【昼刊】外務省、遅まきながらも韓国を「単なる隣国」に格下げ
昨日、複数のメディアが「外交青書」について報じています。とくに、韓国が「価値も利益も共有しない国」に格下げされたことは注目に値しますが、実は、これ自体、話題としての新味はありません。むしろ重要なのは「これからの対応」でしょう。
価値も利益も共有しない国
外務省も公式に韓国を格下げ
昨日、複数のメディアが「外務省の発表する『外交青書』上、韓国が『格下げ』された」と報じました(たとえば、次の産経ユースの報道など)。
対北「最大限の圧力」明記 外交青書 日韓関係は“格下げ”(2018.5.15 10:06付 産経ニュースより)
現時点で外務省のウェブサイト上、『2018年度版外交青書』はまだ公表されていませんが、これ自体、別に目新しい話題ではありません。『韓国が「最も重要な隣国」ではなくなったのは当然』でも論じましたが、安倍政権は日韓関係を「グレードダウン」してきたからです。
安倍総理は2012年12月に「第2次安倍政権」を発足させましたが、それ以来の国会の施政方針演説や所信表明演説を読んでいくと、その変化がよくわかります(図表)。
図表 安倍総理の対韓認識
発言の場 | 発言の要約 | 正確な発言内容 |
---|---|---|
2013/2/28付 第183回国会における施政方針演説 | 自由や民主主義といった基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国 | 韓国は、自由や民主主義といった基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国です。朴槿惠新大統領の就任を心より歓迎いたします。日韓の間には、困難な問題もありますが、二十一世紀にふさわしい未来志向で重要なパートナーシップの構築を目指して協力していきます。 |
2014/1/24付 第186回国会における施政方針演説 | 基本的な価値や利益を共有する、最も重要な隣国 | 韓国は、基本的な価値や利益を共有する、最も重要な隣国です。日韓の良好な関係は、両国のみならず、東アジアの平和と繁栄にとって不可欠であり、大局的な観点から協力関係の構築に努めてまいります。 |
2014/9/29付 第187回国会における所信表明演説 | 基本的な価値や利益を共有し、最も重要な隣国 | 基本的な価値や利益を共有し、最も重要な隣国である、韓国との関係改善に向け、一歩一歩努力を重ねてまいります。 |
2015/2/12付 第189回国会における施政方針演説 | 最も重要な隣国 | 韓国は、最も重要な隣国です。日韓国交正常化五十周年を迎え、関係改善に向けて話合いを積み重ねてまいります。対話のドアは、常にオープンであります。 |
2016/1/22付 第190回国会における施政方針演説 | 戦略的利益を共有する最も重要な隣国 | 韓国とは、昨年末、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認し、長年の懸案に終止符を打ちました。戦略的利益を共有する最も重要な隣国として、新しい時代の協力関係を築き、東アジアの平和と繁栄を確かなものとしてまいります。 |
2016/9/26付 第192回国会における所信表明演説 | 戦略的利益を共有する最も重要な隣国 | 韓国は、戦略的利益を共有する最も重要な隣国であり、未来志向、相互の信頼の下に、新しい時代の協力関係を深化させてまいります。 |
2018/1/22付 第196回国会における施政方針演説 | (特段の言及なし) | 韓国の文在寅大統領とは、これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で、新たな時代の協力関係を深化させてまいります。 |
(【出所】首相官邸ウェブサイトより著者作成)
総理大臣就任直後の2013年2月の演説では、韓国を「自由や民主主義といった基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」と呼びました。しかし、直近、2018年1月の演説では、韓国についてこれといった表現をせず、「相互の信頼の積み重ねの上に未来志向で新たな協力関係」と述べたのみです。
もっと露骨に表現してみると、
- 「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」(2013年2月、2014年1月、2014年9月)
- →「最も重要な隣国」(2015年2月)
- →「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」(2016年1月、2016年9月)
- →単なる隣国(2018年1月)
という推移です。わかりやすいですね。
2015年2月に、韓国はいったん、「基本的価値も利益も共有しない」国になりましたが、これが2016年1月に「戦略的利益を共有する国」に復活しました。その理由は、おそらく、2015年12月に「日韓慰安婦合意」が成立したからでしょう。2016年9月の演説でも、この表現は引き継がれています。
ところが、2018年1月の演説では、「基本的価値」も「利益」も共有していない関係に成り果てました。ありていに言えば、今の韓国は「基本的価値」も「利益」も共有しない、「単なる隣国」です。
この数年、韓国が日本に対してなしてきたことを思えば、今回の「格下げ」も遅すぎるくらいですが、日本政府・安倍政権の対韓認識が「単なる隣国」と成り果てていることは、きちんと理解しておくべきでしょう。
基本的価値とは?
