NATO東進受けロシア政府高官「断固たる対応取る」
フィンランドやスウェーデンがNATOに加盟する見通しがほぼ確実となりつつあるなか、ロシア・クレムリンのペスコフ報道官は昨日、ロシアとNATOの直接の衝突は「避けたい」としつつも、「特別軍事作戦に干渉するならば、モスクワは最も断固とした対応をする準備ができている」と警告したそうです。こうした発言からは、ロシア政府が現在の状況に非常に困っているということだけはよくわかります。
東進するNATO
ロシアがウクライナに軍事侵攻した大きな目的のひとつが、NATOの東進を防ぐことにあったことは間違いありません。外務省の説明によると、1949年に発足した際のNATO原加盟国は12ヵ国でしたが、これが現時点で30ヵ国にまで増えています(図表1)。
図表1 NATOの東進(具体的な国名)
時点 | 国 | 加盟国数 |
---|---|---|
1949年 | アイスランド、米国、イタリア、英国、オランダ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク | 12ヵ国 |
1952年2月 | ギリシャ、トルコ | 14ヵ国 |
1955年5月 | 西ドイツ(現・ドイツ) | 15ヵ国 |
1982年5月 | スペイン | 16ヵ国 |
1999年3月 | チェコ、ハンガリー、ポーランド | 17ヵ国 |
2004年3月 | エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア | 20ヵ国 |
2009年4月 | アルバニア、クロアチア | 27ヵ国 |
2017年6月 | モンテネグロ | 29ヵ国 |
2020年3月 | 北マケドニア | 30ヵ国 |
(【出所】外務省HP『北大西洋条約機構(NATO)』を参考に著者作成)
地図で確認すると、これがジリジリと東進していることがわかります(図表2)。
図表2 NATOの東進(地図表示)
(【出所】外務省HP『北大西洋条約機構(NATO)について』【※PDFファイル】P4)
ソ連・ロシアとほとんど国境を接しなかったNATO
ただ、原加盟国であるノルウェー、1952年に加盟したトルコを除けば、旧ソ連にとってはNATO加盟国とは直接に国境を接していませんでした。そのトルコにしても、1991年にソ連が崩壊し、ロシアの領土が旧ソ連時代と比べて縮小したこともあり、直接に国境を接することはなくなりました。
1999年にポーランドがNATOに加盟したことで、ロシアの「飛び地」であるカリーニングラードがNATO加盟国と国境を接することになったものの、それでもロシア本土はNATO加盟国とほとんど国境を接していなかったのです。
しかし、2004年に旧ソ連構成国だったバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)を含めた諸国がNATOに加盟したあたりで、この状況が変わりました。現在、ロシアはエストニア、ラトビアと国境を接っするようになってしまったからです。
ロシアにとっては、ウクライナがNATO加盟国になってしまうというのは何としても避けたいシナリオだった、というものかもしれません。
フィンランド、スウェーデンの加盟はほぼ確実か
もっとも、ロシアのウクライナへの侵攻目的が「NATO東進の防止」にあったのだとしたら、何とも皮肉な結果が生じつつあります。長年、NATOへの非加盟を守ってきたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟が、いよいよ実現しようとしているからです。
ロイターは昨日、「5人の外交筋と当局者」がロイターに対し、NATO側はフィンランドとスウェーデンが近日中に加盟を申請すると見込んでおり、加盟申請が行われた場合には「迅速に加盟を承認する見通し」だと明らかにした、と報じました。
NATO、フィンランド・スウェーデン加盟を迅速承認へ
―――2022年5月12日10:29付 ロイターより
とくにロシアと1340キロもの長さの国境を接するフィンランドがNATOに加盟すれば、ウクライナのNATO加盟を阻止しようとしていたロシアにとっては、結果的にNATO加盟国との国境線がさらに伸びる、という結果をもたらすことになります。
ウラジミル・プーチンの自己投影
これを受け、ロシア・クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は木曜日、「ロシアのウクライナでの特別軍事作戦に干渉するならば、モスクワは最も断固とした対応をする準備ができている」と警告したのだそうです。
Kremlin warns against attempts to interfere in Russia’s special operation in Ukraine
―――2022/05/12 19:32付 タス通信英語版より
ロシアのメディア『タス通信』(英語版)の報道によると、ペスコフ氏はロシアによるウクライナ領土内での「特別軍事作戦」が進捗している、などとしつつ、ロシアとNATOの直接の衝突については「避けたい」と述べました。おそらくはフィンランド、スウェーデンのNATO加盟を強く牽制した発言でしょう。
タス通信はまた、SNS「テレグラム」にドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)が木曜日、「NATOがウクライナに武器を送り込めばNATOとロシアが対立する可能性が高まる」、「核戦争に発展し、すべての人にとって壊滅的なシナリオになる」と警告した、とも報じています。
ちなみにロシアの当局者による、この手の「すべての人々にとって壊滅的な」云々とする発言は、ほかにも見られます。ウラジミル・プーチン大統領自身も昨日、こんな趣旨の発言をしているのです。
West ready to sacrifice rest of the world for global domination, Putin says
―――2022/05/13 20:50付 タス通信英語版より
タス通信によると、プーチン大統領は「多くの国で飢餓の可能性に直面している」としつつ、「対ロシア制裁が続く場合には、欧州連合(EU)にとっても逆転させるのが難しい状態が生じるだろう」、「そのような結果をもたらした責任は、西側諸国にある」などと述べたのだそうです。
「こうした状況に対する責任は、全面的かつ完全に、全世界の犠牲のうえで世界を支配しようとしている西側諸国のエリートにある」。
なんだか、「西側諸国の」を「ロシアの」に置き換えたら、現在のロシアが行っている行動とピッタリ整合するように思えるのは気のせいでしょうか?
