三菱重工の大法院での差押確定は「一線越え」にあらず
今朝の『個人的実体験に基づく「自称元徴用工訴訟の不自然さ」』では、三菱重工の商標権・特許権の差押が韓国の最高裁である「大法院」で確定した、とする話題を取り上げつつも、「だからといって、これでなにか状況が変わるものでもなかろう」という趣旨のことを申し上げました。ただ、これにについて「韓国が一線を越えたかもしれない」と報じた論評を発見しましたので、反論がてら紹介します。あわせて、今朝の記事では若干わかり辛い箇所もありましたので、本稿では補論的にこれらを取り上げておきます。
目次
論点補足:訴訟するなら「これをやれ」
今朝方の『個人的実体験に基づく「自称元徴用工訴訟の不自然さ」』では、ウェブ主自身の「実体験」に基づき、「もしも本気で民事訴訟を起こすなら、勝訴後すぐに換金できる資産を差し押さえるのが鉄則だ」、と申し上げました。
この体験談自体、読んだ方からすると「事件の全体図がよくわからない」という不満は残るかもしれませんが、これ自体が現実の事件であるため、当ウェブサイトにその全容を書くことができない点についてはご了承ください。ただ、自身で読み返してみて、気付いた点、もう少し書ける点を補足しておきます。
この訴訟は、とある不当利得を「返還せよ」を請求したものですが、当方が差し押さえた資産は、訴えた相手先が所有していた「かもしか銀行四宮支店」(仮)にあった預貯金1000万円と某政令指定都市の繁華街にある商業用不動産(抵当権なしの優良物件)、そして入居テナントに対する賃料請求権です。
これらの資産に対する差押は、結局、効力が発生してから訴訟の全手続が終わるまで解除されず、入居テナントは賃料を法務局に供託し続けたため、相手方にはその間、1銭も賃料収入が入らなくなりました(その間、相手方がどうやって生活していたのかは知りません。草でも食べていたのかな?)。
そして、訴訟自体は裁判所の勧告もあり、和解という形を取ったものの、実質的には当方に相当に有利な形で終了。不動産についても和解調書作成から約半年後には「任意売却(任売)」の形で売却することができ、結果的には思った以上の配当を得ることができた、というわけです。
訴訟の鉄則と自称元徴用工
いずれにせよ、依頼した弁護士の方がかなり有能な人物でもあり、「実戦的」なさまざまなアドバイスが結果的にかなり役立ったことは間違いありません。
今後の人生において、もう二度と損害賠償請求訴訟を起こすことはないと信じたいところですが、「もう1回やる」ことになった場合には、次の点に注意したいと考えているのです。
訴訟の鉄則
- 訴訟の目的は「相手を罰すること」ではなく「自分の損害を最大限回復すること」
- 差し押さえるのは預貯金、証券口座などの「金融資産」か、不動産、金銭債権など「すぐに換金できるもの」
- 裁判所で争点が出尽くしたら相手と交渉し、和解できるならさっさと和解する(=時は金なり)
(【出所】著者作成)
(※ただし、大変申し訳ないのですが、現実に「これから裁判をやろうと思っているのですが」、という方には、当ウェブサイトの著者に対してではなく、弁護士、認定司法書士など、それなりの専門家の方に相談していただきたいと思います。)
さて、このような視点から韓国の自称元徴用工問題を改めて振り返っておくと、やはり「訴訟経験者」として最も不自然に感じるのは、自称元徴用工やその代理人らが、「裁判が終わってから」相手と交渉しようとしている、という点にあります。
それに、最高裁判決とは、「法的に原告の請求権が確定した状態」を意味しますので、確定判決後は四の五の言わさず、とにかく相手からおカネをむしり取れば良いのです。
