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    Categories: 外交

外務省の対韓譲歩案を頓挫させた「日本国民の生の声」

昨日も紹介したとおり、韓国紙『朝鮮日報』は日本語版の記事で、日本政府が「いかなる形であれ、三菱重工や日本製鉄は被害補償には加わらない」などとする立場を最終決定したと報じました。この報道が仮に事実なのだとしたら、外務省の年初来の「前のめり」な姿勢は、いったいどこに行ったのでしょうか。外務省の「対韓譲歩姿勢」が修正を余儀なくされたファクターとは、いったい何だったのでしょうか。その可能性として最も高いのは、「国民の生の声」です。

韓国政府の悪しき企み

韓国紙「日本政府が結論」:韓国が焦っていたのはどうやら間違いない

自称元徴用工判決問題に関し、日本政府は三菱重工や日本製鉄が『いかなる形であれ被害補償には加わらない』、経団連が寄付を取りまとめる場合も『日帝強制動員』という名前を持つ財団には寄付できない、などとする立場を最終決定したことが、1日までにわかった」――。

こんな話題を、昨日の『日本政府、「賠償に被告企業は不参加」と結論=韓国紙』で「速報」的に取り上げたとおりです。

韓国紙『朝鮮日報』(日本語版)は2日、自称元徴用工判決問題に関し、日本政府は三菱重工や日本製鉄が「いかなる形であれ被害補償には加わらない」、「経団連が『日帝強制動員』という名前を持つ財団には寄付できない」、などとする立場を最終決定したことが「1日までにわかった」と報じました。これが事実なら、まずは歓迎すべき決定でしょう。自称元徴用工での対韓譲歩外務省が国益を売り渡そうとしていた!?以前から当ウェブサイトでは、どうも日本の外務省が自称元徴用工問題を巡り、国益を売り渡そう東しているのではないか、...
日本政府、「賠償に被告企業は不参加」と結論=韓国紙 - 新宿会計士の政治経済評論

報じたのは韓国紙『朝鮮日報』(日本語版)です。

【独自】日本政府内で結論「徴用補償に被告企業は加わらない」/両国の関係筋が伝える

―――2023/03/02 10:09付 朝鮮日報日本語版より

この点、現時点でこの朝鮮日報の記事を全面的に「事実である」と決めるには、若干慎重であるべきかもしれません。韓国紙が報じた内容については、「後日振り返ってみると、結果として内容が正しくなかった」というケースもこれまでに多々あったからです。

ただ、それと同時にこの朝鮮日報の記事自体、これまでの報道発表などを通じて断片的に伝わってくる日韓協議の状況と、あるていどの整合性があることも間違いありません。

というのも、『自称元徴用工「焦る」韓国政府の内情と冷徹な日本国民』などでも報告したとおり、韓国政府内では「強制徴用問題」(※自称元徴用工問題のこと)を2月中に最終解決しようと画策していたフシがあるからです。

朝日新聞の牧野愛博記者の記事といえば、後から振り返ると、「韓国政府の意向を正確にくみ取ったもの」であることが多いように思えます。そんな牧野氏が8日、現代ビジネスに対して寄稿した論考からは、日本政府に非を認めさせるための努力しかしてこなかった現在の韓国政府の「焦り」のようなものが浮かび上がるようです。ただ、それ以上に興味深いのは、『Yahoo!ニュース』に掲載されている読者コメントの冷徹さにあります。日本に非を認めさせる努力しかしていない韓国政府自称元徴用工問題を巡る最近の状況といえば、「日本に非を...
自称元徴用工「焦る」韓国政府の内情と冷徹な日本国民 - 新宿会計士の政治経済評論

韓国政府が自称元徴用工問題を巡り、「財団による併存的債務引受方式での賠償金支払い」をたたき台として出してきたのが1月12日の話であり、その前後で「日本政府が呼応措置として輸出『規制』(※原文ママ)解除やシャトル外交に応じる」、といった報道も、韓国メディアからは相次いで出て来ました。

これらがあながち「飛ばし報道」とまでは言い切れないのは、産経や読売(※)など、一般に「保守系」と見られている日本のメディアからも、「日本の呼応措置」に関する報道が出て来ていたからです(※読売新聞が「保守系メディア」なのかどうかはとりあえず脇に置くとして)。

