米朝首脳会談中止の敗者と勝者
ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮との首脳会談をキャンセルしたことについては、単に米朝関係だけに留まるものではありません。影響はもっと遥かに広範囲に及びます。
目次
ビジネスマンと外交
以前から何度も申しあげていますが、私は外交官ではありませんし、ジャーナリストでもありません。それなのに、当ウェブサイトでは外交について言及することが、最近、非常に増えています。これについて、「なぜ外交の専門家でもない人間が偉そうに外交を論じているのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、「外交」とは、別に外交専門家だけが議論すべきものではありません。たとえ国家といえども人間の集合体であるわけですから、外交も人間関係の延長で議論することができるからです。いや、もう少し正確に言えば、「外交の専門家」(外交官、政治学者など)こそ、外交が見えていないことがあります。
あえて名指しするのは控えますが、外務省出身者のなかでも、中国寄りの発言ばかり繰り返す某元外交官や、小泉政権下で北朝鮮問題に深くかかわった某元外交官のように、あきらかに外交がわかっていない、あるいは日本の国益を無視している発言が目立つ人たちもいます。
一方、私のような民間人・ビジネスマンの立場だと、外交の現場で相手先との交渉に関わっていない分、外交の臨場感、緊迫感を肌感覚で知っている訳ではありません。しかし、客観的な報道発表などを手掛かりに、「ビジネスマンとしての常識」で読み解いた外交論の方が、役に立つこともあるはずです。
米朝首脳会談中止の「衝撃」
そもそも「衝撃」なのか?
ところで、あまりに専門外のことは私にはよくわかりませんし、見当はずれな主張や読み違いをすることだってあります。しかし、こと北朝鮮核開発問題について申し上げるならば、私が当ウェブサイトを通じて主張し続けた内容が、ほぼ全面的に正しかったのではないかと思います。
というのも、シンガポールでの米朝首脳会談の日程がドナルド・トランプ米大統領のツイッターで発表されたのは5月10日(日本時間翌日)のことでしたが、その5日後に、当ウェブサイトでは『【夕刊】「蚊帳の外」にいるのはむしろ韓国』のなかで、すでに「会談が行われない可能性」に言及していたからです。
その翌日の『緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版』でも、『臆病者の金正恩、すんなり米朝会談は開かれるのか?』という一節を割いて、米朝首脳会談が開かれない可能性に言及しています。あの時点であっても、客観的な情報を丹念に分析すれば、首脳会談中止は十分に予測できたはずです。
それなのに、新聞各社の社説などを見ると、「いまでも米朝首脳会談の実現を目指すべきだ」といったトンチンカンなものや、まるで今回の会談中止が「想定外だ」とでも言いたいようなものが散見されます(あえて名指しは避けますが…)。
新聞社の社説執筆者はかなりの高給取りだといううわさを聞きますが、そのわりには優れた社説に出会わない気がします。いずれにせよ、新聞社の人たちは、仕事が楽そうですから羨ましいですね(笑)
トランプ大統領の「決断」
さて、昨日も『【速報】米朝首脳会談中止報道とその意味合い』で速報しましたが、ドナルド・トランプ米大統領は現地時間の24日、北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)に対する書簡を公表しました。その内容は、次のとおりです。
THE WHITE HOUSE WASHINGTON/May 24, 2018
His Excellency Kim Jong Un/Chairman of the State Affairs Commission of the Democratic People’s Republic of Korea/ Pyongyang
Dear Mr. Chairman:
We greatly appreciate your time patience and effort with respect to our recent negotiations and discussions relative to a summit long sought by both parties, which was scheduled to take place on June 12 in Singapore. We were informed that the meeting was requested by North Korea, but that to us is totally irrelevant. I was very much looking forward to being there with you. Sadly based on the tremendous anger and open hostility displayed in your most recent statement, I feel it is inappropriate, at this time, to have this long-planned meeting. Therefore, please let this letter serve to represent that the Singapore summit, for the good of both parties, but to the detriment of the world, will not take place. You talk about your nuclear capabilities, but ours are so massive and powerful that I pray to God they will never have to be used.
