フジが特損90億円計上も業界の凋落は始まったばかり
フジテレビが希望退職で90億円の特損を計上するそうです。一部報道によれば、リストラに応じた人には通常の退職金に加え、1億円ともいわれる特別優遇加算金が支給されるそうです。ただ、このリストラがフジテレビにとって成功だったのかどうかについては、現時点ではまだわかりませんが、テレビ業界の凋落はまだ始まったばかりでもあります。
希望退職という悪手
「希望退職とは、悪手中の悪手である」――。
これは、著者自身の持論です。
一般に、希望退職制度(俗にいう「リストラ」)を実施する企業は、たいていの場合、何らかの理由で業績が悪化しています。そして、業績が悪化している企業は、給与に見合った働きをしていない従業員に辞めてもらうことでコストカットをすることを希望しています。
ただ、非常に皮肉なもので、希望退職を募集すれば、たいていの場合、会社にとって「辞めてほしい」人は辞めず、会社にとっては「辞めてほしくない」人材から真っ先に会社から逃げ出す、という傾向が見られるようです。
これは、経済原理に照らし、ごく当たり前の話でしょう。なぜなら、「給与に見合った働きをしていない従業員」にとっては、「自分自身の働きに比べて過大な給料をもらっている」という状態が心地良いからであり、そうした状態に、意地でもしがみつこうとするからです。
これに対し、有能な人であれば、他社に転職することもできますし、自分でビジネスを起こすこともできます。「割増退職金を支払ってくれる」、「会社都合にしてくれる」などの優遇措置があれば、「希望退職を実施するほど将来性のない会社」にはさっさと見切りをつけ、「もらうもの」をもらって辞めようとするのは当然のことです。
もちろん、日本では労働法の制約が厳しく、「業績が悪化した」などの事情で、会社が従業員を辞めさせる(=指名解雇する)、ということは難しいのが実情でもあります。
しかし、理想論を申し上げるならば、もし本気で会社をリストラクチャリングしようと思うなら、「辞めてほしい人」を「指名解雇」方式でピンポイントで辞めさせ、リストラクチャリングが完了した時点で、「辞めてほしくない人」には特別賞与を出すなどし、組織の士気を高める、といった工夫が望ましいのではないでしょうか。
フジテレビの希望退職
こうしたなか、以前の『フジテレビが実施する希望退職募集は「悪手中の悪手」』では、フジテレビが50歳以上の従業員を対象に、希望退職を実施する、という話題について取り上げました。
具体的には、「ネクストキャリア支援希望退職制度」と銘打ち、「経営計画における人事政策の一環として」、満50歳以上、かつ勤続10年以上の従業員を対象に、2022年1月5日から2月10日かけて希望退職者を募集。
そのうえで、通常の退職金に加え「特別加算金」を支給するとともに、希望者に対しては再就職支援を実施する、というものです。
この点、2021年3月期決算を見ると、在京民放(の親会社)は軒並み減収・減益に沈んでいますが、とりわけ、フジ・メディア・ホールディングスの落ち込みが大きいことがわかります(図表1)。
図表1 在京キー局の親会社の2021年3月期連結業績(カッコ内は前年同期比)
社 | 売上高 | 当期純利益 |
---|---|---|
フジ | 5199.41億円(▲17.66%) | 101.12億円(▲75.52%) |
TBS | 3256.82億円(▲8.72%) | 280.72億円(▲6.97%) |
日テレ | 3913.35億円(▲8.27%) | 240.42億円(▲21.32%) |
テレ朝 | 2645.57億円(▲9.90%) | 126.00億円(▲52.27%) |
テレ東 | 1390.84億円(▲4.19%) | 25.75億円(▲0.58%) |
(【出所】各社決算短信より著者作成。なお、上記図表を含め、本稿では「親会社株主に帰属する当期純利益」を「当期純利益」と称している)
実際、売上高の規模は他社と比べて格段に大きいのですが、当期純利益に関しては、テレ東を除く4社のなかでは非常に小さく、こうした比較をするだけでも、フジ・メディア・ホールディングスが同業他社と比べ、「高コスト体質」ではないか、という仮説が成り立つのです。