不可解な記事は日本のメディアからも相次ぐ

たとえば読売新聞は1月7日付で、「5月のG7広島サミットに韓国の尹錫悦大統領を招待する方向で検討に入った」と報じています(読売新聞オンライン『広島サミットへ韓国大統領の招待を検討…「元徴用工」で出方見極め最終判断』参照)。

その読売新聞は約1ヵ月後の2月5日付の『<G7広島サミット2023>尹大統領 政府が招待検討』という記事でも同様に、尹錫悦氏の招待を「検討している」と報じています。

これなども、「旧朝鮮半島出身労働者問題」(※自称元徴用工問題のこと)が片付けば「日本の呼応措置」として尹錫悦氏をG7に招待しようとする動きが、政府内に存在するという間接的な証拠です(もちろん報じたメディアがメディアだけに、単なる「自社の願望」という可能性も否定できませんが…)。

また、もっと決定的なのは、産経新聞が1月28日付で「独自」と銘打って報じた、次の記事でしょう。

<独自>韓国の「ホワイト国」復帰検討、徴用工見極め判断

―――2023/1/28 05:00付 産経ニュースより

産経はこの記事で、政府が「韓国を輸出管理で優遇する『ホワイト国(優遇対象国)』に再指定し、対韓輸出管理を緩和する方向で検討していることがわかった」と報じました。

当ウェブサイトではすでに『産経「ホワイト国復帰」記事、ロジックは「穴だらけ」』などで詳しく議論したとおり、この記事には基礎的な用語やロジックの誤り、不整合、矛盾など、さまざまな問題が存在する、端的にいえばじつにお粗末な代物です。

「韓国をホワイト国に戻してはならない」とする当ウェブサイトの昨日の記事とまったく同時刻に、産経ニュースは「独自」と銘打って、『韓国の「ホワイト国」復帰検討、徴用工見極め判断』と題した記事を配信しました。まさに真逆の内容です。ただ、産経の記事自体、事実誤認も多く、ロジックもかなりお粗末です。これはおそらく「産経記者の不勉強」ではなく、情報源である日本政府関係者あたりが考えている内容を、産経が「確信犯」的に報じたのではないでしょうか。ホワイト国にふさわしくない韓国なぜ韓国をホワイト国に戻してはな...
産経「ホワイト国復帰」記事、ロジックは「穴だらけ」 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、産経がこれを報じたということ自体は、外務省あたりが本当にそれを検討していて、それを「特ダネ」として「うるさ型」の産経新聞社に提供することで、「産経を黙らせようとした」、という可能性を示唆するものです。

(※余談ですが、著者自身などは、産経はそうした外務省(?)の意図を見抜き、その「ホワイト国復帰計画」を潰すため、敢えて外務省のリーク通りに記事を執筆してみせることで、「わかる人にはわかる」構成に仕立てた可能性もあると見ていますが、この議論については本筋から外れるので、このくらいにしておきます。)

さらには、共同通信も1月28日付で、韓国政府の「肩代わり案」(つまり財団案)を後押しするために、過去の「おわびの談話」を継承することを表明する予定だ、などと報じています。

政府「おわび」継承説明へ 韓国肩代わり案後押し

―――2023/01/28 21:04付 Yahoo!ニュースより【※共同通信配信】

このあたりは誤報、捏造報道が大変に多い共同通信のことですので(共同通信の問題のある取材手法等については『JAXA会見でのやり取り巡り共同通信記者が「炎上」』などもご参照ください)、記事の信頼度自体はやや低下します。

今度は共同通信の記者です。JAXAのロケット打ち上げ中止を巡って、共同通信の記者が質疑のやり取りの最後に「それは一般に失敗といいます」と言い放ったことが、インターネット上で一般の人々から大きく批判されているのです。ネットの出現により、記者会見のやり取りを含めて一般人に「見える化」したことの影響でしょうか。ツイッターをやっていれば、すでにご存じの方も多いと思いますが、共同通信の記者の「とある質疑」が「炎上」しています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が17日午前10時37分に打ち上げる予定だった次世...
JAXA会見でのやり取り巡り共同通信記者が「炎上」 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、それでも韓国メディアが出してきた「日本の誠意ある呼応措置」に対応するかのように、1月末から2月初頭にかけ、日本のメディアからも不可解な記事が相次いで出て来ていたことは間違いありません。

