル “C-SPAN” のウェブサイトでも確認できます。

House Foreign Affairs Committee Hearing on Biden Administration Foreign Policy Priorities

―――2021/03/10付 C-SPANより

ブリンケン氏の発言は、リンク先に掲載されている動画の3時間27分12秒以降で確認できます。このなかでブリンケン氏は、次のように発言しています。

“I’m absolutely committed to working on it and I share your view that Taiwan is a strong democracy, a very strong technological power and a country that can contribute to the world, not just its own people.”

そして、ブリンケン氏が台湾を「国」と呼んだことについて、台湾英文新聞はドナルド・J・トランプ前政権が任期満了を迎える直前の1月10日、マイク・ポンペオ前国務長官が台湾当局者との交流制限を解除したことの関連を指摘します。

もっとも、台湾英文新聞は、「ブリンケン氏もトランプ政権末期の制限解除を追認した証拠」に見える一方で、ブリンケン氏の「国」発言を「単に口が滑っただけの可能性もある」との慎重姿勢も示しており、個人的には、この台湾英文新聞の報道ぶり自体には大変に好感が持てる次第です。

すなわち、米国務長官が台湾を「国」と呼んだことという事実をきちんと拾い上げて報じつつも、それに一喜一憂せず中・長期的な流れを見極めようとする台湾英文新聞の姿勢は、まさに本来的な意味でのジャーナリズムそのものではないかと思う次第です。

米台の海上協力は進む

さて、この「台湾=国」発言そのものには、その後、目立った続報はないのですが、その一方、気になる動きが少しずつ出ています。

そのひとつが、米台海上警備強力です。

米台、海上警備で協力強化 中国の「海警法」に対抗、覚書調印

―――2021年03月26日14時46分付 時事通信より

時事通信の記事によると、米国在台協会(AIT)は26日(米国時間25日)、台湾の在米大使館に該当する「台北経済文化代表処」との間で「海上警備分野での協力を強化するための覚書」に調印したと発表したそうです。

時事通信はまた「米台が覚書に調印するのは中国が2月に施行した『海警法』に対抗する狙いとみられる」としていますが、これはどういうことでしょうか。

記事によると、昨今、台湾の離党周辺で中国の船舶が違法な砂利採掘を繰り返し、台湾の海巡署が取締りを強化しているというのです。こうしたなか、今回の覚書では、「共通目標」として、「海洋資源の保護」、「違法な漁業行為の抑制」などが盛り込まれたのだとか。

伊藤氏の危機意識

こうした米国の台湾政策の転換と中国の海洋進出への抑止が過大となるなか、日本の海上警備の実情を振り返ると、不安になるのもまた事実です。

これについて金沢工業大学虎ノ門大学院教授で海上幕僚監部情報課長や情報本部情報官などを歴任した伊藤俊幸氏が時事通信に先日、こんな記事を寄稿しています。

中国海警船の領海侵入、このままで海保巡視船は本当に大丈夫なのか【コメントライナー】

―――2021年03月21日09時00分付 時事通信より

伊藤氏によると、中国が制定した海警法を巡り、自民党は2月の国防部会などの合同会議で海上保安庁の武器使用に関する海上保安庁法第20条や、海保が軍事的任務に就くことを禁ずる同第25条の見直しなどを認める意見を提示したにも関わらず、海保側は「見直す予定はない」と述べたそうです。

伊藤氏によると、海保側の言い分は、次のとおりだそうです。

  • 中国海警船が武器を使った場合、海保巡視船側は同法第20条第1項の「正当防衛」で反撃可能
  • 海保巡視船が武器を使用可能な第20条第2項の対象から軍艦政府公船を除外しているのは、これらには無害通航権があるため

ところが、伊藤氏はこれらの回答の問題点を、諸外国の事例に照らしても「机上の空論に過ぎない」と指摘。中国側が「もし『中国領海だから出て行け』と強制力を発揮した場合、正当防衛というリアクション的行動だけで、海保巡視船は本当に大丈夫なのだろうか」と指摘している、というものです。

なんだか、非常に心もとないですね。

中国の脅威は待ったなし

伊藤氏は、次のように続けます。

現場にとっては、平素からあらゆる事態を想定し訓練を重ねることが大事だが、法律で禁じられては、これができない。筆者は海保に武器を使えと言っているのではない。それは政治が判断することだ。しかし、最初から法律で『〇〇するな』と手足を縛られると、一番困るのは現場なのだ」。

まったくそのとおりでしょう。このように考えていくならば、状況は本当に危機的です。海上保安庁への武器使用のルールが厳格であるがために、中国海警船に、私たちの国の海上保安船が沈められては手遅れなのですが…。

