政治主導で決まることにイチャモンを付ける財務省職員
テレビ朝日の記事によると、財務省幹部は今年の税制改正について、「国民民主次第なので、私たちもどうなるか分からない」などと述べたそうです。また、三党合意を「予算を成立させるためにはやむを得ない」と述べた者もいたそうです。いったい何様なのでしょうか、この者たちは。しかも、テレ朝は「財務省もこれまで以上の譲歩は避けられない」、などと報じています。この報じ方に、財務省やメディアの在り方が凝縮されているのではないでしょうか。
目次
民主主義を妨げる腐敗トライアングル
民主主義国とは「最高権力者を有権者が選ぶ仕組み」
「日本は民主主義国である」。
これは、当ウェブサイトの議論を支える重要な前提条件です。
以前、当ウェブサイトには「馬鹿に選挙権を与えるな」という反社会的なコメントを残して行った人物がいたのですが、このようなことを平気で主張する人物がいるのを見ると、本当に残念であると思うとともに、「民主主義は何としても守らねばならない」という気持ちを新たにする次第です。
(※ちなみにこの「馬鹿に選挙権を与えるな」の人物、反論が来るとその相手に対し「俺の意見に反論するな」などと威嚇したことがありました。「民主主義を否定する者は自由な言論をも否定する」という典型例だと思う次第です。)
それはさておき、民主主義国の大切な原則とは、いったい何でしょうか。
それは、「国家の基本方針を決める人たちが、最終的には私たち国民・有権者によって選ばれている」、ということです。いわば、最高権力者は票の力で選ばれ、票の力で倒されるという仕組みです。
日本は成熟した民主主義国…下野しても逮捕されない!
「何を今さら、そんな当たり前のことを」、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、まぁ、聞いてください。
日本国民は2009年の衆議院議員総選挙で、民主党に定数480議席中308議席等圧倒的多数を与えて政権与党に選びましたが、これにより当時政権を担っていた麻生太郎総理大臣は総辞職し、自民党は下野し、代わって民主党の鳩山由紀夫代表が首相に就任しました。
その3年後、2012年の衆議院議員総選挙では、今度は逆に国民は自民党に定数480議席中294議席という圧倒的多数を与えて政権与党に選び、これにより野田佳彦首相(当時)は総辞職し、安倍晋三総理大臣が再登板を決めています。
2009年の政権交代当時、麻生総理は日本国憲法や法令、慣習に基づき総辞職して官邸を明け渡しましたし、2012年の政権再交代に際しても当時の野田首相は日本国憲法や法令、慣習に基づき総辞職して鑑定を明け渡しているのです。
そして、権力者は下野しても逮捕・投獄されたりしません。
麻生総理の場合は自民党が下野していた期間も衆議院議員を務め、2011年1月には当時の菅直人内閣の決定に基づき、ブラジル大統領就任式に政府特使として派遣されていますし、安倍政権・菅義偉政権時代を通じて副総理・財相を務め、その後も自民党の要職を務めています。
一方で野田元首相の場合も、下野して以降は政治的に存在感はありませんでしたが、衆議院議員には選ばれ続けており、安倍総理が暗殺された際には国会で追悼演説を行っていますし、現在は最大野党・立憲民主党の代表を務めています。
こうした事例で見るに、日本はほぼ完全な形で民主主義が定着していると断じて良いでしょう。
日本の近隣には、大統領を退任すると逮捕・投獄されたり捜査されたりする国や、国家主席は人民による直接選挙ではなく事実上共産党の党内の序列によって決定される国、最高指導者の地位が「抗日の英雄」の子孫によって世襲される国もあるわけです。
こうした事例に照らせば、日本のようにほぼ完璧な民主主義が実施されている国は、少なくともアジアでは少数でしょう。
ただし、民意の形成や伝達を妨げる者がいる!
