企業会計のセンスで中央銀行を議論するWSJ

米WSJといえば、金融市場関係者から信頼されているメディアだといわれますが、それでも私に言わせれば、ときどき変な記事が掲載されるメディアでもあります。

SNBの為替政策

中央銀行の決算を企業会計の感覚で見るな!

先週、米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に、「変わり種」の報道がありました。

Switzerland’s Central Bank Made $55 Billion Last Year—More Than Apple(米国時間2018/01/09(火) 12:07付=日本時間2018/01/10(水) 01:07付 WSJオンラインより)

WSJによると、スイスの中央銀行である「スイス国立銀行」(SNB)の2017年通期における最終利益が549億ドル相当(1ドル=110円だとすれば、約6兆円)だったとしています。

これは、アップル(484億ドル)、JPモルガンチェース(242億ドル)、バークシャー・ハザウェイ(241億ドル)、ウェルズ・ファーゴ(219億ドル)、マイクロソフト(212億ドル)といった、そうそうたる米国企業の利益水準を上回っており、記事のタイトルも「SNBがアップル以上の利益を上げた!」と華々しいものになっています。

ただ、注意しなければならない点が、1つ、あります。

それは、SNBの利益の源泉が、あくまでも事業活動ではなく、保有している債券の評価益(しかも為替評価益)である、という点です。

WSJによると、SNBは現在、米ドル換算で8000億ドル(日本円換算だと100兆円近い金額)の外貨建ての有価証券を保有しています。そのうち約8割がユーロ建ての資産だそうですが、ユーロはスイス・フランに対して2017年を通じ、約8%上昇したため、SNBが計上した利益はほぼ全額がこれだけで説明できます(8000億ドル×80%×8%≒500億ドル)。

ただ、WSJの記事自体、まことに残念なことに、中央銀行を企業会計で眺めるという域を達しておらず、非常に底が浅い記事です。というのも、読者が本当に知りたい点とは、本来、「なぜSNBがこれほどまでに巨額のユーロ建ての債券を保有しているのか」という点だからです。

「SNBが(2017年において)アップルよりもたくさん利益を稼いでいる!」という点は、ほんとうに「たまたまそうなった」だけのことであり、別に「SNBが高収益企業だ!」という証拠ではありません。

ときどき、国家財政や中央銀行の金融政策を企業会計の感覚で論じる人がいるのですが(身内の恥をさらすようですが、公認会計士業界には、とくにそういう人が多いです)、実に愚かな話です。

SNBの「1.2フラン目標」とは?

SNBの債券ポートに話題を戻しましょう。

なぜSNBは、米ドルに換算して8000億ドル(邦貨で100兆円弱)にも達する巨額の外貨準備を獲得したのでしょうか?

その最大の要因は、2011年9月に、1ユーロ=1.20フランを上限とする為替ペッグ制度を導入しました。本来、為替は市場原理に基づき、自由に取引されるべきものですが、スイス・フランは当時から「安全資産」と見られていて、ユーロ圏債務危機の折に、巨額の資本流入に苦しめられていたのです。

メカニズムは、こうです。

ユーロ圏で何らかの混乱(たとえば、ギリシャ債務危機など)が発生し、市場ではリスク性資産(株式、ユーロ圏周辺国の国債、新興市場諸国の通貨など)が売られ、安全資産が買われます。この「安全資産」とは、金融市場が「利回りは低いが、価値が毀損するおそれが少ない」と考えている資産のことです。

当然、スイス・フランも市場関係者からは「安全資産」の1つと見られていますが、金融危機のたびにスイス・フランが買われ、ユーロが売られれば、スイス・フランの価値が上昇し過ぎ、スイスの輸出企業の輸出競争力が大きく損なわれてしまいます(このあたりは円高と日本企業の関係を考えれば分かりやすいでしょう)。

