指名手配に「逆ギレ」ロシア、ICC関係者を指名手配

国際刑事裁判所がロシア大統領であるウラジミル・プーチンに対する逮捕状を出したことに逆ギレし、ロシア内務省はICCの判事や裁判所長らを「指名手配」したそうです。ということは、このICCの逮捕状は、プーチンを相当に焦らせている可能性がありそうです。もしロシアがICC逮捕状を気にしていなければ、無視すれば済む話だからです。

ICCから指名手配されているプーチン容疑者

ロシア大統領のウラジミル・プーチンは現在、国際刑事裁判所(ICC)から指名手配されています。

Situation in Ukraine: ICC judges issue arrest warrants against Vladimir Vladimirovich Putin and Maria Alekseyevna Lvova-Belova

―――2023/03/17付 ICCウェブサイトより

ICCによると、プーチンの犯罪容疑はロシアが占領したウクライナの領域から子供を違法に移送したという戦争犯罪であり、この逮捕状に基づき、ICC加盟国はプーチンが国内に入境したら、基本的には逮捕して身柄をICCに送致するなど、捜査に協力する義務があります。

ちなみにICCの設立根拠となっている国際条約(ローマ規程)に加盟している国は、欧州連合(EU)加盟国や豪州、ニュージーランド、カナダ、日本、南米各国、さらにはアフリカの半数以上の諸国ですが、残念ながら、ロシアと米国、中国、インドなどは加盟していません。

もう国際サミットに出られない?ロシア

ただ、G20諸国に関してはローマ規程に加盟している国も多く、たとえば今年の「BRICSサミット」議長国だった南アフリカや来年のG20議長国であるブラジルは、ローマ規程に加盟しています。

【参考】ローマ規程加盟国

(【出所】ICCウェブサイト

ICC逮捕状のプーチン、BRICSサミットから逃亡』などでも触れたとおり、プーチン自身、今年のBRICSサミットに参加しなかった理由は、このローマ規程に基づき身柄を拘束されることを恐れていたからなのかもしれません。

ちなみに今年のインドのG20サミットでもプーチンは姿を見せなかったようです。

プーチンがインドでのサミットを欠席した理由は、インド、ロシア双方ともに明らかにしていないそうですが、想像するに、このICC逮捕状が関わっているのかもしれません。

インドはローマ規程に加盟していませんが、ローマ規程加盟国も多いG20で他国の首脳からの突き刺すような目にプーチンが耐えられなかったのか、あるいはインドのモディ首相が「今回は参加を辞退してくれ」と依頼したのかはわかりません。

また、このままだと来年のブラジルG20サミットもプーチンは不参加となるのでしょうか(それまでプーチン政権、あるいは「ロシア連邦」という国家が存続しているかどうかはわかりませんが…)。

ロシア内務省、ICC関係者を「指名手配」

さて、こうしたなかで、「犯罪者は逆ギレする」というのは、もしかしたら人類普遍の行動原理なのかもしれない、などと思えるような話題がありました。

International Criminal Court judge who issued arrest warrant for Putin wanted by Russia

―――2023/11/08 07:39付 タス通信英語版より

ロシアのメディア『タス通信』(英語版)によると、ICCのセルジオ・ジェラルド・ウガルデ・ゴディネス判事がロシア内務省の指名手配者データベースに追加されたのだそうです。

なんだか、これだけでもずいぶんと強烈な話題です。

ちなみにタス通信によると、ICC検察官や裁判官はすでにロシア国内で3月20日時点で刑事告発されていたらしく、そのなかには今回「指名手配」されたゴディネス判事だけでなく、カリム・アハマド・カーン検事、ロザリオ・サルバトーレ・アイタラ判事、赤根智子判事らも含まれているのだそうです。

カーン検事、アイタラ判事、赤根判事の3名に加え、ピュートル・ホフマンスキー裁判所長、ルス・デル・カルメン・イバニェス・カランザ裁判所第一次長、ベルトラム・シュミット判事、さらにはも刑事責任を問われ、「指名手配」されているのだそうです。

そのうえでタス通信は、「1973年12月14日の条約で、国家元首は外国の司法権からの絶対的な免責を享受している」などとしています。

ロシアの余裕のなさの証拠

もっとも、当たり前の話ですが、ロシアの司法権は日本、EU、英国、米国、豪州などには及びませんので、指名手配されたゴディネス判事、カーン検事、赤根判事らはロシア(かその協力国)に立ち入らなければまったく問題ありません。

