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    Categories: 外交

自称徴用工問題で宏池会は騙せても日本国民は騙せない

早ければ本日にも行われるであろう日韓外相会談で、またしても日本は韓国に騙されるのでしょうか。自称元徴用工問題を巡り、韓国紙は「強制徴用問題」の「終盤の協議」は「日本側の謝罪方式」と「基金に日本戦犯企業が出捐するかどうか」だ、などと勝手に決めつける記事を配信しています。もしもこの方式で日本が韓国に譲歩しようものなら、国民の怒りは宏池会政権に向かうでしょう。ただ、このネット全盛時代に、日本政府にそれができるものなのでしょうか?

見えてきた日本の対韓譲歩

朝日新聞・牧野氏の論考に見る韓国政府の目論見

自称元徴用工問題を巡って、日本政府は「やる必要のない譲歩」をしようとしているのではないか――。

自称元徴用工「焦る」韓国政府の内情と冷徹な日本国民』でも紹介したとおり、朝日新聞の牧野愛博記者が執筆した論考に基づけば、韓国政府は現在、「過去の談話の引用で構わないから日本政府が謝罪を表明すること」、「被告企業が財団に献金すること」などを求めているのだそうです。

朝日新聞の牧野愛博記者の記事といえば、後から振り返ると、「韓国政府の意向を正確にくみ取ったもの」であることが多いように思えます。そんな牧野氏が8日、現代ビジネスに対して寄稿した論考からは、日本政府に非を認めさせるための努力しかしてこなかった現在の韓国政府の「焦り」のようなものが浮かび上がるようです。ただ、それ以上に興味深いのは、『Yahoo!ニュース』に掲載されている読者コメントの冷徹さにあります。日本に非を認めさせる努力しかしていない韓国政府自称元徴用工問題を巡る最近の状況といえば、「日本に非を...
自称元徴用工「焦る」韓国政府の内情と冷徹な日本国民 - 新宿会計士の政治経済評論

該当する記事は次のリンクで読むことができます。

「徴用工問題の解決」に焦る韓国・尹政権、「日本へのたってのお願い」はやはり「謝罪」と「献金」か

―――2023/02/08 06:03付 Yahoo!ニュースより【現代ビジネス配信】

韓国政府の要望

①過去の引用で構わないので、改めて過去の問題に対する日本政府の謝罪表明をお願いしたい

②被告になった日本企業による何らかの形での韓国側財団への献金をお願いしたい

(【出所】上記牧野論考)

ちなみに当ウェブサイトで牧野氏の論考をしばしば引用する理由は、後から振り返ると牧野論考が「その時点の韓国政府の考え方」をかなり正確に代弁していると思われることも多いからです(記事の内容自体が正しいかどうかは別ですが…)。

韓国政府の「焦り」

該当の牧野論考も、おそらくは韓国政府関係者や日本の外務省関係者などに対する綿密な取材に裏付けられたものではないかと思います。牧野論考の内容自体、当ウェブサイトとして必ずしも無条件に賛同するものばかりとは限りませんが、それでも「敵の手の内」を知る手段という意味では大変に有益です。

したがって、上記の「韓国政府の要望」とやらも、情報としての確度はかなり高いのではないでしょうか。

ただ、牧野論考を読む有益さは、それだけではありません。韓国政府がいま何を考えているのか、そしてなぜ「焦っている」のかが、おぼろげながら見えてくるからです。

牧野氏が予想する、(おそらくは韓国政府内で考えられているであろう)「流れ」のターニング・ポイントは、この1~2日のうちにドイツで開かれるとみられる日韓外相会談です。外相会談の結果をもとに外務省当局が自公両党に承認を得る作業を行い、岸田文雄首相が決断し、韓国に最終回答するというのです。

しかも場合によっては韓国政府が2月中に自称元徴用工問題の「解決策」を公表し、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領の「3・1独立節」演説で「未来志向の韓日関係」が織り込まれ、日韓シャトル外交が復活し、日本が韓国を「(旧)ホワイト国」に復活させる、という流れです。