日本政府は「日本企業に不当な損害を与えたら許さないぞ」という姿勢を示し、強制執行に対しては何らかの制裁を加える構えを見せていますが、自称元徴用工ら原告からすれば、それは韓国政府レベルで考える外交の話であって、民事訴訟上はとにかく換金して原告らに分配することだけを考えれば良いのではないでしょうか。
なぜその資産をわざわざ差し押さえるのか
もし「新宿会計士」が日本人公認会計士ではなく韓国人弁護士であり、かつ、彼らの代理人を務めているのだとしたら、確定判決を得る前の段階で、日本企業が韓国に保有する「金銭債権」(とくに売掛債権、子会社株式の配当金請求権、特許権使用料債権など)を差し押さえていたと思います。
そして、新日鐵住金(現・日本製鉄)が2018年10月30日に、三菱重工が2018年11月29日に、それぞれ最高裁に相当する「大法院」から賠償を命じられた瞬間、差し押さえていたこれらの金銭債権などを換金していたはずです。
それなのに、韓国側の原告らが行っている行動といえば、「判決が出たあと」にも関わらず、日本企業と交渉しようとして<アポなしで>東京の本社に押しかけてみたり、東京の本社前で日本の反社会的な自称市民団体関係者らと抗議活動をしてみたり、と、まったく生産的ではありません。
さらには、日本製鉄については非上場株式、三菱重工については特許権と商標権を、それぞれ最高裁の確定判決が出て、かなりの時間が経ってからわざわざこれ見よがしに差し押さえ、ゆっっっっっっっっっっっっっっっくりと資産売却手続を進めている、というわけです。
大変恐縮ですが、非上場株式(しかも合弁契約書に基づき設立された、おそらくは譲渡制限条項が付された合弁会社株式)や、商標権、特許権を、いったいどういう手続で誰にどうやって売却しようとしているのか、純粋に「金融評論家」としては興味があります。
まぁ、どうせ待てど暮らせど売却はされないのだと思いますが…。
「一線を越えた」?まさか!
こうしたなか、今朝の『個人的実体験に基づく「自称元徴用工訴訟の不自然さ」』でも取り上げた、三菱重工の特許権と商標権に関する話題が、他メディアにも出ていました。
記事自体は韓国メディア『中央日報』(日本語版)の本日付『韓国最高裁、三菱再抗告を棄却…「特許・商標権差押措置は正当」』を含め、いくつか出ているのですが、ここではあえて『WoW!Korea』というウェブサイトに掲載された、次の記事を確認してみます。
「遂に一線越え?」韓国最高裁、三菱重工業の国内商標権・特許権の差し押さえを確定=韓国報道
―――2021/09/13 20:07付 WoW!Koreaより
リンク先記事では、これまでの訴訟や差押などの経緯についてひととおり言及したうえで、末尾にこんな記述があります。
「この判決に対して日本側は遂に『実害発生』や『一線越え』と受け止めるのか注目される」。
「実害発生」、「一線越え」、などとありますが、はて、そうでしょうか。
大変残念(?)ですが、今回の決定は、「実害発生」でも「一線越え」でもありません。単純に「差押が確定した」だけの話であり、現金化がなされたというものではないからです。
その意味では、従前の韓国側の「資産売却手続をゆっっっっっっっっっっっっっっっっっっっくりと進める」という方針から何ら変わるものでもないのです。
なぜ資産売却手続を「ゆっっっっっっっっっっっっっっっっっっっくりと進める」のかといえば、そうやって時間を稼ぎつつ、日本企業や日本政府と交渉をする余地を探り続けるからなのだと思います。
とくに、日本で「枝野幸男政権」のようなものが誕生すれば、これ幸いとばかりに、韓国側は日韓通貨スワップの再開、2015年12月の慰安婦合意の再交渉などと並んで、この自称元徴用工問題でも「徴用工版河野談話」の発出を要求して来ることは火を見るよりも明らかでしょう。
あえて「一線を越えた」(かに見えた)瞬間があったとしたら、『徴用工「金銭債権の差押」の衝撃』でも述べた、「三菱重工の金銭債権を差し押さえた」とする先月の報道でしょう。