この手の「自分がやっていること」を、あたかも「相手がやっていること」であるかのごとく言い募る、一種の自己投影手法は、当ウェブサイトで普段から述べている「ゼロ対100理論」そのものでもあります。
※ゼロ対100理論とは?
自分たちの側に100%の過失がある場合でも、屁理屈を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく態度のこと。
(【出所】著者作成)
いずれにせよ、NATOの東進など、最近の状況に対し、ロシアが非常に困っているということだけはよくわかるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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核の恫喝は駆け引きだし、今のエスカレのプロセスは今後世界が参照することになりますし、ベタ降りはあり得ないと思います。
プーチンはNATO加盟阻止を外交や戦争の条件にあげますが、極端な話、核兵器持ってるんで既存のロシアの領土が侵される可能性はほぼ皆無なんですよね。
NATO加盟反対の文脈は、ロシアにとって十分条件じゃなく「条件闘争」の対象で動機は「大国ごっこ」だと思います。
>この手の「自分がやっていること」を、あたかも「相手がやっていること」であるかのごとく言い募る、
往々にして悪人は、「自分がやっている悪いことは、自分と敵対する相手も同様にやっていて当たり前」と信じて疑わない節がありますからねw
SkyNews 局による戦況解説で Michael Clarke 氏がスエーデン、フィンランド両国の NATO 入りが何を意味するのかを語っています。いつも通り快活で聴き取りやすい語り口です。約4分あります。
2022-5-11 投稿
Ukraine War: What will it mean if Finland and Sweden join NATO?
https://www.youtube.com/watch?v=4b-WaK4FIWk
本来、軍事同盟は”自衛のための連帯”なのですから「隣国のNATO加盟がロシアの脅威」というのもどうかとは思います。
ロシアが侵略の野心を隠さないから、隣国が誰かに守って欲しくなるのは当然のことなんですよね。
いろいろ世界が煮詰まって来ているからめんどくさくなってきた。
西側自由民主主義国が全部NATO的なものに加盟して国際秩序の再構築したのち、一斉に現国連を脱退しちゃったらいかがでしょうか?
新生国連の誕生!
いいですねぇ(笑)
いわゆる「国連」は、国際連盟(League of Nations)、国際連合(United Nations)と来て、今度は国際連携という名称にでもなるのかな。英語ではAlliance of Nationsでどうでしょうか?
旧国連に取り残されたロシア、チャイナ、コリアあたりは、Axis powers(枢軸国)呼ばわりされるのだろうか...
>「こうした状況に対する責任は、全面的かつ完全に、全世界の犠牲のうえで世界を支配しようとしている西側諸国のエリートにある」
フィンランドの大統領が、「You caused this. Look at the mirror.」と会見で述べたのは、ロシアがこう主張することをわかったうえでのことだったのでしょうね。
https://twitter.com/euronews/status/1524647445405261824
場合によっては、フィンランド国民を死地に送ることにもなろう決断を強いられたことに対する怒りと、覚悟を感じる会見でした。
プーチンはその言葉は勇ましいがその行動は慎重そのもの。
ポーランド東部の空港に西側兵器がこれ見よがしに集積。
NATOとの全面戦争を恐れてミサイル攻撃ができず。
ラブロフ「ヒトラーにもユダヤ人の血」
すぐにイスラエル首相に電話で謝罪し了承を得る。
ゼレンスキー「製鉄所の民間人を全滅させるなら交渉を打ち切る」
国連事務総長を口実にして3日間の日中停戦で民間人を逃す。
5.9演説でも勝利宣言も戦線拡大もせず。
これは現在の戦況やその後の推移を的確に把握しているから。
このように内心は怒り狂っているのだろうが理性的にふるまっている。
少なくても耄碌しているとか狂人だとかではない。
ここまでくるとプーチンの打てる手はもはや核しかない。
だが米英はすでにロシアの核を見切っている。
飛距離や精度などカタログ通りのスペックではない。
自国のミサイル防衛網で迎撃が可能であると。
ロシアの核使用は戦後のロシア占領と解体の大義名分になる。
米英は「角度をつけた」報道でむしろプーチンに核使用を促している。
これを誰より理解しているのがプーチン自身なので核使用にも踏み切れない。
いずれにせよロシアの末路は悲惨そのもの。
「ユーラシアのアルゼンチン」として資源を垂れ流すだけの小国となるだろう。
プーチンは取り返しのつかない最悪の手を打ってしまった。
撃てない核を撃つつもりか?
撃ったら最後核戦争にまでならずにロシアは滅びる
世界中を敵に回すので一斉攻撃を受け、二発目の核は打てないと考える