もっとも、その日本においても、民意の形成と伝達という意味では、やはりそれを妨げる者たちがいることも事実です。
それが、『「税の取られ過ぎ」に気付いた国民がSNSを手にした』でも指摘した「腐敗トライアングル」、なかでも官僚機構とオールドメディアです。改めて指摘しておくと、財務省を含めた官僚、NHKや大手民放、全国紙などのオールドメディアの問題点は、少なくとも5つあります。
- ①国民から直接選挙で選ばれていないこと
- ②実質的な権力を握って悪用していること
- ③経済学等の専門知識が不足していること
- ④ミスをしても絶対に責任を取らないこと
- ⑤選挙を通じてクビになる心配がないこと
こうした権力者のことを、一般に「独裁者」と呼びます。
もちろん、あくまでも形式上は、日本は民主主義国であり、法律も国会議員が賛成して可決されていることになっているのですが、実質的には政府提出法案の多くは官僚が起案しており、また、成立した法律に基づき政省令を作るのは官庁です。
しかも、日本の法律はかなりあいまいに書かれていることが多く(著者私見)、官僚による解釈の余地は大きいため、「レジ袋有料化」のように多くの国民が望んでいない政策が事実上、官僚の一存で決まってしまう、ということになりかねないのです(※ちなみに2020年のレジ袋有料化は法律ではなく省令で決まっています)。
また、官僚は多くの場合、記者クラブや各種税制優遇、許認可権限などを通じてオールドメディアに対する支配力を行使しており、実際、オールドメディアが与党などを批判することはあっても、官僚機構の批判をすることはめったにありません。
そして、官僚にとっては「強すぎる与党」は邪魔であり、適度に与党の足を引っ張ってくれるタイプの野党が国会で議席を伸ばしてくれるのが快適でもあります。だからこそ、官僚とオールドメディアが結託し、「足を引っ張る」しか能がない特定野党を一生懸命に応援している、ということなのかもしれません。
腐敗トライアングル・まとめ
官僚、オールドメディア、最大野党(いわゆる腐敗トライアングル)に関する状況をまとめておきましょう。
官僚
選挙で選ばれたわけでもないくせに、実質的に大きな権力を握ってしまっている者たち。政府提出法案の起草や政省令、告示等の制改定などを通じ、事実上、日本の行政機構を支配している。さらに、記者クラブを通じて新聞、テレビ、通信社といったオールドメディアを長年、支配してきた。
オールドメディア
大手全国紙と在京キー局のクロスオーナーシップや記者クラブ制度などを通じて長年、異業種参入を排除し、情報発信を少数の会社で独占し、「第四の権力」と称する報道の力を悪用し、有権者の投票行動などに強い影響力を保持してきた。
最大野党
「強すぎる与党」を嫌う官僚機構の意を受けてか、オールドメディアが「報道しない自由」を使い、全力で擁護するなどし、実力以上の議席を長年獲得して来た。社会党、民主党、民進党、立憲民主党と名称をコロコロ変えながらも最大野党として自民党政権の足を引っ張ることばかり続けてきた。
こうした構造については『【総論】腐敗トライアングル崩壊はメディアから始まる』などでも説明してきたとおりですが、いずれにせよ、国民から信を得たわけではない者たちが異常に大きな権力を持つという構造は、どう考えても不健全だといえるでしょう。
政治主導に財務省が不満を表明
テレ朝報道で垣間見える腐敗利権の現状
ただ、利権の利権たるゆえんは、自分たちが持っている異常な特権を「異常な利権だ」と正確に認識できないことにあります。したがって、利権を持つ者たちからのちょっとしたしぐさ、振る舞い、あるいは言動から、その「利権の利権たるゆえん」が垣間見えたりすることもあるのです。
その典型例があるとしたら、自公国3党の幹事長が「103万円の壁」などの引き上げで11日に合意したことを受け、テレビ朝日が12日付で報じた、こんな記事かもしれません。
「103万円の壁」など3党合意 財務省「何だったんだ…」
―――2024/12/12付 テレ朝newsより
テレ朝はこれについて、こう報じています。
「税制と予算を担う財務省はどう対応するのでしょうか」。
「ある幹部は、補正予算案に維新まで賛成することを受け、『11日の合意は何だったんだ』とこぼしていました」。
思わず乾いた笑いが出てしまいます。
財務省さん、もう正体すら隠す気がないのでしょうか?