あまりにムシが良すぎる韓国政府の「解決案」

当たり前の話ですが、自称元徴用工問題で韓国政府の要求する「誠意ある措置」を日本が講じるというのは、とんでもない話です。韓国政府・尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が行ってきたのは、「日本に非を認めさせるための努力」だけだからです。

自称元徴用工問題では日本企業にカネを出させ、日本政府に謝罪させる。

自称元慰安婦問題では韓国が破棄した慰安婦合意を復活させない。

火器管制レーダー照射事件を巡っては、「レーダー照射はなかった」と言い張る。

それでいて「韓日両国は協力すべきパートナーだ」と言い出す…。

あまりにもムシが良すぎて、ちょっと日本国民をバカにするにもほどがあります。岸田「宏池会」政権を騙すくらいのことはできるかもしれませんが、民主党政権禍以降、飛躍的に賢くなった日本の国民世論を騙せるというものではありません。

ではなぜここまで韓国政府がことを急いでいたのか。

これについては日本で最も信頼のおける韓国観察者のひとりである鈴置高史氏の解説が参考になります。鈴置氏は韓国側のこうした狙いについて、「日本人に深く考える時間を与えない作戦を採ってきた」と説明しているのです(『徴用工「早期決着」に失敗した韓国の次の手=鈴置論考』参照)。

韓国政府による「キシダを騙す動き」は、いったんは頓挫したようです。自称元徴用工問題を巡り、韓国政府が目指した「早期決着」に失敗したからです。しかも、日本の側では、岸田「宏池会」政権は基盤が弱く、これに加えて年々強くなるネット世論の存在も、日本の対韓譲歩を困難にしています。ただ、韓国による「キシダを騙すための努力」は、それこそ岸田首相自身が退陣するまで続くのではないか――。日本で最も信頼に値する韓国観察者・鈴置高史氏の最新論考を読んでいると、そんな懸念が生じてしまうのです。決断しなかった林外相な...
徴用工「早期決着」に失敗した韓国の次の手=鈴置論考 - 新宿会計士の政治経済評論

「相手に深く考える時間を与えない」というのは詐欺師の常套手段ですが、韓国がここまで日本を急かすのも、結局は自分たちにとってムシが良い「解決策」を日本に押し付けて「問題解決でござい」、とやるつもりだったからでしょう。

第一段階が頓挫

韓国政府の当初の目論見

いずれにせよ、著者自身は現時点において、こうした韓国側の試みについては、ほぼ完全に「頓挫」したと考えていますが、ここで推察しておきたいのが、韓国政府の当初の目論見です。

改めて朝日新聞社の牧野愛博氏の2月初旬の論考も参考に、「韓国政府のスケジュール感」を確認しておくと、2月中旬の日韓外務次官級での事務的な大詰めの作業を経て、同18日の日韓外相会談で「最終合意」し、2月中に「強制徴用問題の解決」を韓国政府が発表。

そのうえで「3・1独立節演説」で、尹錫悦氏が日本に対し、友好に関する強いメッセージを出したうえで、3月上旬に来日し、東京で開幕する野球のWBCの日韓戦を岸田文雄首相とともに観戦する、といったシナリオも出ていたようです(「WBC観戦」は林芳正外相によって早い段階で否定されていましたが…)。

実際、米国で現地時間2月14日に開催された日韓外務次官級協議では、外務省の森健良事務次官と韓国外交部の趙賢東(ちょう・けんとう)第1次官が予定を大幅に上回る2時間半、「協議」を行いました(『長時間の日韓次官級協議「結論に至らず」=自称徴用工』参照)。

米ワシントンで現地時間13日夕方、日韓外務次官協議が行われましたが、予定を大幅に超過する2時間半の協議にもかかわらず、少なくとも現時点において自称元徴用工問題で日本政府が「折れた」との報道はありません。これについて依然として油断は禁物ですが、現時点の情報で判断する限りは、韓国政府の欲が強すぎるがために、まとまるものもまとまらない、という可能性がありそうです。日韓次官級協議ワシントンで現地時間の13日夕方(=日本時間14日早朝)、外務省の森健良事務次官と韓国外交部の趙賢東(ちょう・けんとう)第1次官...
長時間の日韓次官級協議「結論に至らず」=自称徴用工 - 新宿会計士の政治経済評論