そこで、通貨当局であるSNBが、外国為替市場に介入し、1ユーロ=1.20フラン以上の通貨高を容認しないと宣言するのです。これが「為替の売り介入」です。

【新春経済講座】為替介入国は市場経済の敵』でも申し上げたとおり、本来であれば、先進国が為替介入を行うことは、非常に例外的な状況でしか認められません。

しかし、スイスの場合、南にイタリア(ユーロ圏)、西にフランス(ユーロ圏)、北にドイツ(ユーロ圏)、東にオーストリア(ユーロ圏)と、それこそ国を四方からユーロ圏に囲まれている状況にあります。

それならいっそのことスイスもユーロ圏に入ってしまえば良いじゃないか、という議論が出て来そうですが、残念ながらスイスがユーロ圏に入ることは難しいです。というのも、ユーロ圏に入るためには、欧州連合(EU)加盟国であることが必要ですが、スイスがEUに加盟したければ、まずは「永世中立」という看板を下ろす必要もありますし、GDP財政収支比率などの債務条項を満たす必要もある(つまり財政的な独立を放棄する必要がある)からです。スイスがそういう選択をするとも思えません。

為替介入の2類型

したがって、スイスとしては、自国の輸出競争力を維持するためには、自国通貨が高くなり過ぎることを防がねばならない状況にあったのです。

ところで、一般に、通貨当局による為替介入には2つの種類があります。

1つ目は、自国通貨が安くなり過ぎることを防ぐための「買い介入」です。これは、外国為替市場で自国通貨を買い入れ、外国通貨を売却するオペレーションです。

2つ目は、自国通貨が高くなり過ぎることを防ぐための「売り介入」です。これは、外国為替市場で自国通貨を売却し、外国通貨を買い入れるオペレーションです。

たとえば日本の場合、外貨準備を管轄しているのは日銀ではなく財務省ですが、財務省は為替介入を行った場合、「どの通貨を売って、どの通貨を買ったか」という状況を一覧にして公表しています(財務省ウェブサイト『外国為替平衡操作の実施状況』参照)。

わが国の場合、おもに1990年代以降、小泉政権時代にかけて、巨額の「売り介入」を実施しました。

これは、円高になり過ぎることを防ぐために、財務省が国債市場で短期国庫証券(現在のTDB)を発行して円資金を調達し、その円を外為市場で売却。外貨(おもにドル、ときどきユーロ)を買い入れること(つまり円売り・ドル買い介入、円売り・ユーロ買い介入)を行ったものです。

ちなみにわが国の場合、短期国庫証券の発行残高と外貨準備の金額は、2008年頃まではほぼ一致していましたが、民主党政権時代の強烈な円高により円建てで評価した外貨準備が価値が急減。2012年の安倍政権の再登板以降は円安などに伴い、外貨準備の価値が国庫短期証券の価値を上回っている(つまり含み益になっている)ことは、財務省が必死に隠す、市場参加者の「公然の秘密」でもあります。

また、逆に、通貨危機の際には、「金融基盤が弱い国」の通貨が売り浴びせられる傾向があります。これらの国では、自国通貨の暴落を防ぐために、手持ちの外貨を外為市場で売却し、自国通貨を買い入れなければなりませんが、それを買い支え切れなくなった場合には経済破綻してしまったり(1998年のインドネシアや韓国の事例)、完全な変動相場制度に移行してしまったり(1992年の英国の事例)することになります。

売り介入も「無限にできる」わけではない

つまり、為替介入には「売り介入」と「買い介入」の2つのパターンがあることがわかります。

このうち、かつてのタイや韓国、英国が行ったような「通貨防衛」は「買い介入」の一例ですが、自国の手持ちの外貨準備が尽きてしまえば、それ以上の「買い介入」を行うことはできません。その意味で、教科書的には「買い介入」には限界がある、と記載されることが多いようです。

一方、かつての日本が行ったような「売り介入」は、自国通貨を売るパターンです。これについて、経済学の書籍によっては、「売り介入は無限にできる」、という記述がありますが、これは間違いです。

まず、日本の場合、為替介入を行う主体は日銀ではなく、財務省です。日銀が為替介入を行うのであれば、日本銀行券を刷って、外為市場でそれを売却してドルを買い、そのドルで米国債などを買い入れれば良いのですが、わが国では少なくとも1990年代以降、日銀が為替介入を行ったことはありません(※これについては非常に重要な事実です)。