こうしたなか、米台両国の動きは、私たちにとっても有意義であることは間違いないでしょうし、将来的な日米台3ヵ国連携も視野に入れる価値はあるはずです(※もちろん、台湾自体が沖縄県石垣市尖閣諸島への領有権を主張しているという状況ではありますが…)。

ただ、中国の脅威は待ったなしなのに、わが国の国会は相変わらず「もり・かけ・さくら」、「総務省高額接待疑惑」、「法案の文言ミス」で挙句の果てに審議拒否という体たらく。

あまり考えたくもありませんが、一定の情報弱者層が相変わらず立憲民主党などに投票するでしょうから、年内に行われるであろう総選挙でも、彼らは一定の議席を確保してしまうのでしょう。

このように考えていくと、結局のところ、この状況を変えられる人物は、私たち有権者しかいません。私たち一般国民がきちんと選挙に出掛けたうえで、(白票ではなく)候補者に対してきちんと票を投じなければならないのです。

いつも申し上げている話ですが、私たちはさびれた商店街でどうしても食事をしなければならないときに、一番マシなレストランを選ぶしかありません。

結局、日本という国についても、私たち日本国民が有権者・消費者として、「選挙ではよりマシな候補者を見つけて必ず投票する」、「おかしな報道を垂れ流す新聞は買わない」、「おかしな報道を垂れ流すテレビは視聴しない」を地道に実践し続けることでしか良くならないのだと言わざるを得ないのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. とある昭和世代のおっさん より:

    この国の政治家の最大の問題点は「責任を取る覚悟のないサラリーマン」でしか無いことですよね。
    だから決断できなくて問題を先送りにして問題が大きくなって収拾がつかなくなる。
    台湾はその点「責任を取る覚悟を持った政治家」が指導者であったから、集近閉ウィルス禍にも対応できた。
    菅さんは何のために政治家を志し、総理大臣に就任したんでしょうか?
    現状は残念の一言で表現できるのが、本当に残念です。
    今の日本の政治の体たらくには、暗然とした感情しか持てません。
    それでもアフォヴァカサヨク脳に汚染されたなんちゃら民主党とかと自称するズブのド素人集団よりは自公連立政権のほうがまだマシなんですけど、それも残念だよなとしか言えないのです。

    1. はるちゃん より:

      菅さんや多くの自民党政治家には日本の守るべき価値観を理解し行動する政治家が少ないように感じます。
      菅さんは思うところはあるようですが外交的センスが今のところ感じられません。

      菅さんが主張する「自助、共助、公助」を国際的に実践するならまずは日本が「自助」を実践するのが必要だと思うのですが・・・。
      菅内閣に「自助」の気概は今のところ感じられないのが残念というか危機感を感じます。

  2. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    サッカー、快勝でしたね(笑 関係ないですネ。でもニュースで経過、結果を知って嬉しかったです。だいぶん差がついたと思われ。相変わらずのラフプレーには腹が立ちます)。

    日本の海保に求められているのは、国内域の船舶の安全航行だけでは無いでしょう。もし、中国船から威嚇攻撃、破壊・沈没させるつもりの本格攻撃を受けたら、必ず先制を許すことになる。ダメージは深刻です。

    日本の尖閣諸島の警備が緩いからではないでしょうか。海保の各管区保安本部の有する艦艇・ヘリ・航空機を見ると、何故か一番隻数も最新型も揃っているのが、第3管区保安本部です(東京湾等、本部横浜)。次いで第5管区保安本部(近畿と徳島県、高知県、本部神戸)。

    九州の遥か先、沖縄には第11管区本部。小さい艇が多いです。一番強化するのは、ココでしょう。東京湾や大阪湾や瀬戸内海に中国海警は、まず侵入出来ません。ホントに官僚思考というか、中央が一番エライ、という発想ですネ。

    それと、中国海警とコトあった時どうするか、銃火器を使うのか、海自に依頼するのか、ハッキリ決めて欲しいです。国の存亡がかかってます。

  3. 農民 より:

     現状維持でいこうというのは海保という組織としての意見として。では最前線の海保職員がどう思っているのかを、マスコミ、ジャーナリストは取材してほしいものです。職務の性質上、反抗するような言は難しいとは思いますが、どうせいつも「関係者によると」「高官によれば」などと報じるのだから、本音も出せるでしょう。

