韓国の外貨準備高が再び減少基調

韓国と通貨スワップを再開してしまった日本にとっても「他人事」ではありません。韓国の外貨準備高が最近、再び減少傾向を見せているからです。韓国銀行が5日に発表した説明によれば、2024年1月の外貨準備のうち、前月比40億ドル以上減ったそうで、とくに現金預金・有価証券の残高はコロナ禍初期以来の水準にも近づいています。その要因は年金基金との為替スワップなどにある、などと記載されているのですが、果たして本当にそれだけが要因なのでしょうか。

日本の常識で外貨を論じるべきではない理由

個人的に少し気になっている話題がひとつあるとしたら、それはアジア諸国の資金フロー――、とりわけ「外貨ポジションが脆弱な国」における資金の流れです。

私たち日本人には、外貨は銀行に行けばすぐに購入できるし、何なら外貨預金を始めるのもとても簡単だ、とする感覚はあるかもしれません。

実際、海外旅行に出かけるとわかりますが、私たち日本人が使用している日本円という通貨は、本当に世界中のどこに行っても、ほとんどの国で通用します。両替ショップにいけば、日本円はたいていの店で取り扱われているからです。

通貨・金融が脆弱な韓国

ところが、この感覚でアジア諸国の資金フローを論じてしまうと、ときとしてさまざまな勘違いをすることにつながります。アジア諸国のなかには、自国通貨が国際的にあまり通用せず、外貨がとても貴重だ、という事例もあるからです。

その典型例が、韓国でしょう。

韓国は現在でこそ「先進国」という体裁を装っていますが、金融面に限定していえば、韓国を「金融大国」と呼ぶにはあまりにも脆弱です。

たとえば韓国の通貨・韓国ウォンは、SWIFTがほぼ毎月公表している国際送金通貨ランキングに登場したことは1度もありませんし、世界各国の外貨準備の構成資産という意味でも存在感がありませんし、さらにはオフショア債券の発行残高も極めて少ないのが実情です。

【参考】『オフショア債券市場で人民元建て発行残高が過去最大に

これに加えて韓国には「G-SIBs」と呼ばれる、国際的に巨大な金融機関の本部がひとつもない、という問題点もあります。

日本の場合だと3メガバンクが「G-SIBs」に該当していますし、これらのG-SIBsに準じた巨大金融機関、巨大証券会社などがいくつも存在しています(ゆうちょ銀行、農林中央金庫、野村ホールディングス、三井住友信託銀行など、数え上げればいくつもあります)。

これに対し、韓国の場合は「韓国国内での大手銀行」と呼ばれる金融グループはありますが、それらはいずれも「G-SIBs」ではありません。というよりも、資金循環統計上、韓国の国内勘定全体の預金量は、三菱UFJ銀行の2行分に過ぎないのが実情です。

こうした観点から、いわゆる「通貨危機」――たとえば「外国の金融機関がおカネをその国から引き揚げてしまうような現象」など――が生じるとしたら、その危険性が最も高い国のひとつが韓国である、というのは、かなり昔からの構造上の問題でもあります。

すなわち、日本の場合はそもそもメガバンクなどの外貨調達力が強い金融機関がいくつも東京に本部を構えており、日銀も米FRBや欧州中央銀行(ECB)などから無制限の為替スワップで外貨を引っ張ってくることができるのに対し、韓国にはこうした安全網がないからです。

外貨準備は前月比43.89億ドル減少

こうしたなかで、個人的に注目している指標のひとつが、韓国の外貨準備統計です。

韓国銀行が5日に発表したデータによると、同国の2024年1月末の外貨準備高は前月比44億ドルほど減って4157億ドルとなり、2020年7月時点の水準(4165億ドル)を割り込んだことが明らかとなりました。

韓国の外貨準備高を前月比で確認した者が、図表1です。

図表1 韓国の外貨準備高(2024年1月末時点)
項目2024年1月末前月比
外貨準備合計4157.59億ドル▲43.89億ドル
 うち金47.95億ドル±0.00億ドル
 うちIMF-RP45.61億ドル▲0.66億ドル
 うちIMFSDR149.36億ドル▲1.46億ドル
 うち現金預金+有価証券3914.67億ドル▲41.76億ドル

(【出所】韓国銀行データをもとに作成)

ただ、ここで注目しておきたいのが、「現金預金+有価証券」の部分です。

この金額は3915億ドルですが、コロナ禍発生直後の2020年3月時点における3893億ドルを少し上回っているというレベルに過ぎず、また、ピーク時の2021年7月時点の4457億ドルと比べれば、じつに542億ドルも減ってしまっていることが確認できます。

韓国の外貨準備の動きは変動が激しい

こうしたなかで確認しておきたいのが、近年の韓国の外貨準備について、総額と「現金預金+有価証券」の部分に分けてグラフ化した、図表2です。

図表2 韓国の外貨準備高の推移

(【出所】韓国銀行データをもとに作成。ただし、グラフの起点がゼロではない点には留意されたい)

このグラフでもわかるとおり、韓国の外貨準備高は過去に乱高下を続けています。

とりわけ、コロナ禍が発生した2020年3月は、1ヵ月で100億ドル近く外貨準備が減りましたし、米FRBによる利上げ騒動の最中の2022年9月には、1ヵ月で一気に200億ドル近く、外貨準備が消滅したこともあります。

しかし、コロナ禍の最中の2020年4月以降はむしろ外貨準備が一気に膨張していることがわかりますが、これはFRBを含めた主要国の中央銀行が金融緩和を続けていた時期とも重なっています。

