「ルーブル建ての輸出品目の拡大を」=ロシア下院議長
マクドを居抜きでギョーザ屋に?
このところ、ロシアの外貨不足に関する話題が多く出てきています。ロシアがドル建てのユーロ債をルーブルで償還するという話題は昨日の『ロシアがドル債をルーブル償還ならCDSはどうなる?』でも触れたとおりですが、それだけではありません。ロシアからは「穀物、木材、石油、石炭、金属」などの産品をルーブル建てにしてはどうか、といった論点もあるようです。もっとも、日本政府がロシアに奢侈品輸出規制を導入するなどの動きもあり、ルーブルで買えるモノはますます少なくなっているのかもしれませんが…。
目次
ロシアはハード・カレンシー不足に?
このところ、ロシアから「ハード・カレンシー」不足を示唆するような情報が相次いでいます。
たとえば、ロシア政府が発行したドル建てユーロ債を巡り、国内投資家に対してルーブルでの償還を勧誘している、などとする話題については、昨日の『ロシアがドル債をルーブル償還ならCDSはどうなる?』でも紹介したとおりです。
実際、西側諸国はロシアの政府などによる起債を制限しているのに加え、ロシア政府自身が明らかにしているとおり、ロシアが保有している約6300億ドル(1月末時点)のうち少なくとも約3000億ドル分が、日本を含めた西側諸国によって凍結されてしまっている状態にあります。
現在までのところ、ロシアがユーロ債の利払などに失敗したとの報道はありませんが、それでも自由に使用できる外貨準備が大きく制限されているという点に関しては間違いなさそうです。
とくに、報道等によれば、ロシアの政府・企業などが発行しているとされる外貨建ての債券の総額は約1400億ドル相当とされています(うちロシア政府が400億ドル、残り1000億ドルは民間企業ですが、その大半が石油関連企業と考えられます)。
これについて、どう考えるべきでしょうか。
外貨建て債務は外貨準備の範囲内だが…
この点、ロシアの債務償還能力を議論するうえでは、具体的な外貨準備統計を確認しておくことも有益です。
2022年1月末時点において、ロシア政府が保有している外貨準備は6302億ドルですが、このうち金(マネタリー・ゴールド)が1323億ドル、特別引出権(SDR)が241億ドル、IMFリザーブポジションが52億ドルです(図表)。
図表 ロシアの外貨準備(2022年1月末時点)
項目 | 金額(ドル換算) | 構成比 |
---|---|---|
有価証券 | 3113億ドル | 49.39% |
預け金(中銀、BISなど) | 947億ドル | 15.02% |
預け金(外国銀行など) | 573億ドル | 9.09% |
IMFRP | 52億ドル | 0.83% |
SDR | 241億ドル | 3.82% |
金 | 1323億ドル | 20.99% |
外貨準備その他 | 54億ドル | 0.86% |
外貨準備合計 | 6302億ドル | 100.00% |
(【出所】International Monetary Fund, International Reserves and Foreign Currency Liquidity より著者作成)
ということは、逆算して、有価証券、預け金などのうち、西側諸国が凍結していない部分は1700億ドル前後と考えられるのですが、単純に考えれば、ロシア政府・ロシア企業が発行している外債1400億ドルの額を上回っているはずです。
ただ、個人的には、ロシアが自由に使える外貨準備のうち、有価証券・預け金の部分が本当に1700億ドルに達しているのかについては疑問です。とくに、これらが人民元建てだったとすれば、人民元は国際的な金融市場で自由に両替できる通貨ではないため、なおさら使用には制約がありそうに思えてなりません。
ロシアは資源本位制に?