I felt a wonderful dialogue was building up between you and me, and ultimately, it is only that dialogue that matters. Some day, I look very much forward to meeting you. In the meantime, I want to thank you for the release of the hostages who are home with their families. That was a beautiful gesture and was very much appreciated.
If you change your mind having to do with this most important summit, please do not hesitate to call me or write. The world, and North Korea is particular, has lost a great opportunity for lasting peace and great prosperity and wealth. This missed opportunity is a truly sad moment in history.
Sincerely yours, (署名)
非常に丁寧な(というか慇懃無礼な)文書です。英単語自体は非常に簡単なものが使われており、当ウェブサイトとしてはこれに逐語訳を付すことはしませんが、簡単に要約すれば、
- ①本来、シンガポールでの会談が行われることは米朝双方、そして世界にとって良いことだが、貴殿からのあからさまな敵意を見ると、今は会談をすべき状況ではない
- ②わが国の核戦力は貴国のそれと比べて圧倒的に大きいが、それを使うことがないよう神に祈るばかりだ
- ③いつの日か貴殿とあいまみえる日が来ることを望む
- ④拉致被害者を解放してくれたことについては感謝したい
- ⑤もし気が変わったならば、いつでも電話か手紙を寄越してほしい
- ⑥北朝鮮が平和と繁栄と富を手にするチャンスを失ったことは残念だし、歴史上も本当に悲しい時として記録されるだろう
といった内容です。
どうしてここまで慇懃無礼なのか?
この文章を読んで真っ先に抱く印象は、「見た目はきわめて丁寧」、というものでしょう。しかし、内容を丁寧に読んでみると、明らかに「米朝首脳会談延期の原因が北朝鮮側にある」と批判するもの(文章①)であるとともに、北朝鮮(というか金正恩)を強力に脅しつけているもの(文章②)です。
トランプ氏は本来、もっとストレートな物言いをする人物だったはずです。しかし、どうしてここまで慇懃無礼な文章を執筆したのでしょうか?おそらくその理由は、全世界に向けて、「米国は最後の最後まで、北朝鮮に礼を尽くした」という格好を見せつけるためでしょう(安倍総理あたりの入れ知恵かもしれません)。
それはともかく、トランプ氏は文章③、文章⑤で米朝首脳会談がいつか行われることに期待を示しているのですが、この文章⑤に含まれる「気が変わったら」とは、あきらかに、核・大量破壊兵器のCVID ((CVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(“Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement”)のこと)) を呑む気になったら、という意味でしょう。
要するに、金正恩が考えを変えて、CVIDに応じるつもりがあるのなら、その具体的なスケジュールを詰めるために、改めて首脳会談を設定しようじゃないか、という提案です。
特定アジア3ヵ国が敗者?
最大の敗者は北朝鮮
では、この米朝首脳会談中止で、もっとも割を食ったのは、いったい誰でしょうか?
