参院選で国民民主第3党浮上も自公過半数割れは微妙か
今夏の参院選に関する情勢分析はなかなかに難しいですが、著者自身の私見を交えて考察してみると、やはり自公が選挙後も過半数割れを起こすという可能性はそこまで高くなさそうです。また、国民民主党が比例で1000万票台を獲得し、大躍進する可能性もあるのですが、その場合であっても最大野党に浮上することは考えづらいです。自民党が大敗すれば、全国32の一人区で(さして支持されているわけでもない)立憲民主党が大躍進するという、昨年の衆院選と似たような現象が生じるからです。
目次 [非表示]
参院選予測記事が増えたが…
今夏の参議院議員通常選挙、いったいどうなるのか―――。
これに関する観測動画などが、ここ数日、めっきり増えてきたように思えます。
ただ、それらを眺めていると、「自公は過半数割れで大敗北」、といったものに加え、なかには「国民民主党が最大野党に浮上」、「立憲民主党に政権交代」といった書き込みなどもあるようです(※くどいようですが、一般に参院選は「政権選択選挙」ではありません)。
ちなみに参院選に関する非常に粗い予測については、当ウェブサイトでも『夏の参院選で連立与党「改選後過半数割れ」するライン』などでも取り上げているのですが、本稿ではもう少し踏み込んで、前回までの選挙データに加えて著者自身の私見をふんだんに取り入れながら、その方向性を探ってみたいと思います。
といっても、各政党・各候補者が獲得する票数や、各政党の合計獲得議席数を、現時点で正確に予測することは困難です。
もちろん、自民党や立憲民主党といった、そこそこ大規模な政党では、非公開ベースで定期的に世論調査を行っているらしい、といった情報はときどき耳にしますが、私たち一般人レベルの調査力で現時点における正確な選挙情勢を知ることは困難です。
ただ、これまでに報じられてきたいくつかの世論調査結果などからは、短期間でさまざまな情勢が大きく変化するなどの事情でもない限り、少なくとも現在の最大与党である自民党が参院選で大いに苦戦することは間違いありません。
水面下では石破茂首相やその周辺は、すでに参院選の大敗を織り込みつつ、最大野党である立憲民主党との「大連立」を模索する動きもあるなどのうわさも聞こえてきますし、これとは逆に、自民党の保守派を中心に、電撃的な「石破おろし」を画策しているとの声もないわけではありません。
(※もちろん、これらは現時点で、単なる噂話に過ぎませんが…。)
いずれにせよ、現在の情勢が続くことで自公連立与党が参院側でも過半数を失う可能性がジワリと高まっていることについては注意が必要です。
「自公が過半数割れ」の可能性は五分五分
もっとも、改めて指摘しておきますが、著者自身は自公が参院側でも過半数を失う可能性は、現時点で五分五分と見ています。
その最大の理由は、参院選の特徴にあります。とりわけ、大きく次の2点を踏まえておく必要があるでしょう。
①定数248議席が一度に選ばれるのではなく、3年に1回、124議席ずつ改選される仕組みであること。
②改選される124議席については比例代表に50議席、選挙区に74議席が配分されており、このうち選挙区については一人区は32議席で、残り42議席は中選挙区であること。
①の要因は、自公が惨敗しても直ちに過半数を失うとは限らないとする考え方の重要な論拠です。
岸田文雄・前首相の下で行われた2022年参院選で自民党は大勝したという事情もあり(※奇しくも安倍晋三総理大臣が暗殺された直後が投開票でした)、非改選議席数は自民党が61議席、公明党が13議席で、合計すると74議席です(※ただし統一会派ベース)。
今夏の参院選で過半数を失うためには、改選後議席数が124議席かそれ以下になる、ということであり、逆算すると、獲得議席が50議席以下であれば、自公は晴れて(?)過半数割れします(※ただし、自民党が引き続き第1党ならば議長は自民党から出るため、議長を入れるとギリギリ過半数です)。