ずいぶんと性急ですが、自称元徴用工問題の解決を「急いでいる」理由は、おそらくは韓国の側にあります。

ここから先は牧野論考だけでなく、著者自身の勝手な推察も交えて考察しておくと、その要因としては米国が主導する「半導体同盟」に韓国が加わらなかった場合に備えて、日本からの「(旧)ホワイト国」待遇を復活させておくことが望ましい、といった判断もあるのかもしれません。

輸出「規制」の撤回も視野に――危険な外務省

韓国がいう「輸出規制」――、つまり2019年7月に日本政府が発表した対韓輸出管理適正化措置は、日本政府の公式の言い分に加え、さまざまな状況証拠に照らし、自称元徴用工問題とは無関係に講じられたものと考えられます(『対韓輸出管理の厳格化は日本を守るために必要だった?』等参照)。

とある理由に基づき再開した『数字で読む日本経済』シリーズ、本稿で第8回目となりました。今回は「中韓がなくても大丈夫な日本経済」をテーマに、おもに数字を使いながら日中関係、日韓関係について議論しているのですが、日韓関係に言及した際に欠かせない論点のひとつが、安全保障上の措置に基づく輸出管理の強化・適正化措置です。追記:本文中で数ヵ所表現などを修正しています(詳細はコメント欄などをご参照下さい)。韓国との関係をどう見るか両国関係を数字で読むことの重要性『数字で読む日本経済』シリーズとして、現在展...
対韓輸出管理の厳格化は日本を守るために必要だった? - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、日本政府内では自称元徴用工問題の進展を見極めたうえで、この対韓輸出管理適正化措置を「撤回」しようとする動きが生じているフシがあり、(おそらくは)外務省が産経新聞を通じてこれをリークした(『産経「ホワイト国復帰」記事、ロジックは「穴だらけ」』等参照)のもその表れです。

「韓国をホワイト国に戻してはならない」とする当ウェブサイトの昨日の記事とまったく同時刻に、産経ニュースは「独自」と銘打って、『韓国の「ホワイト国」復帰検討、徴用工見極め判断』と題した記事を配信しました。まさに真逆の内容です。ただ、産経の記事自体、事実誤認も多く、ロジックもかなりお粗末です。これはおそらく「産経記者の不勉強」ではなく、情報源である日本政府関係者あたりが考えている内容を、産経が「確信犯」的に報じたのではないでしょうか。ホワイト国にふさわしくない韓国なぜ韓国をホワイト国に戻してはな...
産経「ホワイト国復帰」記事、ロジックは「穴だらけ」 - 新宿会計士の政治経済評論

もちろん、自称元徴用工問題と対韓輸出管理適正化措置を絡めて議論すること自体、大変に危険な行為であり、また、もし日本が韓国をホワイト国に「再追加」することがあれば、そのこと自体、米国を激怒させる可能性もあります(『鈴置氏、韓国のホワイト国復帰が危険である理由を解説』等参照)。

自称元徴用工問題「解決」のバーターとして、日本政府が韓国を「(旧)ホワイト国」に復帰させるという与太話がありますが、この考え方はさまざまな点で誤っており、かつ不適切です。これに関し、韓国観察者の鈴置高史氏は10日、もし日本が韓国を「ホワイト国」に復帰させた場合むしろ日本が米国から韓国の共犯者と見られるというリスクを抱えることになると警告しました。まったくそのとおりでしょう。外務省という腐敗した組織輸出管理適正化措置は自称元徴用工問題と無関係当ウェブサイトではこれまで、「日本政府が2019年に講じた...
鈴置氏、韓国のホワイト国復帰が危険である理由を解説 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、韓国側が主張する自称元徴用工問題の「解決策」とやらに対し、外務省自身がどうやら前のめりになっている疑いは濃厚であり、外務省は一部政治家をも焚き付けて、「尹錫悦政権のうちに日韓関係改善が必要だ」などとするプロパガンダを展開しているのです。

本当に危険なことです。

林芳正外相の「決断」に委ねるスタイルか?