それは言うまでもありません。北朝鮮です。
当ウェブサイトでも何度か繰り返し紹介して来ましたが、3月に米朝首脳会談が決まり、4月に韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領との南北首脳会談を行ったあたりまでは、米韓などに対してあからさまな批判を避けてきました(※ただし、日本に対する罵倒はその間も行われていました)。
しかし、5月に入り、金正恩が大連を訪問し、中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席と面会した直後あたりから、急に米韓に対する態度を硬化させました。たとえば、
- 北朝鮮が5月16日に予定されていた南北高官級会談について、米韓合同軍事訓練の実施を名目に、当日の早朝になってドタキャンを一方的に通告した(5月16日付『【夕刊】「蚊帳の外」にいるのはむしろ韓国』参照)
- 6月12日に予定されているシンガポールでの米朝首脳会談の開催を控え、北朝鮮が「リビア方式での核放棄」といった発言に噛み付き、米朝首脳会談に応じない可能性を示唆し始めた(5月17日付『【速報】シンガポール会談巡る米朝のさやあて』参照)
- 北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)が米国に対し、「現時点において在韓米軍の駐留は認めるが、米国側が何らかの誠意を見せることを期待する」と発言した(5月18日付『【夕刊】日米中露は朝鮮半島の「猿芝居」に騙されるな』参照)
- 北朝鮮を刺激することを恐れて、韓国が米国に要請する形で、米韓空軍演習を中止していたと米WSJが報道した(5月20日付『【夕刊】消滅に向けて順調に歩みを進める米韓同盟』)
- 北朝鮮の外交担当の高官がマイク・ペンス米副大統領を「愚か者」と罵った(5月25日付『豊渓里廃棄報道の「茶番」と「報じ方の問題」』参照)
といったもので、いわば、北朝鮮が韓国だけでなく、米国をも挑発してきたのです。
なぜ北朝鮮が交渉相手を挑発するのかといえば、それこそが彼らとしての基本戦略だからです。相手を徹底的に挑発し、非難することで、やがて来る首脳会談の場で相手からの譲歩を引き出そうとするという狙いがあると考えられます。
朝鮮民族に特有の行動といえば良いでしょうか?自分のことは棚に上げ、相手のことを針小棒大にあげつらい、徹底的に批判する。まるで日本の某政党のようですね(笑)
それはさておき、北朝鮮は、この戦略が日本など、常識的な相手国であれば、今まではうまく行っていたので、米国・トランプ政権が相手であっても通用すると思ったのかもしれません。
しかし、そこはナナメウエの行動を取るトランプ政権のことです。北朝鮮が事前の譲歩を狙い、いつもの調子で米国を徹底的に糾弾したところ、あの慇懃無礼な文書で会談の中止を通告されてしまったのです。これこそまさに、北朝鮮外交の敗北と言えるでしょう。
中国がなぜかトランプ氏を批判
一方、いままで公然と表に出て来ていなかったはずのプレイヤーが、なぜかトランプ氏を批判しています。それが中国です。中国は共産党の機関紙『環球時報』英語版(グローバルタイムズ)で、米朝首脳会談の中止は朝鮮半島の非核化進展に深刻な障害となると批判しています。
Trump-Kim cancellation deals heavy blow for Korean Peninsula progress(2018/5/25 5:56:02付 環球時報英語版より)
考えてみれば、中国の北朝鮮の核問題をめぐる姿勢は、「CVID」ではなく「段階的放棄」で一貫していました。そして、環球時報の社説の要点は、「北朝鮮がCVIDに応じないからといって米朝首脳会談を中止するのは行き過ぎだ」、といったものです。
