日本が韓国との関係改善を図るよりも先にやるべきこと

読売新聞が一昨日、韓国の韓国日報社と共同で行った世論調査について報じていますが、どうも全容がよくわかりません。そこで、本日は韓国日報の記事(※朝鮮語)をベースに、この共同世論調査の概要について、きちんと眺めておきたいと思います。

読売報道:日韓世論調査

日韓の認識差

日本の読売新聞と韓国の韓国日報が共同で実施した日韓世論調査の結果が公表されています。読売新聞の電子版である「読売オンライン」側に掲載された記事を調べたところ、次の3つが確認できました。

日韓関係「良い」日本33%、韓国26%(2018年07月04日 22時00分付 読売オンラインより)
「北は軍事的脅威」日本77%、韓国49%(2018年07月04日 22時00分付 読売オンラインより)
北の非核化「疑問視」多数…日韓共同世論調査(2018年07月05日 06時00分付 読売オンラインより)

このうち一番詳しく報じているのは3番目の記事です。日韓関係が「良い」とする回答が、33%(前回20%)、韓国で26%(前回15%)と、いずれも前回調査と比べて10%ポイント以上改善しているものの、いくつかの点で、日韓両国民の間で大きな齟齬が出ていることがわかります(図表1)。

図表1 読売が報じた日韓の認識差
調査項目韓国日本
米朝首脳会談を評価する83%59%
北朝鮮の完全非核化が実現すると思わない66%83%
北朝鮮への制裁緩和は核の完全廃棄を条件とすべき55%71%
段階的な制裁緩和を容認する44%26%
北朝鮮に軍事的脅威を感じる49%77%
北朝鮮の核・ミサイル放棄に「対話」を重視すべき60%46%
北朝鮮の核・ミサイル放棄に「圧力」を重視すべき20%46%

(【出所】読売オンライン記事より著者作成)

世論調査には問題もあるが…

読売オンラインに掲載された記事からは、調査項目とその回答を網羅的に知ることはできませんし、また、記事の書き方も非常にわかり辛く、正直、何が要点なのかがぼやけてしまっています。また、今回の世論調査は「電話世論調査」であり、回答者が日本国民の意見を正確に代弁している保証はありません。

ただし、「電話世論調査が日本国民の意見を正確に代弁している保証はない」という意味では、韓国側でも事情はまったく同じでしょう。なぜなら、社会全体のIT化の進展を考えれば、電話世論調査では母集団がかなり偏るであろうという点は、日韓ともに同じだからです。

このように考えていけば、日本側の調査では、インターネット調査などと比べれば、多少、マス・メディアの報道のバイアスを受けている可能性はあるものの、「日韓両国の認識差を知る」という点に限っては、この調査には十分な意味があると思います。

日本は韓国よりも北朝鮮に脅威を感じる

以上を踏まえて、あくまでも日本が韓国と比べて北朝鮮をどう考えているのか(あるいは逆に、韓国が日本と比べて北朝鮮をどう考えているのか)という点を列挙していけば、次のとおりでしょう。

  • 6月12日の米朝首脳会談を「評価する」と答えた人は、日本で6割を割っているが、韓国で8割を超えており、韓国の方がより米朝首脳会談を高く評価している
  • 北朝鮮の非核化が実現することを疑問視している意見は、韓国では7割を割り込んでいるが、日本で8割を超えており、日本の方がより北の非核化を悲観している
  • 北朝鮮の制裁緩和で完全な核廃棄を条件とする人は日本で7割を超えているが、韓国では5割少々に過ぎず、一方で段階的な制裁緩和を容認する意見は韓国で4割を超えていて、日本では3割を割り込んでいるなど、韓国の方がより北朝鮮に対して甘い姿勢を見せている
  • 北朝鮮に軍事的脅威を感じ人は、日本で8割弱、韓国では5割弱となったが、前回調査では日本で88%、韓国で77%だったことを踏まえると、韓国では北朝鮮に対する軍事的緊張緩和がより強く反映されたとみて良い
  • 北朝鮮に核・ミサイルを放棄させるための手段については、日本では「対話」と「圧力」が46%で並んだが、韓国では「対話」が6割で「圧力」の2割を圧倒した

