岸田首相が「今年の100人」に選ばれる=米タイム誌

まったく運の良い人物です。岸田文雄首相は『タイム』の「今年の100人」に選ばれたのだそうです。日韓関係「改善」や防衛予算の増額、さらには習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の訪露と同じタイミングでのウクライナ訪問などが世界に注目されたことが影響したのでしょうか。運の良さは政治家の実力のうちですが、その「運の良さ」が日本のためになるという保証はありません。

岸田首相の能力の低さ

著者自身の見解で恐縮ですが、岸田文雄首相といえば、政治家としての能力は決して高い人物ではありません。

当ウェブサイトでこれまで取り上げただけでも、会社法制に対する理解の浅さ(『岸田首相「株主還元で成長の果実流出」=企業収益分配』等参照)、強引な増税(『税収3兆円増えているのに「1兆円の増税が必要」の怪』等参照)のように、経済・法制に対するセンスのなさは強烈です。

また、外交面では『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』でも指摘したとおり、いわゆる自称元徴用工問題では、韓国が自称元徴用工判決などの違法状態をほとんど解消していないにも関わらず、岸田首相自身は韓国政府の「解決案」を「日韓関係を改善するものとして評価する」と述べました。

正直、トップがダメならば、国としての意思決定を次々と誤ってしまうわけであり、その意味では、著者自身は本当に危惧しています。

とりわけ故・安倍晋三総理大臣、あるいは岸田首相の前任者である菅義偉総理大臣と比べると、岸田首相に決定的に欠落しているのが「インテリジェンス」です。

「1兆円増税」で判明したとおり、おそらく岸田首相やその取り巻き(木原誠二・官房副長官や宮沢洋一・自民党税調会長など)は財務省の言い分をそのまま鵜呑みにしているフシがありますし、「徴用工岸田ディール」で判明したとおり、外交では外務省の言い分をそのまま鵜呑みにしていることは間違いありません。

自民党政治には期待も

もっとも、岸田首相自身、自民党内の弱小派閥である宏池会の出身であるという事情もあってか、岸田内閣の行動は自民党内の力学のも依存するという側面があります。

たとえば原発の再稼働・新増設、経済安全保障、中国を念頭に置いた半導体製造装置の輸出管理強化、安保関連の3文書の制改定など、岸田政権が打ち出した動きは、間違いなく現在の日本の産業・安保に良い影響を与えるでしょう。

また、今すぐ岸田首相が辞任してくれたとしても、その後任候補者が現在の日本の難局を乗り切るうえで適任者であるという保証はありません。

たとえば時事通信ニュースが昨日、時事通信社が7~10日に実施した世論調査結果を報じているのですが、「次の首相に相応しい人物」のトップが河野太郎氏(17.6%)、2位が小泉進次郎氏(14.1%)、3位が石破茂氏(13.0%)だったというのです(ちなみに4位は菅総理で6.8%)。

「次の首相」河野氏トップ=小泉、石破氏が続く―時事世論調査

―――2023-04-13 15:04付 時事通信ニュースより

4位の菅総理はともかくとして、1~3位については、「いったいだれに聞いたらこういう結果になるのか」という点について、なんだかよくわかりません。

高市総理は非現実的

このあたり、保守界隈では高市早苗「総理」に対する待望論が高いことは事実ですが、残念ながら、自民党の党内力学等に照らし、現状で高市氏が自民党総裁・内閣総理大臣に登板できる可能性は高くありませんし、もし登板できたとしても、政権運営が円滑にできるという保証もありません。

無派閥の高市氏が前回の自民党総裁選で善戦できたのも、結局は安倍総理の支援があったからであり、安倍総理が亡くなり、最大派閥である安倍派(清和政策研究会)自体も明確な方向性が見えない中で、「高市支持」で自民党がまとまる可能性が高いとは思えないのです。