これに対して財務省には日本円を発行する権限などありません。ということは、財務省は為替介入の原資を金融市場から国債(国庫短期証券)という形で借り入れなければならず、「国の借金」を気にするならば、無制限にそれをすることはできない、ということになります(※ただし、「国の借金」という議論は正しくありませんが、その議論は本稿では割愛します)。

一方、中央銀行が直接、為替介入を行うにしても、限界はあります。それは、自国通貨を発行すればマネタリーベースが増えてしまうため、資産価格が上昇する(つまり、インフレや資産バブルを誘発する)という問題があるのです。

2015年1月になり、唐突に「1.2フラン目標」放棄

SNBも、これとまったく同じ問題を抱えていました。

SNBは2011年9月に入り、1ユーロ=1.20フランという「上限値」を決め、世界に向けて、「これ以上の自国通貨高を容認しない」と宣言しました。

当時、欧州債務危機や低金利などの要因を嫌い、投機資金がおもにユーロ圏からスイスに流れ込んできていたのですが(市場のユーロ売り・フラン買い圧力)、これに抵抗するために、SNBは無制限の「フラン売り・ユーロ買い」オペレーションを開始したのです。

市場参加者に対しては、「スイスは為替相場の安定を重視する」というメッセージを与えた格好ですが、それでもスイスへの資金流入は止まりませんでした。

ということは、

  • 1ユーロ=1.20フラン以上のフラン高になる
  • →SNBがスイス・フランを売り、ユーロを買い入れる
  • →1ユーロ=1.20フランに戻る

という繰り返しを続けることになったのですが、その過程で市場には巨額のスイス・フランが溢れ(マネタリーベースの増大)、SNBの勘定には巨額のユーロ建ての資産ポートフォリオが出来上がってしまったのです。

SNBの政策目標は、あくまでも為替相場の安定にありました。そして、SNBは別に金融緩和をやろうと思ったわけではありませんでした。それなのに、結果的に市場に通貨が増え過ぎ、金融緩和状態になってしまったのです。

こうした状況に耐えられなくなったのでしょうか、SNBは今からちょうど3年前の2015年1月15日、為替のユーロペッグを突如として放棄。その結果、一気にスイス・フランが切り上がり、一時1ユーロ=0.85フランと、、最大瞬間風速的に前日比30%(!)も為替相場が動いたのです(図表1)。

図表1 スイス・フランの為替相場(米国時間終値ベース)

(【出所】ダウジョーンズ等より著者作成)

SNBの巨額益は単なる「戻り益」

逆にいえば、SNBはこの時点までに積み上げた巨額のユーロ建ての外貨準備で、一気に30%もの評価損を抱えた格好です。

仮に、当時からSNBが8000億ドル(当時1ドル=80円で換算すれば64兆円)の債券ポートを抱えていたのだとすれば、それが30%毀損すれば、2400億ドル(約20兆円)という巨額の損失を計上したはずです。

たしかにスイス・フランはユーロに対して、2017年を通じて8%程度上昇していて、これにより6兆円の利益を計上したともいえますが、これは、2015年1月15日に、わずか数分で発生させた20兆円もの損失と比べると、まだまだ足りません。

つまり、2015年に発生した損失の一部が「戻り益」として利益計上されただけのことであり、これは単なる会計上のトリックに過ぎません。

ただ、スイスや日本の場合、通貨自体が市場で信頼されているため、中央銀行が債務超過になったとしても、別にそれ自体にまったく問題はありません。

企業会計の世界だと、「債務超過」(資産総額を負債総額が上回る現象)は「倒産する一歩手前」と見られることが一般的ですが、これとまったく同じ感覚で中央銀行や政府の財政を見てはならないのです。

冒頭に紹介したWSJの記事も、中央銀行がいくら利益を計上しようが関係ないのに、それを民間企業のそれと同じ土俵で論じているという時点でナンセンス極まりありません。

金融政策と為替操作は別物

金融政策+財政政策で景気は甦る!