また、北朝鮮が豊渓里(ほうけいり)の核実験場を「廃棄した」と言い張っている件についても、環球時報は「豊渓里実験場の廃棄は朝鮮半島非核化の重要な第一歩であるはずなのに、その翌日に、トランプ氏が米朝首脳会談を批判することは、むしろ朝鮮半島の非核化の妨げだ」と述べています。
もっとも、豊渓里核実験場の廃棄については、私自身は単なるパフォーマンスであると見ており(『豊渓里廃棄報道の「茶番」と「報じ方の問題」』参照)、こうした見方は、珍しく日米のメディアなどでも一致しています。
しかし、ここで重要な点は、なぜか今まで「蚊帳の外」にいたと思われるはずの中国が、あたかも北朝鮮の利害を代弁するかのように、米国を強く批判している、という点です。ということは、今回のシンガポール会談が開かれないことで、中国にも何らかの不利益が生じるからだ、と考えるのが自然です。
その「何らかの不利益」とは、もしかすると、「米中貿易戦争」に関わるものかもしれません。この「米中貿易戦争」とは、現在、中国が米国から仕掛けられているもののことですが、中国としては防戦を余儀なくされています。
確たる証拠はありませんが、米朝首脳会談が実現したあかつきには、米国は中国に対し、貿易戦争で何らかの譲歩をするという裏合意をしていた、という可能性という可能性は、十分にあるでしょう。
韓国は別の意味で大きな打撃
さて、今回の米朝首脳会談中止で直接的に大きな打撃を受けるのは北朝鮮です。なぜなら、今回の会談中止により、これまでの厳しい経済制裁が続くだけでなく、米軍からの軍事攻撃を受ける可能性が、再び発生して来たからです。
しかし、それに「巻き添え」を食った国があります。それは、韓国です。
韓国は昨年5月に文在寅(ぶん・ざいいん)政権が発足して以来、外交的には中国、米国、日本との関係改善にまったく成功していません。特に、昨年12月には、文在寅氏は「国賓」として中国を訪問したものの、中国側からは完全な冷遇に遭っているほどです。
今年1月以降、南北朝鮮が急接近した理由は、苛烈な経済制裁に苦しむ北朝鮮が韓国を使って事態を打開しようとしたからである、というだけのものではありません。韓国こそ外交的に孤立し、その打開策を求めるために、北朝鮮に擦り寄って行った、という側面もあるのです。
韓国は、まず1月には米国に対して平昌(へいしょう)冬季五輪の開催を理由に、米韓合同軍事演習の延期を要請。次いで、南北高官級会談、2月の平昌五輪に北朝鮮代表団の参加、と、とんとん拍子に南北融和ムードが醸成されていきます。
こうした融和ムードを受け、3月には韓国政府高官らが金正恩と面会し、そのまま米国に対して「北朝鮮から米朝首脳会談の提案を受けた」と「口頭で」伝達しに行きます。これによって米朝首脳会談が決定したため、韓国内では「文在寅氏こそが外交のプロだ」といった勘違いが蔓延していったのです。
こうした勘違いがピークに達したのは4月27日のことですが、韓国国内の不思議な高揚感と反比例するように、米国や日本の韓国に対する信頼は消滅。おそらく、今や日米両国政府は、韓国のことを1ミリも信頼していないのではないかと思います。
こうした「韓国に対する不信感」の証拠が、文在寅氏による訪米です。文在寅氏は米朝首脳会談を必ず実現するという目的を持って、今週、米国を訪問しました(『【夕刊】米WSJ、珍しく韓国大統領訪米を取り上げたが…』参照)。
しかし、そうやって訪問した文在寅氏の前で、トランプ氏は「米朝首脳会談の実施確率は半々だ」と言い放ち(『【速報】トランプ大統領「米朝首脳会談延期もあり得る」』参照)、さらには共同記者会見で文在寅氏を放置して延々1人で喋る、ということをやってのけました(『【夕刊】米韓首脳会談巡る韓国メディアの逆ギレ』参照)。
つまり、韓国は昨年以来の外交上の失態を取り返すどころか、むしろますます、日米などからの信頼を失うという結果に終わったのです。
最大の勝者とは?
CVIDを最初から主張していたのは誰?
