火器管制レーダー照射事件と北朝鮮の関係は?=鈴置氏

韓国観察者である鈴置高史氏は2018年12月に発生した「火器管制(FC)レーダー照射事件」を巡って、麗澤大学の西岡力・客員教授の説明などをもとに、現場では北朝鮮から日本に向けて脱出してきた政権関係者を拿捕していた、とする説を明らかにしました。これが事実なら、FCレーダー照射事件はとんでもないスキャンダルだった、ということですし、もはや日韓間の問題を超過してしまいます。

上念司さん、登録者50万人おめでとうございます!

経済評論家の上念司氏といえば、軽妙洒脱な口調でも知られる人物であり、ファンもずいぶんと多いのではないかと思います。

DHCニュースが製作するインターネット番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』などで上念氏を知ったという方も多いのではないかと思いますが(著者自身もそのクチです)、上念氏は2021年1月5日付で、DHCテレビのすべての番組からの降板を自身のツイッター上で公表

ただ、その後もご自身のYouTubeチャンネルでの情報発信を継続しており、『上念司チャンネル ニュースの虎側』は、このほどチャンネル登録者数が50万人に到達したのだそうです(上念司先生、大変おめでとうございます!)。

考えてみれば、これも非常に興味深い時代になったものです。

かつてであれば、個人が全国に向けて映像コンテンツを作成して配信するなど、とうてい考えられない話でした。映像を全国配信するためには巨額の設備投資が必要であり、また、スタジオセットを作るためにも多大なコスト、カメラマンなどに対する人件費が必要だったからです。

しかし、現代であれば、インターネット上にYouTubeなどの動画プラットフォームが存在しているため、極端な話、カメラとネット環境さえあれば、だれでも気軽に動画配信業を営むことができるようになってしまいました。

上念氏もそうした著名人の1人であり、自身で50万人という登録者を獲得したというのも、上念氏の情報発信がそれだけ多くの人々を魅了したという証拠でしょう。

上念氏の動画に鈴置氏が電話で登場

さて、その上念氏が昨晩配信した動画が、大変に興味深いものです。

50万人突破記念SP!日本随一の半島通、鈴置高史さん登場!ついに文在寅逮捕か?しかし、左派逆転の可能性も?|上念司チャンネル ニュースの虎側

動画タイトルからもわかるとおり、優れた韓国観察者として知られる鈴置高史氏が上念氏の動画に電話で出演し、半島情勢についてわかりやすく解説を加える、というものですが、これが本当にぐいぐい引き込まれてしまうのです。

聴き手である上念氏自身の話の引き出し方が素晴らしい(『ニュース女子』の司会者という経験もあるからでしょうか?)点もさることながら、鈴置氏の解説が非常に優れているからです。

こうしたなか、やはり注目しておきたいのは、2018年12月20日に日本海能登半島沖で発生したとされる、いわゆる「火器管制(FC)レーダー照射事件」を巡る解説です。鈴置氏は「麗澤大学の西岡力教授が北から得た情報として明らかにした内容」などをもとに、次のような仮説を説明するのです。

  • 2017年12月に米軍戦略爆撃機が朝鮮半島東部を北上飛行したことがあったが、その狙いは金正恩が朝鮮半島東部にある自身の別荘に滞在していることを米軍が把握しているという事実を北朝鮮に見せつけることにあった
  • このことは、金正恩の護衛部隊の関係者のなかに、金正恩の所在地に関する情報を米国に漏洩している者(内部通報者)がいることを示唆していることになり、この事件をきっかけに内部摘発が始まり、その関係者が漁船に乗り、日本に向けて逃亡した
  • 日本の海自哨戒機は米軍からの情報提供を受けて該当地域に向かったが、日本の哨戒機の出現に焦った韓国海軍側が、日本の哨戒機を追い払うためにFCレーダーを照射した

…。

つまり、2018年12月20日に現場海域にいた韓国海軍駆逐艦「広開土大王」や韓国海上警察当局の船舶は、北朝鮮の依頼を受け、日本に向かっていたその漁船を拿捕していたというのです。「拿捕」された地点が朝鮮半島近海ではなく日本のEEZ内だったという事実は、この説を間接的に裏付ける証拠です。

日韓関係の枠を超過した大問題に!