以上、SNBの事例は極端だとしても、この事例は、知的好奇心を探求する立場としては、なかなか興味深いものがあります。

ここで、デフレだと、中央銀行が紙幣を刷ってばら撒く政策(バーナンキ風に言えば「ヘリコプター・マネー」)が有効です。これがまさに「金融緩和」なのですが、なぜこれがそれほど大事なのでしょうか?

実は、日本のような「オープン経済」の国だと、国内市場と外為市場は密接につながっていて、たとえば中央銀行が金融引き締めをしているときに、いくら財政政策を打ったとしても、国内金利が上昇してしまい、為替相場が変動して、財政政策の効果を打ち消してしまうからです。

たとえば、2008年9月のリーマン・ブラザーズ倒産に伴う景気の落ち込みに際し、時の麻生太郎政権が打ち出した巨額の財政政策は、日銀が金融緩和を渋ったことにより無効化されただけでなく、その後、外為市場で円高を誘発してしまいます(ただし、経済学の教科書と違い、この局面では円金利はそれほど上昇しませんでしたが…)。

しかし、中央銀行がじゃぶじゃぶと資金供給を行っていれば、国内の金利水準が低下し、その国の通貨の価値は下落傾向に進みます(日本の場合は、これが2013年4月以降の黒田緩和の効果です)。

このタイミングで、財務省が国債をドカンと増発し、積極的な財政政策に打って出れば、日本の景気は一気に回復します。

せっかく「黒田緩和」がなされているのですから、もういちど麻生政権のときのような巨額の財政政策が打たれれば、それだけで日本経済はデフレを脱却することは、ほぼ間違いありません。

ただ、日本の場合は財務省が掲げる「財政再建第一主義」という誤った政策により、いまひとつ、アクセルをふかすことができていないのです。

国際収支のトリレンマ

それはさておき、円安になれば輸出企業が儲かるといわれていますが、それだったら財務省が1ドル=120円という目標を設定して、無限に為替介入を続ければ良いではないか、とする議論があります。しかし、これは大きな間違いです。なぜなら、この世には「国際収支のトリレンマ」と呼ばれる、絶対に逆らえない経済原理が存在するからです。

これは、「自由で開放的な資本の移動」、「金融政策の独立性」、「為替相場の安定」という、3つの政策目標を同時に満たすことは絶対にできないというものです(図表2)。

図表2 国際収支のトリレンマ
政策目標政策の結果具体例
資本移動の自由と金融政策の独立を確保したい為替相場の安定を放棄せざるを得なくなる米国、日本、ユーロ圏、英国、豪州、カナダ など
資本移動の自由と為替相場の安定を確保したい金融政策の独立を放棄せざるを得なくなる香港、シンガポール、デンマーク など
金融政策の独立と為替相場の安定を確保したい資本移動の自由を放棄せざるを得なくなる中国など、世界の多くの発展途上国

(【出所】著者作成)

まず、米国、日本、ユーロ圏、英国などの先進国のケースでは、資本移動の自由と金融政策の独立を確保することを至上命題にしていて、為替相場の安定については政策目標に掲げられていません。

もちろん、異例な為替相場の変動があった場合には、各国ともに為替市場に介入することがありますが、それはあくまでも例外的なものに留まります(ただし、「自称先進国」でありながら常に為替介入をしている韓国の事例をのぞきます)。

次に、資本移動の自由と為替相場の安定を確保している国といえば、金融ハブを掲げる香港やシンガポールの事例が挙げられます。彼らは規制の少なさと為替相場の安定を通じて金融業を誘致し、それで国を成り立たせているため、国民生活を犠牲にして、金融政策の独立を放棄しているのです。

さらに、発展途上国の場合は、外国からの資本流入をシャットアウトすることで、金融政策の独立と為替相場の安定を確保しています。その典型的な事例は中国ですが、このような国の通貨を「ハード・カレンシー」と呼ぶのは、国際資本市場に対する冒涜でしょう。