ただ、せっかくこの「一線を越えた」はずの訴訟についても、結局のところ、自称元徴用工側が何やらムニャムニャよくわからない理由をつけ、差押自体を取り下げてしまったのです(『【速報】自称元徴用工側が金銭債権差押を「取り下げ」』等参照)。
この動き自体は大変不自然でしたが、もしかすると韓国側でも「金銭債権の差押は、非上場株式や知的財産権の差押とはまったく性質が異なる」と指摘する日本側のウェブサイトをチェックしている人がいて、「さすがに金銭債権の差押はマズイでしょ」とばかりに急ブレーキをかけた、というのが実情なのかもしれません。
積極的放置+FOIP・TPP推進=韓国へのサイレント制裁
こうしたなか、著者自身、菅義偉総理や政権関係者に個人的な知人はいませんが、敢えて現在の日本政府の方針を忖度(そんたく)して申し上げるなら、おそらくはこうした自称元徴用工問題などに関しては「事態が悪化しないように管理しつつも敢えて放置する」という姿勢を堅持しているのだと思います。
すなわち、韓国が国際法を守る方向に舵を切るかどうかを見極めつつ、日本は日本で「韓国がなくても大丈夫」な状態を作ろうとしている、という仮説でしょう。
日本は自称元徴用工問題で、いまだに韓国への「目に見えた対抗措置・制裁措置」をいっさい講じていませんが、見方によっては日本政府が「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)や「環太平洋パートナーシップ」(TPP)を推進すること自体、いわゆる韓国に対する「サイレント経済制裁」でもあるのかもしれません。
また、米FRBによる金融緩和の段階的縮小(テーパリング)局面において、ただでさえ脆弱な韓国の外貨調達環境が悪化すると予想されるなか、日本が韓国に対する通貨スワップの提供をかたくなに再開しようとしないこと自体、「消極的経済制裁」と言えなくもないでしょう。
どちらも日本政府が事実上の事務局ですから、もしも韓国がFOIPやTPPに参加しようと思えば、その前提条件として、日本との間で生じている国際法違反、条約違反、約束違反などの不法行為をすべて解消することが必要でしょう。
つまり、「自由・民主主義・法の支配・人権尊重」などの基本的価値が支配する「海洋価値同盟」勢力に「入れてもらえない」という状態が、今後10年、20年という単位で、韓国の国防や経済にどう作用するか、という論点です。
こうした「目に見えない制裁」に対して、当ウェブサイトとしては「韓国に対する制裁の在り方として100%正しい」とまでは考えませんが、ひとつの在り方としては興味深いものといえるのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
たとえ日本政府が一線だと定義する現金化ではなくても、一企業にとっての”商標・特許権差押の確定(直ちに現金化可能状態)”は、カントリーリスクの発露に他ならない気がします。
法的にも発動要件の厳しい経済制裁と違って、民間企業の独自判断による措置はその限りではないんですよね。きっと。
訴訟を起こし、相手をぐうの音も出ないようにするには、預貯金、証券口座などの金融資産か、不動産、金銭債権など「すぐに換金できるもの」を差し押さえする事が一番有効だと言う事。
「そして和解する事」、、コレは相手次第ですね。韓国のように蒸し返して来るヤカラが居ますから。そういう時は、もう無視、関知しない、国交断絶一歩手前までやってもいいでしょう。それでも言いがかり付けて来るなら、、サヨーナラー(笑)。ハイ、大使館領事館引き上げ。
どうせ「韓国なしでも大丈夫」にしようとしている訳ですから、またFOIPやTPPは日本が事務局です。もし韓国が参入しようとしても、現実は決定的にムリです?