趙賢東氏自身は当時、この長時間の協議で話がまとまらなかったという趣旨のことを述べていますが、それと同時に「協議が長時間に及んだ」という事実は、同時に日韓両国の事務方が日韓間に残る最終的な相違点を確認し、論点を集約する作業を行ったという可能性を示唆するものでもあります。

つまり、外務省は最終的に宏池会政権に「政治決断」を委ねたという可能性があり、その意味で、日韓外相会談には、大変に注目する価値があったのです。

あっけなく決裂

ただ、すでに『日韓外相会談進展なし:韓国は日本に「政治決断」要求』でも取り上げたとおり、結論的にいえば、ドイツ・ミュンヘンで現地時間18日に行われた日韓外相会談では、自称元徴用工問題を巡って、ほぼなにひとつとして進展がありませんでした。

ドイツで現地時間18日夜7時過ぎから開催された日韓外相会談に関する報道発表が、19日朝、日韓の外交当局から発表され、一部メディアもこれに続いています。発表文や朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官の発言を読む限り、今回の外相会談で林芳正外相が「政治的決断」をしたわけではなさそうです。ただ、もしそうだとしても、それは林外相自身が確固たる立場に基づいてそうしたのか、それともたんに「上司」に決断を丸投げしただけなのかはわかりません。日韓外相会談・日本側の発表はほぼ「コピペ」『自称徴用工問題で宏池会は騙せても...
日韓外相会談進展なし:韓国は日本に「政治決断」要求 - 新宿会計士の政治経済評論

なぜ進展がなかったのか、その真相については、林外相が韓国側の「ムシの良い提案」に含まれた罠をすべて見抜き、賢明にも「どれも受け入れられない」として拒絶したのか、それともG7外相会合を主催するなど多忙過ぎ、ろくに頭が廻っていなかったからのかについてはよくわかりません。

とにかく重要な点は、韓国にとってはカギとなるはずの日韓外相会談が空振りに終わったという点です。

また、韓国側はインドで3月1日から2日にかけて開かれるG20外相会合のサイドラインでも再度日韓外相会談を開こうと画策していたフシがありますが、肝心の林外相自身が国会対応のためG20に参加できなくなり(『林外相「クアッド出席」も-G20欠席で失われた国益』参照)、この目論見も頓挫しました。

あまりに批判が強かったためでしょうか、林芳正外相に対し、インドの「クアッド外相会合」には参加する許可が出たようです。ただ、G20外相会合を「日本の外相が」欠席したことの打撃は計り知れません。議長国・インドは日本にとって「クアッド」という重要な相手であるにもかかわらず、そのインドのメンツを潰したほか、G7議長国である日本が欠席したこと自体、G7としてのウクライナ戦争に対するコミットメントを揺るがせかねない状況にもあるのです。国会日程が足かせに国会日程のために首相や外務大臣などが重要な外国訪問に...
林外相「クアッド出席」も-G20欠席で失われた国益 - 新宿会計士の政治経済評論

林外相のG20欠席自体、「あり得ない決断」として、議長国・インドのメディアも批判的に報じたようですが、こと日韓関係に限定するならば、林外相が朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官と会わなかったこと自体、「日本が韓国に騙されずに済んだ」ということでしょう。

次官→大臣→いきなり「格下」の局長に

こうしたなかで、ふと思い出すのが、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に2月28日付で掲載された、こんな記事です。

韓国外相 徴用問題「ミュンヘンでの会談をもとに日本と協議中」

―――2023.02.28 18:53付 聯合ニュース日本語版より

この記事は朴振氏が28日、自称元徴用工の遺族と面会したあとに記者団に対し、「ドイツ・ミュンヘンで開いた韓日外相会談で韓国政府の立場を十分に説明し、それに対する協議が現在進行中だ」と述べた、とするものですが、その続きにこんな趣旨の記述があります。

  • 同問題に関連し、日本外務省の船越健裕アジア大洋州局長が非公開で来韓していたことがわかった
  • 船越氏が協議で韓国側の求めに意味のある反応を示したのかについては明らかにされていないが、両国の結論は出ていないようだ