ところで、安倍総理が掲げる「基本的価値」とは、いったい何のことでしょうか?
首相官邸のウェブサイトに安倍総理の過去の演説が掲載されていますが、安倍総理のいう「基本的価値」とは、たとえば、「▼自由、▼民主主義、▼基本的人権、▼法の支配」が挙げられます。いずれも、少なくとも中国と北朝鮮には存在しませんし、韓国についても存在するかどうかが怪しい項目ばかりです。
当ウェブサイトでは、韓国が「自由・民主主義国家」のふりをしながら、実は単なる国民情緒法が支配する未開国家ではないかとの仮説を提示してきました。その典型例が、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領を非民主的手段で引きずりおろした「ろうそく革命」です。
韓国はこの「ろうそく革命」を「世界で最も民主的な政権交代」と考えており、韓国メディア「ハンギョレ新聞」あたりに至っては、「日本にも韓国のろうそく革命のような市民の力が必要だ」とする記事を時々掲載しているほどです。
[インタビュー]「日本にも韓国の“ろうそく革命”のような市民の力が必要」(2018-05-01 09:45付 ハンギョレ新聞日本語版より)
このハンギョレ新聞のような考え方が韓国の一般的な考え方だとは思いたくないものの、韓国の政府、メディアの考え方に接していると、どうも韓国社会が「民主主義」や「法の支配」という考え方を、まったく理解していないようにしか見えないことが多々あるのです。
実際、日本側も韓国が信義則を破り、決着済みの過去の問題を何度も何度も蒸し返してきているのに、いい加減、辟易しているようです。慰安婦合意成立直後の2016年1月の段階で、安倍政権はすでに韓国を「基本的価値を共有しない国」だとみなしていたというのは、1つの重要な注目点でしょう。
戦略的利益とは?
一方で、どんなに敵対する国同士であっても、共通の利害があれば、目の前の対立を乗り越えて協力しなければなりません。昔のことわざにも「呉越同舟」とあるとおり、これは古今東西の鉄則でもあります。
日本と韓国は歴史問題などで互いに一致しない部分も多々ありますが、安倍政権が韓国を「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」と表現した理由は、まさに、北朝鮮という「共通の脅威」が存在していたためではないでしょうか?
