南北朝鮮政府が、「朝鮮戦争の終戦宣言」を模索し始めました。しかし、米国側はこれに対し、「北朝鮮の非核化が先だ」として拒絶する構えを見せています。ただ、私の見立てが正しければ、米韓同盟は長続きしません。唯一それをつなぎとめているのが日本の存在ですが、逆に言えば、日本が憲法改正などに成功すれば、米韓同盟は脆くも崩れ去ると思います。
目次
朝鮮戦争終結宣言?
国家情報院の徐薫院長は、何をしに米国へ?
少し前の韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に、こんな記事が掲載されていました。
「8月の南北首脳会談」開催説浮上 韓国大統領府は慎重姿勢(2018/08/01 14:07付 聯合ニュース日本語版より)
記事の主題は「8月に再び南北首脳会談を開催するのではないか」とする説が浮上した、とするものですが、その中で、次のようなくだりが出てきます。
「情報機関・国家情報院(国情院)の徐薫(ソ・フン)院長は先月26~29日に訪米して米高官らと会談し、南北共同連絡事務所など南北関係の事案について対北朝鮮制裁の免除を要請したとされる。」(※人名の振り仮名の誤記は原文ママ)
徐薫(じょ・くん)院長といえば、今年3月に北朝鮮の首都・平壌(へいじょう)を訪れ、独裁者である金正恩(きん・しょうおん)の口頭でのメッセージを受け取り、それをそのまま米国に伝えに行った人物でもあります。
出所不明の「朝鮮戦争終結への協力要請」説
この徐薫氏が「北朝鮮制裁の免除を要請した」とありますが、実は、これについては追加で気になる記事を発見しました。次のウェブサイトに、朝日新聞ソウル支局長の牧野愛博氏が『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』とのインタビューに応じたとされる内容が掲載されているからです。
米政府、韓国の「終戦宣言」要請を拒否 「米国の優先順位は非核化」(2018年08月08日 12時07分付 THE EPOCH TIMESより)
“THE EPOCH TIMES” に掲載された、牧野氏がRFAに語ったとされる内容は、次のとおりです。
「徐薫・韓国国家情報院長が7月25日~29日に米国を極秘訪問し、ジーナ・へスペル米中央情報局(CIA)長官とマイク・ポンペオ米国務長官との会談で『南北首脳会談を8月末に繰り上げたいから終戦宣言の採択に協力してほしい』との要請に、『今は北朝鮮に圧力をかけなければならないとき』と断られた」
ただ、肝心のRFAのウェブサイトでこのような記述が見つかりません。これに加えて、この “THE EPOCH TIMES” というメディアの記事末尾には「翻訳編集・齊潤」とありますが、ということは参照している元の記事がどこかにあるはずなのに、その記事の出所がどこにも示されていません。
また、「牧野愛博氏」という人名が出ているのに、朝日新聞(電子版)で検索しても、「徐薫氏が米国に朝鮮戦争の終戦宣言採択への協力を求めた」とする記事は、ただの1つも見つかりません(私の探し方が悪いだけかもしれませんが…)。
これをどう読むべきか
私自身のポリシーとして、この手のスクープ記事が出て来た時には、「これ以上遡れない」という原典を2つ以上確認できないと、「事実である」と鵜呑みに信じることはしないことにしています。
ただ、『北朝鮮から経済支援を強要される韓国政府の自業自得』でも触れたとおり、韓国メディア『中央日報』(日本語版)ですでに、「朝日新聞によると、韓国が南北首脳会談を8月に前倒ししようと提案したところ、北朝鮮側は終戦宣言が先だと突っぱねた」とする報道が出ています。
日本のメディア「韓国『8月に首脳会談を』…北朝鮮『終戦宣言が先』」(2018年08月02日13時44分付 中央日報日本語版より)
ただし、この中央日報の報道についても、実は『朝日新聞デジタル(日本語版)』に該当する記事を発見することができなかったのですが、「朝日新聞が報じた」という点が事実ならば、それは朝日新聞ソウル支局長の牧野愛博氏のスクープ記事であるという可能性が非常に高いと見て良いでしょう。
中央日報からの「孫引き」ですが、朝日新聞によると、
韓国政府が南北首脳会談を8月に前倒ししようと提案したところ、北朝鮮側は「4月(27日の南北首脳)会談より進展した合意が必要」「(具体的には)南北経済協力や朝鮮戦争の終戦宣言(に関する合意)のことだ」
と報じたのだそうです。そして、中央日報はまた、韓国は米国にも会談開催への協力を求めたところ、「米国側は(北朝鮮の)非核化が進んでいないことを指摘」したとあります。つまり、韓国側の要請は米国によって拒否されたということです。
この報道は、先ほど “THE EPOCH TIMES” で触れた、徐薫氏が極秘に米国に対して朝鮮戦争終結宣言への協力を打診したとする内容と整合しています。