船越健裕アジア大洋州局長が訪韓したということは、おそらくはそのカウンターパートは、徐旻廷(じょ・みんてい)韓国外交部アジア太平洋局長でしょう。

非常に短い記述ですが、意味深です。

この聯合ニュースの記述が事実だとしても、船越氏が何の目的で訪韓したのかについては、この記述だけではわかりません。ただ、日韓次官級協議(14日)、外相会談(18日)に続いて「格下」である局長級協議が行われたというのは、日韓協議が頓挫した証拠でもあるからです。

敢えて根拠なしに申し上げるなら、日本側としてはこのタイミングで、「日韓協議を打ち切る」と通告した可能性はあります。その結果が、本稿冒頭でも引用した朝鮮日報の記事、というわけです。

国民の声が悪しき企みを頓挫させた?

ここでもう一度、朝鮮日報の記事を振り返っておきましょう。

朝鮮日報が伝えた日本政府の立場とこれに対する「ある消息筋」の反応の概要は、こうです。

  • <自称元徴用工判決の被害者である>三菱重工業と日本製鉄の両社は、いかなる形であれ、被害補償には加わらない。被告企業がいかなる形であれ財団に資金を出せば、韓国の大法院判決を認め、賠償金を支払う形になるため受け入れられないからだ
  • 日本政府は経団連による「自発的な寄付」には反対しないものの、その場合でも「日本による朝鮮の植民地支配は合法的に行われた」とする立場上、「日帝強制動員」という名称を持つ団体に寄付はできず、新たな財団を立ち上げなければ寄付金の拠出はできないと考えている
  • これについて東京のある消息筋は「尹錫悦政権が徴用問題解決を急ぐかのような動きを示したため、日本政府はこれを悪用し何の責任も取らないつもりだ」と批判した

正直、「日本政府は経団連による自発的寄付には反対しない」のくだりを含め、この一連の情報が事実なのかどうかは判断に迷うところではあります。なにより、もしこれが事実なら、日韓関係「改善」(という名の対韓譲歩)に前のめりになっていたフシがある日本の外務省が、なぜここで方針を転換したのかがよくわからないのです。

ただ、もしもこの報道が正しければ、ある意味では画期的な出来事といえるかもしれません。

というのも、日本政府(というよりも外務省?)の方針転換は、私たち国民の声が後押し材料となった可能性があるからです。

国民が外務省の企みを潰す時代

国民が騙されなくなった!

ここで思い出しておきたいのが、『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』などでも取り上げた、「保守系の尹錫悦(イン・シーユエ)氏が韓国大統領であるうちに日韓問題を解決しなければならない」、などとする主張です。

「あの議員」の詭弁が再び出てきました。「朝鮮半島生命線説」とでも言えば良いのか、自称元徴用工問題を「解決」することが、日韓・日米韓の安全保障連携にも寄与する、といった主張です。端的にいえばお粗末と言わざるを得ません。「日本が韓国に譲歩したら日韓・日米韓連携が円滑になる」という主張自体が、そもそも理論的に間違っているからです。国益こそ重要著者自身がここ10年ほど取り組み、いまや一種の「ライフワーク」と化しているのは、「日本にとって円滑な日韓関係が国益である」とする主張の誤りを理論的に証明する作業...
「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁 - 新宿会計士の政治経済評論

こうした主張自体、冷静に考えたら「詭弁」というほかないものですが、それでもかつてであれば「それもそうだよね」と騙される日本国民はそれなりに多かったのではないかという気がします。

しかし、今回の局面では、まったく違う現象が生じているように思えてなりません。

ニューズサイトの読者コメント欄、SNSサイト、掲示板などを眺めてみると、こうした「日韓関係改善論」に同調する意見は非常に少なく、あったとしてもそれらに対する賛同コメントがほとんど見当たらないからです。

もちろん、これには鈴置高史氏らの優れた論考が速射砲のように「対韓譲歩論」を次々と論破していったという事情もありますが、その鈴置論考にしたって、新聞、テレビを中心としたオールドメディアが情報を支配している時代には、そもそも世に出ること自体が難しかったものでもあります。