このあたり、先日はワシントンで開かれた日韓次官級協議で、長時間のわりに「結論に至らなかった」とされたという話題がありましたが(『長時間の日韓次官級協議「結論に至らず」=自称徴用工』等参照)、これも内情は怪しいものです。

米ワシントンで現地時間13日夕方、日韓外務次官協議が行われましたが、予定を大幅に超過する2時間半の協議にもかかわらず、少なくとも現時点において自称元徴用工問題で日本政府が「折れた」との報道はありません。これについて依然として油断は禁物ですが、現時点の情報で判断する限りは、韓国政府の欲が強すぎるがために、まとまるものもまとまらない、という可能性がありそうです。日韓次官級協議ワシントンで現地時間の13日夕方(=日本時間14日早朝)、外務省の森健良事務次官と韓国外交部の趙賢東(ちょう・けんとう)第1次官...
長時間の日韓次官級協議「結論に至らず」=自称徴用工 - 新宿会計士の政治経済評論

日韓の時間は当初予定されていた時間を大幅に超過し、2時間半にわたって「協議をした」のだそうですが、これも裏を返せば事務方で詳細な話を詰め、あとは「政治決断」だとして、林芳正外相、朴振(ぼく・しん)韓国外交部長官の両名に決断を委ねる布石、との見方もできるからです。

宮澤喜一の事例を持ち出すまでもなく、相手国に譲歩することで日本の国益をないがしろにしてきた「宏池会」の悪しき伝統を思い出しておくと、林外相が「余計なこと」をしないかどうか、十分な警戒が必要であることは間違いありません。

本当に困っているのは韓国の側

松川議員の詭弁、視点を変えると…!?

さて、こうした懸念の一方で、昨日の『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』でも取り上げた「例の参議院議員」の主張に関連し、理屈で考えると「明らかにおかしい」という部分があることもまた間違いありません。

「あの議員」の詭弁が再び出てきました。「朝鮮半島生命線説」とでも言えば良いのか、自称元徴用工問題を「解決」することが、日韓・日米韓の安全保障連携にも寄与する、といった主張です。端的にいえばお粗末と言わざるを得ません。「日本が韓国に譲歩したら日韓・日米韓連携が円滑になる」という主張自体が、そもそも理論的に間違っているからです。国益こそ重要著者自身がここ10年ほど取り組み、いまや一種の「ライフワーク」と化しているのは、「日本にとって円滑な日韓関係が国益である」とする主張の誤りを理論的に証明する作業...
「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁 - 新宿会計士の政治経済評論

自民党の松川るい参議院議員は、ご自身のブログで、あるいはツイッターなどで、なぜ日韓関係が「良好」でなければならないのかを力説しているのですが、それを当ウェブサイトなりに要約すると、こういう流れではないかと思います。

  • 本件『徴用工』判決問題を韓国が解決して日韓関係が正常化されれば、日米韓連携をより信頼できる有意義なものとすることが可能となる
  • 尹錫悦政権は、対北朝鮮、対中国についての安全保障上の脅威認識を日米と共有しており、GSOMIAも正常化するといったことも含め意味のある連携とすることも可能だ
  • 既に訴訟提起されている企業だけで15社、徴用工リストに載せられている企業は299社、1人1000万円の賠償額としたら、日本企業にとっては、巨額な損失を被るか回避するかの話ともいえる
  • 日本として譲るべきでないことについては一切妥協することなく、しかし、伊政権が本件「判決」問題の解決を貫徹できるように、日本自身も外交的努力をしていくことについて温かく見守るべき

…。

わかりやすくいえば、韓国が自称元徴用工問題を解決すれば、日韓間で信頼関係が復活し、日韓は安全保障上も有益な連携をすることが可能になる、ということでしょう。経済問題と安保問題を絡めている時点で、典型的な「外務省思考」です。

「自称元徴用工問題をまともに解決する能力がない国と安保連携ができるわけがない」、という指摘もあるかもしれませんが(そしてそうした指摘にも一理ありますが)、自称元徴用工問題は「経済問題」ですので、「安保問題」である日韓連携とわざわざ関連付ける必要はありません。

