豪との通貨スワップ5年延長も中国偏重変わらず=韓国
豪韓両国が自国通貨建てのスワップを5年延長しましたが、金額は120億豪ドル(約85億米ドル)のままで据え置かれました。とりあえず国際的に通用する通貨である豪ドルとのスワップは韓国にとって貴重ではありますが、ただ、CMIMを除く通貨スワップの金額ベースの60%が中国とのスワップで占められているという状況は変わりません。
目次
通貨スワップと為替スワップのパターン
中央銀行間の金融協力の仕組みのひとつに、通貨スワップと呼ばれるものがあります。
これは、典型的には通貨当局相互間で結ぶ協定のことで、大きく分けて、お互いが発行する通貨を交換し合う「自国通貨建ての通貨スワップ」と、お互いが保有する外貨を交換し合う「外貨建ての通貨スワップ」という2つのパターンがあります。
また、日本を含めた先進国の場合だと、この通貨スワップの発展形として、為替スワップと呼ばれる仕組みがあります。
為替スワップは通貨スワップと異なり、通貨当局に対してではなく、相手国の金融市場(主に市中金融機関)に対して直接、自国の通貨を貸し出す取引のことであり、この場合、担保として相手国の通貨当局から相手国の通貨を預かります。
①通貨スワップ(自国通貨建て)
片方の通貨当局が自国通貨を相手に預け、相手国から相手国通貨を借り入れる取引
②通貨スワップ(外国通貨建て)
片方の通貨当局が自国通貨を相手に預け、相手国から外国通貨(たとえば米ドルなど)を借り入れる取引
③為替スワップ(自国通貨建て)
片方の通貨当局が自国通貨を相手に預け、相手国は自国の市中金融機関に相手国通貨を貸し出す取引
中国は人民元スワップを積極推進している
①のパターンの通貨スワップを推進している典型例は、中国でしょう。
『【総論】中国・人民元スワップ一覧(22年8月時点)』でも列挙したとおり、中国は少なくとも24ヵ国との間で総額約1.5兆元(1ドル≒6.75元換算で約2266億ドル)の通貨スワップを保有しています(その筆頭は韓国で金額は4000億元≒593億ドル相当です)。
なお、その一覧については図表1をご参照ください。
図表1 中国が締結する通貨スワップの一覧(2022年8月時点)
(【出所】中国人民銀行『人民幣国際化報告』を参考に著者作成。ただし、図中にはすでに失効しているスワップが含まれている可能性がある点について要注意。また、図表からは為替スワップであると判断される香港、英国、欧州、シンガポール、日本、豪州、カナダ、スイスの8ヵ国、総額2.55兆元分のスワップを除外している。なお、ドル換算額については国際決済銀行の1月30日時点のものなどを使用している)
日本は米ドル建てのスワップを推進
一方、通貨スワップのなかでも外国通貨建てというパターンもあります。
たとえば、日本が外国(ASEAN5ヵ国+インド)と締結している通貨スワップ協定は、いずれも基本的には相手国の要請に基づき米ドルで引出ができるというものです(図表2、ただし、マレーシア、インドの両国とのモノを除けば、いずれも日本円での引出も可能です)。
図表2 日本が締結する通貨スワップの一覧
(【出所】財務省『アジア諸国との二国間通貨スワップ取極』)
これらに対し、為替スワップは通貨当局に直接資金が渡るものではありません。
たとえば、日本、米国、英国、欧州、カナダ、スイスの6ヵ国・地域の中央銀行は、相互に金額無制限の為替スワップ協定を締結しているのですが、これらは相手国の金融機関に対し、直接、流動性供給オペが実施されるという特徴があります。
典型的には日米為替スワップがそうですが、このスワップは日本国内の市中金融機関が日銀に対して適格担保(日本国債など)を差し入れ、米FRB(実務的にはニューヨーク連銀)から直接、ドル資金の借入を行う、というパターンが多いです。
稀に、その逆の取引、つまり米国の市中金融機関が米FRBに適格担保(米国債など)を差し入れ、日銀から直接、円資金の借入を行う、というパターンもあります。
融通手形型スワップ
こうしたなかで、通貨というものは通用度が同じではありませんので、より国際的な通用度・信用度が高い通貨(たとえば米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドなど)を手に入れることができる通貨スワップや為替スワップは重宝される一方、信用度が低い通貨同士のスワップは、融通手形のように危険なものでもあります。