くどいようですが、税金は「税法」と呼ばれる通り、法律に定めなければ課税することができません。これは日本国憲法にも明記された、「租税法律主義」(または「租税立法主義」)と呼ばれる考え方です。
日本国憲法第84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする
そして、法律を作るのは、財務省でも財務官僚でもありません。
私たち日本国民の代表者である国会議員で構成される国会(衆参両院)であり、衆参両院を可決した場合(または参院で否決されても衆院で3分の2以上の賛成で再度可決した場合)に初めて天皇陛下の御裁可を受け、法律となるのです。
傲慢であり、明らかにおかしい財務官僚の言い分
もちろん、政府提出法案の場合、事実上、官僚が法案を書いているわけであり、また、これまでのように自公合わせて衆参両院で過半数を制している状況だと、政府提出法案の多くは、ほぼ自動的に法律となっていたのが実情でしょう。
しかし、現在は違います。
衆院側は少なくとも自公両党が過半数を割り込んでおり、政権としては自公所属議員以外の誰かに賛成してもらわなければ、法律はおろか、予算案すら通せない状況にあるのです。
こうした原則論を踏まえたうえで、テレ朝の記事の続きを読むと、こんな記述があります。
「例年、税制は与党と財務省で調整します。しかし今年は、世論の関心が高い『103万円の壁』や『ガソリン税』などは国民民主と与党で協議することとなり、財務省の担当者も『国民民主次第なので、私たちもどうなるか分からない』と調整の難しさをにじませていました」。
「私たちもどうなるかわからない」。
この一言に、この財務省担当者の傲慢(ごうまん)さが表れています。
財務省職員ごときに、本来、法案に対し口出しをする権利などないからです。
そのうえで、自公国3党が税調会長ではなく幹事長クラスで結論を出したことを巡っても、テレ朝はこう報じています。
「省内では、驚いた表情を見せる担当者もいた一方、『予算を成立させるためにはやむを得ない』との声もありました」。
政治主導で方針が決まることは、本来ならば「当たり前」の話です。
それを「やむを得ない」とは、いったい何様なのでしょうか、この者たちは…。
ただ、驚くのは、これだけではありません。
「合意内容の実現には巨額の財源が必要ですが、財務省もこれまで以上の譲歩は避けられず、3党が折り合える案をどう見出すのか、急ピッチで作業を進めています」。
そもそもこの「年収の壁」、「財源」の問題ではありませんし(取り過ぎになっている税額を調整するだけの話です)、財務省「が」譲歩する、というのも明らかにおかしな話でしょう。越権行為そのものだからです。
それに、これを報じるメディアもメディアです。
メディアの側も「おかしい」と気付かなかったのでしょうか?それとも財務省との癒着が酷過ぎて、そもそも「財務省の言い分がおかしい」という発想にすら思い至らなかったのでしょうか?
謎です。
国民はSNSを手に入れた!
いずれにせよ、著者自身の基本認識としては、「現在の日本は基本的には洗練された民主主義国家であるが、それと同時に民主主義の手続から逸脱し、不当に大きな権力を握っている者たちがいて、民主主義を歪めている」というものです。
こうした理解に立てば、民主主義の完全な実施のために、こうした者たちをどうやって排除するかが大きな課題だとも考えているのですが、だからといって、決して悲観しないでください。
私たち国民は、すでにインターネットという、「マスメディアではない情報入手手段」を手に入れたからです。
もちろん、現状でXなどのSNSも、情報が正確であるとは限りません。
なかには『否が応でもSNSと付き合わなければならない時代到来』などでも述べたとおり、明らかに、税法を知らないと思しき者が「基礎控除の引き上げは複雑な制度を議論しなければならない」などとデマを飛ばしていたりもします(余談ですが、基礎控除引き上げ「だけ」なら2本の条文と甲欄表を変えれば完了です)。
ただ、たとえばXなどの場合はユーザー数が多いなどの事情もあってか、専門家も多く、「年収の壁」問題に関しては、とくに租税法などに関する専門家、経済専門家、金融専門家、会計専門家、システム専門家などが寄ってたかって財務省とオールドメディアの言い分をボコボコに打ち砕いていくのです。
