そんなスワップ延長してどうすんの?
貧すれば鈍する。そんな格言を、韓国にお送りしたいと思います。本日2本目の記事は、「あの話題」です。
目次
韓国のスワップは危機的状況
韓国、中韓スワップ延長を中国に懇願か?
久しぶりに、心の底から呆れる報道を発見しました。
韓国と中国、通貨スワップ協定の延長を協議中=韓国中銀当局者(2017年9月13日 12:02付 ロイター日本語版より)
ロイターの報道によると、韓国の中央銀行である韓国銀行の「当局者」は、中韓間の2ヵ国間通貨スワップ協定(BSA)の延長を「実務レベルで協議中だ」と述べたのだそうです。
ただし、今のところ中国側から中韓スワップに関する報道は見当たりません。
あくまでも私の主観ですが、これは「実務レベルで協議中」なのではなく、「韓国が中国に対して懇願している最中」ではないでしょうか?
私がそう判断する理由は、昨年の日韓スワップ再開交渉を巡る韓国側の報道の過熱とパターンが似ているからです。
韓国政府担当者は、しばしば希望的観測を口にする
得てして韓国では、交渉の段階で、具体的な協議内容(というよりも韓国政府・当局の担当者の希望的観測)が、記者団にダダ漏れになってしまいがちです。
日韓スワップについてもこの例に漏れず、昨年9月末頃に、韓国のメディアから「新たな日韓スワップの規模は500億ドル程度になる」とのリークがありました(これについては私も昨年、『日韓スワップ「500億ドル」の怪』で触れています)。
おそらくこの報道の正体は、韓国の企画財政部担当者が口にした希望的観測をそのまま記事にしたものであり、日本側の財務省の裏取りなども一切なされていない代物だったのではないかと思います。
(※余談ですが、日韓スワップの再開交渉は今年1月6日に打ち切られ、今日に至るまで再開されていません。)
そのことを踏まえて、改めてロイターの記事を読んでみます。
ロイターの記事には「中韓両国は中韓スワップの延長を実務レベルで協議中」とありますが、これは、「中韓両国は大筋ではスワップの延長で合意しており、現在は実務者レベルで詳細条件を詰めている段階だ」というニュアンスだと受け取りました。
もしその意味だとすると、昨年の日韓スワップで韓国側からどんどんと先行して、「スワップ再開観測」が過熱して行ったのと、状況がよく似ています。
おそらく、今年10月10日に満期を迎えるスワップを延長するのであれば、もうそろそろ具体的な話が出て来ているべきでしょう。それが、この段階で「実務レベルで協議中」と述べたということの背景にあると見るのは、あながち的外れではないと思います。
中韓スワップは「張子の虎」
改めて振り返っておきましょう。韓国が外国との間で締結しているスワップ協定は、2ヵ国間スワップ(BSA)が4本と多国間スワップが1本であり、米ドルに換算すれば、約1124億ドル程度です。
- オーストラリアとのBSA(金額:100億豪ドル・9兆ウォン、約79億ドルに相当)
- マレーシアとのBSA(金額:150億リンギット・5兆ウォン、約35億ドルに相当)
- インドネシアとのBSA(金額:115兆ルピア・11兆ウォン、約86億ドルに相当)
- 中国とのBSA(金額:3600億人民元・64兆ウォン、約540億ドルに相当)
- チェンマイ・イニシアティブ・多国間スワップ(CMIM)(拠出可能額:384億ドル)
ただし、これは「米ドルに換算すれば」、という話であり、CMIMを除いて、実際に米ドルで引き出せる、という意味ではありません。
通貨・為替市場では、「どの通貨で引き出すか」が非常に重要です。韓国が締結している4本のBSAは、いずれも相手国の中央銀行と締結しているものであり、相手国の中央銀行から通貨を引き出した場合、それを外国為替市場で米ドルなどに両替しなければ、使い物になりません。
そして、オーストラリアを除く3ヵ国の通貨は、いずれも国際的な市場では使い物になりません。インドネシア、マレーシアともに通貨市場の規模は小さく、BSAに基づいて相手国通貨を引き出したところで、それをドルに両替しようとすれば、両国の通貨の暴落を招きます。
さらに、中国の通貨・人民元の場合、中国本土では本土人民元(CNY)の米ドルへの両替を中国人民銀行が厳格にコントロールしており、人民元を引き出したところで、それを米ドルに両替できるという保証はありません。
また、最近では人民元は香港、東京、ロンドン市場などのオフショアで流通していますが、いずれも市場規模が小さく、人民元を一気に米ドルに両替しようとすれば、オフショア人民元(CNH)の価値が暴落します。
張子の虎も破棄されれば痛い
以上から、韓国が想定している使い方(スワップで引き出した人民元を市場で米ドルに両替すること)は事実上不可能であり、韓国にとっては全く意味がない、使い物にならないスワップなのです。
(※もっとも、人民元建てのBSAは、中国からの輸入代金に人民元決済を使っている場合など、役立つ場合は皆無ではありませんが、その場合、3600億元ものスワップは必要ないでしょう。)
ただし、金融の素人から見れば、「為替換算して540億ドルを超える」という金額は、たしかに魅力的です。いわば、この540億ドルは「張子の虎」、「絵に描いた餅」ですが、それでも投機筋からの攻撃に対する「気休め」程度にはなっていました。
ということは、その540億ドルを破棄されれば、韓国が保持するBSAの7割以上が一気に失われる格好であり、投機筋に対しては「今が韓国の通貨を空売りするチャンスですよ~」というメッセージになります。
通貨暴落の具体的プロセス
韓国は厳格な資本コントロールを行っているため、韓国の通貨の暴落が始まるとしたら、現実にはオフショアのNDFの売りからスタートするのではないかと思います。