とりわけ『アルゼンチンが新たな「人民元建てのスワップ」を発動』や『トルコが韓国から通貨スワップで資金を引出し=現地紙』などでも指摘したとおり、近年、通貨ポジションが脆弱な国同士が通貨スワップを締結することも多いようです。
著者自身としては、こうした「融通手形型通貨スワップ」は国際金融秩序における隠れたリスク要因ではないかと睨んでいる次第です。
豪韓両国が通貨スワップ更新で合意
さて、こうしたなかで、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に、ちょっと不思議な記事を発見しました。
韓国中銀 豪との通貨スワップ協定を5年再延長
―――2023.02.06 14:31付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースによると、韓国の中央銀行に当たる韓国銀行は6日、オーストラリアの中央銀行に当たる豪州準備銀行との間で、通貨スワップを2028年2月5日まで5年間延長することで合意したと発表したのだそうです。
豪韓通貨スワップは、従来は期間が3年でしたが、今回からは期間が5年に延長されたものの、上限額は120億豪ドル・9.6兆ウォンで据え置きです。しかも、米ドルに換算したら約85億ドルに過ぎませんが、それでも国際的に通用するハード・カレンシーである豪ドルとのスワップは、韓国にとっては貴重なものでしょう。
さて、これを受け、韓国が現時点で保有する通貨スワップは、多国間スワップ協定であるチェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定(CMIM)を含めて1345.7億ドル相当となりました(図表3)。
図表3 韓国が保有する通貨スワップの一覧
相手国と失効日 | 相手通貨とドル換算額 | 韓国ウォンとドル換算額 |
---|---|---|
マレーシア(2023/2/2) | 150億リンギット ≒ 35.4億ドル | 5兆ウォン≒40.7億ドル |
オーストラリア(2028/2/5) | 120億豪ドル ≒ 84.9億ドル | 9.6兆ウォン≒78.2億ドル |
インドネシア(2023/3/5) | 115兆ルピア ≒ 76.7億ドル | 10.7兆ウォン≒87.2億ドル |
中国(2025/10/10) | 4000億元 ≒ 592.6億ドル | 70兆ウォン≒570.4億ドル |
スイス(2026/3/31) | 100億フラン ≒ 108.3億ドル | 11.2兆ウォン≒91.3億ドル |
トルコ(2024/8/11) | 175億リラ ≒ 9.3億ドル | 2.3兆ウォン≒18.7億ドル |
UAE(2027/4/12) | 200億ディルハム ≒ 54.5億ドル | 6.1兆ウォン≒49.7億ドル |
二国間通貨スワップ 小計…① | 961.7億ドル | 114.9兆ウォン≒936.2億ドル |
多国間通貨スワップ(CMIM)…② | 384.0億ドル | ― |
通貨スワップ合計(①+②) | 1,345.7億ドル | |
カナダ(※常設、為替スワップ) | 金額無制限 | ― |
(【出所】各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者調べ。なお、ドル換算額は国際決済銀行による1月30日時点のものを使用している)
ただし、上記のうちマレーシアとのスワップについては2月2日時点で失効しているようですが、マレーシア、韓国双方の中央銀行の報道発表を見ても、更新されたとの情報は掲載されていません。もしかすると、すでに消滅しているのかもしれません。
聯合ニュースの間違い
それはともかくとして、聯合ニュースの記事では、こんな記述があります。
「通貨スワップは、金融危機時に相手国に自国の通貨を預け、相手国通貨や米ドルを受け取る取り決め。韓国は現在、マレーシアのほか、カナダ、スイス、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、オーストラリア、インドネシアの7カ国と通貨スワップ協定を結んでいる」。
