ウェブサイト恒例「歴代内閣在任期間比較」

2012年12月26日に第二次安倍政権が発足してから、早いもので丸6年が経過しました。私個人的には、せっかく安倍総理が「アベノミクス」を引っ提げて再登板したわりに、アベノミクスは実に中途半端な状態になっているとの強い不満もあるのですが、ただ、安倍総理でなければ成し遂げられないさまざまな課題が残されているのも事実だと思います。少し辛口ではありますが、安倍政権に対する期待を込めて、本稿では過去の当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』恒例の政権の長さ比較を紹介してみたいと思います。

アベノミクス7年目

6年前の本日、「第二次安倍晋三内閣」が発足しました。つまり、安倍政権はもう7年目に突入した格好です。

安倍晋三総理大臣は2006年9月からの1年間(日数でいえば366日間)、第一次政権を担いましたが、松岡勝利農相の自殺や「消えた年金問題」、さらには自身の難病などにより、最後は政権を投げ出してしまいました。

しかし、その後は雌伏し、2009年8月の総選挙で自民党が下野して以降も政策の研究を続けるなどし、2012年9月には「アベノミクス」を引っ提げて自民党総裁選に当選し、奇跡の再登板を果たしました。

その後、野田佳彦首相(当時)が2012年11月に衆議院を解散し、自民党が圧勝したことで、安倍政権が再び誕生したのです。

早いもので、あれからもう6年が経過しました。

敢えて辛辣な言い方をしますと、アベノミクスが100%、万全の成果を挙げているとは思いません。それどころか、せっかくの日銀の金融緩和にもかかわらず、政権が財政出動を渋っているため、どうもデフレ脱却は中途半端な状態になってしまっているのです。

しかし、不十分ながらも金融緩和は依然として続けられており、経済学のセオリーどおり、失業率は大きく低下し、いまや全国各地で有効求人倍率が1倍を上回る状況が常態化しています。

2000年前後の就職難や2009年以降の民主党政権の暗い世相を知っている者としては、若者が職にありつけないことがどれほど悲惨なことかと痛感するのですが、安倍政権が発足したことで、雇用環境が劇的に完全したことについては素直に歓迎したいと思うのです。

安倍政権の在任日数は歴代内閣で5位

さて、昨年も『安倍政権5年―「既得権益」を打ち破れ!』で説明しましたが、私は自身の手元メモとして、歴代政権の通算在任日数を記録しています。

といっても、首相官邸のホームページに行けば、伊藤博文政権以降の歴代内閣についての記録が公表されていますので、これを見れば、少し面倒ですが、誰でも簡単に在任日数を計算することができます。

ここで、「在任日数」とは、「両端入れ」でカウントしています。たとえば、2018年12月26日に就任し、翌27日に退任した場合、在任日数は「1日」ではなく「2日」と計算されます。

第一次安倍政権の場合は2006年9月26日(火)に発足し、2007年9月26日(水)に総辞職したため、在任日数は「365日」ではなく「366日」です。このため、歴代政権の在任日数を単純に足し上げると、首相が代わった回数だけ、日数が二重計上される点には注意が必要です。

ただし、このやり方だと、第二次安倍政権が退任し、第三次安倍政権が発足した2014年12月24日(水)が二重計上されてしまいます。このため、同一人物が引き続き内閣を組閣した場合に限定して、1日を控除する、という補正を加えています。

その方法による計算結果が、次の図表1です。

図表1 歴代内閣総理大臣の通算在任日数(10位まで)
内閣総理大臣通算在任日数組閣回数
1位: 桂 太郎2,886日3回
2位: 佐藤 榮作2,798日3回
3位: 伊藤 博文2,720日4回
4位: 吉田 茂2,616日5回
5位: 安倍 晋三2,558日4回
6位: 小泉 純一郎1,980日3回
7位: 中曽根 康弘1,806日3回
8位: 池田 勇人1,575日3回
9位: 西園寺 公望1,400日2回
10位: 岸 信介1,241日2回