一線を超えたという報道はバカだなぁと思うけど、偉そうにそれを否定するのもなんとなくなぁと思います。
今韓国は、ファィブアイズ加盟に興味があるようです。
中央日報から
【時視各角】中国の顔色をうかがってまた良い機会を逃す=韓国
https://news.yahoo.co.jp/articles/e16ffdf5527cc1d657b012e7082ce15c4fec2528
まあ、FOIPだろうがCPTPPだろうが、加盟出来なきゃ「日本が加盟の邪魔をしているニダ」となるでしょう。
サイレント経済制裁とは面白い着眼点ですね。
自由主義陣営から外された韓国の10年、20年後…。
とてもとても興味があります。
中央日報から
日本強制労役被害者の遺族側「裁判官の交代を…公正性疑われる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/69b45f1428540a8924934474d2f4cd72b778e164
中身は、大した事は有りません。
「徴用工」を「強制労役被害者」に変えて来ました。
「a forced laborer」って奴です。
韓国マスコミ全般で、この用語を定着させる様だと、韓国政府の関与が考えられます。
文句いうてますわw
日本の「国際法違反」主張 「一方的で恣意的」と反論=韓国外交部
https://news.livedoor.com/article/detail/20866018/
木こりとウサギの寓話。
ある日、木こりの目の前でウサギが切り株にぶつかってのびてしまいました。
木こりは喜んでウサギ汁を食べました。
それから木こりは毎日切り株の前でウサギがぶつかるのを待ってました。
慰安婦の時は全ての条件が韓国の都合のいいようにそろってました。
まず、慰安婦は日本の嘘(朝日新聞)から始まった。
日本の所為で国民が騒いでる。日本がなんとかしろ。
日本も韓国も両方の政治家が戦前の事実を知っていた。
だから、韓国の日本が1度謝ってくれさえすればこちらでなんとかするという嘘話にのってしまった。
日本の現役世代に戦前の事を知る人間は少なく、また日本人は自らの功績を喋ったりしないので、左翼の嘘がまかり通っていた。また、戦前の事実は知ってる人にとっては当たり前であったし、知らない人は調べる動機もなかった。もし、調べても拡散する方法がなかった。
北朝鮮は日本と韓国の仲を違えるために暗躍していた。
また、韓国人は戦前の事で騒げば金になる事を学習してなかったので、韓国の政治家の嘘が真実味を帯びていた。
日本に金があり余裕があった。
これら全ての条件がいい感じで重なったので、切り株にウサギがぶつかったのです。
しかし、韓国人は因果関係を理解出来ません。
切り株にウサギがぶつかって得をした事実しか理解出来ません。
偽徴用工が失敗しても、別のネタで同じような事をしてきます。絶対に。
もちろん千年経っても、日本が何もしなければ 続くでしょう。
だからこそ、世界にばれないようにゆっくりと、そして静かに韓国を弱らせないといけません。
滅ぼすのは無理なので、せめて対馬海峡を渡る気力が無くなるまで、衰弱させるべきです。
来春の韓国大統領選挙ですが,与党共に民主党の李在明候補がかなり圧倒的な票差で当選しそうな勢いで,実に楽しみです.
朝鮮戦争での膨大な米軍戦死者をサンクコストとは割り切れないアメリカ政府も,流石に次の大統領が我らが文ちゃん以上の李氏になれば,韓国を見捨てる決心をしてくれますかね.
(どれほど大量の血を流し,どれほど多数の兵士の命を犠牲にして得たものであろうとも,捨てるべき時が来ればそれらをサンクコストと割り切って捨てねば,最終的により大量の血を流し更に多数の兵士の命を失う羽目になることは,満州独占を諦めるべき時に諦めずに執着した大日本帝国がこれ以上ない形で実証してしまいました)
その時には韓国を徹底的に経済焦土化して,北の核と南の先端技術や経済力とが合体して朝鮮独自の核兵器が産み出されないようにして,南北纏めて現代の中華王朝に属国として押し付けねば.
哨戒機レーダー照射は実際ミサイル発射しなくても一線を越えています。
頭に銃口を当てて、引き金を引いてないからセーフという理屈はありえません
脅威を感じた時点で敵対しているのです
現金化してないから一線を越えてないは ないと思います
実効性がないとはいえ敵対行為をした時点で既に一線を越えているのです
全く同感です。
日本は、早く対抗措置を発動すべきです。
先ずは『与信を切る』ところから始めたい。