2015年12月の慰安婦合意では、日本国民は決着済みの慰安婦問題を蒸し返されるという不快な思いをしましたが、それでも北朝鮮の核問題を解決するためには、韓国の協力が必要だ、という日本政府の説明には、それなりに多くの国民が納得したのです。
しかし、この「戦略的利益」という表現が抜け落ちた理由は、北朝鮮が「日韓にとっての共通の脅威」ではなくなったからです。もっといえば、韓国はすでに北朝鮮に籠絡され、北の核のCVID(※)という共通目標から脱落したと日本がみなしたため、「戦略的利益」という関係が消滅した、という説明です。
(※「CVID」とは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)の略称)。
おそらく、これが正確なところでしょう。韓国は本来であれば、国を守るためには日本との良好な関係が必要です。しかし、少なくとも国民レベルと政府レベルでは、韓国は「基本的価値を共有する国」ではないし、ましてや「戦略的利益を共有する国」でもない、という認識で一致していると考えて良いでしょう。
安倍外交を無条件には支持しない
もっとも、私自身は安倍総理による対韓外交を、100%無条件に支持するつもりはありません。
まず、韓国を「単なる隣国」に格下げするタイミングが遅すぎたことです。2015年12月の日韓慰安婦合意も、私に言わせれば、朝日新聞による捏造犯罪という事実を無視しているうえに、どうせ絶対に韓国側から反故にされることが分かっている協定であり、そもそも間違った合意です。
次に、現在でも韓国との交流は強化されており、韓国人に対する観光ビザの免除(最長90日)を筆頭に、韓国人にはさまざまな恩恵が与えられています。次のような「消費税額の差額を利用した金密輸取引」などの犯罪に手を染める不届きな者もいます。
グループで金塊計132キロ密輸 韓国籍の男ら再逮捕(2018/5/11 19:54付 日本経済新聞電子版より)
また、韓国からイチゴの種苗が盗み出され、日本のイチゴ農家に巨額の損失が発生しているという話や、韓国人が宮崎県に口蹄疫を持ち込んだという話もあります。日韓交流が拡大することに不安を抱いている日本国民は多いのではないでしょうか?
このように考えていくならば、今回の「格下げ措置」については、総論としては賛同しますが、やはり具体的な対策を伴わない措置は不十分です。まずは韓国人に対する観光ビザ免除制度を見直すべきでしょう。
もちろん、理想的なことをいえば韓国人に対する査証制度の復活を検討することが望ましいものの、いきなりそれをすることは困難です。そこで、少なくとも今すぐできる措置として、ビザなしの滞在可能期間を「最長90日間」ではなく、「最長15日間」程度に短縮すべきでしょう。
また、『【昼刊】あらためて「韓国への」経済制裁を提唱する』でも申し上げましたが、韓国は現在、公然と北朝鮮を経済支援し始めている節があります。北朝鮮の核開発が少しでも進めば、日本の安全保障にも直結します。日本は、韓国へのセカンダリー経済制裁を検討すべき局面でしょう。
いずれにせよ、私としては、安倍外交を100%、無条件に支持するつもりはありません。今回の外交青書の記載書き換え自体は評価しますが、重要なのは、むしろ「今後の政策」なのだと考えているのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
< 昼刊の配信ありがとうございます。
< 外交青書改訂=格下げの件、至極当然全うであると思います。ちゃんと書いてやらないと分からない韓国人だから余計な修飾語一切なしで文書として残した。昨日の中央日報や朝鮮日報にそれに関する記事が掲載されていますが、日本政府の表現がどうやら不満のようですな。まだあれでも極めて優しいし、緩いとも思いますが。
< 瀬取りの件で、日本政府が事案を韓国政府に照会したところ『問題なし。瀬取りは無かった』との返事。当たり前やろ(笑)。犯人にお前、やったか?「はい」言う者はいませんよ。ましてや韓国警察や海上保安など、『日本が煩いから聞くだけだ。何もしてないよな!』で終わったと思う。
< 金塊密輸もそうですが、悪人も一般人も朝鮮民族というのはボーダーレス、皆が悪さをする可能性があるとみていい。それだからややこしいんです。今、文政権は、北に籠絡されてますが、CVIDで米国の核の傘から出たら、中国の傘に入る可能性がある。あるいは統一朝鮮で作り出すかもしれない。それへの対抗として、日本はまず『隣国で敵性国』とみなし、経済圧力と渡航の見直しを早急にやるべし。観光ビザ免除は最長15日まで、また韓国への渡航制限(安全情報引上げ、あるいは中止勧告)を発表して欲しい。要は往来を減らせ、という事。 以上。