ということは、この「50議席の攻防」が大きなポイントであり、公明党が2019年並みの14議席、あるいは2022年並みの13議席を獲得してくれるのであれば、自民党は37議席ないし38議席を取れば良い、ということです。
自民が40議席割れの可能性がどこまであるのか
この点、著者自身が保有する2005年衆院選以降の選挙詳細データによれば、参院選(2007年~2022年の過去6回分)で自民党が最も手痛い惨敗を喫した2007年で、獲得議席が37議席でした。内訳は選挙区が23議席、比例代表が14議席でした。
もし今夏の参院選が2007年並みの37議席の獲得に留まるという惨敗を喫した場合でも、(公明党さえしっかり14議席を確保してくれれば)自公合わせた議席数は51議席となり、辛うじて過半数を維持することは可能です。
そして、過去6回の参院選のうち、2007年のものを除けば、自民党はいずれも50議席以上を確保しています(2013年と2022年に至っては60議席台を記録しています)。
自民党の2007年以降の参院選獲得議席数
- 2007年…37議席(選挙区23+比例代表14)
- 2010年…51議席(選挙区39+比例代表12)
- 2013年…65議席(選挙区47+比例代表18)
- 2016年…55議席(選挙区36+比例代表19)
- 2019年…57議席(選挙区38+比例代表19)
- 2022年…63議席(選挙区45+比例代表18)
(【出所】総務省データをもとに作成)
しかも2016年以前と2019年以降で定数が異なっていますので(改選数が3議席ずつ増えています)、「前回までの事例をもとに普通に考えたら」、自民党の獲得議席が37議席にとどまるというのは考え辛いところであり、したがって、自民党は今夏の参院選でも過半数を制しそうなところです。
国民民主「比例1000万票」は?
しかし、これはあくまでも「普通に考えたら」、という話です。
石破茂政権下で国民(特に若年層)の自民党に対する不支持率が急速に高まっていること、国民民主党が支持を急速に伸ばしていることなどを踏まえると、この「前回までの事例をもとに普通に考えたら」、という前提が成り立たない可能性が非常に濃厚なのです。
こうしたなかで、「台風の目」となる(かもしれない)国民民主党の玉木雄一郎代表が先月、『ニコ生』で述べた「比例1000万票」という目標を、改めて思い出しておく必要があるかもしれません。
「まじか」国民・玉木代表の参院選比例目標「1000万票取れたらたいしたもの」に進行役驚く
―――2025/03/27 13:44付 Yahoo!ニュースより【日刊スポーツ配信】
日刊スポーツによると、玉木氏は先月26日夜の生配信で「1000万票」という単語を口にしたのだそうです。
もちろん、これは現時点で国民民主党が公式に掲げている目標ではなく、おそらくは玉木氏自身がなかば願望として述べたものでしょう。
しかし、国民民主党の勢いを見てみると、あながちそれも非現実的とはいえません。
比例代表における同党の得票数と投票総数に対する得票率を眺めておくと、昨年衆院選で比例の得票を急伸させているからです。
国民民主党の比例得票数と得票率
- 2019年参院選…3,481,078票(6.95%)
- 2021年衆院選…2,593,396票(4.51%)
- 2022年参院選…3,159,626票(5.96%)
- 2024年衆院選…6,172,434票(11.32%)
(【出所】総務省選挙データをもとに作成)
国民民主のデータが2019年以降の分しかない理由は、2017年衆院選では民進党が分裂した直後で、まだ国民民主党が発足していなかったからです。
それはともかくとして、2022年参院選から2024年衆院選にかけて、同党は得票を倍増させた格好であり、さらに前回衆院選から現時点までの国民民主党のネットへの露出頻度の増大を踏まえると、国民民主党が昨年比で票数をさらに倍増させるというのは、変化率的にみればあり得ない話ではありません。
自民党がむしろ比例1000万票割れの可能性も?