このことから、韓国銀行が主要国の金融政策に合わせて、為替介入(資金流入が続いているときにはウォン売り・ドル買い介入、資金流出が続いているときにはウォン買い・ドル売り介入)を繰り返していたであろうことは、おそらく間違いないと考えてよさそうです。

また、今回の「1ヵ月で40億ドル以上、外貨準備が減少したこと」を含めて、韓国銀行は5日付のプレスリリース【※韓国語】のなかで、次のような内容を述べています。

  • 2024年1月末韓国の外国為替保有額は4157.6億ドルで前月末(4201.5億ドル)と比べて43.9億ドル減少した
  • 米ドル以外の外貨資産を米ドルに換算した金額や金融機関の外貨預金の減少、国民年金との外国為替スワップによる一時的な減少などに起因する

ちなみに韓国銀行などのこれまでの説明によれば、この「国民年金との為替スワップ」とは、国民年金が外貨建資産への投資を行うにあたって、市場でウォンを売り、外貨を購入するのに代わって、直接韓国銀行から外貨融通を受ける仕組みのことだそうです(『韓国通貨当局が再び国民年金と「為替スワップ」を締結』等参照)。

その目的は国民年金が外貨を購入する際にウォン安となることを防ぐことにある、などとしていますが、たかだか年金基金の外貨買いで為替相場が動いてしまうというあたり、韓国の外為市場の「市場参加者層の薄さ」の証拠なのかもしれません。

通貨スワップ再開してしまった日本にとっても他人事ではない!

ただ、韓国銀行が米ドル以外の外貨でも外貨準備を運用しているという話に対しては、違和感を覚える人も多いかもしれません。

韓国の場合は国際決済銀行(BIS)の国際与信統計上、米国や英国などの金融機関から巨額の外貨資金を借りているものと推定され、借り入れている資金の多くは米ドルであり、資金ニーズが強い通貨も米ドルではないかと考えられるためです。

いずれにせよ、最近になり再び韓国の外貨準備の減少傾向が出てきたことについては、何とも気になる点です。

とりわけ私たちの国・日本にとっても、昨年12月に再開した通貨スワップのせいで、韓国が通貨危機に陥った際には無関係ではなくなってしまっています。

日韓通貨スワップの残高は100億ドルとされていますが、過去には通貨スワップを締結している国同士、危機が発生した際にはスワップを増額するといったことも行われているため、韓国も当然それを期待していることでしょう。

このあたりは先日の『仏像返還しない韓国…通貨スワップの「正しい使い方」』などでも指摘したとおり、通貨スワップ自体が(うまく使えば)韓国に対する牽制ともなり得ることは間違いないのですが、現在の日本政府にそのような使い方ができるかどうかはよくわかりません。

引き続き、気になる論点のひとつといえるでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 特捜班CI5 より:

    仏像返してくれるまでSWAPやる必要ないですね。

  2. はにわファクトリー より:

    金融蓄積の弱い国と言いますと台湾こと中華民国があります。
    この国とスワップ協定を結ぶとどうなるのでしょうか。全力妨害が掛かりそうですが、それこそが狙いとも。

  3. sqsq より:

    そもそも本当にあるのか?
    アラングリーンスパンの回顧録にアジア通貨危機の時、韓国の外貨準備が実は「ウソ」だったというのが出てくる。

  4. 百十の王 より:

    昔の日本経済は「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく」と言われましたが、今は「中国がくしゃみをすると韓国は風邪をひく」なんでしょうね。

    (何の数値的裏付けなど無いのですが)その中国は不動産不況が底無し沼の様相で日本の「失われた30年」どころでは無いとの経済評論家諸氏の見立て。中国は金利も為替レートも変えず表向き平静を装っているが景気は極悪。上得意様の中国が不治の病なら韓国はどうなるのだろう。中途半端な為替レートの半固定化など中国がバッタリ倒れた時には役に立たず韓国も道連れなんだろうか。

    1. sqsq より:

      韓国は中国との間で2023年貿易赤字を計上している。
      中国の不況が原因。

  5. 世相マンボウ* より:

    日本人はまじめなので いくら
    岸田が騙されて約束したからといって
    一旦約束したら 相手の言う通り
    実行してあげなければならないと
    考えてしまいがちで、また、
    朝日新聞とか韓流汚染マスコミは
    そうした刷り込みをしてきました。

    ただ、
    韓国の宗主国中国さんのスワップは
    相手国がたとえ自国のし掛けた債務の罠から
    窮した場合でも自国の都合で断っていますし、
    もしほしいのならと弱みに付け込み
    さらに足元見た交渉に持ち込んでいます。

    歴史的にほぼ中国の属国であった韓国さんですし
    なんせ、韓国さんは国際法を冒してまで
    条約ですら守らない国なのですから
    こちらもなにもスワップ破棄しなくても
    こちらの都合で適当な理由をつけて
    相手の様式である中華式に実行してあげなければよい
    だけではと思いますし、町のチンピラとの交渉の要領で
    あの国相手には本来ふさわしい対応だと考えます。

    もちろん
    日本の信用があ と声高に叫ばれ誹謗される
    という観点はありますが
    なんせ韓国の日本に今もしている
    嘘捏造失礼の数々を列挙すれば
    世界から 
    そりゃあの寛容で温厚な日本でも
    ここまでされたら怒るのもむりないわ
    と理解してもらえるよい機会ではと考えます。

  6. 丸の内会計士 より:

    韓国は安泰でしょう。日本と通貨スワップを締結しているので、全く問題ないです。岸田さんのお陰です。自民党の集団脱税と韓国政策については、全く納得できないですね。

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