このことから、4月27日の南北首脳会談以来、南北間で目立った成果が上がっていないことに韓国政府が焦りを感じていて、ここで「朝鮮戦争終結」という大きな「成果」を見せたいと思っているのではないか、との仮説が浮かび上がるのです。
破綻直前の米韓同盟
北朝鮮の狙いは在韓米軍の撤収
私の持論ですが、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権は、いまや完全に、北朝鮮の傀儡政権に成り果てているように見受けられます。
一例を挙げれば、文在寅政権は高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の追加配備に消極的であり、また、星州付近で市民団体が私的検問などを実行しているのを取り締まらないなど、THAADの円滑な運行を妨げていると言っても良いでしょう。
それだけではありません。文在寅政権は制度上の最低賃金を強引に引き上げようとしていますが、現在の韓国経済の状況でこれをやってしまえば、企業側は最低賃金を支払うために、人減らしをするであろうことが懸念されています。
しかし、これも穿った見方をすれば、「間違った経済政策を通じて韓国経済を破綻に追い込む」という、北朝鮮の邪悪な意図に基づく指令を実行しているだけではないかとの疑いを抱いてしまうのです。
いずれにせよ、北朝鮮の狙いは、まずは在韓米軍を撤収させることであり、ゆくゆくは韓国を平和裏に赤化統一することではないでしょうか?
米国の対韓不信は歴代韓国政府の自業自得
ただ、韓国が純粋に北朝鮮の指令だけで動いていると考えるのも不自然です。
現在、米韓同盟が危機的な状況にあることは事実ですが、それは北朝鮮の指令だけでそうなっているというよりはむしろ、歴代の韓国政権の不作為により、米国の対韓不信が相当に蓄積しているという側面もあると思います。
たとえば、現在の文在寅政権は極端な親北派政権として知られていますが、前任の朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領は、就任する前の時点では、「穏健な保守派の政治家」だと思われていました。実際、私もそう思っていた節があります。
しかし、実際には「強烈な反日」と「米中二股外交」を最初から打ち出して来たのです。2013年2月の朴槿恵政権発足後、彼女は初の外遊先こそ歴代韓国政府の前例どおりに米国を選びました。しかし、韓国大統領としての慣例を破り、2番目に訪問する国として選んだのは、日本ではなく、中国でした。
韓国大統領は就任直後には親日的で、次第に反日色を強くするという傾向があるのですが、朴槿恵氏は最初から「反日」を全開にしたのです。そして、そのことは韓国の立場を自ら危うくする行為でもありました。
その理由は、日本と米国は日米同盟で強く結びついているからであり、韓国が少々、変なことをやっても、たいていの場合は日本が米国と韓国の間を取り持ってくれていたからです。しかし、韓国が「反日ブースト」を全開にしたためでしょうか、日本が米韓の間を取り持つという機能は失われたのです。
さらに、朴槿恵氏は米国との軍事同盟関係が存在するにもかかわらず、中国に接近し、そのことで米国からは強烈な不信感を買いました。
とくに、2014年には、韓国は中国が主導して設立された「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に、「創立メンバー」として加わると表明。さらに、2015年9月に北京・天安門で開かれた「抗日戦勝利70周年パレード」に、旧ソ連諸国の独裁者らと並んで参加したほどです。
このため、2015年10月に朴槿恵氏が訪米した際には、バラク・オバマ米大統領(当時)は激怒のあまり、彼女を徹底的に冷遇。ホワイトハウスでの面会時間はわずか30分少々であり、晩餐会も開催されないという、非常に寂しいものとなりました。
今さら挽回するのも遅い
このように考えていくと、米韓間の関係悪化は、別に文在寅政権になって始まったものではない、ということはよくわかると思います。朴槿恵、文在寅の両氏が、示し合わせたように米国の不信感を買い続け、結局は米韓同盟自体を危機に晒しているからです。
ただ、米韓同盟の危機が、文在寅政権になってから加速していることも事実でしょう。
たとえば、米国が日本などとともに、北朝鮮の非核化のために圧力を加えようとしているのに、韓国が国連安保理決議に違反する動きを見せていることから、米国務省は「わざわざ韓国語で」制裁の説明文書を作成し、公表しているほどです(『韓国に対する「セカンダリー制裁」が現実味を帯びてきた』参照)。
また、2月の平昌(へいしょう)冬季五輪開会式で、マイク・ペンス米副大統領を北朝鮮の代表団と強引に引き合わせようとして、ペンス氏が韓国大統領の主催した晩餐会を無視したエピソードや、ペンス氏と安倍総理が開会式の会場で、北朝鮮代表団の入場に目もくれなかったことは、印象的です。
