【速報】米朝首脳会談中止報道とその意味合い

米国がシンガポールでの米朝首脳会談の中止を発表しました。私は、これ自体は合理的な判断だと考えていますが、だからといってすぐさま北朝鮮攻撃が行われる、といった短絡的なものでもないことは間違いありません。

米大統領が会談中止を通告

すでに内外のさまざまなメディアによって報じられていますが、ドナルド・トランプ米大統領は6月12日に予定されていたシンガポールでの米朝首脳会談を取りやめると発表しました。

日本語版でも報道は出ていますが、ここでは米メディアであるウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の日本時間今朝未明の報道を眺めてみましょう。

President Donald Trump Cancels North Korea Summit(米国夏時間2018/05/24(木) 15:28付=日本時間2018/05/25(金) 04:28付 WSJより)

WSJによると、トランプ大統領は北朝鮮からの “open hostility” が中止の直接の理由だと述べました(意訳すれば「剥き出しの敵意」、といったところでしょうか)。そのうえで、今回の中止の決断が同盟国には知らされずに行われた、としています。

一方、トランプ氏は「必要であれば」米国は軍事行動の「準備ができている」と指摘。日本や韓国の当局者に対しても、「我々のうえに不幸が降りかかった場合には」軍事行動があり得ると述べたとしています。

WSJはまた、ホワイトハウス関係者の話として、「国家安全保障会議」(NSC)が米国時間の午後に会議を開き、軍事行動の可能性やあらたな制裁などを議論したとする情報も掲載しています。いわば、ホワイトハウス側が「対話」から「圧力」に向け、急激に舵を切った格好です。

一方、次のワシントン・ポスト(WP)の記事によれば、このトランプ氏による発表を受けて北朝鮮側は、「我々としては米国といつでも対話する準備がある」と発表したそうです。

North Korea said it is ready to talk to U.S. ‘at any time,’ responding to Trump’s cancellation of summit with Kim Jong Un(米国夏時間2018/05/24(木) 19:03付=日本時間2018/05/25(金) 08:03付 WPより)

これをどう見るべきでしょうか?

次の一手は難しい

首脳会談中止は合理的な判断

端的に言えば、これは合理的な判断だと思います。

当ウェブサイトでは、6月12日に米朝首脳会談が行われたとしても、米国が核・大量破壊兵器のCVID(完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄、 “Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement” )を呑む可能性は極めて低いと見ていました。

そうなると、①物別れに終わるか、②米国が北朝鮮に変な妥協をするか、そのいずれかです。そして、②米国が北朝鮮に変な妥協をした場合(たとえば米国に届くICBMを開発しないことと引き換えに核保有を認めるなどした場合)、日米同盟が崩れ、日本が核武装に動く可能性もあります。

よって、北朝鮮がCVIDに絶対に応じないという前提で、米国が合理的に判断するならば、6月12日の会談が行われても、①物別れに終わる、という結果しか予想できないからです。

しかし、米国としては、わざわざシンガポールくんだりまで出かけて米朝首脳会談を実施し、その結果、物別れに終わったとしても、それはそれで構いません。なぜなら、「北朝鮮に対しては対話によって粘り強く核放棄を呼びかけた」という実績が残るからです。

そのように考えるならば、今回のトランプ氏の決断は、非常に合理的です。なぜなら、「6月12日の対話を前に、北朝鮮が絶対にCVIDに応じない姿勢を示すとともに、米国に対して剥き出しの敵意を示したため、対話しても意味がないと判断した」、と国際社会に対して説明することができるからです。

つまり、「『米国がぎりぎりまで対話による北朝鮮の核放棄の努力を続けた』というポーズを国際社会に示す」という目的は、シンガポール会談を行わなくても達成できる、とトランプ氏が判断したのでしょう。

軍事行動は難しい

ただし、WSJの記事に「軍事行動の可能性」という下りが出て来ましたが、この点については、私は非常に懐疑的です。なぜなら、北朝鮮に対して軍事行動を取りたくても、国境を接する中国やロシアが首を縦に振らなければ、非常に限定的な攻撃戦略しか採用できないからです。

たとえば、中国の了解なく、地上から38度線を越えて北侵したとすれば、朝鮮戦争と同じ展開――中国からの事態の介入が生じてしまいます。このため、米国が軍事行動に出る前に、少なくとも米国が軍事行動に出ることについて、米中両国が合意していなければなりません。

また、仮に米国の軍事行動に中国が了解していたとしても、ロシアが了解していなければ、米軍が北朝鮮に攻め込んだ瞬間、金正恩自身がロシア領内に逃れ、ロシアから北朝鮮全体に徹底抗戦を呼びかける、という展開も考えられます。

しかし、米中両国(あるいは米中露3ヵ国)が北朝鮮を叩き潰すことで合意した場合、わざわざ米国が軍事行動に出る必要はありません。中国(やロシア)が金正恩(きん・しょうおん)体制に対し、経済支援などを一切やめれば済む話です。