このように考えていくと、現状で考えるならば岸田内閣が存続し、岸田首相のおかしな政策については自民党の「保守派」が修正することを期待するのが、「自民党政権支持者」にとっては最も現実的な対応ではないかと思う次第です。

立憲民主の「敵失」とウクライナ訪問

こうしたなかで、やはり岸田首相の「運の良さ」は際立っています。

先月は主要メディアの調査による内閣支持率が一斉に上昇しましたが、実際、最近の岸田首相には支持率が上がる要因ばかりです。

たとえば立憲民主党の小西洋之氏が総務省の内部文書を入手し、高市氏を舌鋒鋭く追及した問題は、結局のところ、高市氏に「やましいところ」がなにもなかっただけでなく、むしろその文書の入手経路等を巡り、小西氏に国家公務員法違反疑惑が持ち上がっているほどです。

しかも、『小西氏、今度は「謝罪ツイート」を印刷して相手に渡す』などでも取り上げたとおり、小西氏の暴言問題と相まって、立憲民主党を巡っては、特にインターネット上で、日に日に有権者・一般国民からの批判が強まっている状況です。

さらには、先月は岸田首相がウクライナの首都・キーウやブチャなどを電撃訪問し、例の「しゃもじ外交」が、外国からもかなりの注目を集めました。習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席のロシア訪問と見事に重なったからです(『外国メディアが岸田首相ウクライナ訪問に注目する理由』等参照)。

正直、このキーウ訪問とウォロディミル・ゼレンシキー大統領との会談は、タイミングを狙ったものというよりはむしろ、偶然の産物という方が正確でしょう。

『タイム』の「今年の100人」

しかし、結果的にこれが外国からはかなり高く評価されているらしく、産経ニュースには本日、こんな記事も掲載されていました。

米誌「今年の100人」に岸田首相 ゲーム開発の宮崎氏も

―――2023/4/14 08:31付 産経ニュースより

産経によると米紙タイムは13日、「世界で最も影響力のある100人」に岸田首相を選んだのだそうです。

岸田首相の選出理由は「▼防衛費の大幅増額、▼日韓関係の改善、▼ウクライナ訪問」――などだそうであり、「ロシア、中国、北朝鮮の脅威に直面するなか、日本外交に革命的変化を起こした」、などとしたうえで、G7広島サミットにも期待を示したのだそうです。

本当に、運が良い人物だと思わざるを得ません。

もちろん、「運が良いのも実力のうちだ」という意見もあるでしょうが、それが日本にとって良い話かどうかはまた別問題でしょう。

もっとも、岸田政権が長期化すれば、岸田首相の「次の次」が育ってくることも事実です。

とくに昨今はSNSなどの発達により、私たち有権者が政治家と直接会話できる時代が到来しています。インターネットの発達により、新聞、テレビなどのオールドメディアを介在させず、有権者が政治家に意思を送り届け、政治家が有権者の意向を正確に汲みとる時代は、もうすぐそこにあるのです。

その意味では、私たち有権者は決して希望を失わず、政治を見守る必要があることは言うまでもないでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    どうなんかな
    まぁけなされるよりはいいのかな
    ようわからんけど

  2. CRUSH より:

    阿川弘之だったか城山三郎だったか、
    「なぜ東郷平八郎を艦隊司令に選んだのか?」
    「あいつは運のいい男でございます、陛下。」

    てなやりとりが日露戦争当時にあったそうですよ。

    楽観視はできませんが、ポジティブ評価するなら
    「岸田は酔拳の使い手」
    くらいは言えるのかも?

