自称元徴用工問題でまたしても特許権の追加差し押さえ
またしても燃料投下です。韓国で自称元徴用工らが再び三菱重工の特許権を差し押さえました。特許権は換金が非常に困難な資産であり、そんな資産を差し押さえていったいどうするつもりなのか、という疑問はありますが、いずれにせよ自称元徴用工問題は解決していませんし、日韓関係も「改善」していないことだけは間違いないでしょう。
自称元徴用工問題の根底にある「違法判決」
自称元徴用工問題とは、韓国で「戦時中、日帝による強制徴用(または強制動員)の被害に遭った」と自称する者たち、すなわち「自称元徴用工」やその遺族らが日本企業を訴えている問題のことです。
当然、日韓間のあらゆる請求権の問題は、1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に」解決しています。
しかし、2018年10月と11月には韓国の最高裁に相当する「大法院」が原告勝訴の判決を下すことで、韓国が自ら「国際法違反」の状態を作り出してしまいました。なぜなら判決自体が日韓請求権協定に違反する状態を作り出しているからです。これが「違法判決」のゆえんです。
しかも、2018年の3つの大法院判決で勝訴した15人の自称元徴用工に賠償をすればおしまい、という話ではありません。類似の訴訟はいくつも係属中です。
『必要額うなぎ登り…さっそく話が違ってきた徴用工財団』などでも紹介したとおり、韓国メディアの報道によれば、「徴用被害者」(※自称元徴用工)の人数は21.8万人であり、そのうち存命の自称元徴用工が1200人おり、係属中の訴訟は67件で、原告は110人だそうです。
松川理論に騙されるな!
『岸田ディールで垣間見える「キシダの実務能力」の低さ』等参照)でも指摘しましたが、韓国政府が先月発表した「解決案」では、こうした違法状態がいっさい解消されておらず、それどころか、「お互いが少しずつ譲歩する」といった考え方も垣間見えます。
それどころか、日本でも最近、「韓国は安保上重要な国だ」、「尹錫悦(イン・シーユエ)政権を助けるために日本も譲歩すべき」などとする詭弁(いわゆる「松川理論」)を唱える者がいます(『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』等参照)。
しかし、ここでちゃんと整理しておかなければならないのは、2018年の3本の大法院判決が「違法判決である」という事実だけではありません。そもそも韓国が主張する「強制徴用問題」自体が歴史的事実なのかどうか、という論点も同様に重要です。
そして、これらをきちんと考察していくと、韓国が日本に対して提起している「歴史問題」の多くは、本質的には日本に対する韓国による一方的な「二重の不法行為」である、という論点に行き当たります。
日韓諸懸案に関する韓国の「二重の不法行為」とは?
- ①韓国側が主張する「被害」の多くが韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
- ②韓国側が日本に対して要求している謝罪や賠償の多くは法的根拠がないか、何らかの国際法違反・条約違反・合意違反などを伴っている
(【出所】『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)
この「二重の不法行為」とは、韓国側が(ありもしない)「被害」をでっちあげて、日本に対して謝罪、賠償など、法的にまったく権利がないことを要求する行為を指します。その際、たいていの場合、何らかの国際法違反や条約違反、国際合意違反を伴っています。
自称元徴用工問題など、その典型例でしょう。
笑いが止まらぬ尹錫悦大統領
そして、韓国による「歴史捏造」と「違法行為」を正面から否定しない状態で「問題解決」などありえないのであり、今回の自称元徴用工問題に関しても、岸田文雄首相はじつに愚かな決断を下したものといわざるを得ないでしょう。
もっとも、その岸田首相、ウクライナの電撃訪問が大成功し、「小西文書問題」や「サル・蛮族発言問題」などの「敵失」にも大いに助けられるかたちで、支持率も上昇傾向にあるようですし、おそらく4月の統一地方選で自民党はそこそこの勝利を収めることでしょう。