この日韓の認識差を見ると、脅威というほかありません。というのも、これらのどの質問項目を読んでも、38度線で直接、北朝鮮と対峙しているはずの韓国の方が、日本と比べて北朝鮮に対し、より宥和的な姿勢を示しているからです。

実際、極端な親北派である文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の支持率が、調査によっては7割を超えている状態にあると考えるならば、韓国社会が北朝鮮の工作などによって骨抜きにされ、土台が揺らいでいるように思えてなりません。

私は、読売オンラインの記事を読んでいると、読売新聞が「日韓関係を巡る認識は日韓両国でともに改善した」という表面的な部分のみを前面に押し出そうとしているように思えてなりません。しかし、実際には、日韓関係(あるいは北朝鮮との関係)を巡り、もっと深刻な齟齬が出ているという点の方が重要です。

原文で読んでみた

韓国日報の記事原文(リンク)

ところで、先ほどの読売オンラインの記事には、「読売新聞社と韓国日報社との共同世論調査」とありました。ということは、読売オンラインで確認できない調査について、もしかすると、韓国日報の方の記事を読めば、確認できるのかもしれません。

そう思って、翻訳ソフトなどを駆使し、韓国日報のリンクを直接探してみたところ、『2018年韓日共同世論調査』と題する記事を発見しました(※原文・朝鮮語)。ここから5つほど、関連する記事が掲載されています。

韓国人「安倍よりも金正恩」日本人「金正恩も習近平も」(2018.07.05 04:40付 韓国日報より【原文・朝鮮語】)
慰安婦の合意など意見相変わらず…韓国人の69%及び日本人63%、「関係悪い」(2018.07.05 04:40付 韓国日報より【原文・朝鮮語】)
韓国人49.7%、「最大の脅威国、北朝鮮ではなく、中国」(2018.07.05 04:40付 韓国日報より【原文・朝鮮語】)
北朝鮮の核及びミサイルの韓国人47%「脅威ない」日本人82%「脅威感じる」(2018.07.05 04:40付 韓国日報より【原文・朝鮮語】)
韓国人、中国の軍事台頭打ち出し覇権主義に警戒心(2018.07.05 04:40付 韓国日報より【原文・朝鮮語】)

私自身は朝鮮語がほとんど読めないので(まったくわからないわけではありませんが)、どうしても翻訳エンジンに頼らざるを得ない部分が多いのですが、それでも日本語と朝鮮語はもともと文章の構造が似ているので、比較的正確に翻訳することができます。

そこで、これらの記事のうち、私が気になった論点を2つばかり、抽出しておきましょう。

最も信頼する指導者は5人のうち誰か?

まず、この5つの記事のうち、一番上のリンクを紹介しましょう。これは、韓国国民のうち約8割が文在寅大統領を「信頼できる」と答えた一方、日本国民のうちの半数近くが安倍総理を「信頼できる」と答えた、とする調査です。日本国民側の回答が図表2、韓国国民側の回答が図表3のとおりです。

図表2 日本国民に聞いた「信頼できる指導者」

(【出所】韓国日報記事より著者作成)

図表3 韓国国民に聞いた「信頼できる指導者」

(【出所】韓国日報記事より著者作成)

もともと韓国国内では文在寅大統領に対する支持率が異常に高く、調査によっては7割前後の支持率を叩き出していますが、韓国日報も「ムンチェイン大統領」(※「ムンチェイン」とは「ぶん・ざいいん」の朝鮮語読み)に対する「強固な支持率が反映されている」と指摘しています。

これに対し、日本国内特有の事情として、「電話調査」の場合は内閣支持率等が異常に低く出る傾向があります(たとえば『【昼刊】国民民主党、政党支持率ゼロ%の衝撃』参照)が、それでも、読売新聞の調査では半数近くが安倍総理を「信頼できる」と答えているという点については、注目に値します。

