韓国が様々な統計をごまかしているのではないか―。私は、このような観点から、韓国政府・韓国銀行のウェブサイトにアクセスし、時々、「分析の専門家」の立場から、いくつかの統計をチェックしています。分析対象のデータは様々ですが、本日はこれらの中から、資金循環統計と観光統計をもとに、いくつかの関連情報と併せて、この国が基本的な統計をごまかしている可能性が高いことを確認してみましょう。

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    はじめに

    経済統計の重要さ

    人間の体が複雑であるように、現代社会は複雑化しており、こうした複雑な社会できちんと政策を舵取りしていくためには、様々な経済指標を参考にする必要があります。

    例えば、日本の場合だと、たいていの人は年に1回、「健康診断」を受けていると思います。年齢によっても検査項目は異なりますが、成人の場合、血圧や心音、尿検査、あるいは腹部エコーなどの様々な項目から、病気の兆候がないかどうかを確認する必要があります。

    経済もこれと全く同じで、GDP統計、輸出入統計、有効求人倍率、失業率統計、物価統計、対外資産負債統計など、様々な統計が存在しており、これらの項目を総合的に判断して、ある国の経済が健全であるかどうかを見極める必要があります。

    経済統計をごまかす2か国とは?

    ところが、健康診断と経済統計には、一つ、大きな違いがあります。それは、健康診断は医師などの第三者が行うため、「ごまかし」は効きませんが、経済統計については「ごまかそうと思えばごまかせる」、という点です。もっと言えば、実際にごまかしている(またはその疑いが強い)国が、地球上に少なくとも2か国存在します。

    その典型的な事例は、中国でしょう。中国は2016年第Ⅲ四半期(7-9月期)のGDP成長率が6.7%となったと報じられていますが、まともな市場関係者のなかで、こうした統計を信じている人は皆無でしょう。というのも、GDP統計の場合は、粉飾したとしても他国の輸出入統計と整合性が取れなくなるため、比較的「ウソ」が露呈しやすいからです。特に中国の実質的な経済成長率を判断するには、たとえば「李克強(りこっきょう)指数」と呼ばれる数値などで見る、という市場関係者も増えています。このように、中国のGDP統計が極めて怪しいという点は、既に数年前から、市場関係者をはじめとする各方面から指摘されているところです。

    しかし、私たちの隣国である韓国(South Korea)については、日本国内でもそれほど深くウォッチしている人がいないらしいのですが、それでも「金融規制の専門家」としての視点で見ると、いくつかの重大な「ごまかし」が含まれているように思えてならないのです。

    そこで、本日は基礎的な統計データである「資金循環統計」と「韓国観光統計」の二つを題材に、この国が経済統計を「粉飾」している可能性について、検討してみたいと思います。

    韓国の資金循環統計の「ごまかし」

    大きすぎる「その他」項目

    世の中には「資金循環統計」(Flow of Funds)という統計が存在します。これは、わかりやすく言えば、ある国の中で、「誰が」「誰に」「どのような形態で」「いくら」お金を貸しているかを示した統計です。

    ある人から見た金融資産は、他の人から見ると金融負債であり、世の中に存在する全ての金融資産の金額を足しあげれば、金融負債の金額と一致するはずです。

    ところで、以前も当ウェブサイトで議論したとおり、どうやら韓国はこの「資金循環統計」の重要な部分を「粉飾」しているようなのです。問題の個所を再録しておきましょう。

    なお、本日は仮に参考値として円換算、ドル換算のものを掲載する場合、ざっくりと1円=9ウォン、1ドル=110円、1ドル=1000ウォンと仮定します。

    図表1 韓国と外国との資金授受
    区分 項目 金額(十億ウォン)
    韓国から外国への投資等 外貨建債券 120,327
    株式等 185,554
    対外直接投資 341,518
    その他外国債権債務 603,793
    上記以外 133,695
    合計(①) 1,384,887
    外国から韓国への投資等 対外直接投資 210,085
    国内債券 95,825
    外貨建債券 141,362
    株式等 421,897
    その他外国債権債務 165,873
    (上記以外) 82,746
    合計(②) 1,117,788
    対外純債権 ①-② 267,099