ただ、これをわざわざ記事として配信するということは、プーチンがそれだけ焦っているという証拠なのかもしれません。

もし本気で焦っていないのであれば、そもそも相手にしなければ良い話だからです。

このあたり、口では強がっていても、現実の行動がそれと整合していないというのは、ロシアのみならず、中国、北朝鮮など、「日本近隣の4つの無法国家」の共通点かもしれません。

いずれにせよ、これらの無法国家群、(侮ることは厳に慎まなければならないことは間違いないにせよ)私たち日本人が思っているほどは賢くないことだけは間違いないでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. たろうちゃん より:

    何故か「お前の母ちゃん出べそ!」っていう悪口を思い出した。プーチンの戦争でロシアが失ったものは、あまりにも大きい。しかし国際的な指名手配犯の意趣返しをするとはプーチンも子供じみているな。それだけ余裕がないのか、恨みがましい性格名のか。イスラエルvsハマスの戦争で米国やユーロ圏の支援疲れがみえる。岸田のバカがATMぶりを発揮しなければいいがそうなるとプーチンが笑う。困ったな!

  2. 雪だんご より:

    プーチンが何をしたいかなんて、もう本人にすら分からないのかも?
    影武者説やら痴呆説やらいろんな事が噂されていて、真実なんてさっぱりわかりゃしない。

  3. 伊江太 より:

    ロシアのみならず、中国、北朝鮮など、「日本近隣の4つの無法国家」が、その悪行を海外から非難されたとき、いかなる詭弁を弄してでも自己弁護を試みるのみか、逆ギレして報復措置を仄めかし、ときに「脊髄反射的」にそれを実行して見せるというのは、大体お約束のようなものですね。

    ただ、今回ロシアが執った措置に関する報道には、なんかそのような類いのものとは違った雰囲気を感じます。

    まず、その時期。ICCへの報復だとすれば、なぜ判決から8ヶ月も経った今になって、ことさらにこんなことやりますと報道するのか?

    そして、その意味。実は「脊髄反射的」報復は疾にやってると記事の中で明かしながら、さらにまた、やってますよと念押しするような報道をして、何のメリットがあるのか。

    タス通信の記事は、淡々と事実を伝えているだけで、こんなほとんど実効性がない措置でも、再確認しておかなければならない「新しい事情」が生じたといったことには、一切触れていません。

    大体、外からの非難で「痛いところを突かれた」と内心忸怩たる想いがあるときには、その痛みに応じた激烈さで、その場ではキャンキャン悪態はつくのは、国柄からして当然ではあっても、あとは沈黙を守って、非難を受けた事実そのものが風化するのを待つというのが、よほどの馬鹿でない限り、賢いやり方というものです。IAEA総会で高市早苗氏に「核汚染水」の言いがかりを論破されて以来、中国がこの件に関して何も言わなくなったなんてのは、その好例でしょう、

    それを自らほじくり返す。これ実は、ICCへの攻撃に見せて、ホントの狙いは別のところにあるんじゃないかという気がするんですよね。それが何かと言えば、「プーチン大統領は、児童誘拐の罪で国際的犯罪人とされている人物なんだよ」ということを、ロシア国民に周知させるのが真の狙いとは考えられないか? 反プーチンの陰謀を企んでる内務省内の一部の連中が、一見忠誠を装いながら、プーチンのネガティブイメージを広めることを本当の目的として、国営通信社を使って出させた報道ではないかなんて、つい深読みしてみたくなりました。

    1. さより より:

      伊江太さま

      伊江太さんのコメントは面白いですね。
      このコメント、OSINTですね。OSINTは、一般的に、以下のように説明されています。

      >>OSINTは「合法的に入手できる資料」を「調べて突き合わせる」て、具体的には、対象国の新聞社交欄、ニュースの断片、人事の異動発令、発表報道などを丹念に集積し、分析するなどして、変化・傾向・異変などを感知すること。<<

      良く言われるのは、CIAにしてもMI6にしても、情報収集の90%以上は、OSINTであると言われていますね。だから、MI6などは、一般求人広告で職員の募集をしたりするのではないか、と思っています。

      我々も、こういうことは直感的に良くやっています。
      「部長、最近少し変だぞ」と話していたら、離婚協議中だったりとか。
      微妙な変化を読み取ったり、この情報は誰が出したんだ?とかで、情報の意味付けを考えたりとか。