こうした観点からは、ただ財務省の言い分を垂れ流すだけのオールドメディアと比べて、SNSなどネットに大きな強みがあることは間違いありません。そして、政治家(※とくに自民党議員)の側も、官僚やオールドメディアの側を見るのではなく、やはりSNSなどを通じて、国民の側をしっかりと見てほしいと思います。
自公(とその裏にいる財務省?)は「123万円」を提示
しかし、次のような記事を見ていると、本当に不安になってしまいます。
自公、年収の壁「25年は123万円」提示 国民民主は拒否
―――2024年12月13日 18:30付 日本経済新聞電子版より
日経電子版が13日夕刻に報じた記事によれば、3党の税制調査会長は13日、国会内で協議し、自公側は「年収103万円の壁」を2025年には20万円引き上げて123万円とする案を提示したところ、国民民主党は「話にならない」と拒否した、というのです。
当たり前でしょう。
自公(というよりもその裏にいる財務省でしょうか?)としては、いきなり年収の壁を178万円に引き上げてしまうと、減税の効果で経済が大いに活性化され、財務省のこれまでの税収弾性値1.1などに基づく増税原理主義が誤っていたことがバレてしまうため、なんとか長期間で少しずつ引き上げることにしたいのでしょう。
その間に防衛増税を含め、減税効果を帳消しにするような政策を押し込むことで、財務省としてはなんとかこれまでのウソがバレないように、必死で抵抗しているのかもしれません。
いっそ自民党も全責任を財務省に押し付けたら?
このあたり、自民党としても、正直、ここらで「負け」を認めて、年収の壁については国民民主党が主張する178万円ではなく、いっそのことそれを上回る200~300万円にしたうえで、所得制限も撤廃してしまえば良いのではないでしょうか?
そのうえで全責任を財務省に押し付けてしまえば良いのではないか、などと考えるのですが…。
いずれにせよ、自分たちの税や社会保険料が取られ過ぎているのではないかという点に、少なくない国民が気付き始めているなかで、国民民主党が「もしかしたら税金が減るかも?」という国民の期待感に火をつけてしまったわけです。
国民民主党が主張する「178万円」は達成すべきミニマムであって、これに加えて今後は消費税率の引き下げ、年少扶養控除の復活、各種控除の上限引き上げなどがSNS上の焦点となっていくであろうことは、想像に難くありません。
残念ながら、財務省や自民党税調「インナー」が非公開ベースで税の在り方を議論する時代は、終わりを迎えました。もしも自民党側がこの変化に気付かず、従来型の「インナー非公開ベース」の税制議論を続けようとするならば、国民は今度こそ、自民党を見放すかもしれません。
自民党議員の皆さまには相応の危機意識を持っていただき、そして同時にこれを自民党再生の好機ととらえ、来夏の参院選に向けて、果敢に党改革に踏み出していただきたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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私は、財務省にも問題があるが、それを使いこなせない政治家=自民党税調に、より大きな問題がある、と考えております。
減税を欲する国民の意思は明確です。それを小出しにしても、国民の支持は回復しないでしょう。このままでは、来年の参院選挙も、はなはだ心配です。現役世代・子育て世代にターゲットを絞った大胆な減税策をとりまとめ、打ち出して欲しい。財源の話は確かになおざりには出来ませんが、そこが官僚と政治家の違いでしょう。「木を見て森を見ず」では政治家の資質が疑われます。
(注)私は財務省関係者ではありません。個人の意見をこのサイトに投稿しているだけです。それから新宿会計士さんには、このような場を提供指定して頂いていることに、日ごろから感謝申し上げております。「喧嘩を売っている」つもりも毛頭なく、単に自分の個人的な意見を開陳しているだけです。他人を「論破」したい、と考えたこともありません。
国民はSNSを手に入れた!
攻撃力がアップした!
(BGMおおぞらを飛ぶ)
経験値が…まだない、期待値がアップした!
呪文は新「カーベダハ」で、経験値は178ポイントでしょう。
BGMは「序曲」にしてください。
壊死歯「増税案を通さねば財務省が辞めさせてくれない」
毎度、ばかばかしいお話を。
財務省職員:「日本の影の政府DSである財務省は偉い。そこの職員である自分は偉い」
蛇足ですが、マスゴミも同じではないでしょうか。