一般に、「敗者」がいたとすれば、たいていの場合、「勝者」がいます。今回の勝者とは、「米朝首脳会談が行われなくなったことで何らかの利益を得る国」のことです。
その国とは、何と、「日本」です。
考えてみればわかりますが、日本にとって現在の最大の脅威とは、核武装した統一朝鮮の実現です。朝鮮半島が核兵器をもとに日本を脅すだけでなく、日本を逆恨みしている朝鮮民族のことですから、場合によっては核兵器を日本に対して実戦使用しようとする可能性すらあります。
そして、1月以降の韓国の動きは、日本にとっては非常に不快なものでした。なぜ米国が、韓国をここまで好きに泳がせたのか、私には理解しがたい部分もありますが、いずれにせよ韓国は、日本をわざと除外して、北朝鮮と米国をダイレクトにつなげようとしたからです。
それだけではありません。もし米朝首脳会談が板門店で行われた場合には、米朝首脳会談が南北朝鮮にとって都合が良い結果に誘導されていた可能性すらあります。実は、米朝首脳会談の場所がシンガポールに誘導されたのも、日本の外交努力ではないか、という情報もあります。
このストーリー自体、私がきちんとした情報源から確認したものではありませんが、非常に合理的なものです。というのも、板門店で会談が行われていた場合には、韓国の影響力が混入して来てしまうからです。そして、韓国はCVIDに反対している国でもあります。
シンガポール会談で米国が「変な妥協」をするリスク
それだけではありません。シンガポール会談が流れたことで、米国が北朝鮮に「変な妥協」をするリスクが消滅したのです。
仮にシンガポールで会談が開かれていたとしても、金正恩がどうしてもCVIDを呑まなければ、会議は①物別れに終わるか、②米国が変な妥協をして、北朝鮮の核保有を容認してしまうか、のいずれかしかありません。
古今東西、外交官は首脳会談で「何が何でも成果を求める」という性質があります。米国も北朝鮮との首脳会談で成果を求めるあまり、「米国に届くICBMの保有は認めないが、核兵器と、(日本などに届く)短・中距離ミサイルの保有は認めてやる」という妥協をすることが、最大のリスクでした。
もしそうなった場合には、日本はものすごい脅威に晒されます。日本に対し、なぜか異様に敵対的な朝鮮民族が、核武装をして日本を脅かす、ということになりかねないからです。そうなれば、日本としては北朝鮮(または統一朝鮮)に無条件降伏するか、対抗して核武装するか、そのいずれかしかありません。
日本が核武装すれば、インドネシアが核武装しますし、ブラジルが核武装しますし、アルゼンチンが核武装します。そして、核武装国はサウジアラビア、トルコ、ドイツ、イタリア、メキシコなど、それこそ全世界にドミノ倒しで広がりかねません。
さらに、北朝鮮が核兵器を持ったままの状態だと、北朝鮮はこれを中東諸国に転売するかもしれませんし、イスラム系テロリストが核兵器を手にするかもしれません。こうしたリスクを踏まえるならば、米国には迂闊に米朝首脳会談に応じて欲しくはありません。
つまり、シンガポール会談が流れたことによる最大の勝者とは、日本にほかならないのです。
むしろこれからが問題だ
いまや、軍事攻撃は非常に考え辛い
ただし、今回のシンガポール会談が流れたからといって、ただちに米軍が北朝鮮攻撃に踏み切ると考えるのは、やや短絡的です。もちろん、軍事攻撃の可能性は間違いなく高まりましたが、ただ、それと同時に「軍事攻撃で目的は達成できるのか」、あるいは「軍事攻撃できるのか」、という問題は残ります。
北朝鮮は中国と陸上で1000km以上にわたって国境を接しています。米国が中国の了解なく北朝鮮に攻め込むことは、現実問題として難しいでしょうし、米軍占領地域が中国と国境を接するような事態を、中国は全力で避けようとするはずです。
また、北朝鮮はロシアとも国境を接しています。北朝鮮が米軍に攻め込まれた瞬間、金正恩自身がロシアに逃れてしまえば、米軍としては金正恩を追跡することができません。
このため、軍事攻撃という手段を取り得るにしても、金正恩体制を崩壊させるような全面攻撃は難しく、できたとしても「鼻血作戦」か「サージカル・アタック」であり、これらの作戦でもCVIDの実現は困難であると考えられます。
それだけではありません。中国は昨年8月に、「北朝鮮の先制攻撃に米軍が反撃するならば、中国としては中立を守る」とする声明を出していますが、この声明が無効になっている可能性があります。米国がどうしても北朝鮮を攻撃したければ、あらためて中国とのコンセンサスを取り直す必要があります。
経済制裁の拡大が現実的
ただし、現在までに行われている北朝鮮に対する経済制裁は、それなりに威力を発揮しているようです。このように考えるならば、米軍による軍事攻撃が行われるというよりも、日米が経済制裁を強化して、北朝鮮の内部からの瓦解を狙う、と考える方が現実的でしょう。
その際、経済制裁対象は、北朝鮮だけとは限りません。北朝鮮に対して陰に陽に支援を行う国への「二次的制裁(セカンダリー・サンクション)」も行われると考えるべきです。具体的には、日本政府は朝鮮総連やパチンコ産業を、さらに締め上げるのではないでしょうか?
