【夕刊】580億円窃盗事件:暗号通貨を金商法の対象にせよ
580億円の現金の重さは5.8トンですが、これが電子データだったならば、重さは0グラムです。物理的に見て、盗むのが簡単なのは電子データであることは当然のことでしょう。
想定外の強盗事件
仮想通貨が盗まれた!
仮想通貨「ネム(NEM)」が何者かによって盗まれたという事件が報じられています。
現時点までのいくつかのメディアの報道を統合すれば、
仮想通貨取引所Coincheck(コインチェック)で仮想通貨のひとつ「NEM」が不正流出した。
コインチェック幹部らは1月26日の深夜に記者会見に応じ、NEMが不正流出したことを明らかにした。
流出時間は1月26日午前2時57分で、流出したNEMは5億2300万単位(検出時点のレートに換算して約580億円)だった。
同日11時25分時点でNEM残高の異常を検出した。
ということだそうですが、コインチェック側は今回の事態を金融庁と警視庁に報告。また、「NEM財団」側は、盗まれたNEMの所在を特定するマーキング・プログラムを開発し、ハッカーのアドレスからのすべての送金を追跡するbotを稼働しているという話も聞きます。
そして、現在、世界中の取引所に対し、マーキングされたアカウントからのNEMの受取りを拒否することを呼び掛けているとされ、これにより、換金自体がシャットアウトされている状況だとしています。
「電子的銀行強盗」の時代に!?
もちろん、現在進行中の事件でもあるため、今回事件の結末がどうなるのかはわかりません。
また、コインチェック側のシステム面での安全性が著しく欠落していた(たとえば、同社がNEMについて、財布=ウォーレットを分散するシステムを実装していなかった、など)のではないかとの指摘もありますので、コインチェック側の過失はゼロではありません。
ただ、今回の事件は、まさに「新手の銀行強盗」の時代が到来したことを予感させるものです。
考えてみればわかりますが、日本円で580億円という現金を「盗む」ことは、非常に困難です。
なぜでしょうか?
日本銀行のウェブサイトによれば、1万円札1枚の重さは1グラムであり、これが1万枚集まれば、重さは10キログラムです。ということは、580億円は約5.8トン(!)にも達します。
しかし、電子データの形になってしまえば、重さはありません。
セキュリティが弱く、巨額の仮想通貨を預かっている取引所運営会社を集中的にハッキングすれば、それだけで効率よく(?)貨幣的価値を持つ何物かを盗み出すことができてしまうのです。
暗号通貨自体は「現金」ではない
もちろん、現在のわが国の法制上は、ビットコインを初めとする仮想通貨は「現金」ではない、とされています。
私はここで、「仮想通貨」という用語を使いましたが、厳密にいうならば、これは「暗号通貨」です。そして、最近話題のビットコインを初めとする暗号通貨の多くは、「ブロックチェーン」という技術を使って運営されています。
ごく簡単にいえば、「マイナー」と呼ばれる人たちが取引の正当性を保証する業務を営み、その業務の報酬として暗号通貨を付与されるという仕組みであり(※すべてがそうというわけではありませんが)、「取引の正当性を保証する人があちこちに存在する」という点が「ブロックチェーン」の特徴でもあります。
私は、この「ブロックチェーン」という仕組み自体、将来的に民間銀行の存在を脅かしかねない技術ではないかと見ているのですが、この点についてはまた後日、機会があれば詳述したいと思います。
そして、多くの暗号通貨は発行者が誰なのかよくわからない(というよりも、発行者が存在しない)という特徴を持っていて、価値の裏付けがない存在でもあります。ただし、「何となく儲かるんじゃないか?」と考えている人がたくさん市場に参入してきているので、投機的なマネーが暗号通貨市場に流入している状況にあるのです。
国は早く暗号通貨の扱いを定めよ!
この暗号通貨とは、明らかに新しいテクノロジーですが、残念ながら各国政府の対応は後手に回っていて、それはわが国も例外ではありません。
厳密にはブロックチェーンという仕組みと暗号通貨という存在はリンクするものではないのですが、現在のところ、どうもこの両者は密接に結びついているようです。
ということは、ブロックチェーンの脆弱性を突く形で、インターネット上で暗号通貨の窃盗(あるいはその未遂)という行為が、今後も相次ぐことは間違いないでしょう。
そして、これに目を付ける組織も決まっています。それは、テロ組織です。
イスラム系のISIL(昨年壊滅か?)やアルカイーダ、ハマスなどはもちろんのこと、大小さまざまなテロ組織が、資金調達手段を求めてうごめいています。
当然、北朝鮮や中国も相当に多くのハッカーを養成していると考えられ、とくに国連安保理の制裁を受けている北朝鮮は、インターネット上のさまざまな詐欺(マルウェアを含む)に関与していることが疑われます。
そこで、まずは仮想通貨・暗号通貨そのものを、金融商品取引法上の金融商品に指定する法改正を、早急に行うべきでしょう。そして、暗号通貨を換金する取引所を、明確に金融商品取引業者に位置付けたうえで、最低限のセキュリティ要件について定めるべきです。
今回の580億円窃盗事件の顛末はまだわかりませんが、それでも新たなテクノロジーが登場するときには、得てして妙な事件が発生するものです。
逆に、この手の規制で先行すれば、日本がブロックチェーンの世界で主導権を取ることにもつながります。
金融庁には、ぜひ、この新規制を前向きに検討して欲しいと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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まさに大学の卒論でこれやったんで提出するタイミングでこんな事件起きたんで爆笑しましたww
もうメディアで十二分に報道されているのでセキュリティーの杜撰だったのは皆さんご存知だとは思いますが通常はこんな事起きませんので安心してください。てかむしろよくこんな事件起こすのを許したなぁって感じですよね、投機目的のビットコイン購入者共にはいい薬になったんじゃないかなと思いますがw
決済サービスが主目的なのに投機でバブル起こすなんて馬鹿みたいですからね、会計士様の言う通りセキュリティー関連の金融庁、国税局の審査基準の両者で法と審査で厳格にして守るのが良いかと思います。どの道銀行や証券会社も時間と共にブロックチェーンの技術を獲得&利用する事になるので潰すのは論外です。
自分は投機目的の利用者が減った辺りから決済サービスを利用して見たいと思います。
< 夕刊の配信ありがとうございます。
< 580億円の窃盗かあ。凄い金額ですね。現金で一度拝みたいものですが、とても無理。そんな重いもの、家の底が抜けます。私が最高で現金を見たのは、3億円。仕事で、当時は皆さん支払いは現金が多かったためです。今ならありえません。
< しかし、こういうハナシになると北朝鮮、中国、中東テロ組織が怪しいですね。あと中南米とか。多数のハッカーを養成し、各国に浸透しているのでしょう。また投機的なマネーが暗号通貨市場に混入し更にドンドン増えたら、悪知恵働くヤツの思うツボです。
< 仮装通貨や暗号通貨自体私は臆病なので、今はするつもりないですが、将来は分かりません。金融商品取引法上の金融商品に指定する法改正をすべきですし、セキュリティはしっかりして貰えないと、怪しさが拭えません。