結局のところ、『【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」』などでも論じたとおり、昨今のネット化する社会では、官僚組織とオールドメディア、そして特定野党議員といった「腐敗のトライアングル」が、音を立てて崩れ始めている、という点に尽きます。

社会のネット化が進展して、一番困る人たちは新聞・テレビを中心とするオールドメディア産業関係者であることは間違いありませんが、それだけではありません。官僚・役人や野党議員なども、かなりの割を食うことが予想されます。いったいどういうロジックでしょうか。ここで考えておきたいのが「腐敗トライアングル」という重要な論点です。腐敗トライアングル昨日の『騙せなくなる日本:「自称徴用工」年内妥結は困難に?』では、自称元徴用工問題に見せかけて、当ウェブサイトなりのちょっとした「問題意識」を展開しました。それが...
【総論】崩壊始まる官僚・メディア・野党「腐敗利権」 - 新宿会計士の政治経済評論

1月の「財団方式提案」に始まる今回の一連の「対韓譲歩」という流れにしたって、外務省としてはオールドメディアを通じて「対韓譲歩やむなし」の世論を徐々に醸成し、そうした世論を受けて一気に問題を「解決」(?)するという魂胆だったのではないでしょうか。

しかし、インターネット上で垣間見える国民世論は、韓国政府の「ムシの良い解決策」だけでなく、こうした外務省的な「外交事なかれ主義」に対しても批判一色でした。

霞が関も一枚岩ではない

また、霞が関も決して一枚岩ではありません。

たとえば、昨年11月、酒井良・海上幕僚長が火器管制(FC)レーダー照射や旭日旗問題などについて「韓国に説明責任がある」と発言したことがありました(『酒井海上幕僚長「韓国側にボール」発言こそ正しい認識』等参照)。

「問題が韓国側から明確に説明されない限り、交流を推進する状況にない」。こんな発言が、海上自衛隊のトップである酒井良・海上幕僚長から出てきました。この酒井氏の爪の垢を煎じて、「両国の協議加速」などと寝言を言っている岸田首相や外務省関係者に飲ませてやりたいと思ったのは、著者だけではないのかもしれません。外務省の姿勢がおかしい日韓諸懸案の正体は韓国による日本に対する「二重の不法行為」日韓諸懸案はたいていの場合、韓国が問題を発生させていること――、つまり、韓国側がありもしない問題を捏造し、日本に対して...
酒井海上幕僚長「韓国側にボール」発言こそ正しい認識 - 新宿会計士の政治経済評論

これなど著者自身、「日本が主催した国際観艦式に対し、韓国に招待状を出した外務省に対する防衛省側の強い恨みの証拠ではないか」、などと睨んでいるクチですが、それだけではありません。

西村康稔経産相は先月21日の会見で、「旧朝鮮半島出身労働者問題」(※自称元徴用工問題のこと)と「輸出管理の問題」を巡って、両者は「まったく別の問題」としたうえで、輸出管理については「韓国の適切な対応が必要」と述べたのです(『輸出管理で「韓国側に適切な対応求める」=西村経産相』等参照)。

対韓輸出管理適正化措置と自称元徴用工問題を巡り、西村康稔・経済産業省が21日の閣議後記者会見で、両者を「まったく別の議論だ」としたうえで、対韓輸出管理緩和を巡っては「まずは韓国が開始したWTOのプロセスを停止することが何よりも必要」、「韓国側に適切な対応をまずは求めていきたい」と述べたそうです。まったくの正論です。岸田首相に聞かせてやりたいほどです。自称元徴用工問題と輸出管理適正化は別問題これまで何十回、何百回となく申し上げてきたとおり、日本政府が2019年7月に発表した韓国に対する輸出管理の厳格...
輸出管理で「韓国側に適切な対応求める」=西村経産相 - 新宿会計士の政治経済評論

この「西村発言」、菅義偉総理大臣や故・安倍晋三総理大臣のそれとも整合しているものですが、それと同時に岸田文雄・現首相の「日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させていくため、緊密に意志疎通」云々の寝言に対する強い牽制でもあるのでしょう。

外務省の暴走に対しては、他省庁、あるいは政治家や制服組などからも牽制が入るようになったのは、日本にとっては望ましいことといえるのかもしれませんが、それ以上に言えるのは、霞が関も政治家も、私たち国民の「生の声」を無視することができなくなったということでしょう。

