「フジは上場会社として適格性欠く」=日本取締役協会
日本取締役協会がフジテレビおよびその親会社であるフジ・メディア・ホールディングスを巡って、先日の第三者委員会報告書などをもとに、「株主のみならず取引先や従業員などの重要なステークホルダーの期待と信頼を裏切る行為であり、ガバナンスの歪みを通り越して、資本市場における上場会社としての適格性を欠く」などとする、極めて重い表現で批判する声明を出しました。この声明は重いものです。
目次
フジMHが調査報告書を公表
いわゆるフジテレビ問題とは、さる大物男性タレントと女性との性的トラブルなどに関し、株式会社フジテレビジョン(以下「フジテレビ」)の従業員が深くかかわっていたとされる問題と、これに関連し、同社社長がきちんと説明責任を果たさなかったことなどに対し、多くのスポンサーがCM出稿を控えているなどの問題です。
これについてはすでに『フジ問題報告書で指摘される類似例…CMはどうなる?』でも取り上げたとおり、同社の親会社である株式会社フジ・メディア・ホールディングス(以下「フジMH」)が受領した第三者委員会報告書が3月31日時点で公表されています。
調査報告書(公表版)
―――2025/03/31付 フジMHウェブサイトより
報告書自体は全部で291ページと膨大で、当初公表版ではPDFファイルにコピー防止措置が施されていましたが、おそらくこれは意図したものではなく、誤って暗号化が設定されたものである可能性が高いと考えられます(※実際、現時点でPDFファイルを閲覧すると文字列検索もコピーも問題なく実施できます)。
調査報告書の驚くべき内容
ただ、内容としては正直、かなり深刻です。
第三者委員会のアンケート調査に対する回答内容を紹介した119ページ目以降を抜粋すると、次のような趣旨の記述が確認できるからです。
- 幹部、上司、先輩、担当者からの指示、要請で、芸能プロダクション社長との会合に若手女性社員が参加した
- 部長クラスの社員が、若手女性社員を喜び組と呼び、芸能プロダクショントップ等との会合に、喜び組でも呼んどけ、と言っていた
- (制作会社、スポンサー、広告代理店との会合で)上司から会合に参加することを指示され、参加を余儀なくされた(複数)
- 芸能プロダクション社長との会合に、女性アナウンサーが誘われていた、参加していた(複数)
- 女性アナウンサーが番組の懇親会に強制的に参加させられていた、取材先への接待に業務に全く関係ない女性アナウンサーを呼んでいた
- 女性アナウンサーが担当プロデューサーから食事に誘われた
- 女性は男性の隣に座り、お酌をするのが仕事、それがスマートにできない女性は仕事を評価されないという文化がある、人事権を有する者に絶対服従しないといけない風潮がある
もちろん、これらはあくまでも、役職員に対するアンケート調査の結果であり、これらのことが公然と行われていたということが証明されたわけではありません。
しかし、第三者委員会の報告書に記載されたという事実は大変に重く、これらについて、フジMHやフジテレビはもちろんのこと、「芸能プロダクション」や「スポンサー」などの取引先においても、類似事例がなかったかどうかについては厳しい目で見られる可能性が高い、ということです。
フジへの広告再開?まだ早くないですか?
こうした状況を踏まえたうえで、日曜日に出てきたこんな記事を確認してみましょう。
サントリーHD会長“フジCM再開検討”発言のワケ 他局のCM枠が飽和状態で…
―――2025/04/06 04:10付 Yahoo!ニュースより【スポニチアネックス配信】
スポニチの記事は、大手飲料会社サントリーホールディングスの会長で経済同友会の代表幹事を務める新浪剛史氏が「(フジテレビへの)CM再開を検討する状況になってきた」とする発言を巡って、このような認識が出てきた背景を探るものです。
これについてスポニチは、ある「関係者」のこんな発言を取り上げます。
「実はフジから広告が流れて他局の枠が飽和状態になっている。今ならフジへの出稿料金は安くなる可能性もあり、できれば出稿を再開したいと考えている企業もある」。
そのうえでこの関係者は、新浪氏の「CM再開検討」云々の発言について、「新浪さんはそういった状況を意識しているのかもしれない」としたうえで、「喉から手が出るほど出稿再開を望んでいるフジにとってはありがたい話だろう」との見解を示しています。
ただ、もしそうだとすると、ちょっとこの見解は甘すぎます。
先ほどの調査報告書の記述でもわかるとおり、この問題はフジテレビにとどまらず、芸能プロダクションやスポンサーなど、他社にも波及する可能性があるからです。
取締役協、コーポレート・ガバナンスの機能不全などを指摘
こうしたなかで、ちょっと気になる声明が出てきました。一般社団法人日本取締役協会(以下「JACD」)が8日、この第三者委員会に関連し、声明を公表したのです。声明文の本文はPDFで3ページほどですが、その要約版についても同協会ウェブサイトにて確認可能です。