ただし、NDF市場が崩落すれば、その影響は実体経済に及びます。具体的には、外国人投資家の資金が逃げるため、株式債券もセットで売られ、株安・金利上昇・通貨下落の「トリプル安」となることが想定されます(いわゆるキャピタル・フライト)。
ただし、本当に怖いのは、株安でも金利上昇でもありません。「外債のデフォルト」です。
韓国の銀行は外国の銀行や機関投資家から、貸出金・債券の形で、相当多額の資金を調達しています。その金額は日本円に換算して、40兆円少々ですが、これは韓国当局が公表している外貨準備の額とほぼ等しい金額です。
しかし、韓国の外貨準備高については、少なく見積もっても75%が不良資産であると考えられるため(このあたりの詳細は『韓国の外貨準備の75%はウソ?』に書きましたのでご参照ください)、キャピタル・フライトが発生した時に自国通貨を買い支えるための外貨準備がすぐに底をつく可能性があります。
CMIMは約100億ドルまでIMFの介入なしに引き出すことができますが(いわゆるデリンク条項)、キャピタル・フライトの前には100億ドルなど「焼け石に水」です。このため、韓国はオーストラリアのスワップ(100億豪ドル)を引き出してすぐに米ドルに両替し(約80億ドル)、それでも足りなければインドネシア、マレーシアとのスワップを引き出して両国を通貨安の道連れにし、それでも足りなければ、
- CMIMから残額を引き出す(つまりIMFの介入を招く)か、
- 中国に頭を下げてCNYを引き出して米ドルと両替してもらうか、
- それとも日本に泣きつくか、
という流れです。
日本は絶対に助けるな!
『財務省の日韓スワップロジックの詭弁』でも指摘しましたが、韓国経済が破綻に近づけば、それなりに日本企業にも影響は出てきます。しかし、それと同時に、アジア諸国では国家破綻など普通に考えられる話であり、個別の民間企業が韓国についてもカントリー・リスクをきちんと評価し、リスク管理しているべき筋合いのものです。
財務省、あるいはマス「ゴミ」あたりから、「財務省の外為特会から韓国への緊急融資を行え」といった議論が出てくることを、私は一番警戒しているのですが、これについては麻生太郎副総理兼財相がキッチリと〆てくれることを期待したいと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
おお超詳しく解説して頂きありがとうございました!
因みに韓国が金融危機を招いた場合連鎖的に影響を受ける国はあるのでしょうか?
また韓国からの経済難民防止の政策、何故これほどまでに韓国は金融危機を放置して来たのかも知りたいところです。
連続コメントしてすいません、朝からミサイルで起こされた上に最近のブログの内容やコメント欄が面白過ぎてついつい過剰投稿してしまいました。(なお自制する気は無い模様
むるむる さん
具体的な数字は出せないのが、苦しいのですが・・・。
韓国で金融危機が起きた場合、
『日本の銀行』の中に危機に陥るのが確実とされる銀行が
数行あるとされています。
この後は、新宿の会計士さんの分野なので、私は無資格者だと
思いますが、恥・誤謬を覚悟に書きます。
一番大きなところで、『みずほ銀行』。
確か、サムソンとズブズブで現在でも
とんでもない関係をもっているはずです。
(検索中に るいネット という存在を発見しましたので
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=301696
ご参考までに。)
次に、韓国の貯蓄銀行を買った日本の銀行。
金余りにも関わらず、融資姿勢を変えない日本の銀行が
高金利確保を目指して韓国の貯蓄銀行を買いまくった
みたいですが、好調という話は聞きません。
更に、韓国のサラ金(?)に貸し込んでいる銀行。
不良債務者の巣窟の韓国のサラ金にここ、2年程、
積極的に貸し込んでいるみたいです。
書くべきことが最初のイメージとは異なってきて
しまいましたが、とりあえず、
韓国の金融危機の影響は確実に日本に大きく
のしかかることは確かです。
さらに、どことは言えませんが、韓国が
大型案件を受注した国も厳しくなるのでは、
韓国も中国に負けじと開発資金融資・供与と
バーターで大型案件を請け負ってきましたから、
資金がショートしたら、案件は中断、中止という
結果になるはずです。
内容も形式もグダグダですみません。
日本の銀行は預貸率(預金に対する貸出の比率)が低く、必然的に債券(ボンド)での投資が多くなる。このため、日本の銀行(とくに地銀や信金)にとっては国債、地方債などの円建ての公債の重要性が高く、ここ数年は融資を伸ばすよりもJGBのディーリングで稼ぐ銀行が多かったのも事実でしょう。
ところで韓国の場合は企業や民間銀行、KEXIMあたりが円債市場で巨額の起債を相次いで行っているので、これらの債券を買っている銀行や信金は日本には結構多いです。但し、この辺りの運用スタンスは各金融機関ごとに違うので、一概には言えないが、有名どころで言えば某東日本の第二地銀、某四国の信金辺りは韓国などのどぎついネームが大好きで、相当にしこたまに買い込んでいると聞く。
ちゃんとリスク管理をやってる地銀クラスだと韓国ネームに手を出すことはないが、韓国の債券を買っているところは中小の金融機関に多いのではないかと思います。
あと上の方でシステム障害で有名な某メガの名前が出てますが、ここは「柔らかい銀行」などに対しても巨額のエクスポージャーを持っているみたいですし、叩けば幾らでも埃が出そうですね。(笑。)
銀行員さん
グダグダダメダメの尻拭いをして頂き、
誠に申し訳ありません。そして、ありがとうございました。
しかし、ウォール街的な金融工学的な利ザヤ稼ぎ中心の
資本主義には絶対に反対なのですが。
日本の都銀の融資の際の調査能力ってどうにかならない
ものでしょうかね?