ただ、視点を変えると、これはこれで、「真逆の意味で」参考になるのです。つまり、自称元徴用工問題で「困っている」のは、本当は日本ではなく韓国の側だからです。

現在の日本に「台湾を捨て韓国を守る」という選択肢はない

韓国が好きな言葉に「ツートラック」というものがありますが、日本だって「ツートラック」で行けば良いだけの話です。というよりも、「自称元徴用工問題が安保連携の妨げになっている」というのは、どちらかといえば日本側ではなく韓国側の事情でしょう。

現在の東アジアにおいては、台湾有事が生じるリスクが日増しに高まっていますが、中国が台湾侵攻などを決断した場合、その「陽動作戦」として、北朝鮮が韓国を攻撃するなどのかたちで、「半島有事」が同時に生じるリスクもあります。

鈴置論考で読む「台湾を見捨てず韓国を見捨てる日本」』でも紹介したとおり、日本で最も信頼に値する韓国観察者のひとりである鈴置高史氏は、こうした半島有事において、日韓連携を必要としているのは日本ではなく、むしろ韓国の側だと指摘します。

隠れたテーマは「キシダは騙せても国民は騙せない」「キシダは騙せても世論は騙せない」。抑制の効いた筆致ながら、本質をえぐる優れた論考が出てきました。日本でも最も信頼すべき韓国観察者である鈴置高史氏が、台湾有事と半島有事を関連付け、そのときに日本がいかなる態度をとるか、現在の韓国が日本にとって助けるにふさわしい国なのかを議論する、極めて深いテーマの論考です。しかも、転載先の『Yahoo!ニュース』の読者コメント欄のレベルの高さが、「世論は騙せない」という鈴置論考の正しさを実証しているというオチまで付い...
鈴置論考で読む「台湾を見捨てず韓国を見捨てる日本」 - 新宿会計士の政治経済評論

これはまったくそのとおりでしょう。

韓国との間では自称元徴用工問題を筆頭とする諸懸案が積みあがった状態で、日本が台湾と韓国のいずれかを支援し、いずれかを見捨てなければならないことになった場合、「韓国を助け、台湾を見捨てる」ことを、日本の世論は許容しないでしょう。

それに、残念ながら日本は台湾、韓国の双方を助けるだけの余力はありませんし、こうした事情は米国も同じです。

鈴置氏によると2017年冬、半島での緊張が高まっていたころ、在韓米軍が保有していた航空機が日本に回送されてきたのだそうです。デイリー新潮・2月1日付『台湾有事が引き起こす第2次朝鮮戦争 米日の助けなしで韓国軍は国を守れるのか』の2ページ目に、こんな記述があります。

2017年に米朝間で戦争の危機が高まった際にも、在韓米軍に所属する多数の戦闘機が日本に飛来したことが確認されています。当時、米軍は韓国に住む米国籍の非戦闘員の日本への避難訓練を実施しましたが、退避が必要なのは市民だけではありません。北朝鮮は大型多連装ロケット砲――日米韓は短距離弾道ミサイルと分類しますが――の大量配備を進めています。一度に多数のロケットを発射するだけに、米軍も全てを撃ち落とすのは不可能です」。

…。

日本の世論が韓国を許さなくなってきている

もし「台湾有事+半島有事」が現実のものになったとしたら(※というかその可能性は非常に高いです)、日米両国は否が応でも「どちらを助けるか」を決断しなければなりませんし、とくに前線となる日本においては、こうした決断は国民の支持を必要とします。

韓国外交部が「日本を騙すのに忙しい」と指摘した一節で、鈴置氏はこう言い放ちます。

『キシダ』は騙せても日本の世論は誤魔化せません。それどころか、こんな猿芝居を演じ続ければ、日本人をますます怒らせてしまいます。韓国の外交部は狡猾な外交ゲームを展開しているつもりでしょうが、朝鮮半島有事を考えると、国を亡国の道に追い込んでいるとしか思えません」。

抑制の効いた表現ですが、これが正解でしょう。

韓国外交部は、宏池会政権(や松川るい氏のような政治家)を騙すことはできたとしても、一般の日本国民を騙すことはできません。これに関連して参考になるのが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)が17日に配信したこんな記事と、それに付された読者コメントでしょう。