     しかし、海保としては現行法・現状装備で”あの”中国の新海警法に対応可能という見解だとすれば。従前は必要以上の対応(戦闘)能力を持っていたということにならないのでしょうか?組織の性質的にマズイことになってしまうような。
     いやがおうにも職務に危険性が増す状況です。むしろ堂々と予算をぶんどって装備を強化する=職員の安全性を高める機に思えます。(白地青線の海保カラーにコラージュした大和の画像を眺めながら)

  4. sey g より:

    海警法は中国の気持ちの表れです。
    北京オリンピックまでに尖閣諸島の実効支配をして欲しくないという気持ちです。
    何故なら、もし尖閣諸島で武力衝突があれば 北京オリンピックボイコットは確実です。
    でも、オリンピック迄武力衝突がなくともオリンピック後に尖閣諸島が実効支配されていたなら、武力行使し辛くなります。
    故に、オリンピックまでに尖閣で、役人の常駐、船溜まりや防波堤等施設を造られ実効支配されるのが困るので、言葉でこれらを防止しているのです。
    だから、逆に今こそ尖閣に施設を造る時なのです。もし、中国がそれを邪魔しに来たらそれを大々的に宣伝しオリンピックをボイコットする理由にできるし、それが今中国が一番恐れている事です。
    オリンピックが失敗に終わると、習近平皇帝の支配正統性に影が落ちます。
    正統性が崩れると、皇帝が皇帝で無くなります。これが習近平にとって政敵からの攻撃材料になります。
    まあ、こうだったらイイなぁという予測ですが。

    1. たい より:

      秀吉の一夜城じゃありませんが、夜陰に紛れて資材と人員を送り込み、何か簡単な、プレハブ程度の建物を夜の内に建てても面白いかもしれません。
      イ◯バの倉庫程度の物でもいいかも。
      そんな事を請け負える業者がいるのか、やはり自衛隊になってしまうのか辺りの問題はありますが。

  5. 宇宙戦士バルディオス より:

    >このように考えていくならば、状況は本当に危機的です。海上保安庁への武器使用のルールが厳格であるがために、中国海警船に、私たちの国の海上保安船が沈められては手遅れなのですが…。
     日本人の悪い点は、法的権限を付与すれば、即座に行動ができると思い込むところです。
     だから、防衛論議でも延々と自衛隊の権限ばかりを論点にして来たかの感がある。
     だが、仮に尖閣周辺で日中の武器使用が起こる事態になったら、実際に現場で問題になるのは「法的に何ができるか?」ではなく、「日中の火器のどちらが撃ち勝つか?」です。いかに法的権限が整備されたとしても、日本側の巡視船の搭載火器が、中国海警巡視船のそれより数と威力と射程で劣っていたら、尖閣は奪われます。
     ドズル・ザビ曰く、「戦いは数だよ!」なのです。

  6. より:

    改めて海上保安庁法を読んでみましたが、少々驚いたのは、有事の際に、海上保安庁が海上自衛隊の指揮下に入るような規定が一切ないんですね。それどころか、このような規定があります。

    第二十五条 この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。

    要するに、海上保安庁法は有事に関しては一切想定していないということでもあります。沿岸警備を任務とする組織がそんなことでいいのだろうか、と思わざるを得ません。
    実力組織同士でありがちな話として、警察と自衛隊、あるいは海自と海保とは、あまり仲がよろしくないなどという噂は聞いたことがありますけど、平時はまだしも、有事の際にそれでは困りものです。かつて帝国陸海軍が不仲のために意思疎通までをも欠き、指揮命令系統の不明確化と混乱を招いたことを忘れてはなりません。
    ゆえに、海上保安庁法は、有事を想定した条文を織り込むべく改正されるべきであると思います。

    1. はにわファクトリー より:

      龍さま

      海上保安庁法に立ち返っての調査発言、たいへん参考になります。
      軍隊という単語が条項に文字として書き記されていることに驚きを感じます。この法律、いかれてませんか。第二十五条に
      ・こう書かれている事実の、資すること、あるいはその逆。あるいは
      ・これがなかったとしたら
      どういうことを意味するのでしょうか。前後の文脈が分からないので、シバリや被さりが明記されているのかも知れませんが。

      >海上保安庁法は、有事を想定した条文を織り込むべく改正されるべきである

      御意にございます。高校の同級生が海上保安学校へ入学してそののち海上保安官になりました。学校は舞鶴、初任地は鳥羽港でした。彼によれば海保と海自はにらみ合っていたそうです。残念なことです。

      1. より:

        海上保安庁法は全43条の短い法律ですので、読むのにそれほど苦労することはありません。

        https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000028

        > 軍隊という単語が条項に文字として書き記されていることに驚きを感じます

        おそらくは、日本国憲法第9条との整合性を意識したものではないかと思われます。あくまでも「警察だよ、軍隊じゃないよ」ということなんでしょう。

        この海上保安庁法は、読んでいくといろいろと疑問点にぶち当たります。
        例えば、「海上」とはどこを指すのか、厳密な規定がありません。これが「領海内」とか、「EEZ内」などと規定されていれば、海上保安庁の活動範囲も自ずから制限されますが、そのような明文規定がないため、海の上であればどこであろうと活動可能となってしまいます。従って、公海上の日本船籍の船舶における犯罪行為について、海上保安庁は司法警察官として捜査権限を持ち得ることになります。同様に、公海上の日本船籍の船舶に対する何らかの攻撃に対しても、それを阻止すること、または海上保安庁法第20条に従って反撃することも可能となります。つまりは、海上保安庁は、海上自衛隊に対する防衛出動命令や海上警備命令に依らずとも、「謎の敵」に対して攻撃を加えることが可能であるということになります。

          # この辺は法解釈の問題でもあるので、あくまでも「そう読めないことも
          # ない」程度に見てください。

        なお、有事における海上保安庁の行動については、自衛隊法第80条により、防衛大臣の指揮下に置くことができるとなっています。しかし、運用を考えると、海幕もしくはせめて統幕の指揮下に置かないと、ちぐはぐなことになりかねません。また、自衛隊法には規定があるのに海上保安庁法には一切規定がないというのは、いかにも片手落ちであると思われます。有事において、海上保安庁は、たとえ防衛大臣の指揮下にあっても直接的な軍事行動には関わらないというのであれば、そのように海上保安庁法に明記するべきであると考えます。

    2. 宇宙戦士バルディオス より:

       自衛隊法上に、次のような条文があります。
      (海上保安庁の統制)
      第八十条 内閣総理大臣は、第七十六条第一項(第一号に係る部分に限る。)又は第七十八条第一項の規定による自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる。
      2 内閣総理大臣は、前項の規定により海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れた場合には、政令で定めるところにより、防衛大臣にこれを指揮させるものとする。

      (海上保安庁等との関係)
      第百一条 自衛隊と海上保安庁、地方航空局、航空交通管制部、気象官署、国土地理院、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和六十一年法律第八十八号)第一条第三項に規定する会社、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(以下この条において「海上保安庁等」という。)は、相互に常に緊密な連絡を保たなければならない。
      2 防衛大臣は、自衛隊の任務遂行上特に必要があると認める場合には、海上保安庁等に対し協力を求めることができる。この場合においては、海上保安庁等は、特別の事情のない限り、これに応じなければならない。

    3. 現状を憂うる者 より:

      >帝国陸海軍が不仲のために意思疎通までをも欠き、指揮命令系統の不明確化と混乱を招いたこと

      これって具体的になんの事例を指しているのでしょう? いまひとつピンと来ません。

      1. より:

        台湾沖航空戦の例のように、陸海軍はお互いの「戦果」についての正しい情報を伝えませんでした。マリアナ沖海戦においても、海軍はアメリカ空母を多数撃沈したということにしましたが、実際には壊滅的打撃を蒙ったのは帝国海軍の方です。
        敵に与えた損害についての正確な情報なしにまともな作戦を立案できるでしょうか?

        帝国陸海軍は、陸軍は陸軍、海軍は海軍で専ら戦っており、共同作戦らしい共同作戦はほとんど実施していません。ガダルカナルでも、海軍は陸軍部隊の現地への輸送は行ったものの、攻防戦には参加しておらず、補給にもそんなに協力していません。確かに、ガダルカナルは陸軍の失態ではありますが、ほぼ傍観していた海軍の失態でもあります。
        洋上、あるいは内陸部の戦闘であれば、それぞれ海軍や陸軍が当たるのは当然ですが、島嶼部での戦闘ならば、もう少し協力の余地があったはずです。そうならなかったのは、陸海軍相互の意思疎通が不全であったからだと思います。

        1. 台湾沖航空戦の誤認戦果の件は有名であり、確かにその通りですが、最初から故意にやったことではありません。陸海軍の攻撃隊は本気でそう思っていて、大喜びしていたわけです。
          誤認戦果の問題は非常に根深い問題で、戦局に重大な影響を及ぼしますが、「不仲のために意思疎通をも欠いた」から起こったわけではありません。