このように考えていけば、米韓同盟の終焉は、遅いか早いかだけの問題であって、もはや既定路線でしょう。
米韓同盟はしばらく破棄されない
ただし、米韓同盟は現在、不思議な膠着状態にあります。
その理由は、「日本」です。
日本は現在、憲法第9条第2項の制約もあり、外国が軍事力で攻め込んできても、自力で軍事力を行使して国を守る、ということが困難です。このため、日本にとっては米国との同盟関係が何よりも重要なのです。そして、その在日米軍は在韓米軍と一体となって運用されている、というのがポイントです。
つまり、米韓同盟が今すぐ破綻すれば、在韓米軍、在日米軍の一体となった運用に支障が出てくる可能性があり、その混乱を突いて、北朝鮮、ロシア、中国などが日本の近海の安定を乱そうとするであろうことは、容易に想像できるのです。
このため、日本は現在、在日米軍と在韓米軍、自衛隊の3者を円滑に運営するためには、米韓同盟が破棄されては困るのです。おそらく、昨日『堂々と「ツートラック外交」を主張する韓国メディアの不見識』でも触れた日韓GSOMIAも、少なくとも日本側から破棄されることはないと見て良いと思います。
ただし、いつまでも日本が「憲法第9条第2項」の存在を理由に、「戦争ができる国にはならない」、「自主防衛をしない」という姿勢でいられるとは思わない方が良いでしょう。
米国はトランプ政権下で、「アメリカ・ファースト」を掲げ、在外米軍の整理、統合を進めていくでしょうし、その一方で、中国の軍拡は進んで行きます。日本だけが自衛隊を現状のままで維持して良い、という話ではありません。規模の面、法制度の面、そして何より、国民のマインドの面で、大きな変革が必要です。
仮に、日本が「しかるべき準備」を整えれば、米韓同盟はすぐにでも解消され、いよいよ「アチソンライン」は対馬海峡にまで下がって来るかもしれません。日本は「その日」に備えなければならないのです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
余談ですが、何事もなければ安倍総理は自民党総裁として3選されるでしょう。そして、まずは秋の臨時国会で憲法改正の発議がなされることを、私としては強く期待するのです。
できれば、来年7月の参議院議員通常選挙にあわせて、消費税の増税凍結などを争点にした衆参同日選、憲法改正の国民投票などを期待したいと思っていますが、さて、日本国民は、この国難に正しい選択ができるほど賢いのでしょうか?
当ウェブサイトの役割も、まさに「日本が正しい道を歩む」ために、読んで下さった皆様の知的好奇心を刺激することにあるのだと思います。
View Comments (3)
>また、「牧野愛博氏」という人名が出ているのに、朝日新聞(電子版)で検索しても、「徐薫氏が米国に朝鮮戦争の終戦宣言採択への協力を求めた」とする記事は、ただの1つも見つかりません(私の探し方が悪いだけかもしれませんが…)。
ありましたよ。
------------------------------------
https://www.asahi.com/articles/DA3S13617026.html
朝鮮戦争終戦宣言、米が難色 韓国とポンペオ長官ら会談
韓国情報機関、国家情報院の徐薫(ソフン)院長が7月26日から29日まで訪米し、ハスペル米中央情報局(CIA)長官やポンペオ国務長官らと会談した。米韓関係筋が明らかにした。韓国は8月末の南北首脳会談開催を目指し、朝鮮戦争の終戦宣言や南北経済協力に向けて米側の理解を求めたが、協議は不調に終わったという…
------------------------------------
実のところ朝鮮戦争を終戦させる権限を韓国はまったく持っていないんですよね。
韓国一国だけで済む問題だったら、オリンピックの合同チームよろしく、とっくに勝手に終戦宣言出していたことでしょう。
「終戦するとは言ったがすぐに開戦しないとは言っていない」
ということくらい平気でやるのが北朝鮮という国なのに、何の外交的手土産も無しに終戦させてもらえると思ってる韓国は、実におめでたい。
りょうちん 様
いつもコメントありがとうございます。
また、リンクをご教示いただきありがとうございます。
大変助かります。
引き続きご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますようよろしくお願いいたします。
< 更新ありがとうございます。
< そもそも、『朝鮮戦争終結』など米国の承認抜きで出来るはずがありません。米国は戦った当事国です。『チャンケ(中国の)チョンチャ(戦車)ニダ!』って、我れ先に逃げ回ってた、朝鮮人は脇のヒトです(笑)。
< 日本の憲法改正が進めば、米国は韓国が北に統一されようが、在韓米軍を撤退すると思います。その分、経費は浮くし日本から朝鮮半島など射程距離短いほう。対馬に拠点置くかもしれない。ま、米韓同盟は近い将来無くなりますね。
< 以上。