したがって、今年3月の「岸田ディール」に関しては、しばらく日本の側から修正するような動きは生じ辛いといえますし、見方を変えれば韓国にとっては「キシダを騙すことに3回目も大成功した」格好であり、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領にとっては笑いが止まらないのではないでしょうか。
定期的に燃料投下:今度は特許権追加差し押さえ
もっとも、自称元徴用工の側は、この問題で定期的に「燃料」を投下してくれているようです。
日韓のメディアの報道によると、韓国の大田(だいでん)地裁は5日までに、元女子勤労隊員ら4人の訴えを認め、三菱重工業が韓国国内で保有している特許権4件を、追加で差し押さえるように命じたのだそうです。
三菱重工業の韓国内資産、韓国地裁が追加差し押さえ命令
―――2023/4/5 19:33付 産経ニュースより
三菱重工の特許権 新たに4件の差し押さえ認める=韓国裁判所
―――2023.04.05 17:05付 聯合ニュース日本語版より
ちなみに対象となった特許の種類や内容については明らかにされていないようですが、差し押さえの原因となったのは一審判決で言い渡された賠償金とその遅延利息約6.8億ウォン(1円=10ウォン換算で約6800万円)だそうです。
このあたり、当ウェブサイトではすでに『自称元徴用工の現状②その資産、換金できるのですか?』などでも繰り返し指摘してきているとおり、これまで自称元徴用工側が差し押さえてきた資産は、非上場株式や知的財産権など、売却が極めて困難なものばかりです。
この点、先日は三菱重工の在韓孫会社に対する金銭債権の差し押さえに関する訴訟が始まった、などとする報道もありました(『三菱重工業の金銭債権の取立訴訟始まる=韓国メディア』等参照)が、これも良く調べてみると、結局は売掛債権などの短期債権ではない可能性が濃厚です。
今回の自称元徴用工の行動を含め、自称元徴用工訴訟を巡って、産経ニュースは次のように述べます。
「徴用工訴訟をめぐっては、すでに勝訴が確定した原告らも同社の韓国内資産を差し押さえているが、抗告手続きなどで現金化に至らないまま4年以上が経過。韓国政府は今年3月、勝訴が確定した原告への賠償を韓国政府傘下の財団が肩代わりする解決策を発表しており、これに反発する一部原告らが勝訴確定前の資産押収に向けた活動も活発化させている」。
また、聯合ニュースによると、今回の差し押さえ決定により、三菱重工が所有する在韓資産のうち、強制執行手続が進んでいるのは特許権10件、商標権2件の合わせて12件なのだそうですが、こうした商標権や特許権をどうやって換金するのか、その「お手並み」を拝見したいところではあります。
いずれにせよ、知的財産権などを差押えてどうするのかは知りませんが、少なくとも自称元徴用工問題は解決していませんし、日韓関係も「改善された」とは言い難いことだけは間違いないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
現金化できないってただの嫌がらせなんかな
日本は無視してれば問題ないのか
見込みの通り何も解決はせず、蒸し返しが始まった。
なのに韓国の擦り寄りに甘い顔していて良いのかね。
キシダ君。
kが慌ただしく擦り寄ってきているのには訳がある。
一つは簡単に騙せる大好物のキシダ政権の間に騙し切ってしまおうと急いでいる事。
もう一つは、激しく落ち込んで自力では回復不能な経済環境あり、何とか早く日本とスワップなどの経済支援を取り込みたい事。
大きくこの二つだと思う。
何とかしてキシダ君に鈴置論考を1万回読ませる方法はないのだろうか。
債権を差し押さえる。
つまり支払いは三菱重工ではなく差し押さえた者にしてくれということ。
重工には金が入らない。そのようなところに今後売らない。
重工の機械、部品、メンテナンスが買えなくなって困るのは韓国じゃないの?
韓国政府は現実としては結局まだ何もできていないのに、言い様は「解決策は日本に提示済みなので韓国が上位だし、原告らの利権もまだ停止しないので韓国が上位!」とでもいうような、とーっても都合の良い解釈してっぽいですね……
あれ、韓国政府がとりあえず解決させたんじゃありませんでしたっけ?