スイスの間違い

ここで、スイスの間違いとは、「資本移動の自由」、「金融政策の独立」を維持したまま、「為替相場の安定」を追求したことにあります。

これ自体、経済学の根本原理に反するものであり、この政策が破綻したことはある意味で当然すぎるともいえます。

ただ、スイスがユーロ・ペッグ制度の放棄に追い込まれたことは事実ですが、香港やシンガポールの為替政策がスイスと同様に破綻するのかといわれれば、そのようなことはありません。なぜなら、スイスと香港では、前提条件がまったく異なるからです。

香港の場合は、最初から「金融政策の独立」を放棄しており、香港ドルと米ドルの為替ペッグ制度を1983年から維持しています(現在は1米ドル≒7.8香港ドルのバンド制)。

また、デンマークの場合は欧州為替安定メカニズム(ERM2)に加盟しており、ユーロとのペッグ制度が国際的に義務付けられている状況にあり、これもスイスとはまったく状況が異なります。

いずれにせよ、2011年からにわか仕立てでユーロ・ペッグを導入したスイスが、制度の維持に失敗したのも当然すぎる話ですが、そのオマケとして、WSJに面白い記事が掲載されたというのも興味深いことです。

記事を批判的に読むことの重要性

WSJといえば、英フィナンシャル・タイムス(FT)と並び、金融市場関係者が重視する「クオリティ・ペーパー」であるとされます。

しかし、ときどき、財政学の素人が書いたと思しき記事も掲載されるため、注意が必要であることは間違いありません。

いずれにせよ、「新聞に書いてあったから正しい」という前提を置いて記事を読むことは適切ではありません。そのことを、私は今年も強力に主張していきたいと考えています。

読者コメント一覧

  1. go より:

    中央銀行は実質的に国の子会社みたいなものですから
    中央銀行のみの決算でものを考えるのは危険ですね
    正しい経済政策が執れなくなってしまいます

    1. 団塊 より:

      (中央銀行は、子会社とは限らないんじゃないかな)
      FRBは100%株式会社。
      株主は、JPモルガンとか破産したリーマンブラザーズとかの超大金持ち6人だけだった、嘗てUSA政府がドルを発行していたが….← 立ち読みの記憶

      日本銀行の株主は、日本の政府も株を保有しているが、その他の株主は不明…ですよね。

      カダフィーを殺害して最初にやったことは、リビアの中央銀行を作ったことなんですって。→ 無政府状態での設立 → リビア政府がなかったんだからリビアの国でなく 100%民間であり株主は100%超大金持ちだけの民間企業ですよね

    2. go 様、団塊 様

      いつもコメントありがとうございます。
      さて、せっかく「親子会社」という論点が出ましたので、本文では述べなかった議論を、少し補足しておきたいと思います。

      日本政府も日銀も企業会計が適用される存在ではありませんし、日銀自体、「会社法」ではなく「日銀法」が適用されるため、企業会計の世界でいう「連結子会社」かと言われれば、それは明らかに異なります。

      その意味では、まさに団塊様のご指摘が正しいです。

      ただし、強引に企業会計に当てはめれば、日銀は日本政府の連結子会社です。
      会計上の「親子会社」とは、「実質支配力基準」によって決定されます。これは、簡単にいえば、

      (1)親会社(P社)が子会社(S社)の議決権の過半数を握っている場合、
      (2)P社がS社の議決権の過半数を握っていなくても、「緊密な者」(元従業員や元役員など)の議決権をあわせれば過半数になる場合であって、①人的に支配している場合、②契約により支配している場合、③資金調達面で支配している場合、④その他、支配している一定事実が存在する場合――などに該当している場合

      に、「P社はS社の意思決定機関を支配している」と認定される、という基準です(本当はもう少しややこしいのですが、簡略化してそのように申し上げておきます)。

      そして、日銀は政府の子会社かといわれれば、この基準に照らせば、日本政府は日銀の発行済み株式の55%を所有しているため、いちおうは「連結子会社」と判断できなくもありません(残り45%は市場で転々流通していて、お金さえあれば誰でも買うことができます)。