      そういう点で、この伊江太さんのコメントは、OSINTの情報分析のやり方そのものですね。
      所で、OSINTに向いている人は、少し斜に構えた、良い意味で少し捻くれた人でしょうね。

      1. さより より:

        上記の、
        >変化・傾向・異変などを感知すること。

        に、「底流」を追加します。
        OSINTの一番の目的は、この「底流」を掴むこと。
        表面上の動きや流れとは関係なく、深層では、どんな流れがあるか、起こりつつあるか、を検知し、その流れの強さはどれ程で、それが表層にいつ表れ、本流になるのかならないのか、等々、を探ること。

        伊江太さんの、
        >つい深読みしてみたくなりました。
        とは、まさに、この底流を探ろうということで、OSINTそのものですね。

        面白いですね。

  4. 誤星紅旗 より:

    何か仕返しをしないと収まらない裸の王様とその取り巻きらの焦りが滲み出る微笑ましいエピソードですね。

    国家指導者を駆け引きの材料に揺さぶる胆力をそろそろ日本も回復してよい時期なのかなと思い出したのは、
    通貨偽造や誘拐で告発すれば北の首領にも指名手配ができないものか。ディズニーランド目当てに入国しようとしたドラ息子と愛人にその取り巻きを拘束し拉致被害者と交換する交渉ができなかったものか。色々妄想を膨らませたことがありました。

    戦後の軽武装経済成長優先、事なかれ主義のぬるま湯には心地よさもありましたが、そろそろ寒風吹き荒ぶ世界へ踏み出す覚悟が求められるのでしょう。求められるは乱世の奸雄。胆力ある指導者を選ぶ眼力を磨きたいと思います。

    1. はにわファクトリー より:

      誤星紅旗 さま

      >そろそろ寒風吹き荒ぶ世界へ踏み出す覚悟が

      戦後日本を注視してきた近隣諸国にあっては、今般「変革日本のホンキ度合い」を見極める心境にあると当方は考えています。少しニヤついている気配もな~んとなく伝わって来ます。失われた30年(失落30年)はとっくにリカバーできており、後はアクセルを踏み込む一方のはずですが(事実台湾経済人はこの頃そう考えていると判明)卑下と相互非難で凹んだメンタルから覚醒できているのは誰誰か。海の向こうからこっちを観察していると当方は思っています。

      1. 誤星紅旗 より:

        はにわファクトリーさま
        コメントありがとうございます。
        傍若無人で制御できないチャイナという狼藉者から逃れるための救いの眼差しは、クラスで圧倒的な力を持ついじめっ子に対して萎縮しながらも明日への希望を託す一縷の望みに似た感覚を感じています。東南アジアや台湾などの日本に対する期待にそろそろ応えても良い時期になっていると思います。
        1990年代、ポルポト派の残党が跋扈していたカンボジアPKO派遣で、わずか機関銃1丁で赴いた丸裸に近い陸自工兵部隊が無傷で過ごせたのは旧軍の威光に他なりません。
        日本が本気になったらヤバいという記憶がまだ残るうちに、失敗の本質を踏まえ次の勝ち組として悪の帝国チャイナチへ同盟国と立ち向かう気概を持ちたいものです。

  5. 元雑用係 より:

    ICCといえば先月、アルメニアがICC加盟方針を発表してるんですよね。加盟のための条約の批准だったかと思います。ICCが話題になりました。

    アルメニア、ICC加盟へ向け規程批准 ロシアは反発
    https://jp.reuters.com/world/russia/O6DYWW63HBOMDKP2KPTF65CK5Y-2023-10-03/

    ロシアを後ろ盾にしてアゼルバイジャンにちょっかいを出していたアルメニア、昨年のアゼル反撃ではボロ負けしたのですが、以降もロシアの後ろ盾が機能しないことが鮮明になっています。
    アルメニアの現首相はアゼル内のアルメニア勢力のハシゴを外すなどロシア圏離脱の政策を進めていますが、国内では売国奴呼ばわりされるなど強い批判を受けています。
    自分の政治生命どころか、生命そのものを賭けてロシアとの縁切りを進めているように見えます。在任中に全てケリを付けるつもりなのではないでしょうか。

    参考記事
    脱ロシアを掲げたアルメニア首相、武器調達を含む安全保障政策の多様化
    https://grandfleet.info/european-region/armenian-prime-minister-aims-to-de-russia-diversifies-security-policy-including-arms-procurement/

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告