これに対し、自民党はどうでしょうか。
自民党の比例得票数と得票率
- 2005年衆院選…25,887,798票(38.18%)
- 2007年参院選…16,544,761票(28.08%)
- 2009年衆院選…18,810,217票(26.73%)
- 2010年参院選…14,071,671票(24.07%)
- 2012年衆院選…16,624,457票(27.62%)
- 2013年参院選…18,460,335票(34.68%)
- 2014年衆院選…17,658,916票(33.11%)
- 2016年参院選…20,114,788票(35.91%)
- 2017年衆院選…18,555,717票(33.28%)
- 2019年参院選…17,712,373票(35.37%)
- 2021年衆院選…19,914,883票(34.66%)
- 2022年参院選…18,256,245票(34.43%)
- 2024年衆院選…14,582,690票(26.73%)
(【出所】総務省選挙データをもとに作成)
著者自身が保有する2005年以降のデータで見ると、自民党が比例で最も多くの票を獲得したのは2005年の「小泉郵政解散」当時のものですが(自民党だけで2589万票を獲得)、この選挙を例外とすれば、自民党の比例での得票数は、だいたい1600~2000万票の範囲にあることがわかります。
また、昨年・2024年衆院選では自民党は比例で1458万票しか獲得できずに惨敗したわけですが、これは自民党が参院選でそこそこ勝利した2010年の1407万票よりも多く、また、安倍総理再登板の際に自民党が圧勝した2012年衆院選でさえ、自民党は1662万票しか獲得していなかったのです。
こう考えると、自民党は2005年の小泉郵政解散時を別とすれば、比例代表では、案外、得票力は高くないという言い方もできます。
立憲民主は比例で冴えない
ただ、先ほどは「国民民主党が2024年衆院選での617万票から倍近く得票を増やす可能性がある」という話を述べましたが、逆も真なり、で、昨年衆院選比例代表で1458万票しか獲得できなかった自民党が、獲得票数をさらに減らす、という可能性だってあります。
2022年参院選と比べて2024年衆院選では自民党は比例で367万票を失っており、2024年衆院選から票をさらに400万票ほど失えば、自民党の1000万票割れが視野に入ります。つまり、票数で自民党が国民民主党と並ぶ、といった事態が生じかねないのです。
これに対し、立憲民主党は、どうでしょうか。
立憲民主党の比例得票数と得票率
- 2017年衆院選…11,084,890票(19.88%)
- 2019年参院選…*7,917,721票(15.81%)
- 2021年衆院選…11,492,095票(20.00%)
- 2022年参院選…*6,771,945票(12.77%)
- 2024年衆院選…11,564,222票(21.20%)
(【出所】総務省選挙データをもとに作成)
驚いたことに、立憲民主党は衆院選では1000万票を超えているのに、参議院議員選挙になると毎回1000万票を割り込んでいます。なんだかよくわかりません。
ただ、自民党が盛大にズッコケた2024年衆院選で、自民党が大敗しているにも関わらず、立憲民主党は比例でさして票を伸ばせていなかった格好であり、これに加えて衆院選以降、立憲民主党は国内政治シーンにおいて、とりわけ存在感を示せていないように見受けられます。
このことから、立憲民主党が今夏の参院選で、いきなり1500万票、2000万票といった圧倒的な票数を確保する可能性は非常に低いと考えて良く、むしろ比例代表でも1000万票に到達しない可能性すらある、というのが自然な予測でしょう。
以上から、比例代表での獲得議席は、自民党が9~12議席、国民民主党が8~11議席、立憲民主党が7議席前後、維新7~8議席、公明党4~6議席で、残り10議席前後を諸派(日本共産党、NHK党、れいわ新選組、参政党、日本保守党、社民党)などで分け合う流れを予想します。
国民民主が選挙区で圧勝するのは困難
その一方で、32の一人区は衆院における小選挙区と似たようなもので、その選挙区内で当選できる候補者は1人に限定されますので、やはり自民党と立憲民主党に強みがあると考えられます。
つまり、自民党が強いときには一人区の多くは自民党が制しますし、自民党が弱いときには、自民党が一人区で敗北すれば立憲民主党が制する、という関係にあります(実際、2022年では自民党が32区のうち23区を制しています)。
参議院選挙、32の1人区対決で自民が23勝
―――2022年7月10日 21:28付 日本経済新聞電子版より
今夏の参院選、一人区で自民党が前回並みの議席を確保し得るかは微妙ですが、それでもこうした一人区で「新参政党」(?)である国民民主党が大勝することは一般に難しいでしょう。そもそも候補が立てられない、立憲民主との調整が難航する、などが予想されるからです。
国民民主党公認候補が一人区で当選できるとしても、せいぜい2~3人程度ではないでしょうか。
しかしながら、選挙区74人のうち一人区は32区であり、残り42区は中選挙区です。
たとえば大都市部の場合、改選数は東京都が6議席、大阪府や神奈川県、愛知県が4議席、北海道、埼玉県、千葉県、兵庫県、福岡県が3議席―――などとなっており、これらの複数区では、少数政党が躍進できる可能性を秘めています。
こうした中選挙区の特性を踏まえ、国民民主党がうまく候補者を立てれば、中選挙区で10~15人程度を当選させることが可能かもしれません。
立憲民主躍進が日本のためになるのか?