    この図表は、韓国銀行のウェブサイトに掲載されている資金循環統計が出所ですが、ここでポイントは二つあります。

    一つは、「韓国から外国に投資している金額」に含まれている「その他外国債権債務(Other Foreign Claims and Debts)」という金額です。この金額は604兆ウォン(約67兆円、約6000億ドル)というもので、韓国の外国に対する投資残高(1385兆ウォン、約154兆円、約1兆3840億ドル)の半額を占めており、また、対外純債権(267兆ウォン、約30兆円、約2670億ドル)と比べても非常に巨額です。

    もう一つは、「外国から韓国に投資している金額」にも同じく「その他外国債権債務」という金額が含まれていますが、この金額は166兆ウォン(約18兆円、約1660億ドル)に達しており、韓国が外国から資金調達している金額(1118兆ウォン、約124兆円、約1兆1178億ドル)の15%程度を占めています。

    資産側の「その他」の正体とは?

    通常、資産側にせよ負債側にせよ、「その他の外国債権債務」という項目が、ここまで巨額に達することはありません。しかし、韓国の場合、「その他の外国債権債務」という項目は対外投資残高の半額(日本円に換算して約67兆円!)にも達しており、どう考えても異常です。

    これについて、より詳細に検討するために、「保有主体別の内訳」を眺めてみましょう。

    図表2 「その他の外国債権債務」勘定の保有主体別内訳
    保有主体 金額(十億ウォン) 円換算
    中央銀行 374,232 約42兆円
    民間銀行 104,125 約12兆円
    ノンバンク 38,059 約4兆円
    一般政府 65,574 約7兆円
    上記以外 21,803 約2兆円
    合計 603,793 約67兆円

    何と、604兆ウォン(約67兆円)のうち、実に374兆ウォン(約42兆円、約3740億ドル)は、中央銀行が保有しています。これはいったい何でしょうか?

    通常、中央銀行のバランスシートには、資産側には流動性の高い項目が計上されます(日本の場合だと大部分が日本国債です)。しかし、韓国の中央銀行である韓国銀行には、日本円換算で、実に42兆円もの「正体不明の資産」が計上されているのです。もしかすると、これは「流動性のない不良資産」ではないのでしょうか?

    ちなみに、Bloombergのデータによると、韓国は2016年6月末時点で371兆ウォン(約41兆円、約3710億ドル)の外貨準備を保有しているそうですが、外貨準備の金額と「その他の外国債権債務」の金額が、ほぼ一致しています。

    以前から市場では「韓国の外貨準備は流動性がない資産で占められているのではないか」とする噂が流れているのですが、韓国の資金循環統計を読む限りは、このような噂が流れても不思議ではないほど、韓国の外貨資産の内訳が不透明であることは間違いありません。

    通常、外貨準備の金額は「その他の外国債権債務」ではなく、「金・SDR」や「対外証券投資」に含められます(ただし、資金循環統計の性質上、両者を厳密に紐付けることはできません)。しかし、韓国の場合は「その他の外国債権債務」勘定の金額があまりにも大きすぎること、および外貨準備の金額と「その他の外国債権債務」勘定の金額がほぼ一致していることから、私は韓国が「流動性のない有価証券を外貨準備に組み入れている」とする仮説にも、かなりの信憑性があると考えています。

    負債側の「その他」の正体とは?