いずれにせよ、私たち日本国民は、インターネットという「声を上げるための手段」を手に入れました。『自称元徴用工問題で確立すべき「新たな圧力のルート」』などでも指摘したとおり、私たち一般国民から政治家に声を出すべきなのです。

国民→政治家→外務省、という「圧力の新ルート」早ければ韓国政府が考える自称元徴用工問題の「解決策」とやらも今週出て来るかもしれません。当ウェブサイトの見立てだと、その最も可能性が高いものは、「日本企業が財団と債務引受契約を締結するかたちでの併存的債務引受」、つまりいわゆる「パターン④」なのですが、もしそれが出てきたならば、私たち一般の有権者は、政治家に対し、SNSなどを通じて「それは解決策とは言わないのだよ」と教えてあげるべきです。徴用工と外務省、岸田首相自称元徴用工問題巡る「公開討論会」自称元...
自称元徴用工問題で確立すべき「新たな圧力のルート」 - 新宿会計士の政治経済評論

今回の「対韓譲歩作戦」の頓挫の真相については現時点ではよくわかりませんが、著者自身としては、私たち名もなき日本国民の声こそが、「外務省の悪しき企み」をぶっ壊した張本人ではないか、などと睨んでいる次第です。

新宿会計士:

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  • SNSなどでの国民の声がキシダマサハルを動かしたのかは分かりませんが、松川るい議員などの“譲韓派”の動きが潰れたっぽい事は喜ばしい事だと考えます。

    親韓派という表現がありますが、松川議員などの価値観は“韓国に親しい感情を持つ”ではなく“ゴールポストを動かし続ける韓国にひたすら譲歩する”と言えるでしょうし。

    韓国を日米が属する自由民主主義国家陣営に引き止めたいにしても、韓国に飴を与えて引き止めるのは下の下策です。

    脅したりボコったりして従わせるのが中策、韓国を反自由民主主義国家陣営に走らせるのが上策。

    いつ裏切るか分からない韓国を抱え込むのは単なるリスクです。

    中国の覇権下で“名誉中国人”となるにしてもナチスドイツ下のユダヤ人の如くとなるにしても、其れは韓国が“民族自決”として行った判断によるもの。

    日米は韓国の“民族自決”を“尊重”するのが良いと考えます。

    • 此方での朝鮮日報の記事と、読売新聞や中央日報の記事を考えると、外務省の中で“対韓原則派”と“対韓譲歩派”との綱引き合戦がギリギリまで続くって事なんでしょうね。

      で、安倍元総理や菅前総理とは異なり、対韓姿勢が譲歩寄りな発言をしている岸田文雄総理が自称元徴用工問題の解決案についてどの様なガイドライン・方針を持って居るか。

      ”韓国を信じる者は騙される”という事実を岸田文雄総理が理解出来ているのか、不安しかありません。

  • >もしこの記事を読んで「知的好奇心を刺激された」と思った方は、下記ランキングバナーをクリックしてください。
    本記事とし越しずれますが、私はよく、このバナーをクリックしてランキングに飛んでいきます。それは「知的好奇心を刺激された」からではなく(常に刺激されているので)そこに飛ぶと、他の記事のタイトルが見れ、そしてどのようなブログがカウントされているか、そして興味があるタイトルを見つけるとその記事を読みに行きます。ただしランキング下位ページまでめくることはありません。おそらく多くの方もそうではないかと考えています。
     会計士さんは常にトップに位置しており、ダントツで評価が高いことがわかりますが、それはおそらく、一般読者も多いが、政治家、官僚やマスコミ関係者(他国含む)の割合がが他のブログより多いのではなかろうかと思います(検証できないでしょうが)。数値や引用元を明示したうえでの考察が確かなものと感じられ、そしてそれが「国民の生の声」に近いと判断され、多方面にわたり影響を与えてていると考えています。
     これからも「知的好奇心を刺激」されに来ます。