この記述、残念ながら正しくありません。
CMIMを除くと、韓国が7ヵ国と保有している通貨スワップは、いずれも米ドルではなく相手国の通貨を受け取るスワップであり、米ドルを受け取ることはできません。また、カナダとのスワップは通貨スワップではなく為替スワップです。
ただ、それ以上に、韓国の通貨スワップを眺めていて気付くのは、「中国依存度の大きさ」でしょう。
図表4は、韓国が保有している通貨スワップ(CMIMを除く)の相手通貨を米ドル換算したものですが、4000億元の人民元建てのスワップが600億ドル近くに達しており、全体の61%を占めていることがわかります。
図表4 韓国が保有する通貨スワップの相手国別シェア
(【出所】各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者調べ。なお、ドル換算額は国際決済銀行による1月30日時点のものを使用している)
こうした状況を踏まえると、米国との600億ドルの為替スワップや日本との700億ドルの「野田佳彦スワップ」が、韓国にとってはいかに大きな意味を持っていたのかということが想像できるのかもしれません。
こうしたなかで、世の中には『日韓スワップ復活で相互信頼醸成を図れ』などとするインチキ論説もあるようですが、やはり通貨スワップは潜在的に相手国にカネを貸す契約であることを踏まえるならば、「スワップ締結で信頼醸成を図る」のはアプローチが逆転していると言わざるを得ません。
もし相手とスワップを結ぶのであれば、正しいアプローチは、「相手が十分に信頼できる」と判断したときにすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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>正しいアプローチは、「相手が十分に信頼できる」と判断したときにすべきではないかと思う
その通りですね。
食い逃げされないための先払いは当然のことです。
>上記のうちマレーシアとのスワップについては2月2日時点で失効しているようです
日馬スワップ締結の含みに「馬韓スワップを更新せず」ってのがあったのならいいんですけどね・・。
新宿会計士さまご指摘の
綜合ニュースの「米ドル」記述の誤りは
計画的犯行だと感じます(笑)
同じ綜合ニュースの英語版では
日本向けのドサクサに紛れての
「米ドル」の言及はありません。
https://en.yna.co.kr/view/AEN20230206004200320
間違った日本語版のほうが、
YahooやMSNなど流れてしまっています。
かつて、
民主党政権での巨額売国野田ドジョウスワップで
通貨崩壊免れるだけでなくウォン安誘導で
海外市場で日本製品踏みつけての
韓流らしい恩仇成功例がりました。
日本国民に今から刷り込んでおくことで
いざそのときになったら
鳩ポッポ、韓流政党立憲民主党、
朝日などどぶサヨ陣営総力挙げて一気に
韓日本通貨スワップで
柳の下の2匹目のどじょうでウッシッシ
の魂胆が透けて見えるようです。
最近の日本マスコミ内で「韓国に譲歩しよう!」の声が増えている事を鑑みると、
そろそろ「日韓スワップを結ぼう!」がまた叫ばれるかも知れませんね。
今の”親韓派”は批判意見や突っ込みはひたすら”聞こえない”で対処する様ですから、
ある意味「”嫌韓派”は正しすぎて勝てないから逃げの一手」としているのかも知れません。
こうなるとちょっと厄介なんですよね。恥も外聞もなく逃げ続ける相手と言うのは、
それはそれで”ゲリラ”としては強敵ですから。
中国の人民元建てスワップは対中国貿易のものなので,ドルと兌換性のある通貨とのスワップとは別の性格のものです。
ところで,韓国経済は金融引き締めの効果で資金調達コストが上がり,誰でも想像できる通りに悪そうです。ただし「不景気」程度のものですが。あと,株価バブルは半年くらい前に完全にはじけて現在は妥当な水準まで下がっていて,不動産バブルもそれにつられてはじけています。チョンセの制度は縮小するでしょう。ドル・ウオンのレートもまあまあかな。円・ウオンは円安ウオン髙の状態が半年以上続いています。いずれにせよアメリカや日本とのスワップが必用な状態は脱していると思います。しばらくは,そいう要求も言ってこないでしょう。