      ただ、企業会計の世界を離れ、統治論からいえば、日銀は日本政府と同様、最終的には主権者である日本国民の支配下に置かれているため、「日本政府+日本銀行」という、「統合政府」の議論が成り立ちます。このような考え方からすれば、go様の

      「中央銀行は実質的に国の子会社みたいなもの」

      という説明は、間違っていないどころか、極めて正しいご指摘です。

      このあたり、私の議論で欠落していた点ですので、これを補って下さったご両名深く感謝申し上げたいと思います。

      引続き当ウェブサイトをご愛読賜りますとともに、お気軽なコメントを下さると幸いです。

      新宿会計士

  2. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。今日は家中バタバタしてまして、拝読が遅くなりました。【夕刊】もあるのでしょうが、まだ開いておりません。
    < WSJでもFTでも財政学に素人と思しき人が書いたと思われるような曲解文、駄文が載る事があるんですね。よく「ニュースは疑ってかかれ」と言われますが、私など常に疑い深く、特に自分の意に反する事なら徹底的に自己流で調べて、それでシロなら腹に収めます。グレーなら注意喚起します。こんな「クオーリティーペーパー」になぜ、そんな記事が載るのか不思議です。事業活動でないものをアップル、JPモルガン・チェース、バークシャー、ハザウェイ、ファーゴ、マイクロソフトなどと同列に比較するのはありえないでしょう。やはり『東西を問わず、世の中カネがすべて、いくら利益が出たか、どれだけ配当を出せるか、どれだけ会社に残せるか』が紙面のアピールポイントなんでしょうか。見出し見て会計士様の解説を知ったら、少し残念な気がします。もちろん企業人としては利益を追及するのが当然で、私の意見が異端と思います。またスイスという国は「永世中立」で金融で世界を仕切って、本当に欧州でも別格、悪く言えば自分とこだけよかったらいい、という風に見えます。
    < 国内ニュースで、何か偏向的なのが一瞬、トップやサブに来ていますね。一つが「ICAN事務局長のベネトリスト フィン氏に、 安倍首相はなぜ会わないのか」です。「核廃絶を目指すキャンペーンのICANが安倍首相との面会を求めていたのに会わなかった。日本政府が断った」という報道。私が見たのは朝日新聞、毎日新聞、他ネットニュース。安倍氏は核を持とうとしているのだ、という、いわゆる護憲派ごのみの悪意に満ちた書き方でした。もうGoogleとかヤフーのトップからは消えていますが。
    < 二つ目がWEDGE Infinity(恥ずかしいですが、これは知らない名前です)「秘密外交の無残な結末。また韓国に騙されるのか」(産経前論説委員長 樫山幸夫氏)です。論点は日韓合意履行問題、韓国による追加措置要求です。「韓国はしかし、そういう国なんだろう。誤解を恐れずに言えば、過去に同じ目に会っているにもかかわらず、また騙された日本政府の外交的失敗であった。韓国の非を鳴らすだけでなく、自ら反省することも必要だろう」とあります。仰る通りだが、元々はなんにもしない、不履行の韓国に責がある。いや、この2015年12月の合意に限れば、日本国に手落ちは一切ありません。さらに氏は、①日米同盟を更に強くして、韓国をかえりみさせる、引き寄せることが大切だ。②安倍首相の五輪出席は良いこと、大人の態度だ。韓国が自らの行動を省みる機会を与えることになる==とも語っています。産経の前論説委員長にしてはスタンスも切り口も甘い。もっと舌鋒鋭く言わなければ。なぜ日本が悪いと言い出すか?五輪に出席?冗談じゃない、私でも行かない(笑)。よく発言(この場合文大統領と安倍首相)の数日後にこういう論評を出す場合があるが、わざと正を誤、もしくは少数意見も大きく扱う日本人独特の「美意識」「風潮」がある。でも対朝鮮、中国にそれは通じない。それは本末転倒だ。徹底的に相手の不義を突かなければいけないと思う。それとも書き手の見方が変わったのなら、『産経前論説委員長』の肩書はコメントから削除してもらった方が良いと私は思う。
    < 失礼しました。

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