フジ・メディア・ホールディングスの第三者委員会報告に関する声明を公表
―――2025年4月8日付 日本取締役協会HPより
JACDによると、協会と同リスクガバナンス委員会はフジMHの第三者委報告を引用するかたちで、「フジMHグループのコーポレート・ガバナンスの機能不全」、「法人格を有しない『フジ産経グループ』という事実上の集合体の『代表』に実質的な最高権力が集中する異常な権力構造」と指摘。
次のように批判しているのです。
「これは株主のみならず、FMH及びCXの取引先や従業員などの重要なステークホルダーの期待と信頼を裏切る行為であり、ガバナンスの歪みを通り越して、資本市場における上場会社としての適格性を欠くものといえます」。
(※文中の「FMH」は株式会社フジ・メディア・ホールディングス、「CX」は株式会社フジテレビジョンのことです。)
なかなかに、厳しい指摘です。
そのうえでJACDは再発防止策として、フジMHに対し最高監査責任者の新設、内部監査部門が経営陣だけでなく監査等委員会にも報告するダブル・レポーティング・ラインの確立など、具体的な施策の実行を「強く求める」、などとあります。
ちなみにJACDは2月27日付でもフジテレビに対する声明を出していますが、改めて協会として、ずいぶんと厳しい声明が出てきた格好です。
スポンサー問題は長期化&他局の波及する(かも)
いずれにせよ、フジテレビに対するスポンサー問題は、スポンサー企業側でも近年、コンプライアンス意識が高まっていることだけでなく、テレビCM自体の広告効果が低下してきたこと、スポンサー自身がSNSで炎上するリスクを負っていることなど、案外根が深いものです。
フジ問題で一気にスポンサー離れが加速した要因の例
- ①企業のコンプラ意識の高まり
- ②株主説明責任の圧力の高まり
- ③SNSの炎上リスクの高まり
- ④TV広告の魅力の相対的低下
- ⑤「みかじめ料」モデルの崩壊
©新宿会計士の政治経済評論
こうした状況を踏まえるならば、フジCM問題が長引くことはほぼ間違いなく、かつ、他局にも容易に波及し得るものでもあります。
そういえば、最近も一部のテレビ局が偏った視点からの報道を繰り返すなどの「問題報道ぶり」がネットなどで批判されているようですが、もしかするとフジテレビの「次」は、偏向報道番組を垂れ流すテレビ局にCMを出稿することが問題となるかもしれません。
いや、その日は意外と近いのではないでしょうか?
テレビ業界のガバナンス不足は、根が深い問題なのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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フジテレビは局内の和を保つために、日本取締役協会がうるさいので、上場廃止することもあり得るのではないでしょうか。
この問題で、退任したフジテレビ元相談役が口を出してくることもあるのでは。(それをどう扱うかは別問題です)
TBSも含めて放送免許のはく奪。もしくは、半年間の放送禁止くらいしないとマスゴミは反省しませんよ。
フジテレビをはじめとしたメディアともはや一蓮托生の黒いナニカがある……という邪推を除けば、サントリーらはこのような状況下ですらすぐにでもCM再開が利益になると判断し、取り下げたままの各企業はCMはもはやどれほど料金暴落しても利益が不十分、最悪は不利益である、と判断したということでしょうかね。今後の動向(フジテレビなどもはや勝手に潰れてもろて、あくまでTVCM事業そのものの)が気になるところです。
斜陽のTVCM事業が、他ならぬ最大手TV局の恥部によってトドメを刺されたという、不滅帝国陥落の如き歴史の瞬間を目撃しているのカモ。
ちなみにサントリーはけしからんので不買……と思ったら、もうすでに個人的に不買してたので無意味でしたとさ。
「サントリーなんて高くて買えない!」って状況でしたけどね、この数年。
中国のバブル崩壊で正常化してくれることを祈りますが。
だが! サントリーが買収した海外メーカーの味を変えやがったことは許さん!!
現状、ほとんどのスポンサーはフジテレビに広告を戻していない様ですね。
今頃フジテレビの人間がスポンサー企業に「そこをなんとかお願いします!」と
繰り返していたりするんだろうか……?
このまま「ネットに出す広告費>>オールドメディアに出す広告費」の流れが固定化すれば
時代はどんどん変わっていくでしょうね。差し当たっては、フジテレビは
時代の変化の象徴として”墓標”になるのかも。
>スポンサー企業に「そこをなんとかお願いします!」
もしこれをやってるとしたらフジテレビではなく電通、博報堂だろうね
フジテレビの本音としては、外野がうるさいので上場廃止してプライベートカンパニーになりたいところでしょうけど、放送免許をもらっている以上難しいですね。
実態は、コンプライアンス、ガバナンス、ディスクロージャーいずれも失格ですので、上場企業の体を成していないと思いますが。
企業体質の改善は容易ではないと思います。