          >帝国陸海軍は、陸軍は陸軍、海軍は海軍で専ら戦っており、共同作戦らしい共同作戦はほとんど実施していません。

          陸海軍はそもそも根本的目的が違っており、陸軍は大陸や大型島嶼で戦うこと、海軍は太平洋で戦うことがそれでした。陸軍の仮想敵国はソ連であり、海軍の仮想敵国はアメリカでした。それぞれがその目的や思想に従って、軍備や戦略を整えており、太平洋戦争の後半では米国の攻勢に対応できなくなってしまったというだけの話です。「不仲で意思疎通を欠いた」は当たりません。そもそもが別方向を持った巨大な縦割り組織だったのです。

          >帝国陸海軍は、陸軍は陸軍、海軍は海軍で専ら戦っており、共同作戦らしい共同作戦はほとんど実施していません。ガダルカナルでも、海軍は陸軍部隊の現地への輸送は行ったものの、攻防戦には参加しておらず、補給にもそんなに協力していません。確かに、ガダルカナルは陸軍の失態ではありますが、ほぼ傍観していた海軍の失態でもあります。

          これは全く違います。
          陸海軍の協同が必要な場合は、大本営、あるいは現地の陸海軍が協定を結んで協同作戦を行うのが、当時の仕組みでした。実際にガダルカナルは最初から最後まで協同作戦だったのです。陸軍がガダルカナルに行ったのも、そもそも協同作戦だからです(米軍の上陸前は、同島には海軍しかいなかった)。
          同島の補給輸送に関しては、海軍は延べ巡洋艦七隻、水上機母艦四隻、駆逐艦九十二隻を輸送専門に出動させました(途中の集計なので、実際はこの二倍近い)。大規模な船団輸送も二回行いました(二回ともほぼ輸送船は全滅)。また輸送に直接、間接に関連して大小数十回の海空戦が起こっており(空戦もほとんど海軍による)、海軍は戦艦二隻を始め、多数の軍艦を失っています。最後はどうにもならなくなり、潜水艦まで出しました。「攻防戦には参加しておらず、補給にもそんなに協力していません」とは程遠い状態です。海軍は補給輸送のために涙ぐましいほどの努力をしましたが、残念ながら米軍の能力が日本軍の能力を上回っていた(途中から上回った)ために、満足にできなかった、というのが本当のところでしょう。

          確かに陸海軍間の意思疎通が悪かったのは相対的に事実ですが、それは不仲だったからではなく、高度に縦割りな官僚性という制度上の問題(そもそも軍って縦割りですよね)や、残念ながら通信設備の貧弱による物理的な問題と、両方の原因によっていたと思われます。後者でいえば、例えば同じ海軍内でも部隊が違えば意思の疎通は悪かったんですよ。フィリピン沖海戦では、小沢中将の打った重要な電報が栗田中将に届いておらず、意思決定に重要な影響を及ぼしたのは周知のとおりです。

          ちなみに、陸海軍が意思疎通を欠いたがために、指揮命令系統の不明確化と混乱を招いた事実は一度も無かったと思います。

        2. 現状を憂うる者 より:

          ちょっと気になったので補足です。

          >帝国陸海軍は、陸軍は陸軍、海軍は海軍で専ら戦っており、共同作戦らしい共同作戦はほとんど実施していません。

          ここは全くの誤解?というか間違いです。
          たとえば緒戦時のマレー上陸作戦、フィリピン上陸作戦、ボルネオ油田地点の上陸作戦、ジャワ島やスマトラ島の上陸作戦(以上すべて成功)、東部ニューギニアのポートモレスビー作戦(MO作戦、失敗に終わる)などは全て陸海軍の協同作戦です。
          その他、単なる輸送も含め、基本的に陸軍の兵隊が船に乗って移動する作戦は全て陸海軍の協同作戦であり、陸海軍間のなんらかの協定に基づいて行われました。

  7. 匿名29号 より:

    国会は法案の文言ミスのため野党は審議拒否の状態のままです。野党の方々は本当に日本人なんだろうか。
    憲法9条があるから国が安泰と思っている方々は、尖閣諸島で海保または漁船が撃沈されても、自分には関係ないと思っているのだろうか。
    北朝鮮からの弾道ミサイルが東京に落ちて、気がつく前に蒸発しているかもしれませんね。

  8. こんな記事がありますね。既出だったら申し訳ありませんが。
    有事の際に後方攪乱、という記事を前にも貼ったことがありますが、沖縄も相当あぶなそうです。

    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81364
    尖閣有事、そのとき沖縄で起きうる最悪のシナリオを考える
    同盟が機能する以前の問題として ロバート・D・エルドリッヂ
    (現代ビジネス)

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