また、私が注目したいのは、その順序です。

日本側では、安倍総理がダントツに高い信頼性を誇り、次にトランプ米大統領、3番目に文在寅氏が来ていますが、これは「文在寅氏がトランプ氏と同等に信頼されている」という意味ではなく、「トランプ氏に対する信頼度は文在寅氏に対するものと変わらないほど低い」、と解釈すべきかもしれません。

実際、トランプ・文在寅の両氏に対する「信頼できない」という回答は6~7割を占めています。さらに、中朝首脳に対する不信感はもっと高く、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席は8割、北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)は9割の人が、「信頼できない」と答えています。

これに対し、韓国側では文在寅氏を8割の人が信頼していますが、トランプ氏に対する信頼度は日本よりも高いとはいえ、「信頼しない」という回答が6割を超えています。さらに、金正恩と習近平氏に対しては、それぞれ7割の人が「信頼できない」と答えています。

しかし、驚くべきは、韓国人の9割が安倍総理を「信頼できない」と答えている、という点でしょう。このことから、現在の韓国人というのは、日本でいう「朝日新聞」「沖縄タイムス」「琉球新報」の読者層を足して濃縮したような反日層の塊になっているように思えてならないのです。

私は、安倍総理が韓国の圧倒的多数から信頼されていないという点に、韓国人の「まともに情勢を判断する力」の欠如を見る思いがするのです。

ミサイルに脅威を感じるかどうか

ところで、先ほど図表1でも紹介したとおり、読売新聞側の記事では、「軍事的脅威を感じる国」として、日本国民の77%が北朝鮮を挙げた、という情報が掲載されていました。

しかし、韓国日報の3番目の記事には、読売の報道に含まれていない調査が掲載されています。これは、「北朝鮮の核・ミサイルに脅威を感じているか」と尋ねたところ、日本国民の82.0%が「脅威を感じる」と答えた、というものです(図表4)。

図表4 韓国日報が報じた日韓の認識差
質問項目韓国日本
北朝鮮の核・ミサイルに脅威を感じている53.0%(72.4%)82%(89%)
北朝鮮の核・ミサイルに脅威を感じていない46.7%(27.3%)18%(9%)

(【出所】韓国日報報道より著者作成。なお、カッコ内は前回調査)

この部分以外については、ほぼ読売新聞の報道と同じですが、なぜ読売オンラインの記事が「北朝鮮の核・ミサイルに脅威を感じているかどうか」という質問項目を紹介していないのか、その理由は存じ上げません。しかし、韓国では「核・ミサイルに脅威を感じない」と答えた人が5割弱もいることは驚きです。

同様に、5番目のリンクの記事に掲載されている情報も、読売新聞には掲載されていません。これは、日韓それぞれに対し、「どこの国に軍事的脅威を抱いているか」と尋ねたというものです(複数回答)。その結果が、図表5のとおりです。

図表5 どの国に最も脅威を感じるか
脅威を感じる国韓国日本
北朝鮮48.6%77%
中国49.7%66%
日本34.7%
米国19.8%32%
ロシア17.7%56%
韓国20%
脅威はない15.1%6%
無回答1.9%1%

(【出所】韓国日報記事より著者作成)

おそらく、図表1に紹介した読売新聞の記事は、図表5と重なっているのだと思います。また、読売新聞の記事では小数点以下を四捨五入しているのに対し、韓国日報の記事では小数点以下1桁を表示しているため、細かい数値は異なっていますが、四捨五入すれば図表1と部分的に整合します。

呆れたことに、韓国では「日本が軍事的脅威だ」と答えている人が、34.7%も存在するのです。日本が「平和憲法」に縛られて、自由な軍事行動を取ることができないにも関わらず、です。もっとも、日本でも「米国が軍事的脅威だ」と答えている人が32%も存在するので、どっちもどっちだと思いますが…。

少しずつ日韓は離れていく

日韓の認識差、もはや埋めることは不可能?