(【出所】首相官邸HPデータより著者作成)

これで見ると、安倍晋三総理大臣の在任日数は本日時点で通算2558日であり、これは中曽根康弘元首相の1806日、小泉純一郎元首相の1980日などを抜き去り、歴代5位の長さです。

節目は来年11月20日

ただし、誤解しないでいただきたい点が1つあります。

私は別に、安倍政権が「とにかく長続きして欲しい」と思っているわけではない、という点です。

上の図表1は、あくまでも客観的に確認できる情報をベースに計算したらこうなった、というだけのものであり、別に安倍総理に「歴代1位になってほしい」と思っているわけではありません。むしろ、長期政権の維持だけが自己目的化しているのなら、さっさと辞めてもらいたいとすら思っています。

私は当ウェブサイト上、これまでも「安倍政権を(消極的にだが)支持している」と公言して来ましたが、これはあくまでも安倍総理の政策を私なりに総合的に判断した結果に過ぎず、2015年12月28日の「日韓慰安婦合意」のような国民を失望させる行為が続けば、安倍政権支持者ではなくなるでしょう。

それはともかく、歴代1位の桂太郎政権は、組閣が3回に及び、通算在任日数は2886日に達したそうですが、これに対し、現時点の安倍政権の在任日数は2558日です。

ただし、安倍政権は現在のところ「向かうところ敵なし」の状況が続いています。もし安倍政権が来年11月20日まで続けば、在任日数は2887日となり、歴代最長政権となります。その意味で、節目となる日付と、その時点の在任日数を挙げておきましょう。

  • 2019/02/23(土)までで在任2,617日となり吉田茂政権を抜いて歴代4位に浮上
  • 2019/06/07(金)までで在任2,721日となり伊藤博文政権を抜いて歴代3位に浮上
  • 2019/08/24(土)までで在任2,799日となり佐藤榮作政権を抜いて歴代2位に浮上
  • 2019/11/20(水)までで在任2,887日となり桂太郎政権を抜いて歴代1位に浮上

来年7月には参議院選挙が行われます。

私の個人的希望を申し上げるならば、安倍総理におかれては、来年10月の消費増税の阻止と財務省解体を争点に掲げて、是非、衆参同日選に踏み切っていただきたいところです。

オマケ:歴代短命政権リスト

ついでに、歴代短命政権リストについても作ってみましょう(図表2)。

図表2 歴代内閣総理大臣の通算在任日数(最下位から10人)
内閣総理大臣通算在任日数
53位: 米内 光政189日(1940年1月16日~同年7月22日)
54位: 清浦 奎吾157日(1924年1月7日~同年6月11日)
55位: 犬養 毅156日(1931年12月13日~翌年5月16日)
56位: 阿部 信行140日(1939年8月30日~翌年1月16日)
57位: 鈴木 貫太郎133日(1945年4月7日~同年8月17日)
58位: 林 銑十郎123日(1937年2月2日~同年6月4日)
59位: 宇野 宗佑69日(1989年6月3日~同年8月10日)
60位: 石橋 湛山65日(1956年12月23日~翌年2月25日)
61位: 羽田 孜64日(1994年4月28日~同年6月30日)
62位: 東久邇宮 稔彦 王54日(1945年8月17日~同年10月9日)

(【出所】首相官邸HPデータより著者作成)

終戦直後の東久邇宮内閣が54日というのは仕方がないにせよ、短命政権には総じて開戦前後、終戦前後のものが多い気がします。しかし、戦争直後でもないくせに、宇野宗佑内閣はわずか69日、羽田孜内閣に至ってはわずか64日で退任しています。

一般に長期政権の方が国益は安定するように思えるのですが、政権の長短と日本の混乱について、じっくり研究してみるのも面白いかもしれませんね。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