そうなれば、当然、朝日新聞社などによる「もりかけ・セクハラ・日報問題」などの虚報を用いた倒閣運動は、さらに激烈になってくるはずです。私は安倍政権を無条件に支持するつもりはありませんが、本件については安倍政権政権に対するインターネットを通じた国民による側面支援が必要だと考えています。
さらに、セカンダリー・サンクションの対象は、北朝鮮を助けようとする勢力、北朝鮮制裁に真面目に従わない国などにも発動されると考えて良いでしょう。具体的には、中国、ロシア、韓国の3ヵ国が、北朝鮮問題での制裁対象候補として浮上してくるはずです。
このように考えていくならば、むしろこれからのほうが大きな問題になることは、間違いないといえるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。
ツイート @新宿会計士をフォロー
読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
更新ありがとうございます。本当に今後の展開がどうなるか、心配とともに興味深いですね。
私はトランプ大統領の書簡の以下の部分が気になります。
⑤もし気が変わったならば、いつでも電話か手紙を寄越してほしい
これは「韓国抜きで直接やりとりを」ということではないかと感じています。結局韓国のバイアスがかかって正確なやりとりができなかったことが今回の破談の原因だったと思います。今後北朝鮮が韓国を無視し続けるようなことがあれば、北朝鮮側も米国同様に韓国に不信感を持ったっということだと思います。北朝鮮の対応を見ると意外に早い段階で再度協議が始まる可能性があるのではないかと思います。今度は韓国抜きで。
アメリカにとって朝鮮半島問題は対中国の一環でしかないと思います。中国も同様。いま現在米中間の主な問題は貿易と南シナ海、その駆け引きの中でしか半島問題は進まないと思います。米国は早く米朝問題を解決し、メインの問題に取り組みたい、中国は半島問題を長引かせたい、というところでしょか。
私は韓国というバイアスがなく、トランプ大統領と金委員長が腹を割った話し合いができれば、意外に早い展開で話が進んで行くのではないかと思っています。双方ともに中国の影響はあまり好まないでしょうから、その関与が及ばぬような、突然の会談開催、なんてこともありうるのでは? これから1ヶ月くらいが正念場だと思います。
金「会わないかもしれないニダ(そっくり返り)」
虎「じゃ、会うのは無しな」
金「あ、会ってもいいし(震え声)」
この流れ笑ったわ
確かに北は中国に会うたびに態度が変わったね
中国が制裁のバルブを緩めた可能性がある
でもやっぱ朝鮮人は事大なんだな北も南も
結局泣きついた先は中国だった
日頃異常に居丈高なのはむしろ自信のない証拠
強者勝者なら余裕あるし逆に謙虚なもの
高飛車駄々こね無理難題
散々ハードル高めて相手をうんざりさせ
最後にちょっと譲歩して果実を得る
北の外交っていつもこのパターン
上手いっちゃ上手い
というか疲れた相手がめんどくさくなるのな
今回はトランプが一枚上だ
口述筆記させた風な書簡が笑わせる
後世にこれ、残る文書だと思う
とても率直な人柄(大笑)がにじみ出てる
トランプ「正直者のこうべに髪やドル」
https://www.youtube.com/watch?v=2oPxNIt9UgA
< 本日の更新ありがとうございます。
< 今回は「黄昏せんべい」様のコメントに賛成したいとおもいます(最後のユーチューブはちょっとイミフなんですが。笑)
< 韓国はトランプ大統領の発言と言うか金正恩への書簡で「シンガポールでの開催が難しくなった」「剥き出しの敵意である」事などを上げてキャンセルしました。韓国人の反応は最初1日目は『なぜ文大統領様がワシントンまで行って話をしたのに。米国の態度、あの手のひら返しはなんだ!』『文様が可哀想です』『米国と北で勝手に決めるな』という米国と北に対して非難し、文を庇うコメントが多かった。