(※ただし、減益幅が非常に小さいTBSホールディングスの場合は、営業利益の約7割~8割を「不動産・その他」事業で稼いでいる、といった実態もあるため、減益幅が小さい会社であっても、「テレビ放送事業が好調である」、という証拠ではない点についてはご注意ください。)
コストカットはフジテレビにとって急務
こうしたなか、『出足鈍い?フジ希望退職の「続報」とテレビ業界の未来』でその「続報」を取り上げたのですが、今年に入り、実際にリストラの募集が始まってみると、どうも出足は鈍い、という報道があったようです。
『スカッとジャパン』3月で打ち切りに 早期退職募集の「フジの苦境」
―――2022.01.12 14:30付 NEWSポストセブンより
記事は小学館が運営するウェブサイト『NEWSポストセブン』に掲載されたものですが、こんな記述が出て来ます。
- 「コストカットはフジの中でも急務となっている。1月からは50代以上の社員を対象とした早期退職希望者を募り、1億円近いとも言われている特別加算金も付けたが、応募の出足は鈍いという」。
- 「別のフジ社員はこう話す。『500人弱はいるバブル期に入社した50代社員の人件費を削ろうとしていますが、会社にしがみつく人間が多く、逆に現場ではバラエティを作れる若手の人材が離れていっています』」。
…。
このこの「50代が会社にしがみつく」、「現場で若手人材が離れている」という記述が事実なのだとしたら、まさにこれ自体、当ウェブサイトでこれまで何度となく指摘してきた、「希望退職は悪手中の悪手」の趣旨が、この記述に尽くされているのではないかと思います。
結局は90億円の特別損失を計上へ
こうしたなか、この「リストラクチャリング」に、さらに続報がありました。
フジ・メディア・ホールディングスは昨日、『当社連結子会社における「ネクストキャリア支援希望退職制度」募集に伴う特別損失の計上に関するお知らせ』と題した文書を公表したのです。
これによると、募集期間は結局、1月31日に短縮されたらしく、また、2022年3月期決算において約90億円を特別損失として計上する、などとしています。
会計基準の建付けから判断するならば、「通常の退職金」部分については会計上、「退職給付に係る負債」(昔の用語でいう「退職給付引当金」)にて手当て済みですので、この「90億円の特別損失」の内訳は、基本的には「特別優遇加算金」で構成されているはずです。
先ほどの『NEWSポストセブン』の報道が正しければ、特別優遇加算金は1人あたり1億円前後だそうですので、単純計算で希望退職に応じたのは90人前後、といったところでしょうか(※破格の条件のわりに、なんだか退職に応じた人は少ない、という気もしないではありませんが…)。
テレビ業界の凋落は始まったばかり
もっとも、テレビ業界の凋落は、まだ始まったばかりでもあります。
実際、昨年の『埼玉県民様から:2020年版「日本の広告費」を読む』でも取り上げたとおり、株式会社電通が公表する『日本の広告費』というレポートによれば、2020年におけるマスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費がインターネット広告費とほぼ等しくなってしまいました(図表2)。
図表2 広告費の推移(マスコミ4媒体vsインターネット)
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』およびコメント主「埼玉県民」様ご提供データ等をもとに著者作成)
インターネット広告費の伸びを勘案するならば、今年公表されるであろうレポートでは、下手をするとマスコミ4媒体の合計をインターネット広告費が追い抜いてしまう可能性が高いでしょう。ネット広告費は年々増える一方だからです。
もちろん、2020年のマスコミ4媒体の落ち込みはコロナ禍による要因もあるはずですので、もしかしたら若干持ち直すかもしれませんが、それは一時的な現象に過ぎないと見るべきです。
実際、『新聞は「正確・信頼性高い・中立公平」=日本新聞協会』などでも触れましたが、テレビと並ぶオールドメディアの代表格である新聞は、近年、部数減に歯止めがかかりません。オールドメディアの退勢は、「コロナ禍での一過性の要因」とも言えないのです。