さて、読売新聞がほぼ無視しているのが、韓国日報の2番目の記事です。

これによると、日韓関係が今後「良くなる」と答えた人の割合が、韓国で大きく減少する一方、「変わらない」と答えた人の比率が上昇。また、日本では昨年に続いて「日韓関係は変わらない」とする回答が7割を占めた、とするものです(図表6)。

図表6 日韓関係は将来どうなるか
質問項目韓国日本
良くなる32.1%(55.6%)18%
変わらない57.7%(32.1%)71%(70%)
悪くなる6.7%7%

(【出所】韓国日報記事より著者作成。なお、カッコ内は前回の数値)

日本では韓国に対する「諦観」のようなものがあって、昨年に引き続いて約7割の人が、「良くも悪くもならない」と考えている、ということでしょう。一方、韓国では文在寅政権が発足した昨年時点で日韓関係改善への期待が非常に高かったのが、今年はそうした期待がしぼんだ格好です。

韓国日報はまた、「韓日(日韓)慰安婦合意の見直し」を巡って、日韓で深刻な齟齬が出ていると指摘しています(図表7図表8)。

図表7 慰安婦合意の再交渉は必要か?
質問項目韓国日本
必要である73.2%23%
必要がない22.0%68%

(【出所】韓国日報記事より著者作成)

図表8 日本政府の慰安婦問題の謝罪は必要か?
質問項目韓国日本
必要である90.9%14%
必要がない7.9%77%

(【出所】韓国日報記事より著者作成)

また、韓国の団体が米国などで慰安婦像を設置する動きを活発化させていますが、これに「賛成する」と答えた韓国人は80.2%、「反対する」と答えた日本人は84%に達していて、慰安婦問題を巡る溝を埋めるのは非常に難しいのが実情ではないかと考えられます。

「関係改善を推進しなければならない」のか?

韓国日報はまた、相手国に対して「信頼できない」、「親しみを感じない」とする回答が、日韓両国でともに非常に高い水準にある、と指摘します(図表9)。

図表9 相手国への信頼感と親しみ
質問項目韓国日本
信頼できない79.0%60%
親しみを感じない73.0%55%

(【出所】韓国日報記事より著者作成)

その一方で、「歴史問題に対する意見の相違があったとしても、経済・文化交流を通じて関係改善を推進すべきだ」とする回答は、日本(59%)、韓国(69%)ともに高い水準にあるとしていますが、私に言わせれば、無理をして関係改善を図る必要があるのか、疑問でもあります。

もちろん、日韓関係がこれ以上悪化しないように「マネージする」という姿勢は大事です。しかし、慰安婦問題は日韓両国間に「トゲ」のように刺さっていて、この「トゲ」を抜くためには日本か韓国のいずれかが譲歩しなければなりませんが、両国ともにすでに譲歩することは困難です。

私は当ウェブサイトで何度も繰り返し申し上げて来ましたが、日本にとって、韓国との関係は、それ単体で論じられるものではなくなったと考えています。北朝鮮や中国などの問題がややこしい現在は、あえて日韓関係を悪化させる必要はありませんが、韓国に邪魔されない限りは、もう放置して良いと思います。

このように考えていけば、2015年12月の「日韓慰安婦合意」は、日本が韓国に食わせた「毒まんじゅう」だったのかもしれません。韓国側からこれを破棄してくれるならば日韓断交できてラッキーだ、という見方もできますが、その前に、日本が改憲に成功するまでは、慰安婦合意の破棄は先延ばししたいところです。

いや、韓国だけではありません。中国、北朝鮮を含めた「特定アジア3ヵ国」との関係をどうするかについて議論するならば、その前にまずは日本が自力で憲法第9条第2項を無力化し、きちんと自衛権の行使(つまり自衛戦争)ができるように体制を整え、日本国内に巣食うゴミを掃除することが必要でしょう。

是非、この問題については日本の国民的な議論にしていきましょう。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告