独ミュンヘンで会う韓日外相…強制徴用問題めぐる終盤の協議に注目

―――2023/02/17 15:04付 Yahoo!ニュースより【中央日報配信】

中央日報によると、現地時間17~19日のミュンヘン安保会議を機に、18日にも開かれる可能性が高い日韓外相会談自体、「強制徴用問題」を巡る「終盤の協議」の場となる、との見通しを示しています。

自称元徴用工問題を「強制徴用」などと誤った用語で呼ぶのもはなはだ非常識ですが、それ以上に困惑するのは、勝手に「終盤の協議」などと、まるで自称元徴用工問題が最終的な解決に向かっているかのような言い方をしている点でしょう。

中央日報は日韓外相会談自体、昨年9月の国連総会以来約5ヵ月ぶりのことだとしつつ、13日の次官級協議よりももう一段高い会議であるという点で、「強制徴用問題をめぐる隔たりの調整が予想される」、などとしています。

そのうえで、「強制徴用問題」の「協議」における「最後のカギ」は、「日本側の謝罪方式」に加え、「日帝強制動員被害者支援財団」の基金に「日本戦犯企業」が出捐するかどうかだ、と勝手に決めつけています。

(※余談ですが、「日本戦犯企業」という表現自体も大変に無礼です。ただしくは「自称元徴用工問題に巻き込まれた日本の被害企業」と呼ぶべきでしょう。自称元徴用工問題自体、「韓国が加害者」であり、「日本が被害者」なのですから。)

正鵠を射た読者コメントの数々

ただ、この記事に対する読者コメントは、昨晩10時半時点で100件以上寄せられており、とくに高評価を得ているコメントは一様に、韓国に対して極めて批判的です。たとえばこんな趣旨のコメントが散見されるのです。

  • 日韓諸懸案を巡っては、過去に韓国に対し、謝罪をしても、賠償をしても、解決したことがない。それどころか竹島不法占拠問題や火器管制レーダー照射問題自体も解決していない
  • そもそも募集工問題は韓国の国内問題であり、「肩代わり」ではなく「自らの責任において」補填することが当然の対応。我が国から謝罪すべき事項は一切ない
  • 韓国はことあるごとに「日本の誠意」と主張するが、そもそも1965年の日韓請求権協定自体、事実上の個人補償も含めて韓国に支払われているため、自称徴用工の賠償問題は韓国の国内問題だ
  • 大韓民国に対する戦時賠償はすべて終了している。終了している問題に対し、なぜ、再度「協議」が必要なのか。協議に応じた時点で日本自身が請求権協定を覆すのに加担していることになる

…。

「コリア・ウォッチャー」の立場から見ると、若干の事実誤認と思われる記述もないわけではありませんが(たとえば日韓請求権・経済協力協定を「戦時賠償」とみなしている部分など)、それでも日本国民の多くは、少なくとも自称元徴用工問題を巡っては韓国に賠償すべきでないと考えていることは間違いありません。

これこそ鈴置論考でいう「キシダは騙せても日本国民は騙せない」の意味でしょう。

思うに、新聞・テレビなどオールドメディアの偏向報道、2009年から12年にかけての民主党政権禍などを経て、日本国民の政治意識は極めて高くなっているのであり、「官僚・オールドメディア・特定野党議員」の「腐敗トライアングル」は、この事実に気付いていないのでしょう。

また、宏池会が現在政権を握っているのも、結局は特定野党のレベルが低すぎ、心ある有権者は自民党しか投票先がないなかで、自民党も弛緩し切っているという状況の証拠ではないでしょうか。

我々国民が政治家に直接圧力をかければ良い

しかし、べつに悲観する必要はありません。

自称元徴用工問題で確立すべき「新たな圧力のルート」』などでも指摘したとおり、このインターネット化社会において、私たち一般国民はSNSやブログなどを通じ、政治家に対して直接、厳しい叱咤激励の声をかけることができるからです。