    一方、資産側ほどではないにせよ、負債側の「その他の外国債権債務」の金額も巨額です。金額は166兆ウォン(約18兆円)で、これは韓国全体の対外債務の金額(1118兆ウォン、約128兆円、約1兆1178億ドル)に占める比率は15%であり、決して無視できる比率ではありません。

    私は、この「その他の外国債権債務」が外国からの借入金(とくに日本の民間銀行からの借入金)ではないかとの疑いを持っています。というのも、「その他の外国債権債務」勘定でお金を借りている主体は、韓国国内の金融機関と企業だからです。

    韓国銀行が公表する「資金循環統計」をそのまま信頼するならば、短期的に韓国から資金流出する可能性がある「外貨建債券」の金額は141兆ウォン(約16兆円、約1414億ドル)です。しかし、この「その他の外国債権債務」が「外国の銀行からの借入金」だと仮定すれば、これも「短期的に韓国から資金流出する可能性がある金額」です。そうだとすれば、通貨危機の際に韓国から逃げ出してしまうかもしれない金額は、韓国が公表しているよりもずっと巨額です。

    そこで、韓国で借入主体別に、どのような形でいくら資金調達しているのかをまとめてみましょう(図表3。なお、①が外債、②が「その他の外国債権債務」を意味する)。

    図表3 金融機関と企業が借りる「外債」と「その他の外国債権債務」
    主体 金額(十億ウォン) 円換算
    銀行等 ①70,150
    ②112,305
    ①+②:182,455
    ①約8兆円
    ②約12兆円
    ①+②:約20兆円
    企業 ①47,255
    ②42,019
    ①+②:89,274
    ①約5兆円
    ②約5兆円
    ①+②:約10兆円
    その他 ①23,956
    ②11,549
    ①+②:35,505
    ①約3兆円
    ②約1兆円
    ①+②:約4兆円
    合計 ①141,361
    ②165,873
    ①+②:307,234
    ①約16兆円
    ②約18兆円
    ①+②:約34兆円

    つまり、韓国が通貨危機になった時に、短期的に韓国から「逃げ出す」可能性のある金額は、307兆ウォン、日本円換算で約34兆円、米ドル換算で約3000億ドルです。

    韓国は実質「債務超過」国

    図表3に示したのは、あくまでも私が客観的なデータを読み込んだときに抱いた「違和感」をベースに、財務分析の専門家として再構成したものです。上記図表1で見たとおり、韓国は267兆ウォン(約30兆円)の「対外純債権」を抱えているようにも見えますが、その実態は「資産性があるのかどうか疑わしい」項目で占められています。

    そこで、仮に、資産側の「その他の外国債権債務」が不良資産だったと仮定し、負債側の「その他の外国債権債務」が「外貨建借入」だったと仮定すると、図表1を図表4の通り、書き換えることができます。

    図表4 韓国の実態バランス
    区分 項目 金額(十億ウォン)
    韓国から外国への投資等 外貨建債券 120,327
    株式等 185,554
    対外直接投資 341,518
    「その他」 603,793⇒ゼロ
    上記以外 133,695
    合計(①) 1,384,887⇒781,094
    外国から韓国への投資等 対外直接投資 210,085
    国内債券 95,825
    外貨建債券 141,362
    株式等 421,897
    「その他」⇒外貨建借入 165,873
    (上記以外) 82,746
    合計(②) 1,117,788
    対外純債権 ①-② 267,099⇒▲336,694

    いずれにせよ、資金循環統計一つとってみても、韓国の統計にはウソがかなり混じっているのではないかとの疑いを抱かざるを得ません。

    観光統計でもウソをついているのか?

    もう一つのネタは、「観光統計」です。

    先日掲載した『「中国に飲み込まれる韓国観光」2016年11月版』という記事の中で、韓国観光公社ホームページ(※韓国語)に掲載された「韓国観光統計」の11月版(10月までのデータ)を加工して分析しました。

    2016年10月までの累計データ(12か月ベース)

    先日の記事の再録ですが、「韓国観光統計」とは、韓国に入国した外国人の国籍別データです。ここで、「前年11月から当年10月までの12か月間の累計値」で、最新の韓国に入国した外国人数を確認しておきましょう(図表5)。