いずれにせよ、このリストラクチャリングがうまく行ったかどうかについては、外部から見て、現時点ではまだどうにも判断できません。しかし、前世紀には「飛ぶ鳥を落とす」ような勢いだったテレビ業界の、しかも「最大手」でリストラが実施されたというのは、テレビ業界の凋落という意味では、なかなかに象徴的な出来事でしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
民放テレビというビジネスモデルはもう終わってるんじゃないかな。
民放のビジネスモデルは;
テレビが面白い番組を制作―>スポンサーがつくー>みんなが視聴する(コマーシャルも含めて)―>その結果商品が売れるー>スポンサーが喜んで金を出すー>最初に戻って好循環。
現在は
テレビ以外にみるものがいっぱいある(アマゾンプライム、YouTube等)―>テレビをみなくなるー>その結果商品は昔ほど売れないー>スポンサーが金を出し渋るー>予算不足で番組がおもろくなくなるー>最初の戻って悪循環。
夏休みに来た2人の孫がテレビを全く見ない。任天堂スイッチでYouTubeに接続し自分の好きなものを見ている。しかも2人はそれぞれ違うものを見ている。
私の子供のころは「テレビばかりみてないで宿題やりなさい!」今は「YouTubeばかりみてないで宿題やりなさい!」
テレビ局の作ったものを何百万人の視聴者に同時に見てもらうという「マス」の時代は終わった。個々人が自分の好きなものを好きな時に見る時代。
民放さん、時代は変わったんだよ。
現在のテレビ局の煽りは断末魔の叫びかもしれない。「もっとこっち見てぇ~」という。
テレビ画面に文字が溢れかえるような装飾が限度を過ぎてうるさいったらありゃしない。あれは画面から目を離させないように、スマホに目移りされないようにする、実にこざかしいテクニックですね。
かつては、ドラマ、映画、音楽、お笑い、アニメ、
※ 失礼しました。送信ミスです、上の匿名は私です。
かつては、ドラマ、映画、スポーツ、音楽、お笑い、アニメ、ニュース、天気予報、教養、などテレビはコンテンツにあふれていましたが、現在たまにテレビで見るのはスポーツと天気・災害の解説、時々ニュース解説程度でしょうか。DAZNが値上げしましたが、ABEMAが頑張っているようです。
前にも書きましたがTBSは東京エレクトロンの大株主(約600万株)なので配当が21年3月期で約46.8億円、増配する22年3月期で76.9億円と貢献しています。平均年収ももしかしたらTBSより高いかも。
フジはコネ入社多過ぎ。
羊山羊様
元々、東京エレクトロンはTBSの子会社でしたからね。
TBSは赤坂不動産と揶揄されますが、東京エレクトロンの株式を保有しているのですから、不動産収入と株式配当金よる収入で食いつなぎが出来ているのかもしれません。
フジは宇津井健の息子や田淵幸一の息子、高橋英樹の娘、永島昭浩の娘が在籍していたり、更には1992年7月のクーデターで、追い出したはずの鹿内家の一族である鹿内植(鹿内寛子〈鹿内信隆の長女で、女優の奈月ひろ子〉の娘)がいますからね。
フジが女子アナブームの切っ掛けを作った事は有名ですが、それも34年前の昭和63年のお話です。
3人娘として有賀さつき、河野景子、八木亜希子がプッシュされ活躍をしましたが、全員既に退社済です。
有賀さつきに到っては故人になっています。
河野景子も花田光司(元横綱・貴乃花)と結婚をして一男(花田優一)を授かるも、離婚をして活路を見出そうするも既に過去の人ですし、八木亜希子も病気を抱えているためにあまり表舞台には立っていません。
同期入社で唯一の男性アナウンサーである青嶋達也は、編成局アナウンス室スポーツ統括担当部長で、競馬中継の実況などで活躍しています。
現在、青嶋アナは56歳なので、例の対象に該当しますが、貴重な看板アナウンサーであり、後継者育成の観点から残留するのではないかと思います。
TBSは立件共産党からカネ貰ってるな。10億円くらい不透明な支出があるんじゃないの?
電通経由で。
通りすがり様
電通ではなく博報堂だと思います。
>『500人弱はいるバブル期に入社した50代社員の人件費を削ろうとしていますが、会社にしがみつく人間が多く・・
躍進の起爆材となったのは「オレたちひょうきん族」
復調の足枷でしかないのは「オレたち “費用勤族!”」
うまい!