    1. はにわファクトリー より:

      CRUSH さま

      >酔拳の使い手

      これはヒットです。刺さりましたw

  3. 引っ掛かったオタク より:

    日本国の経済規模と安倍晋三総理の実績を鑑みれば、
    しばらくの間は①政権基盤がある程度安定した②複数年続けて日本国総理大臣の座に居る”人”なら、ソノ”100人リスト”には載りそうではありますが…

  4. 匿名 より:

    はっきり言って、最近はかなり日本の未来に楽観的です
    23歳ですが、未曾有の賃上げ(今までと違い正社員だけでなく、派遣社員など非正規も)が相次いでおり、ぜひ新宿会計士さんにもそういうニュースをとりあげて、緊縮派、デフレ円高マンセー野郎たちを黙らせてほしいです
    ドル建てGDPがドイツに抜かれるー(円安だから当たり前)とか言ってるアホは無視でいいです
    円安にならなきゃ給料は上がりませんし、給料が上がるか円安が剥落すればすぐに抜き返せます
    政治に関しては維新が躍進してるのも嬉しいし、ネット民主主義に近づいてるのがgood!
    次は国民、N国が躍進して欲しいところです

  5. 匿名 より:

    自民党はもうオワコンなんじゃないかなぁ…

    1. CRUSH より:

      例えば?具体的に?

      自民党がダメなのは何十年も変わりませんのですよ。
      その自民党にすら惨敗を続ける今の野党第一党は、ダメダメだというよい客観的証明。

      普通に営利企業なら8年間赤字続きなら経営陣は全員クビなんすけどねえ。

      トホホ

      1. 匿名 より:

        落ち着いてください。自分が思っていることを言っただけで煽ってるわけではありません。
        安倍政権が約8年続いて首相の器として育ったのが菅さんだけ。これは新宿会計士さんの言う通り、岸田さんが辞めても、後任に適した人物がいないということで分かると思います。8年もの時間があったのにも関わらず、菅さんだけというのは、首相の器はいないことを表しているのではないでしょうか?
        岸田さんは官僚のペットですね。大変都合のよい人物です。なので、自民党内では弱小派閥ですが官僚からの援護射撃があり、安倍さんの考えに近い人物が攻撃され、トップの座に居座り続けると思われます。失敗に終わりましたが、高市さんの件が官僚からの援護射撃の一例ではないかと考えています。
        以上より、自民党はオワコンなんじゃないかなぁと思っております。

      2. 匿名 より:

        彼は都合のいい人物だ。

  6. 立ち寄り人 より:

    毎日の更新お疲れ様です。またマスゴミによる印象操作か南朝鮮サイドの買収と疑ってます。

  7. taku より:

     そうですね。私も、岸田内閣は支持できないと思う点が多々あるのですが、「運がいい」という評価には同意します。総裁選で菅さんに敗れた時には、もう総理の目はないな、と思っていたのに、コロナという突風にあおられ退陣となり、僅か1年で、総理ですもんね。
     総理になってからも理由なき高支持率が続いた後、統一教会対応で一時失速しましたが、また復調気配ですよね。そしてタイムの「今年の百人」に選出ですか。
     安倍元総理の後、また1年毎に首相が変わるような事態だけは回避して欲しい、という意味では、良いことなんでしょうが、もろ手を挙げて歓迎という感じではないですね。

    1. はるちゃん より:

      マスコミがあまり岸田首相の足を引っ張らないのが気になりますね。
      安倍さんの時は、ある事無い事引っ張り出して大騒動していたのに。
      騒ぐネタは色々あるように思うのですが。

      1. taku より:

        はるちゃん様
         返信ありがとうございます。
         私は未だに安倍ロスを引きずる大ファンですが(あれほどの名宰相は他にいない)、安倍さんはタイプとしては、人によって好き嫌いが分かれる方だろうと思います。そして岸田さんはその真逆。朝毎東やサンモニが、安倍さんほど叩かないのもそのせいではないでしょうか。
         私にしてから、岸田内閣は評価できないとは思いつつも、日本の首相がコロコロ替わるのもなあ、なんて考えてしまいますもん。
         ただ高度成長期ならこういう敵の少ない人でも良いのかもしれませんが、現状を打破するには、強いリーダーシップで国民を引っ張る(当然、敵も多い)人でないといけない、という考えが基本です。