    図表5 韓国に入国した外国人【前年11月から当年10月まで、単位:千人】
    年度 入国者 日本 中国
    2007 6,075 2,264 1,020
    2008 6,475 2,264 1,177
    2009 7,502 3,048 1,313
    2010 8,369 3,010 1,824
    2011 9,172 3,163 2,142
    2012 10,845 3,673 2,770
    2013 11,703 2,787 4,175
    2014 13,538 2,368 5,798
    2015 12,898 1,863 5,893
    2016 16,580 2,212 7,988
    図表6 韓国に入国した外国人【前年11月から当年10月までの12か月間累計値、単位:千人】

    20161122-sk-visit-12m

    以上から、次のことがわかります。

    • 2016年における外国人の韓国入国者数は約1658万人で、2015年の数値(約1290万人)と比べると約368万人増加している
    • 2016年における日本人の韓国入国者数は約221万人で、2015年の数値(約186万人)と比べると改善しているが、2014年の数値(約237万人)より落ち込んでいる
    • 2016年における中国人の韓国入国者数は約799万人で、2015年の数値(約589万人)と比べ、さらに200万人以上増加している

    中国人観光客の激増

    ところで、近年、日本にも韓国にも、怒涛のように中国人観光客が押し寄せて来ています。『訪日観光客2000万人計画に「穴」はないのか?』の中でも指摘しましたが、日本の場合も、訪日外国人に占める中国人の割合は、2016年8月までの1年間で見て、27%にも達しています。

    しかし、韓国の場合は、入国者全体に占める中国人の割合は、2016年10月までの1年間で見て、実に49%に達しており、「過度な中国依存」の度合いは韓国の方が大きいでしょう。

    加えて、日本の場合は中国人観光客に付与される「観光ビザ」の要件が厳しく(図表7)、訪日中国人は2016年8月までの1年間で見て613万人であり、同じ時期の訪韓中国人数(799万人)を186万人も下回っています。

    図表7 日本の中国人観光客に対する観光ビザ
    区分 概要 備考
    団体観光ビザ 中国の関連法令に基づく「団体観光」の形式をとり、滞在期間は15日以内 「団体観光ビザ」の場合、添乗員なしの自由行動は認められない
    個人観光一次ビザ 団体観光の形式をとらない「一次ビザ」(ビザ一枚につき1回しか入国できないビザ)。滞在期間は15日または30日以内 事前に旅行日程を作成して中国の旅行会社を通じてビザを申請する
    沖縄県数次ビザ/東北三県数次ビザ 1回目に沖縄県や東北三県で1泊以上するなどの要件を満たした場合に発給される、何度でも日本に入国できるビザ。有効期間3年、1回の滞在期間は30日以内 1回目の訪問のみ旅行会社を通じてビザを申請すれば2回目以降は旅行会社に旅行手配を依頼する必要はない。発給対象者は十分な経済力を有する者とその家族などに限られる
    相当な高所得者用数次ビザ 有効期間5年、1回の滞在期間90日以内の数次ビザ 1回目だけ旅行会社を通じてビザを申請すれば2回目以降は旅行会社に旅行手配を依頼する必要はない

    (【出所】外務省ウェブサイト

    これに対して韓国の場合、済州島(さいしゅうとう)を訪れる中国人に対しては、観光ビザが免除されているらしく(例えば次の記事も参照)、中国人の韓国訪問者数が日本訪問者数を200万人近くも上回っているのには、こういう背景もありそうです。

    済州島で中国人の犯罪増加 ビザなし廃止の声高まる=韓国(2016/09/19 17:43付 聯合ニュース日本語版より)

    つまり、犯罪が急増するほどたくさんの中国人が済州島を訪れている、ということです。日本の場合、沖縄県や東北地方を訪問した場合の優遇措置は設けられていますが、中国人観光客が「ビザなし」で訪問できる地域はありません。