もしこの情報が事実だとしたら、これはとんでもないスキャンダルです。

なぜなら、拿捕した北朝鮮関係者を北朝鮮に送り返したのだとしたら、その行為自体が「国家反逆罪」にも問われかねないからです。

大韓民国憲法では、韓国領は「韓半島と付属島嶼とする」と定められています(大韓民国憲法第3条)。したがって、北朝鮮の人々も、憲法上は「韓国国民」であり、当然、韓国政府は彼らを含めて保護しなければならないはずです。

それなのに、それをせずに「北から逃げてきた『韓国国民』を北朝鮮に『売った』」という評価もできますので、それを指示した文在寅(ぶん・ざいいん)前大統領らは国家に反逆する行為を行ったとして摘発される可能性がある、ということです。

そのうえで、鈴置氏の見立ては、こうした事実関係を尹錫悦(いん・しゃくえつ)現政権が文在寅前大統領を牽制するために使っている、ということですが、もしもこのストーリーが事実なのだとしたら、FCレーダー照射事件自体、すでに日韓問題ではなくなってしまうことになりそうです。

この点、この説が韓国政府から公式に発表されるのかといわれれば、それはそれで微妙です。それをやってしまうと、韓国が日本に対してFCレーダー照射を行ったという事実が世界に向けて明らかになってしまうからです。果たして「日本に対して謝罪すること」をなによりも嫌がる韓国政府がそれを公表するものでしょうか。

ただ、ここで重要な注意点があるとしたら、私たちの国・日本としては、こうした韓国国内の権力争いからは極力距離を置き、韓国の国際法違反については粛々と対応する、ということではないでしょうか。

いずれにせよ、本件についても今後の展開を見守る価値はありそうです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    恒例の前大統領逮捕がないなあ、とは思っていたけど。まさかまさか。

  2. はるちゃん より:

    この事件は、瀬取りではないかという意見もありましたが、現場の状況などから、韓国軍による北朝鮮からの依頼を受けての脱北者逮捕劇ではないか、と想像していました。
    北と韓国軍は裏で繋がりがあるのではないかと感じています。
    鈴置さんが常々言っている「北の核は朝鮮民族の核」であり、将来の統一達成に向けて、北はSLBMを開発中であり、韓国は原子力潜水艦の建造を検討しています。
    米軍と自衛隊は、この事件を含めて、北と南の核武装計画もあり得ると想定していると思うのですが、今後どのような対応をするのか、大変気になります。

    それにしても、北からの要請で韓国軍が動くというのもとんでもない話ですね。

    1. 農家の三男坊 より:

      >北朝鮮からの依頼を受けての脱北者逮捕劇ではないか、と想像していました。

      私も同じような考えをしていました。
      ただ、
      >米軍が把握しているという事実を北朝鮮に見せつけることにあった・・
      これは、スパイを危険に晒すので普通は無いと思います。
      クーデター説の方が未だ信憑性がある。

      この話の本質は、
      ”条約・合意を守らない、嘘つき、コソ泥推奨国” は ”すでに米国の傀儡国ではなく、北に取り込まれつつある” という事です。

      安全保障環境改善、日米韓3か国連携、等々 無能な政治屋・官僚が売国行為を進めようとしているが、韓国政府・軍内の粛清が済むまでは適当にあしらうべき。

      1. はるちゃん より:

        >北に取り込まれつつある

        農家の三男坊様の仰る通り、北に取り込まれつつあるのでしょうね。
        このような事実が北から暴露されれば、韓国政府や韓国軍の国際的な立ち会は崩壊すると思います。
        北は、既に韓国及び韓国軍に対する脅迫の材料を多数握っていると思います。
        事態は深刻だと思います。

  3. はにわファクトリー より:

    28分間の痛快な解説、話題は多岐にわたり聞く者を退屈させないすばらしいトークショーだったと思います。アメリカのFM局ではコマーシャルをわざと聞き取りにくい電話音声風に流す風習?があるようですが、そうと狙っていたわけでなくても聞き耳を立てさせる効果が今回ありました。当方は聞き逃しがないよう何度も止めて繰り返し再生しましたが、そうゆうところが Youtube 配信の醍醐味であって、新聞やTV放送のような一方的な垂れ流しメディアにはまったく真似のできない優位性です。

  4. Naga より:

    『重要な注意点があるとしたら、私たちの国・日本としては、こうした韓国国内の権力争いからは極力距離を置き、韓国の国際法違反については粛々と対応する、ということ・・』

    今の日本政府(岸田首相と害務省のアレ)はちゃんとこれをできるのか•するのか、が重要ですね。

  5. CRUSH より:

    さすが鈴置さんですね。
    俯瞰して本質が見えています。

    個人的には、事件発生当初から
    「いったい彼らはあそこで何をやってたのか?」
    こそが本質だと思っています。

    普通はあんなこと、しませんからね。(笑)