< でも、時間が経つほどに『血税使ってアメリカで文は何をしてたんだ』『トランプの横に座って、質問の回答を聞いて貰えずか』『民主党の左翼政権では北に利用されただけだ』等々、散々なコキ降ろしよう。
< でも、私らから見てロウソクで愚民が民意で選んだのは、アンタラの文やろって(笑)。
会計士様は『なぜ外交の専門家でもない人間が偉そうに外交を論じているのか』と仰ってますが、いえいえもっと下(しも)の私なども口を挟んでいます。それだけ、政治にしろ外交にしろ昭和~平成前期の時代より、ネットの普及等でモノが言いやすくなりましたし、情報は与えられるものから、適宜選択排除するものになりました。なんと言っても『国際的にも国内的にも瞬時に分かりやすい世の中』になったと思います。
< さて、この米朝主脳会談での一番の敗者は北朝鮮です。次いで韓国、そして面倒に巻き込まれそうな中国、勝者は日本、次いで米国。日本はよく特亜3か国の悪行に精通しているだけに、貴重な情報をトランプ大統領へ安倍首相から電話、直接会談でパイプ供給をしました。何度も言うけど、朝鮮民族のしつこさ、欺瞞行為は米国より日本の方が手を焼いてますから、当然です。
< では、今後どういう風になるかという事ですが、北からの直接的な米国への働きかけは、プライドが邪魔してやりにくい、勿論時間が6か月とか経てば別です。資産欠乏、食う物も無いし。中国は貿易等ビジネスで米国に対し、大変なマイナス局面。となると動くのはアホの『北の走狗』韓国しかないでしょう。また妙な運転席理論が出るかもしれませんし、『米朝の考え方の差は極めて小さい』『韓国が橋渡しになるべき』としゃしゃり出てくる可能性大ありです。もっとも、米国は適当にあしらうでしょうが。『赤組はあっちいっとれ!』でしょう(笑)。日本は主催はしたくない、黒子に徹したいです(拉致問題は主人である)。
< 失礼します。
朝鮮民族特有なのでしょうか、虚仮威しの恫喝外交で自分の外交的な立場を有利に運ぼうという姑息な手段がトランプ氏に見破られてコテンパンにやっつけられました。
ざまー韓韓、いい気味です。日本も南北朝鮮との外交交渉において、こういうこけおどしに引っかからず、国益を最大限に追求してほしいものです。
執筆お疲れ様です。
>今回のシンガポール会談が開かれないことで、中国にも何らかの不利益が生じるからだ、と考えるのが自然です。
ここ、かなり重要な論点と思います。会計士様がいつも仰るように、北の完全な非核化のためには(CVIDにせよ金王朝の排除にせよ)中露を巻き込むことは必須です。何事もなく会談が開催されていれば大した成果を挙げられなかっただろうシンガポール会談も、今回の中止発言によって中国との交渉カードに化ける可能性も見えて来たのではないでしょうか。
その意味で、敢えて「If you change your mind ~」と完全に突き放すのではなく、再交渉の余地を残したことは、トランプ大統領の強かさを見たような気がしてなりません。
>「外交」とは、別に外交専門家だけが議論すべきものではありません。(中略)
>「外交の専門家」(外交官、政治学者など)こそ、外交が見えていないことがあります。
日本は権威主義が過ぎますね。憲法学者が言ったから正しい!で思考停止している護憲派の多いこと多いこと。あの人たち(そうでない人もいるのでしょうが)って「日本国憲法」の専門家に留まっている人多いんですけどね。
民主主義ってのはただ多数決で代表者を選ぶ政体じゃないんですよね。国民が政治に参加し、議論を重ねてこそ民主主義が達成されます。当然、外交だって、国民一人ひとりが議論するのが、民主主義の理想形。