    中国人入国者数自体は日本よりも韓国の方が200万人近く上回っているのですが、それは韓国が「ビザなし観光」「失踪中国人」という社会的コストを払ってまで獲得しているものだ、という言い方もできるでしょう。

    トランジット・ツアーという怪

    以上から、韓国を訪問する中国人観光客が「本当に」激増していることは事実でしょう。というのも、中国人の済州島へのビザなし訪問を認めるなど、韓国は中国人に対するビザの免除プログラムを日本よりもさらに緩和しているからです。

    ただし、中国人入国者「以外」に関していえば、やはりこの国の統計には、ある程度の「インチキ」が含まれているのではないかとする疑念を払拭することはできません。そのうちの一つは、「トランジット・ツアー」と呼ばれるものです。

    韓国にある仁川(じんせん)国際空港では、乗換(トランジット)客を対象に、「トランジット・ツアー」と称して、たとえば、次のようなサービスが提供されています。

    「ご出発まで2時間以上の余裕がある方は無料のトランジット・ツアーにご参加して素敵な思い出を作ってください。トランジットツアーバスでは各言語の通訳サービスを提供しており、伝統文化と大衆文化を体験することができます。」

    このトランジット・ツアーには、たとえば「韓国の伝統文化と歴史を観覧できるソウル市内の王宮・博物館ツアー」「弘大入口周辺のカルチャーストリート観覧」といった項目が含まれていますが、これに参加したければ、仁川国際空港のトランジット・エリアから韓国に入国する必要があります。

    したがって、韓国入国者にこの手の「トランジット・ツアー」参加者が含まれていることは間違いありません。

    昔だと、日本の地方在住者がニューヨークやパリのような観光地に出掛ける時に、仁川国際空港を「乗継空港」として使っていたことがありますが、訪日観光客数が急増していることを受けて、欧州や米国からの観光客が仁川国際空港を「乗継空港」として使う事例も増えているのではないかと推察されます。あくまでも状況証拠ですが、韓国の「日本人・中国人以外の入国者数」が増えている理由には、「日本観光を主目的とする欧米人観光客が仁川国際空港をトランジットで利用し、そのついでにトランジット・ツアーに参加している」、という仮説にも説得力があります。

    ツアーに参加しない人も入国者にカウントされているのか?

    ところで、韓国入国者数に「トランジット・ツアー」参加者が含まれていることは間違いないのですが、「トランジット・ツアーに参加しない観光客(純粋なトランジット目的の観光客)」まで「韓国入国者」にカウントされているのかどうかは、よくわかりません。

    一般に、単なる乗継の場合は、入国扱いとなりません。ただし、米国の場合は乗継の場合でもいったん米国に入国する手続が必要であり、また、乗継で立ち寄った先(たとえば香港やロンドンなど)では入国してしまうことも可能です。

    私の長年の疑問は、韓国の入国者統計に「トランジット客そのもの」が含まれているかどうか、ですが、これについては現段階では、「その疑いがある」とだけ申し上げるにとどめるべきでしょう。

    日本から韓国へ「トランジット目的」の渡航は年70万人?

    ところで、私は以前、仁川国際空港のウェブサイトを通じて、日本の各都市との間で、一週間あたりの片道運航便数を調べてみたことがあります。少し古いデータですが、昨年11月時点で調べたところ、次のことが判明しました。

    • 仁川国際空港に直通便が飛んでいる日本の空港は、合計で25空港
    • 一週間の合計便数は片道615便
    • 便の9割近くは、関空、成田、福岡、名古屋、沖縄、新千歳、羽田の7つの空港に集中
    • それ以外の日本の地方空港から韓国に出ているのは、一週間で片道68便

    そして、「トランジット」需要は、多くの場合、「地方空港」で発生します。

    例えば、地方に居住する人が海外旅行(パリ、ニューヨークなど)に行きたくても、自分が住んでいる場所から成田、関空などの大空港から離れていることがあります。そのような場合に、自分の最寄りの空港から韓国・仁川国際空港に飛び、そこで乗り換えて最終目的地(パリ、ニューヨークなど)に向かう、という利用方法があります。

    その意味で、この「一週間で片道68便」の地方空港便は、「典型的なトランジット目的の便」として利用されているのではないでしょうか?