    なおかつ間抜けなピエロみたいな荘厳なBGM付の動画を政府公式で公開してまで
    「レーダー照射したのかしてないのか」
    に議論のフォーカスをミスリードし続けてきました。

    それはそれで面白いのですが、本質的には
    「君たちいったいあそこで何やってたの?」
    ですわ。

    拿捕(韓国海軍では救難と呼称されるらしい)した相手は、今や話題にものぼりませんが、死体も含めてレーダー照射の翌々日?には北朝鮮に返還されたそうです。

    調書は?
    韓国の海保の船(警察)が現場に居たのだから、調書がないはず無いし、ないなら逆に事件です。
    誰の指示で?
    日本で似たような事件があった時には、官房長官指示だったと判明してますよね。

    世論の動きはどうであれ、あの事件のあと、世界中の海軍(カナダや豪州や英国や仏国や、ドイツまで!)が日本海で哨戒を始めているのが、状況証拠ですかね。

    その後に、類似事件が発生していないのがまた、面白いですな。
    世界中の海軍が来ていて、今なら難破しても救助してもらえるのだから、北朝鮮の漁船は大挙して出漁しそうなものなのにね。
    まるで、韓国海軍とだけ内緒でランデブーしたかったみたいじゃないですか。
    (笑)

  6. 元日本共産党員名無し より:

    韓国軍は文在寅政権時代にとりわけ政権べったりで左がかった(軍務とは到底言えない)事を率先してやって居た印象があります。自ら招いて居た観艦式に土壇場で隊旗を下ろせと言い出したのもこの頃でした。
    だが、韓国軍がどんな文脈でそれをしたのかは我々日本人には関係ありません。結果としての韓国政府の行為として韓国を責任追及するだけです。まだFCレーダー威嚇の件も、観艦式の件も、いやさ、足りなくて困って居た韓国軍部隊に弾薬を融通してやった時の後味の悪い後の顛末も一切韓国政府から謝罪は受けておりません。前駐日韓国大使のアグレマンの件だって謝罪無し。我々は結果から判断するしか無い。内実は知って置いて無意味では無いが、内実から情状酌量してやる必要は無いと思います。鈴置さんも韓国公務員の殺害された一件の流れからこの疑いが浮上という韓国の内情暴露として言及されたものと思います。更に内情としては、幾ら尹政権がアンチ文在寅だとしても、対日関係で誠実に過去の非礼や安全保障上の日本として揺るがせにできない問題だった事を認めて是正措置をとるなどと言う事に踏み込む事にはならないのでは無いか。
    そうするとやはり「知れば知るほど嫌いになる」と言う事にしかならないと思います。

  7. PASSERBY より:

    こんな関係があるとすれば、消えたフッ酸がどこいったかの解明にもつながるね。いまだに説明がないけど、核濃縮に使われる材料だから、あいまいにはできない。輸出管理強化につながる前提環境だったのではないだろうか?その当時は、洋上で密輸してるっていわれた。

  8. WLT より:

    韓国、度々脱北者を北朝鮮へ強制送還してますからね。
    何度もニュースになっているので、この話は大分説得力があります。

  9. 元ジェネラリスト より:

    鈴置さんはSkypeしない人なんでしょうね。
    新宿会計士さんの50万人達成記念電話出演はないんでしょうかね。分野が被るかな?

    まあちょっと、無いかなと思いつつ・・・
    射撃管制レーダーの件で当時の韓国政府が数多の矛盾も顧みずに喚き散らしたのは、レーダー照射が現場判断じゃなく大統領府の指示だったから、なんてありえないでしょうかね。それだと現場処分できないし、逆ギレして誤魔化すのもわからんでもないです。
    素人活動家集団の大統領府がそんなマニアックな指示を出すとしたら、例えばこんな感じで。

    大統領府「自衛隊機を追い払う方法はないか?」
    国防相「無いです。まあ、射撃レーダーでも当てれば逃げるでしょうけど無理っす」
    大統領府「それ、やれ」

    Youtubeの中身は、面白かったです。

  10. 匿名 より:

    仮説じゃなくて想像でしょう。朝鮮半島東部をアメリカ軍の戦略爆撃機(B-52、B-1)が北上するのはいつもの作戦行動で空自が護衛に付いての共同演習もされている。
    仮に漁船での内通者の脱出をアメリカが察知したなら在日米軍が三沢か嘉手納から哨戒機を飛ばして睨みをきかせつつ海保か海自艦艇を現場に向かわせピックアップさせるでしょう。韓国艦艇が北に協力して身柄確保に向かうことも把握してるはずで、みすみす眼前でそれを許すなんてしますかね。

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