堂々と「ツートラック外交」を主張する韓国メディアの不見識

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、日本との外交を巡っては「ツートラック」、すなわち「良い所取りをすべきだ」、といった主張が堂々と掲載されていました。日本から「価値も利益も共有しない、重要ですらない隣国」であると突きつけられてもなお、「ツートラック」などと不見識なことを言い続ける韓国という国が、私にとっては不思議で貼りません。

中央日報「ブロック」は結果OK

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の本来のウリは、基本的にツイッターかフェイスブックにアカウントを所持していれば、コメントを自由に打ち込むことができる点だったはずです。ところが、先日も報告しましたが、私自身のアカウントが、中央日報側からいきなりブロックされてしまいました。

また、過去に打ち込んだすべてのコメントも削除されてしまっています(※といってもツイッター側には残っていますが…)。私ごときが打ち込むコメントが削除されるとは、中央日報にとってはよっぽど都合が悪かったようですね(笑)

そして、中央日報にブロックされたことにより、私が中央日報を読んで疑問に感じた内容については、すべてツイッターにダイレクトに打ち込むか、それとも当ウェブサイトでわざわざ取り上げて、丁寧にツッコミを入れるという方式を取らざるを得なくなりました。

その結果、皮肉なもので、当ウェブサイトとしても議論の材料が増えるという思わぬ副産物が発生し、実は、ひそかに喜んでいるというのも実情なのです(笑)

日韓GSOMIAと日韓関係

瀕死の日韓関係をつなぎとめる日韓GSOMIA

さて、そんな中央日報に昨日、なかなか興味深い記事を発見しました。

【グローバルアイ】韓日軍事情報保護協定が再延長か…ツートラックの希望(2018年08月07日09時01分付 中央日報日本語版より)

「興味深い」と申し上げる理由は、記事タイトルにもある「日韓秘密軍事情報保護協定」(いわゆるGSOMIA)と「ツートラック外交」という2つの用語に、韓国の現在が象徴されていると私は感じたからです。

この日韓GSOMIAは、もともとは民主党・野田佳彦政権下の2012年6月に日韓間で署名されるはずだった協定ですが、韓国側が署名の1時間前になってドタキャンしたという、いわくつきの協定です。いかに野田前首相が韓国から軽んじられていたかという証拠でもあります。

ただ、日韓GSOMIAはその後、たなざらし状態だったものを、安倍晋三総理大臣の指導力で署名に向けて動き出し、2015年12月の「日韓慰安婦合意」により日韓両国政府間の懸案が消滅したことを受けて、一気に2016年11月に署名に漕ぎ着けたものです。

これを受けて、日韓両国政府は、軍事機密情報を共有することが可能になりました。具体的には、「極秘」や「特定秘密」(英語でいうとSECRET)、「秘密情報」(英語でいうとCONFIDENTIAL)な情報を、このGSOMIAにしたがってやり取りすることができるのです。

ただ、後述するとおり、朴槿恵(ぼく・きんけい)前政権末期ごろから日韓関係は急速に悪化。現在、日本側は韓国を「基本的価値」も「戦略的利益」も共有しない、「重要でもない」隣国として位置付けてしまっています。つまり、日韓関係は瀕死の状態にあります。

その瀕死の状態にある日韓関係をつなぎとめる、数少ない貴重な協定の1つが、この日韓GSOMIAなのです。

日韓関係が瀕死状態に至る経緯

ところで、日韓関係を瀕死の状態に追いやったのは、主に韓国政府です。

2017年5月に文在寅(ぶん・ざいいん)政権が成立して以降に限定しても、たとえば2015年12月に日韓両国政府が成立させた「日韓慰安婦合意」を反故にしようとしたり、日本大使館・日本総領事館前の行動上に設置された慰安婦像を放置したりしています。

安倍晋三総理大臣自身、韓国をどうとらえているかについては、国会における施政方針演説、施政方針演説などを見るのが早いです(詳しくは『【昼刊】外務省、遅まきながらも韓国を「単なる隣国」に格下げ』に記載していますが、ここでは要点だけ抜粋します)。

【昼刊】外務省、遅まきながらも韓国を「単なる隣国」に格下げ

安倍総理は2013年2月の施政方針演説では韓国に対して「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」と最大級の賛辞を贈り、この表現は2014年1月の施政方針演説2014年9月の所信表明演説でも引き継がれました。

しかし、2015年2月の施政方針演説では、「基本的価値」、「戦略的利益」の2つが抜けて、単なる「最も重要な隣国」に格下げ。2015年12月の日韓慰安婦合意成立後は2016年1月の施政方針演説2016年9月の所信表明演説において「戦略的利益」のみが復活しました。

ところが、その後は韓国側が慰安婦合意に反して釜山の日本総領事館前に新たな慰安婦像を建立されたことなどを受け、2017年1月には日韓通貨スワップ再開交渉の無期限中断や日韓ハイレベル経済協議の中止などの対抗措置を発動。