      2. PON より:

        本当にそうですね、安倍政権時には集団的自衛権ごときで大パッシングしていたのに、防衛費が2%と倍増になってもどのマスメディアもなぜか騒がない。
        やはり、マスメディアに対するアメリカの影響が強まっているということなんでしょうかね。

  8. naga より:

    「明日は明日の風が吹く」と言う言葉があり、「今日が悪くても明日は良いことがあるだろう」と言うような意味ですが、何の努力も無しで良いということでなく、普段から努力した結果「明日には明日の風が吹く」ということだろうと思います。運が良いのも実力の内というのも同じことで、実力がある人がいうことではないかと思います。
    岸田首相が5、6年或いは10年くらいの長期政権になり、後で振り返って運の良いことばかりなら実力だったのも知れませんが。但しその場合、後進にアドバイスできることは少ないですね。

  9. 農民 より:

     受賞回数上位には習近平、プーチン、金正恩らがそろい踏みですから、基準が「影響力」であることには留意が必要です。
     逆に、岸田総理の発案(?)での世界的な影響というとほとんどウクライナ訪問くらいしかありませんから、あれがいかにクリティカルヒットだったのかということになりますね。

     なぜあの件で日本国内で最も報じられたのが”しゃもじ”部分だけだったんだか……

  10. 匿名 より:

    今日の日付は4月1日?

  11. Yさん より:

    タイム誌の選出ですから当然アメリカの思惑がありますね。ウクライナ復興費用押付けの先触れでないことを祈ります。

    1. CRUSH より:

      ゼレンスキーもウクライナ議会も
      「北方領土は日本のもの」
      と公式にコメントしてるのですよ。

      プーチンにこれを言わせるためには、金と時間がどんだけ費やされるかを思えば、ある程度の資金援助は安いものかと。

      例えば、楽観的なシナリオを想定してみるならば、

      プーチンがクーデターで失脚
      新政権とゼレンスキーが和睦
      和睦後のウクライナとロシアへの復興資金の交換条件として、北方領土の返還と平和条約締結、とかね。

      ま、そうなるとすぐにムネオみたいに仲介ピンハネしたがる悪党が群がって来ますが、一つの考え方として。

    2. PON より:

      その通りですね、実に解りやすいです。
      史上まれに見るネギ鴨首相です、国益より外国益(特に米国)、ヤフーコメントも疑問の声で満ち溢れています。

      日本はウクライナ同様、代理戦争にまっしぐらのように思えます。
      少子化のための財源、あほですか、お金に色はありません。
      なぜウクライナ支援、防衛費倍増のための財源と言わないのでしょうか、欺瞞ですね。

  12. 比翼 より:

    JNNが昨年12月に集計した次期首相にふさわしい人物を問うた世論調査というものは、以下のようになっていた、ということです。

    1位 河野太郎 デジタル大臣   19%
    2位 石破茂 元幹事長      11%
    3位 菅義偉 前総理大臣     7%
    4位 岸田文雄 総理大臣     6%
    5位 高市早苗 経済安保担当大臣 5%
    6位 茂木敏充 幹事長       2%
    7位 野田聖子 元総務大臣     2%
    8位 林芳正 外務大臣       2%

    時事通信とは異なり、小泉進次郎氏の名前が入っていないのは現実的かもしれません。
    メディアが石破氏、河野氏、小泉氏の名前をわざわざ上げてくる意味はただひとつ。
    岸田首相に対する「消極的支持」、「信認」の表現でしょう。
    無論、国民の支持ではありません。
    メディアからの首相に対する支持でしょう。
    それはネットも含めた上でのメディアからの支持、ということなのでしょう。

  13. クロワッサン より:

    【速報中】岸田首相の演説会場で爆発音 和歌山市内
    2023年4月15日 11時49分
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230415/k10014039411000.html

    まっこと、運だけは良いようです。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

naga へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告