    仮に、1便の輸送定員が250人、搭乗率が8割、搭乗者の半数が「トランジット目的の日本人」だったと仮定すると、一週間で13,600人、年間707,200人が韓国を「トランジット目的」で訪問している計算です。その論拠は次の通りです。

    • 1便当たりのトランジット目的の日本人:250人×80%×50%=100人
    • 年間のトランジット目的の日本人旅客数:100人×68便×往復×52週=707,200人

    そして、「トランジット目的の訪韓日本人数」が70万人で、うち半数(35万人)がトランジット・ツアーに参加していたと仮定すれば、「トランジット・ツアー参加者を除いた実質的な日本人の韓国入国者数」は図表5に示したものより、さらに減少します(図表8)。

    • 図表8 トランジット・ツアー参加者を除外した場合の訪韓日本人数(仮)
    年度
    2007 2,264 1,914
    2008 2,264 1,914
    2009 3,048 2,698
    2010 3,010 2,660
    2011 3,163 2,813
    2012 3,673 3,323
    2013 2,787 2,437
    2014 2,368 2,018
    2015 1,863 1,513
    2016 2,212 1,862

    (注:①が韓国観光公社の発表する数値(前年11月から当年10月までの累計値、千人)、②が①から35万人を引いた数値)

    いずれにせよ、日本人の韓国入国者数はMERS騒動があった2015年と比べると「持ち直し」が見られるものの、実質的には長期低落傾向が続いているため、こうした傾向が今後も続いていくのかどうかについては、今後も興味を持ってウォッチしていきたいところです。

    基礎的な統計をごまかすな!

    以上、「資金循環統計」と「韓国観光統計」の2つの統計を題材に、韓国が経済統計をごまかしている可能性が高い、という点について議論しました。

    特に「資金循環統計」について、「その他の外国債権債務」が対外投資の半額以上を占めているというのは、どう考えても異常です。どうしてこれを誰も指摘しないのかが不思議でなりません。また、「韓国観光統計」については、「単純トランジット客」を入国者数にカウントしているかどうかはわかりませんが、その疑いは濃厚です。また、トランジット・ツアーに参加している観光客を「韓国入国者」に含めていることは間違いありませんが、入国者に占める「トランジット・ツアー参加者の割合」などについて、韓国当局が明らかにしていないことも問題でしょう。

    ところで、冒頭に「たとえ話」として、「人体と健康診断」の関係を指摘しましたが、「経済と経済指標」の関係も、実は全く同じです。

    つまり、経済が全く健全ではないのに、あたかも健全であるかのような経済指標を装うと、実態が見えなくなり、適切な対策が取れなくなる、ということです。

    韓国の場合は、とくに外貨ポジションが慢性的に不足しがちであるという深刻な問題を抱えています。韓国の通貨当局が、韓国ウォンの国際化を怠ってきたことが最大の原因ですが、これに加えて韓国経済は貿易依存度が極めて高く、「ウォン高になれば輸出企業の輸出競争力が落ちる」、「ウォン安になれば外貨調達ができなくなる」、というジレンマに陥りやすいのです。これに加えて「外貨準備の中身も怪しい」となれば、2008年のリーマン・ショックのような危機が再来すれば、韓国経済はひとたまりもありません。このように考えていけば、韓国が「日本との」通貨スワップを必要としている真の理由は、おのずと明らかになるでしょう。

    いずれにせよ、日本に近接する国が、基礎的な経済統計をごまかしている可能性がある以上、経済評論を行う上では、これらの要因をしっかりと考慮していくことが重要だといえるでしょう。

    ※本文は以上です。

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