国民→政治家→外務省、という「圧力の新ルート」早ければ韓国政府が考える自称元徴用工問題の「解決策」とやらも今週出て来るかもしれません。当ウェブサイトの見立てだと、その最も可能性が高いものは、「日本企業が財団と債務引受契約を締結するかたちでの併存的債務引受」、つまりいわゆる「パターン④」なのですが、もしそれが出てきたならば、私たち一般の有権者は、政治家に対し、SNSなどを通じて「それは解決策とは言わないのだよ」と教えてあげるべきです。徴用工と外務省、岸田首相自称元徴用工問題巡る「公開討論会」自称元...
自称元徴用工問題で確立すべき「新たな圧力のルート」 - 新宿会計士の政治経済評論

当然、林外相が奇妙な譲歩をしでかすようなことがあれば、我々国民の怒りは宏池会政権に直接向かうことになります。

そして、幸いなことに、一部の自民党議員も、SNSの威力に気付き始めています。「東京の山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士」の無礼なツイートに応じ、自称元徴用工問題を巡って外交部会などの場で外務省を追及すると述べた鈴木隼人衆議院議員もそのひとりでしょう。

ちなみに鈴木隼人・自民党衆議院議員にメッセージを送り付けた自称会計士は、ツイッター上で自民党の議員に絡みまくっているようですが、当ウェブサイトの読者の皆さまも同様に、SNSなどを通じて国会議員に対し、有権者としてのメッセージを送ることが可能です。

この点、松川るい氏の場合、任期はあと5年少々残っており、参議院には「解散総選挙」が存在しないため、厳しいメッセージを送ったとしても無視される可能性はあります。

しかし、衆議院議員の場合だと、いつ「解散総選挙」があるかわかりませんし、とくに自民党の若手議員のなかには自身が落選することに対する現実的な脅威を感じるケースもあるでしょう。

(※といっても、2012年12月の衆院選以降、自民党が8回連続して大型国政選挙を制しているなか、最近の自民党の若手議員は選挙に非常に弱くなっているとの指摘もあるようですが…。)

したがって、「有権者が政治家に対し、直接メッセージを送る」、「政治家が省庁に対し、国益に背く行動を取らないよう、強い圧力をかける」という流れが確立すれば、この日本は「腐敗トライアングル」の支配から脱却し、本当の意味での民主主義国家に変化します。

ちなみにこの「SNSを通じた国民→政治家→官僚のルート」は、べつに外交関係だけでなく、ゆくゆくは「腐敗の総本山」である財務省に対しても有効となっていくでしょう。

その意味では面白い時代になったものだと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (36)

  • 韓国の自称被害者たちが日本の謝罪を求めてくる理由をちゃんと理解しなければなりません。よく言われるような日本から金銭を巻き上げるのが目的ではありません。
    彼ら彼女らは、被害を自称し、韓国国内の活動家の運動によって認知されているだけにすぎません。証拠は存在せず(自らの嘘の証言のみ)、実はものすごく不安定な状況にあります。それを安定化させるのに必要なのが日本の謝罪です。

    日本の謝罪ですが、今までのような「アジアの女性たちにご苦労をおかけした」的なものはいくらあっても意味がありません。実は彼ら彼女らに必要なのはただ一つ。「〇〇さんは慰安婦でした。〇〇さんは強制労働の被害者でした」とその嘘を公認してくれる日本からの言葉1つなのです。そうとは言えないから、回りくどく謝罪って表現するので理解出来ないのです。

    日本側のお墨付き(謝罪という名の)があって初めて彼らの地位が生涯安泰となります。

    もしそのお墨付きを得られないと?いつかはその嘘がバレます。嘘だって理解している人は結構いるわけで、それを告発した方が得になるならそうするでしょう。そうしたら高貴な被害者様から嘘つきで日韓関係を破壊した大悪人に転落します。お金どころの騒ぎじゃないのです。

    そういうふうに考えると、韓国の立場での慰安婦も徴用工も穏便な解決というのは「全員死ぬまで何もしない」だと思うんです。死んだ後で、嘘つきだったとすれば良いのです。遺族は酷い目に遭いますがまあそれは知ったこっちゃない。扇動した市民団体の処罰は政権の意向でするしないを決めればいい。