ということは、比例代表で8~11人、一人区で2~3人、複数区で10~15人程度を当選させられれば、国民民主党は改選ベースで20~29人を当選させ、改選後議席数は統一会派ベースで27~36議席となり、立憲民主(現在は41議席)に迫る第3党となれる可能性が浮上します。
逆に、自民党が比例代表で9~12人程度にとどまり、また、選挙区でも一人区で10人前後、複数区でも10~20人程度に留まれば、40議席前後か、下手をすると30議席割れという惨敗もあり得ます。
ただ、この場合は一人区で立憲民主党が躍進するという、昨年衆院選と似た現象が発生するため、立憲民主は比例代表や複数区で苦戦するものの、一人区で議席を積み上げることで改選後も第2党(=最大野党)の地位を維持するとみられます。
つまり、結果的に自民党が大きく議席を減らし(場合によっては公明党と合わせて改選後で過半数割れ)、国民民主党はある程度躍進するかもしれないにせよ、立憲民主党が現状維持で引き続き最大野党であり続ける、といった状況が実現する、という可能性が、最もあり得るシナリオではないでしょうか。
そしてなにより、その状態が日本のためになるのかどうかに関していえば、これもまったくの別問題なのですが…。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。
ツイート @新宿会計士をフォロー
読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
自民党には国民経済の成長という考えはありませんし、経済対策といえば、ばら撒きに走る程度の知恵しか持っておりません。しかもばら撒いた後は決まって増税が待っている。
自民党は「持続可能」という言葉がお好きなようですが、国民経済の成長に関心を持っておりません。態度にも表れている。つまり、重税、増税を課しさえすれば「持続可能」であると考えている訳です。
このような政党を居座り続けさせている限り、ばら撒きと増税、重税が延々と繰り返される、且つ、オールドメディアが喧伝する国の借金が指数関数が描く右肩上りの曲線のようになるだけでしょう。
但し、国民民主党についてはまだまだ実力不足でありますから、徹底的に鍛える必要があります。自民党、公明党には狸から妖怪まで万遍なく居るので、戦う知恵を身に着ける必要があるでしょう。
また、国民民主党には、官僚の代弁者にはなって欲しくないと、強く思っております。
自公与党政権は前回かなり勝ったので、1989年や2007年のようなぼろ負けしないかぎり、
参院選での過半数割れは起きない可能性大
国民民主が更に躍進するには、もっとふみこんで、最低賃金までは所得税住民税等あらゆる税金の対象外まるっと控除で、働いたら働いただけ手取り増加を保証しますくらいのわかりやすくて本来当たり前のはずのことを公約にすることでしょう。
名前抜けてました。文章の感じから丸分かりだと思いますが、陰謀論者です。
宮沢が高をくくってるのも、そんなに大敗する訳がないと思っているのでしょうね。民意を示さねば
何が何でも大負けさせたい
故安倍晋三を馬鹿にしている自民党を絶対に許せない