周辺大国が協力し、金正恩に亡命先を準備してやれば、金正恩は唯々諾々とその亡命先に移転し、結果的に北朝鮮は「無血開城」することになります。したがって、「米軍による北朝鮮への全面攻撃」は、非常に考え辛いのです。

一方で、米国が中露両国の了解なく、北朝鮮を攻撃する方法は、ないわけではありません。「鼻血作戦」(北朝鮮を脅す意味で、実質的に打撃にならないくらいのピンポイント爆撃を行う作戦)や、「サージカル・アタック」(核施設、ミサイル拠点などに限定して攻撃する戦略)などが、それです。

しかし、「鼻血作戦」にせよ「サージカル・アタック」にせよ、北朝鮮の核・大量破壊兵器のCVIDを達成する手法としては、まったく不十分です。

さらに、一部の軍事専門家によると、これから夏場にかけて地上の気温が上昇してくるため、ミサイル拠点をレーダーで特定して攻撃する作戦の遂行が困難になります。というのも、米軍のレーダーは熱源をベースにミサイル拠点を特定する、という特徴があるからです。

圧力の継続を!

そうなると結局のところ、日本も従来主張してきたとおり、北朝鮮に対する「最大限の圧力」という手法が継続されると考えるのが自然です。ただ、この方法は、少なくとも軍事オプションと比べて、より確実に北朝鮮に打撃を与える方法でもあります。

考えてみれば、何をするにもカネが必要です。当然、カネがなければ軍事行動もとれませんし、平壌(へいじょう)に住む貴族たちを食わせていくこともできません。そうなれば、北朝鮮の体制が内部から自壊することだって期待できます。

シンガポール会談の中止は、あくまでも長い目で見た「自由主義社会と独裁体制との戦い」の一幕に過ぎず、その意味で、北朝鮮の非核化や日本人拉致事件の解決は、むしろこれからが本番です。

北朝鮮の体制が打ち破られ、拉致されたすべての日本人が帰国し、圧政に苦しむ北朝鮮人民が解放されることを願いたいところです。

読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    お疲れ様です。
    ブログ主様、投稿者様方々の予想通りの展開となりました。平昌冬季国際運動会の勢いで半島情勢を変更しようとすること自体が無理がありますね。ここは一度冷静になってリセットすべきです。きっちり制裁を実行して北朝鮮を締め上げ、協定違反の南朝鮮をはじめとした違反国・企業に対して制裁をおこないさらに北朝鮮を追い込むべきですね。同盟側としては獅子身中の虫を徹底的に駆除し晒し者にして成れの果てがどうなるか見せてあげてもいいかもしれません、そのほうが半島非核化の早道かもしれません。
    それにしても文在寅生徒会長、youは何しにアメリカへ?

  2. a4 より:

    お互い前宣伝が過ぎたと言うか、既に会談し終わったと言うべきか?其処に中国が仕切りに乱入でおじゃんですかね?中国は平和なんて考えて居ないと言う事ですよ。
    アメリカが北に顔向けてる間に、人工島軍事拠点化進めてますね中国は、此方の方が大きな問題ですよ。

  3. めがねのおやじ より:

    < 3回目の配信ありがとうございます。
    < トランプ大統領は、北にシンガポール会談中止を通知しました。WSJによると理由は米国への『剥き出しの敵意』だそうで。こういう北朝鮮のダダコネはいつもの事、もう我々日本人は慣れてますわ。でも世界最強の米国と世界中(中、露、小韓を除く)を敵に回しました。
    < 経済制裁はこれまで以上、つまり日本海、西海、東シナ海を日、米、豪、加で監視し、瀬渡しは即、臨検拘束、発砲してきたら沈めるでいいでしょう。自由主義国側の人的被害を極力出す訳にはいかないからです。
    < また米国の今後の交渉のセンですが、米朝の協議は水面下で行われるが、結論は出ないとみます。そうなれば対中、露の干渉から米国の攻撃のカードが少ないとの見方が多数ですが、私はこの際「鼻血作戦」でも「サージカルアタック」でも交渉が長引かないうちに決行した方がいいと見ています。いずれにせよ、米国には中途半端な妥協を北とはして欲しくない。
    < 「 鼻血作戦」などでは『金正恩体制を崩せない』『核開発、ICBM発車台、ミサイル本体を潰せない』という見方が多いです。でも、やれば相当堪える。米軍の行動の正当性も地球規模で理解される。それならやるべきです。
    < 北はまだ『米国と対話をする用意がある』なんてふざけたことをヌカす余裕、ハッタリがあるようですが、実質困っているでしょう。走狗の韓国が使い物にならないので、中国あるいは日本に寄ってくる可能性もある。拉致被害者全員解放とCVID実行なら考えてやるが、それ以外の譲歩は無いと思え。
    < 失礼します。

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