     更新ありがとうございます。

     来年11月20日で桂太郎を抜いて1位なら、今のところ【当確】ではないでしょうか。長さだけで優劣は競えませんが。しかし短命内閣に最近組のウーやんとハタが入っている。なるべきではなかったと言えば言いすぎか。でも69日や64日など、儀典や引継ぎ業務が増えて時間を無駄にした内閣ですね。特に宇野氏は恥ずかしい一件が命取り(笑)。

     安倍首相は衆参両議院選挙になった場合、消費税10%の阻止の方が庶民には訴えやすい。これだけでも、実行をお願いしたい。

     

  2. gommer より:

    事、外交面では長期政権は良い事でしょう。支持率が安定している証拠ですし、交渉相手としての信頼感は非常に重要ですから。80年代~90年代の存在感の無さを知る世代としては頼もしい限りです。
    日本外交の転換点になるかもしれませんね。

    内政でも憲法改正による大転換を期待しましたが、こちらは期待外れに終わりそうな雲行き。
    消費増税によってアベノミクスも吹き飛び、晩節を汚しそうで心配しています。

    消費増税撤回・憲法改正・財務省解体を断行して、在任期間だけでなく実績でも歴史に名を残してもらいたいものです。

  3. 阿野煮鱒 より:

    安倍総理の方針は、左の人々から蛇蝎のごとく嫌われていることで「相対的」に正しいとわかります。しかし「絶対的に」正しいかどうかは疑問の余地があります。特に「極端に右」の人たちから日和見だと厳しく批判されていますし、一般市民の感覚で見ても、移民政策推進に見える入国管理法改正など、不安要素が多々あります。

    さりながら「安倍晋三氏を拒否して誰を選ぶのか」の問いに答えがありません。石破茂、野田聖子、両者ともに話になりません。赤丸付き急上昇の河野太郎氏も財政均衡派ということで、経済政策には期待できそうにありません。

    現在の日韓関係の悪化と、一部でブラック・クリスマスと言われる世界同時株安は、長い目で見ると日本国民の政治家選択眼を鍛えるよい機会になるものと期待します。石破は初期に韓国の肩を持った後で沈黙、野田は興味がないのか完全沈黙、こうした中で河野太郎氏の「毅然とした」対応が評価されました。これに気づかない政治家に将来はありません。

    後は経済政策で、財政均衡が間違いであると認識する政治家がどれだけいるか、それを支持する有権者がどれだけいるかで日本の将来が決まります。表面的には財務省との戦いですが、本質的にはグローバリズムを推進する国際金融資本との戦いです。これについては、やや陰謀論ぎみですが馬渕睦夫氏の一連の著作が刺激になります。特に、政府機関ではない中央銀行が通貨発行権を握る現状は欺瞞であるという主張は一読の価値があります。FRB設立も日銀設立もユダヤ人の陰謀であるという主張をトンデモ陰謀論と思うか、「政府が直接に通貨発行権を掌握してよいではないか」と思うかは私の見識を超えますが、是非とも皆様に読んでいただきたいと思います。私の場合は、イギリスのEU脱退やトランプ大統領出現が偶然や衆愚の産物ではないと理解できました。

    例: 「反グローバリズム」の逆襲が始まった
    著者:馬渕睦夫、出版社:悟空出版、

    とにかく「国の借金は良くない」という考えが正しいならば、例えばソフトバンクの有利子負債が15兆円に対して売上高が9兆円しかない現状は深刻だし「いつデフォルトしてもおかしくない」と判断されても仕方がないはずなのに、そういう主張は見かけません。ソフトバンクに限らず、あらゆる企業が負債を売上よりも抑えるべきはずですよね? 「いや、国家財政と民間企業財政を同じに考えるべきではない」というなら、あたかも国家財政と家計が同様であるがごとく「国民一人あたり800万円の借金」という主張もおかしいことになります。

    馬渕睦夫氏が言うように、民間企業に過ぎない日本銀行を廃止して、政府が直接に通貨を発行したら、世界が(少なくとも日本が)変わるかもしれません。

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