時系列の判断も無茶苦茶なので厄介ですね。
改めて松川氏のブログを読んでみたのです♪
>韓国政府が、「徴用工」について、本件判決のみならず将来起きうる訴訟が日本企業に対して害悪をなすことを韓国政府の責任によって法的に不可能とすることを決意していることは明らかです。
決意だけで実現はしてないみたいですね♪
尹大統領に意思はあったけど実行力がなかっただけなのか、それとも新宿会計士様が「笑いが止まらぬ尹錫悦大統領」というように最初から騙す気だったのかはわかんないけど、個人の内面を当てにしても仕方がないんだろうなって思うのです♪
件の「解決案」にしても、案として示されただけで、実行されたわけではありません。従って、「改善」に向けての方向性は示されたということはできたとしても、未だ第一歩すら踏み出されてはいないと言えます。その代わりと言っては何ですが、日本側も具体的な「譲歩」は何一つ実施してません(*)ので、せいぜい「改善」に向けての期待を示した以上の意味合いはないと思います。つまり、現時点では、「関係改善」という観点から見れば、未だ何一つ進捗はなく、「関係改善に向けて対話していきましょうね」ということが合意されたというだけです。何しろ、文在寅政権とは、対話自体が全く成立しませんでしたので。
従って、「関係改善はすでになされたのだから、連携強化のために多少譲歩してでも関係改善をさらに進めるべきだ」という議論は、そもそも前提が誤っているので、お話にもなりませんし、同様に岸田総理が対韓外交を失敗したという見方にも全く賛同しません。共同声明一つも出せないような首脳会談を行ったことに、わざわざ「失敗」の烙印を押すほどの意味はないと考えるからです。
なお、新たな「差し押さえ」については、件の大法院判決が判例として生きている以上、想定しうる範囲内でしかありません。なので、以前もコメントしましたが、件の大法院判決を上書きする判例を作ることが絶対に必要なのです。件の大法院判決自体の扱いは別途考えるにしても、新たな判例を作り、今後くだらない面倒が発生しないようにしなければなりません。そこまでいけば、ようやく自称徴用工問題は一段落に近付いたと言えるようになるでしょう。ただし、問題の大法院長の任期は6月だか9月だかに終了しますが、来年4月の韓国総選挙が終わるまでは、「新たな判例」は期待できないだろうと思います。
(*) こう書くと、「半導体関連3品目に対する輸出審査厳格化を解除したじゃないか!」
と憤慨される方もいるでしょうが、これまでだって3品目について禁輸措置を行っ
ていたわけではありません。韓国国内使用分については、従来同様に輸出が行われ
てきました。単に輸出案件ごとに審査を行うようにしただけです。今回の措置は輸
出審査をまとめてできるようにしたというだけで、恩恵をこうむるのは日本の輸出
業者だけです。これで輸出量が爆増したとなれば話は変わってきますが、今のとこ
ろ日本の輸出業者の手間を減らしてあげた以上の意味合いはありません。このよう
に韓国側には何一つメリットがないことで憤慨すべきでしょうか?
韓国政府の立て替えで、顔も見たくない隣人から、出来れば会いたくない隣人にレベルアップしただけで、何がなんでも助け合う隣人になった訳ではありません。
例えるなら、自分家に放火した隣人が 「助けなければ火が燃え移るぞ」と脅してる様なもの。
日本からしたら「延焼したら、然るべき措置をとる」だけで、後は勝手にどうぞと放り投げた感じ。
結局、自分で火を消してから 消化したから援助を寄越せと叫んでも、知らんがなです。
その放火も、家の庭でゴミを燃やした様なショボいもの。
お父ちゃんがせっかく消したのに、子供が勝手に再度もやして 燃え移るのが嫌なら援助しろと叫んでます。
日本からしたら、延焼したら訴えるぞコラ!で済む話。
さぁ、お父ちゃんが再度消化してなぁなぁにするか見ものです。
まあ、「言葉一つ通じない隣人」から「片言くらいは通じる(かもしれない)隣人」になったという程度ですね。そのこと自体はけして悪いこととも思いませんが、だからといって、「じゃあ、一緒にBBQしよう!」などとなるわけではありません。なにしろ、隣家の庭には前の住人が残した「やらかし」の残渣が山積みになっており、まずはそれを何とかしろという話です。一応、今の住人は片づける意志だけはあるようですが、ロクデナシの親族が騒ぐので、なかなかままならないようですね。
ところで、以前どこかで読んだ話ですが、日本人は「百里の道も九十九里をもって道半ばとせよ」と考えがちですが、韓国人は「一歩でも踏み出せば完走したも同然」と考える傾向が強いそうです。まあ、価値観の違いというよりありませんねえ。
ま、韓国の手口は「嫌がらせをやめて欲しかったら金を出せ」というならず者そのものな手口ですからね。