2018年1月の施政方針演説では、ついに韓国については、「基本的価値」、「戦略的利益」、「最も重要な隣国」という3つの要素がすべて抜け落ち、いわば、「これ以上関係が悪化しないようにマネージするだけの、単なる隣国関係」となったのです。

ツートラック外交の愚

どうしてこうなった?ツートラック

以上を踏まえたうえで、中央日報の記事を眺めてみましょう。

中央日報によれば、韓国政府内部にも日韓GSOMIAを巡っては、「有用な側面がある」として、破棄の通告を実施しないという雰囲気にあるのだそうです。

日韓GSOMIAは、有効期限が1年ですが、協定の終了日の90日前にどちらか一方が外交チャネルを通じて破棄を申し出ない限りは自動延長されるという条項があります(第21条第3項)。つまり、今月25日までに破棄を通告しなければ、日韓GSOMIAは自動延長されます。

中央日報は日韓GSOMIAが延長される可能性が高いとしつつも、

これをあえて話題にするのは「今後の韓日関係をはかるものさし」としてこの協定に注目する人が多いためだ

と主張。そのうえで、記事の末尾にとんでもないことを言いだします。

GSOMIAが再度延長されれば、「歴史問題と未来志向的協力を分離して扱う」という文大統領発言の本気度は相対的にさらに強く刻印されることになる。誰でも簡単に言うが、その誰も実践できなかった「実用的なツートラック対日外交」、進んだことのないその道の出発点に文大統領が立つことができるかもしれない。」(※下線部は引用者による加工)

「実用的なツートラック対日外交」!

さすがにこれには恐れ入りました(笑)

この「ツートラック外交」とは、「歴史問題と現実の問題は分けて取り扱う」という、「自称外交のプロ」の文在寅氏が掲げる対日外交の基本方針ですが、今年1月の時点で日本が韓国を「重要ですらない、タダの隣国」に格下げしたことで、最近は聞かなくなった単語です。

日韓GSOMIAは日本側からは破棄しない?

もちろん、日韓GSOMIAは協定の性質上、日韓双方にとって重要な協定です。

とくに日本の場合は、日本国憲法第9条第2項などの制約により、軍事力を使って国防をすることが非常に困難です。当然、法的制約があるために、情報戦などにも弱く、朝鮮半島有事の際には韓国との協力が欠かせません。

このように考えていけば、わが国が憲法第9条第2項の無効化に成功しない限りは、現状の日韓関係がそのまま続くということであり、防衛面での日韓協力(厳密にいえば在韓米軍)との連携の必要性が消えることはありません。

しかし、先ほどの中央日報の記事にもあるとおり、日韓GSOMIAはむしろ韓国にとって多大なメリットをもたらす協定です。「日本の優れた情報力を活用」することが可能で、文在寅大統領自身も「北朝鮮ミサイル関連情報、朝鮮総連などを活用した日本の人的情報が役立った」と認めているほどです。

しかし、日韓GSOMIA自体には、韓国側からは、「ツートラック外交」の象徴のように見られているという点については、私たち日本人としても十分に注意しておく必要があるでしょう。

ツートラックを許すのか?

ただ、シンプルに考えて、「ツートラック外交」とは、相手と争いのある問題は絶対に譲らず、自分たちが困っている点については相手を利用しようとする外交であり、古今東西の外交の基本から逸脱しています。もう少し具体的に言うと、韓国は次のように主張しているのと同じだからです。

  • 歴史問題では絶対に立場を譲らない
  • 現実問題では日本との関係を徹底的に利用する

これだと、歴史問題で韓国が100%勝ち、現実問題でも韓国が100%を得ようとするものです。古今東西、外交においては、利害対立する分野でいかに折り合いをつけるかが大切です。「韓国があれもこれも獲得する」という対日外交戦略が、相手国である日本に受け入れられるはずなどありません。

そんなシンプルなことすら、文在寅大統領(や韓国のメディア関係者)には、わからないのでしょうか?私にはむしろそれが不思議でなりません。事実、あの温厚な日本政府・安倍総理が韓国にキレて、かつては「価値と利益を共有する最も重要な隣国」だった韓国を、いまや「ただの隣国」に格下げしたのです。

もちろん、日韓GSOMIA自体が日本側から破棄することは考え辛いと思いますが、韓国側が「隙あらばツートラックで日本から得るものを得ようとする」という姿勢を見せていること自体は、十分な警戒が必要な論点の1つです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

もっとも、「ツートラック外交」、「二股外交」は、歴史上、朝鮮半島に成立した国家が得意(?)としていた外交テクニックです。そして、ときとしてこの「ツートラック外交」や「二股外交」が、外国勢力を朝鮮半島に引き入れ、大きな戦争の原因にもなってきたということは、見過ごしてはなりません。