    何もしない解決法は日本としては彼らの嘘を容認することにはなるものの、まあ許容出来る解決法です。

    • その通りなのだと思います。
      「謝罪=追認」なんですよね。

      黙認したと捉えられ兼ねない”沈黙による放置”ではなくて、
      毅然とした否定表明を伴う”積極的放置”が望ましいですね。

    • その通り。たとえ、過去の談話の踏襲であっても2度と謝罪してはいけませんね。これまでも謝罪は長期的には関係改善という結果をもたらしてない。

  • ミュンヘンでの日韓外相会談、コレがポイントですが、先日の次官級会談が2時間半と長過ぎで、よほど日本側は韓国に粘られたのではないか、と危惧します。つまり、大まかなガイドラインは既に出来ていると。考えたくは無いですが、外務省に騙された宏池会ならあり得ない事はありません。

    しかし徴用工問題で日本が「今までの文面に近いものでいいから、政府の謝罪を入れよ」とか「日本企業に財団に寄付を出させよ」とかは絶対に避けるべきです。入れたは最後、岸田内閣は支持が無くなります。またホワイト国に戻せも、徴用工とはまったく関係の無い話であり、逆に「何故なんだ?」と日本は余計に不審を感じるでしょう。

    どんな決着を作っても、韓国はまた半年したら蒸し返します(苦笑)。それが彼らの性分なんです。理知的にコトを考えられません。林大臣には譲歩案はNO!1965年日韓基本条約ですべて決着済み、日本企業の資産を取るなら、即時報復する。だけ伝えるだけでいいと思います。

    • >「日本企業に財団に寄付を出させよ」とかは絶対に避けるべきです

      勝手にやる奴は出てくるから

      企業名の公表  ーーー>不買運動をしなければならない
      寄付金の損金不算入 ーーー> なんで税金減らしてやらなきゃいけない

      をするべき

  • キシダフミオ政権を信じ切れないのは、韓国との交渉が密室で、韓国側の述べている事について「そんな事は言っていない」案件にはなっていないのもあるんですよね。

    なので、事務方で交渉を難儀にしておいて、トップ会談で“リーダーシップ”を名分に日本側が譲歩する懸念がずっと消えないんです。

    結果、キシダフミオ政権への不信感も消えずに残り。

    韓国との友好関係は日本の国益に繋がる、なんて外務省は考えているのでしょうけど、韓国にとっての対日友好関係とは「韓国側の“正しい歴史認識”を日本側も共有する事」や「日本が謝罪と賠償をし続ける事」なので、日本にとって不利益はあっても利益はありません。

    日本が第二次世界大戦後の戦後外交から脱して、第三次世界大戦への戦前外交に入ったのは安倍晋三氏のお陰であり、旧統一教会による被害者達を見殺しにし続けてきたと言えども、その功績は国葬儀で応じるに値したと考えます。

    もしもキシダフミオ政権が其れを破壊したならば、「お願いですから殺して下さい」と死ぬまで哀願し続けるくらいが“ご褒美”として相応しいのではないかと。

    • >韓国にとっての対日友好関係とは「韓国側の“正しい歴史認識”を日本側も共有する事」
      旭日旗騒動しかり。あんな、コロコロ変わるファンタジー史を我々日本人が、その都度共有できますか?それを要求されても、ねえ?

      • おとと さん

        仰る通りだし共有なんて有り得ないのですが、韓国が韓国である以上は韓国並みに頭が狂ってるから、日本に要求しちゃうんですよね。

  • 貿易管理の所管は経産省だと思ってたけど、なぜ外務省がごちゃごちゃ言うのかな。

  • 日米台連携の枠組みから外されているのは宏池会のほうである。
    岸田首相と尹大統領はそっくりであり、レガシーが欲しい、成果を上げ称賛されたくてしょうがないという渇望は、政治基盤の弱さとよって立つ支持の弱さの顕れだ。そう考えることもできると思います。
    されば、政権が暴走しないしよう、メディアとタッグを組んで官邸主導の政治ファッショに突き進まないよう監視の目を光らせ続けるほかありません。

  • 外務省の言動は「これまでの尽力(譲歩)を無にしたくない」とのコンコルド効果によるもの。
    そうでなければ、「自身の過ちを糊塗(正当化)するための詭弁」でしかないように思えます。