で、「やれるものならやってみろよ。やった後に後悔するだろうけどな」と脅すと引っ込むチキンでもありますが。
所詮は半端者の浅知恵。
嫌がらせをしているという意識すらないと思いますがね。
確かにそうですね。
「私がしているのは嫌がらせである」と認識せずに「私がしているのは抗議活動である」などと認識してるでしょうし。
まあ無視で良いか、と考えます。これで現金化をしていただければ(そんなことはありえないと思いますが)、韓国政府の発表した”解決策”なるものが笑いものにされ、恥を掻くのは彼らの方ですから。
それよりも、『韓日請求権協定の双方交渉代表 「個人請求権は未解決」と認識』との聯合ニュースの記事が出ました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/041226f62dc9a4a93e00d40b5a9be9f9d2f5ed00
基本的な認識齟齬も甚だしい記事です。
日本政府は、「日韓請求権協定で解決した」とは言っていますが、「個人の請求権は消滅した」とは一言も言っていません。「日韓請求権協定で解決した」とは、「韓国は日韓請求権協定により国家が持つ外交保護権を放棄した」という意味で、韓国の自称被害者の権利は、訴訟では救済されない権利となった、ということです。
この程度の基本的知識すら持ち合わせない記者が、よく徴用工の記事を書けるものだと、聯合ニュースのレベルの低さにあきれてしまいます(まあ日本でもこのこと=個人の請求権がなくなったわけではないことを認識しないまま論じている方も結構いらっしゃいますが)。
「笑いが止まらぬ尹錫悦大統領」この部分だけは違うと思うんですよね。
尹錫悦大統領は、「殺される、国民に殺される」と毎日恐怖しながらやっていると思います。
あの程度の譲歩でも妥協でもなんでもない、100点中0.1点程度の対応ですら
韓国では大統領の命を危険にさらしてしまう、大変危険な冒険なのです。
最低でも80点は必要な所に「0.1点でもう殺されそうなんだよ!これ以上は勘弁してよ!」
と叫ばれても、「知らんがな」と返すしかないですがね。
尹大統領がかなりの政治的リスクを覚悟のうえで「解決案」を提示したことは間違いないでしょう。案の定、実行に移す前から従北左派の猛反発を受けてますが、おそらくそこまでは想定内だったと思います。武藤元大使などのいくつかのレポートによれば、文政権下でやりたい放題だった労組や市民団体の締め上げを進めているようですが、なにしろ国会の多数を従北左派に握られているため、なかなか容易ではないようです。なので、「解決案」をどこまで実行できるのか、まあ、お手並み拝見としか言いようがありません。実際、少なくとも韓国側から見れば、日本側から何一つ具体的な措置も、それどころか「言葉」さえ勝ち取れてないのですから、従北左派以外からの反発も少なくないようです。
以上のように考えると、「笑いが止まらぬ」というのはいったいどこの世界の話なんだろうと思います。雪だんご様の言われるように、「もうちょっとでいいから助けてくれよぉ」と内心思っていそうです。それでも、「オレを助けることが日本の利益になるのだから、オレを助けるのは当然だ」などという、過去の韓国政権が言ってきたような戯言を、(今のところはまだ)言ってないだけ、多少はマシなのかもしれません。
なお、武藤元大使などは「だからこそ尹錫悦大統領を側面支援すべきだ」と主張していますが、わざわざ足を引っ張ることまではしなくてもいいけど、積極的に支援する必要などはないと考えています。以前もコメントしましたが、韓国との関係が多少良くなろうと悪くなろうと、日本としては大勢に変わりがないと考えているからです。そんな「どーでもいー国」に余分な手間暇をかけているような余裕はないでしょう。
龍さま
ご意見に全面的に賛同致します。
武藤元大使の言うような側面支援は、かえって韓国が勘違いして、これまでの「ごねれば譲ってもらえる」悪弊を断ち切れません。
韓国とは「原則放置、極力関わらない」を基本方針として、しかるべきタイミングでレーダー照射事件を採り上げましょう。
「笑いが止まらぬ…」は、私もそう思わない訳ではありませんが、言わずもがな、ではないでしょうか。読みや分析を外した際の対応は難しいものです。
特許権や商標権など韓国原告側弁護団はわざわざ換金化の一番困難な資産を指定して差押えをして来て居る←このご指摘は本当に新宿会計士さまの独自の視点であり、何故か日韓のほとんどの識者やマスコミなどが言及しないが、韓国側の思惑を喝破した慧眼だと思います。韓国ウォッチャー界隈でよく言われるサラミスライスを揶揄では無く事実(OSINT)と実務経験によって指摘された。
2023年風に言うと“認知プロファイリング”でしょうか。