このように考察していたところ、昨日、ロシアのメディア『タス通信』(英語版)に、こんな記事が掲載されていたのが目につきました。
State Duma speaker suggests expanding list of Russian goods exported for rubles
―――2022/03/30 17:24付 タス通信英語版より
ロシアの「国家院」(※下院に相当)のバチェスラフ・ボロージン議長が、ルーブル建てで輸出すべきものに、肥料、穀物、原油、石炭、金属、製材品などを追加すべきであるとする見解を、水曜日に『テレグラム・チャンネル』に寄稿した文章で明らかにしたのだそうです。
さながら、「金本位制」ならぬ「資源本位制」のようですね。
そのうえで、ボロージン氏は欧州や米国の政治家らに対し、「いい加減、ルーブルを使えない理由を探すのをやめるべきだ」などと指摘し、彼自身の提案の理由が、「欧米諸国がドルやユーロに対する信頼を自ら下げることをしたため、ロシアとしてもそれらの通貨を使うことを拒絶した」ことにある、などとしています。
この点、『ロシアが非友好国に対し天然ガスのルーブル決済を導入』でも取り上げたとおり、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は、「非友好国に対し、天然ガスをドルやユーロではなくルーブルで販売する」、などとする方針を示したとする話題もありました。
今回のボロージン氏の認識は、ロシアがルーブル決済を天然ガス以外の品目にも広げていくべきだ、などとするものでしょう。
実際、ボロージン氏は「カネはあっても買うべきモノがないのは悲劇的なことだ」、などとも述べたそうですが、恐らくこれは、「ドルやユーロを持っていても、今後はロシアからモノを買うことはできなくなるよ」、という意味ではないかと思います。
もっとも、西側諸国などがこれに応じるかどうかは微妙ですが…。
日本の奢侈品輸出規制を報じるタス通信
ところが、タス通信にもうひとつ、こんな記事も出ていました。
Japan unveils luxury goods export ban against Russia
―――2022/03/30 17:56付 タス通信英語版より
タス通信は、日本政府がロシアに対して奢侈品の輸出を禁止する措置を講じたことを、論評抜きで淡々と取り上げています。ちなみに日本側の発表については経産省のニュースリリースのページで確認できるのですが、対象品目として経産省のウェブサイトに挙げられている品目には、次のようなものがあります。
酒類、たばこ製品、香水類、化粧品、革製品、毛皮、衣類、履物、帽子、絨毯、宝飾品、陶磁製品、ガラス製品、ダイビング用機器、乗用車、バイク、ノートパソコン、時計(貴金属を使用したもの)、グランドピアノ、美術品、骨董品、紙幣、金貨、金の地金
「(ルーブルという)おカネはあっても、モノがない」状態になるのは、むしろロシアの方ではないかと思わざるを得ません。最近、タス通信に日本がやたらと登場しますが、意外と日本の奢侈品の輸出規制はロシアに地味に打撃を与えるのかもしれません。
マクドが水ギョーザ屋に?「イワンおじさん」はどこに行った!
さて、「ロシア国内で買えるモノ」という議論に関わる可能性があるとしたら、時事通信に昨日出ていた、こんな記事かもしれません。
ロシア議長、外国企業に翻意促す マックの「水ギョーザ屋」化も
―――2022年03月30日13時32分付 時事通信より
時事通信によると、ロシアのワレンチナ・マトヴィエンコ上院議長は29日、ロシアから一時撤退した外国企業に対し、「戻ってこなければ現地企業による経営権取得もあり得る」と警告したのだそうです。具体的には、マクドの店舗が「ペリメニ」(ロシア式水ギョーザ)屋に代わるかもしれない、というのです。
この点、以前の『マクドロゴが転倒し「イワンおじさん」に華麗に変身?』では、マクドロゴを90度転倒させた「イワンおじさん」(ロシア語で “Дядя Ваня” 、発音は「ジャージャ・ヴァーニャ」だそうです)なる奇妙な代物を紹介したところです。
個人的に、ロシア式水ギョーザというものを初めて知りましたが、少し食べてみたいという気もする反面、ハンバーガーと水ギョーザでは製法も必要となる設備もまったく異なるであろうと想定されることから、経営的には居抜きで引き継げるならば、水ギョーザではなく、やはりバーガーの方がやりやすい気がします。お節介ですが。