    大切なのは、道理を守ること。「見栄(メンツ)と矜持(プライド)」は似て非なるものです。

  • おはようございます。

    いまのところ岸田内閣はK国に安易な妥協はしないのかな、と思っています。
    その理由は2つあります。

    1つ目は青山繁晴議員のブログのなかでの、2/10開催の自民党外交部会の内容です。
    そのなかで青山議員が外務省に対し、K国に安易な妥協をしてはならないといったことをもとめたところ、
    ”外務省からは「 ( 今の意見と ) 心をひとつにして、当たりたい」という印象的な答弁がありました。”
    とのことです。
    https://shiaoyama.com/essay/detail.php?id=4717

    2つ目は産経新聞の報道なのですが、2/16の天皇誕生日の祝賀レセプションが在韓日本大使館において開催された際に、同レセプションでは初めて国歌「君が代」が流れたそうです。
    これまでは日本政府はK国での反日感情の強さから例年、国歌を流すことは見送ってきたそうですが、昨年発足した尹政権が対日関係の改善を目指す中、日本政府もいびつな両国関係を脱却する好機と判断したとのことです。
    https://www.sankei.com/article/20230216-UFRI64KQIBNP7OWZUMSM5UTHSQ/

    松川議員の発言とは矛盾する内容ですが、以上2つとも”外務省の公式の発言・判断”なのです。

    ただひとつ気になるのが、K国の必死の大攻勢の最中なのに、最近TVから「K国!K国!」と聞こえてこないような気がします。
    東京地検特捜部の電通への捜査の影響だったりしますかね。

    失礼しました。

    • 東京地検特捜部の電通への捜査の影響 これは十分ありそうですね。

  • 更新ありがとうございます。

    >日韓請求権・経済協力協定を「戦時賠償」とみなしている部分

    これは昔、とある翻訳掲示板で論争するとき、特に日本側の「論客」達が気を付けていた部分です。自分も参加し始めの頃、注意された覚えがあります。

    根拠やそれを示すURLを互いに叩き付けながらの「討論」を、毎夜「観戦スレ」で見ていたのを思い出しました。w

    日本第一党の桜井さんもdolonpa名義でよくやり合っていたかと思います。

    言うまでもないことですが、戦時賠償は敗戦国が戦勝国に支払うものです。最近は補償等と意味を混ぜて使っている人もいるようですが。

    まあヤフコメはそこまで詰める必要はないかと個人的には感じています。おおよその理解や方向が揃っていれば良いと思っています。

    ただ自称「最前線で戦って来た人」には、一文字たりとも間違えないでいただきたいと思います。たった一言から論理が崩れていくのも、ときどき見ましたので。

  •  風吹 舞さまも触れられておりますが、青山繁晴議員のブログによれば、2/10の自民党外交部会に参加していたのは、会長を除くと、「冒頭から佐藤正久、松川るい、高村正大らとわたし(青山繁晴)の計5人、終了までに杉田水脈、櫻田義孝、鈴木馨祐(敬称略)」だったそうですね。
     「追及する」と仰っていた議員さんは、どうされたのですかね。
     私は、この問題に関心が高いので、自民党議員の皆様の関心の薄さが、不思議で仕方がありません。「一般国民の関心もそう高くない」と舐めているんでしょうか。猛省を促したい!

  • 大枠で言えば日本は韓国を観察中と言った処でしょうか。
    少し前、言葉はいらぬ態度で示せなんて言葉が国会議員が発して居ましたが、少なくとも2年ほどユン政権を生温かく見守るという事ではないでしょうか。
    此処で下手に日本が手を出し、所謂徴用工だけを解決したとしても韓国社会を悪変させるだけで依然として使えない韓国を造るだけに終わるでしょう、要はユン政権に統治能力が有るのかです、逆に言えば日本には外交力と忍耐力を問われるわけです。
    韓国を変えるのは韓国人に任せる必要があるのです、今ユン政権は文政権の後始末を始めたばかりで日本としても口先で応援してる振りをしましょうという事では無いでしょうか。
    日韓外相会談、何も実績を示す事の出来ない韓国に日本が譲歩なんて、慰安婦合意より恰好悪いのは外務省でも解っていると思いますよ。

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