  • 外務省の悪しき企みをとん挫させたもの。それは「怪しい自称会計士」のブログだったのだ。。。

  • 新聞の得意技である政府関係者の話によれば--という匿名報道、この時代錯誤的やり方を踏襲している限り、サンケイも信用できない。菅さん(カンじゃないまともな方)が日韓議連の会長という寝言もあってびっくり。
    1000000歩譲って本当だとすれば、「互いに訪問して旨い飯食って仲良くしましょうねー」を改め、「慰安婦像前や妙な歴史博物館(?)を訪問し、あちらの報道陣の前で反日を糾す」くらいのことはやってもらわないと。

  • 韓国の対日作戦を産経にリークしたつもり(多分外務省)だったが、産経が韓国への譲歩派の意図を見抜き、その「ホワイト国復帰計画」を潰すため、敢えて外務省のリーク通りに記事を執筆してみせた、という会計士さんの類推には賛成です。つまり普段産経新聞を読んでるような人には「わかる人にはわかる」わけです。

    林外務大臣がなぜG20外相会議をキャンセルしたかーー韓国の長官級に会いたく無い、このまま行くより潰してしまおう、と思ったのかも知れない。行かない方が結果的には良かったですネ〜。

  • >「日本政府は経団連による自発的寄付には反対しない」のくだりを含め、この一連の情報が事実なのかどうかは判断に迷うところではあります。

    そういう企業が出てきてほしい。そのために経団連云々という韓国側の願望を書いたものでは?

    実際問題、勝手に寄付する企業が出てきても日本政府は止めようがない。
    政府ができるのは、そのような寄付は法人所得税の控除対象とはしないことだ。
    控除されるとその税金が減る。つまり政府が支払ったのと同じ効果になってしまう。

    予想では少数の企業が寄付する(在韓日本企業に韓国が圧力をかけることも考えられる)ー>韓国メディアが針小棒大に騒ぐー>企業名が漏洩して、その企業に対するバッシングが日本で起こる。
    まあこの程度かな。

  • 良い記事をありがとうございます!
    根拠なき楽観論を言わないのも素晴らしい!

  • 今回の「報道工作」はまったく不愉快でした。
    チキンは誰だ。これからも追求し続けるべき重大課題と痛感します。

  • ご無沙汰です。身内の不幸が続くのは自分の年頃のせいかと思う今日この頃です。

    コメント欄で産経黒田氏の発言への指摘が多々ありましたが私も番組を見ていてのけぞったクチでした。
    「今の大統領の任期の次まで考えて外交をするのはナンセンス、非常識」

    議論にならないと理解しているためか他の出演者の怒りの反論も糠に釘で、耳にフタをしてこれを繰り返すばかりでした。よくいる韓国を「擁護」する韓国人出演者と同じ行動様式に成り果てていました。

    韓国紙の報道を除くと当てにできる情報は少なく、直接見えるのは黒田氏、武藤氏、松川氏のような日本に譲歩を促す人々の発言でした。彼は共通してチャンスを生かせとは言うものの、何を譲歩すべきか具体的に言及しません。
    今に至って思うのは、彼らは日韓外交の会議場の周りで、笛や太鼓を鳴らすお囃子のようなものだったのかもしれません。

    まだ結果は確定していませんが「笛吹けど踊らず」となればいいですね。

  • 可能な限り出典を示して論じる姿勢は好きなのですが

    > それともG7外相会合を主催するなど多忙過ぎ、ろくに頭が廻っていなかったからのかについてはよくわかりません。

    の「ろくに頭が廻っていなかった」などと無駄に人を貶める記述が目立つのが残念なところです。
    こんなところで無駄に攻撃的なことを書いたところで良いことなどないのでは?

    • 同感。
      どこぞの立憲民主党みたいな低次元の揶揄は、このサイトに相応しくない。

    • 新宿会計士氏もそれだけこの問題では堪忍袋の緒が切れかかっている、ということでしょ。

      林外相のことのみならず、この記事では結構強めの文言がちらほら使われている。
      り地域の恥知らずな態度と、煮え切らない岸田内閣への怒りを感じるし、ここの読者の代表的な感情を代弁し溜飲を下げようとしてくれているんでしょう。
      せっかく第二次安倍内閣と菅内閣で固めた土壌を、つまらない「楕円の外交(=事なかれ主義)」などというおためごかしでぶち壊しにしかねないのも大いにいけ好かない。

      これくらいのことでつまらん揚げ足取りをして常識人ぶっても大した意義はないよ、ここでは。

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