もっとも、さすがに「イワンおじさん」は知的財産権の侵害ではないか、という気がしますが、『ロシア国内で西側諸国「知的財産権保護」を解除の動き』などでも述べたとおり、ロシア国内では「非友好国」に対する知的財産権を守らないで良い、とする大統領令も準備されているそうです。
このあたり、ロシアのマクドが水ギョーザ屋に切り替わるのが先なのか、それともロシアという国家が消滅するのが先なのか、気にならないといえばウソになるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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昔々、シベリアのラーゲリに抑留されていた日本人捕虜たちの常食は、シーというスープと黒パンだったと聞いたことがあります。
普通ロシア料理でシーと云えばキャベツの入った塩味風味のスープで他にもキノコやジャガイモなども入ったいわゆる食べるスープなのですが、ラーゲリのそれは塩味もあるのかないのか判然しない微妙な味付けで、しかも具等殆どなく覗き込めば顔が映りそうなほど澄み切った(?)、限りなく白湯に近いスープだったそうです。
「ペリメニ」(ロシア式水ギョーザ)なるものは私も食した事はありませんが、今後ロシア人が食べるスープは、もしかするとの昔々日本人捕虜が食べたシーに近づいていくのではないか、などと思いたい今日この頃です。
単純に考えれば、輸出資源をどちらの通貨で決済しようが最終的なロシア側の手取りは変わらない気がします。
資金繰りの順序的に、先に為替市場でルーブルを買わせないといけないくらい使える外貨が枯渇してるってことなのかもですが・・。
デフォルトで「モノが無く公平に貧しい社会」になるのか?
デフォルトが「モノが無く公平に貧しい社会」なのか・・?
ロシアが今後どんなド貧乏生活を強いられようと自業自得だとは思いますが、
もしロシア料理が文化として失われたらそれはちょっともったいないなとも思います。
今後の展開次第では、ロシアが国家として存在せず、元ロシア人も「もうロシア人なんて
名乗りたくない!」となる事も(確率は低いと思いますが)あり得るでしょうから。
とはいえ、これだけネットが発達した時代ならロシア料理ファンが作り続けて、
「昔ロシアと言う国があったんだよ、こんな料理文化があったんだよ」などと
言われる様になるかな……?
同感です。
プーチン朝ロシアが滅亡しても、
ロシア料理を含むロシア文化は
後世に伝わってほしいものです。
これはチャンス!とばかりにどっかの国から、
ロシア料理はウリたちが起源で教えてあげたニダ的な
火事場泥棒式歴史修正をしかけられても
ロシア文化として守って上げることが必要です。
ロシアに嫌悪を示すなら、むしろロシア料理を積極的に食べた方がいいと思います。
ロシアを食べる、ロシアに食らいつく、という意味になりますから。
私もピロシキが好きです。今度ロシア風の餃子、ペリメニも食べてみたいです。
なら半島料理も食べなきゃか…忌避感あるなぁ……
と思ったけども、アレは勝ちたい食らいつきたいではなく「関わりたくない」なので、忌避してて大丈夫ですね。
ロシア料理もですがウクライナ料理も凶悪。
サーロ=「豚の脂身」
という、「揚げバター」のネタみたいなのが常食になっているそうで。
> 欧米諸国がドルやユーロに対する信頼を自ら下げることをしたため、ロシアとしてもそれらの通貨を使うことを拒絶した
英文はこれですね。
They did everything themselves to undermine confidence in the dollar and the euro, so that Russia rejected mutual settlements in these currencies.
おそらく元の文の主語と目的語を換えて作ったのでしょう。
(多分)元の文
Russia did everything themselves to undermine confidence in the rubles, so that European countries rejected mutual settlements in the currency.
ロシアがルーブルに対する信頼を自ら下げることをしたため、欧州諸国としてもそれらの通貨を使うことを拒絶した
こちらの方がすっきりします。
典型的なダブルスピークですね。中共、北朝鮮、韓国がよく使う手法の本家ですか。