かれこれ確か25~30年程前、
『日本の銀行と保険業界には調査能力がない』と
アチラコチラで言われましたが、外部的に見ている
限り、進歩がないように見えます。
かえって、地元の信金、農協の方が個別事情まで
考慮して、融資金額を査定する。
冒険的取引が背任罪になりかねず、金融庁さまの
ご機嫌を考えれば、『石橋を叩いても渡らない』
というのもわかりますが、本来、下流にお金を
流して、みんなで豊かさになろうという銀行の
一方の理念はもはや、画餅なのでしょうか?
そう言えば、10年程前でしょうか、
大学で同期だった都銀のスーパーエリートに
『下流に金流せよ』って言ったら、
『そんなことするより日銀の当座口座に置いて
おいた方が儲かるんだから・・・』と言われたのを
今でも鮮明に覚えていて、その言葉を聞いた時の
失望感は、銀行の商売が問題となる度に甦ります。
決して、叱責とか侮辱の意はありませんので、
御海容の程を平にお願い申し上げます。
※Tombiさん
(農協って)
農協の理事は、世界経済や投資が何も分からぬ田舎のおっさんたち。格付け会社のAAAとか言われて、じゃんじゃん屑債券に投資して大損していなかったですか? 農協の親玉 農林中金TOPの投資失敗=莫大な損失は、最悪だったんじゃありませんか
(信用金庫)
信金・信組がじゃんじゃん潰されて、残った信組は優秀なんでしょうか?
古トピック引っ張り出して、申し訳ありません。
管理者:会計士様には公私ともにご多忙のところ、毎日の更新に感謝申し上げます。
本日、このような中央日報記事に接し、一言コメントせずには居られませんでした。
http://japanese.joins.com/article/005/234005.html?servcode=100§code=120&cloc=jp|main|top_news
記事掲題は「また危機がくれば日米は通貨スワップに応じるのか」とあります。
掲題からして随分な「タカビー」で、云わば「韓国が再び経済危機に陥ったとき、日本はカネを融通する気が有るのか?」との、主旨のようですが、その質問には明確に「無い!」との結論で全く問題ないでしょう。
会計士様の過去歴概説のように、国家間スワップとは「互いの国家的経済危機に際して、互いに金融支援を行ない合う約束」、と解しています。
韓国はまもなく、中国と交わした中韓スワップが10月10日に期限を迎えるとのことです。本日は10月2日。あとほぼ1週間しかありません。いま、中韓関係は嘗てないほど対立、対峙しています。ここ、この時点で中国からは期間延長の兆しもないところをみると、最早この更新は途絶えたものと見えます。
1992年の第一次韓国金融危機の際、「わざわざ時の副首相様が日本に出向き、三塚蔵相(当時)に支援要請に行ったのに、門前払いを食らった…」とのこと。更にはその結果、危機に陥り、当時の韓国内外貨準備額250億ドルのうち、100億ドルを日本が引き上げたせいで「国が潰れそうになった…」。だから、この危機の原因は日本にある…、とのイチャモン、とは…。
「晴れの日に傘を貸し、雨の日に引き上げる…」のが金融機関の常套手段、とはいえ、日本は「雨の日に傘を奪った…」訳が無い。事実には「100億ドルの金融支援を行なっている」。世界銀行でさえ総額100億ドルであったのに、日本1国でそれと同額の支援をしているのに、「門前払い…」などと、この云われようはなんなのだか…。
慰安婦、徴用工、何をどうしても日本には徹底した反意で抗い、更には、今にも火が灯きそうな対北情勢で国家・国体維持が焦眉の急であろうのに、この態度。
最早この国は、経済的破綻に追い込んで潰してしまったほうが、世界平和構築には効果的、なのでは。