私は韓国(や北朝鮮)に対する「ツートラック外交」を絶対に許してはならないと考えています。なぜなら、それを認めると、やがて周辺国が朝鮮半島のペースに引きずり込まれ、最悪の場合、戦乱に巻き込まれてしまうからです。

ただし、このあたりの事情については、北朝鮮が現在、米中両国を両天秤にかける「米中二股外交」を展開しているという点とあわせて、近日中に一度、じっくりと議論してみたいと思っています。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. とらじろう より:

    自衛隊の情報収集能力は非常に優れており新疆ウイグル自治区の電波さえも傍受できると聞いたことがあります。
    北朝鮮情報にしても日本のマスゴミは韓国に日本が頼っているような言い方ですが、実際は逆なんですよね。
    ツートラックなんて言っていますがその韓国が北朝鮮にいいようにされているのが面白いですね。
    (本来、面白がる事ではありませんが)

  2. めがねのおやじ より:

    < 更新ありがとうございます。

    < 北朝鮮とズブズブの関係の韓国に、極秘秘密扱いの連絡文、資料を今でも渡してないと思うが、準秘扱いは与えているだろう。最高機密は、米軍も止めろ!と言う。『日本だけだぞ』と。

    < GSOMIAの継続はやるだろうが、それをあたかもバーターで取り引きの如く、【ツートラック】なんて、虫のいい話に持っていくのが愚民の韓国人、中央日報だ。

    < 所詮『タダの隣国』とまで安倍首相にオトシまくられてるのに、まだタカろうとする。すべからく朝鮮民族は、一人で、一国で行きていけないフラフラ寄生虫。プライドだけ高い阿呆国です。

    < この辺り、昨日サイト主会計士様に汚い言葉を、やめようと言われてた方はNGなんですよね。ハイ、でもその通りであり、気持ちを伝える分にはヨシッと思います。
    < いずれにしても、今更ナニをヌカすか。ツートラックなんて、文政権初期の死語だよ。日米から離れて、『独自路線』で行って下され(笑)。経済破綻まだぁ〜?(笑)
    以上。

  3. りょうちん より:

    本来、GMSOMIAの締結時に、「半島有事には自衛隊の輸送艦の釜山寄港を許可する」程度の条件を付けておくべきだったのですがね。
    すべての邦人保護は、物理的に不可能でも、できる手は全て打っておかないとまたぞろ野党が騒ぐでしょう。

  4. きたやまひと より:

    韓国は、日韓GSOMIAが韓国から北朝鮮、中国への軍事機密流出を阻止するための枷であることを理解していない。これを、対日外交の取引材料にできるという発想は、「主観的、感情的、自己評価過大」(よかれさんのブログからの引用)という韓国人の一般的特性から来ているのでしょうね。彼らのいうツートラック外交というのは、単に、やらずぶったくりに過ぎません。ツーサイズくらい小さな衣の下から鎧が見え見えで、あきれてしまいます。

  5. 匿名 より:

    冒頭の『日本から「価値も利益も共有しない、重要ですらない隣国」であると突きつけられてもなお、「ツートラック」などと不見識なことを言い続ける韓国という国が、私にとっては不思議で貼りません。』ですが、「私にとっては不思議でなりません」の間違い?

  6. 匿名 より:

    あと、『日韓GSOMIAは、有効期限が1年ですが、協定の終了日の90日前にどちらか一方が外交チャネルを通じて破棄を申し出ない限りは自動延長されるという条項があります。』の「外交チャネル」は「外交チャンネル」?

    あと要望があるのですが一度反映させたコメントを、追記したり修正できるようにできませんか?

  7. ただのおっさん より:

    韓国の釜山の市長や近辺の知事らが日本人観光客をもっと誘致して欲しいと自民党関係者に陳情しまたようですが釜山領事館前の慰安婦の撤去や修学旅行学生に慰安婦や徴用工の墓前で謝罪させる愚行を放置したままでただ自己の利益を得るために主張した。
    これが韓国人のツートラック外交なのですね。

  8. 匿名 より:

    朴槿恵(ぼく・きんけい)文在寅(ぶん・ざいいん)に凄く違和感があります。
    日本語読みするならフリガナは要らないでしょう。
    金大中を(きん・だいちゅう)と読むか(キム・デジュン)と読むかは読者に任せれば良いと思います。

  9. 匿名 より:

    追記
    日本には日本独自の漢字の読み方があります。
    漢字の名前の読み方をわざわざ現地の発音に合わせると言うのは、フランス人に「アンリ」を「ヘンリー」と、ドイツ人に「シュミット」を「スミス」と言わせるの様なもので、不自然と言うか言葉狩りに通じるものを感じます。
    ですが、「外国人の名前を日本語読みをしろ。」と言うのもまた不自然で、逆の立場からの強要に思えます。
    特にフリガナを振らずとも、読者がそれぞれ好きな様に読めばいいのではないでしょうか?

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