ウクライナ世論の8割超がロシアへの抵抗の継続を支持
ウクライナの研究機関「キーウ国際社会学研究所」の調査によれば、ウクライナ国民の8割超が依然としてロシア軍への軍事的抵抗を続けるべきと考えていることが判明したそうです。ウクライナを親露国家に作り替えようとしたロシアの試みは、現時点で完全に失敗に終わっただけでなく、むしろウクライナのロシアに対する敵愾心を強化したという意味では、戦略的には完全な失敗です。そして、この戦争をロシアの完全なる敗北に終わらせるべく、私たちの国・日本もできることを粛々と続けなければなりません。
ロシア軍の緒戦敗退
今年2月24日にロシアによる違法なウクライナ侵略戦争が始まってから、もう8ヵ月が経過しました。
ロシアは局地戦では勝利を収めつつも、戦略的に重要な地点では敗退を続けており、3月末から4月初旬にかけてのキーウ撤退、4月の黒海艦隊旗艦「モスクワ」の撃沈、9月のイジューム陥落、10月のクリミア・ケルチ大橋の爆破事件など、さまざまな象徴的敗北を味わっています。
人的損害のためか、先月は「部分的な動員」(と称した事実上の国家総動員)の発動を余儀なくされていますが(『事実上の「総動員」?ロシアが「部分的な動員」を発表』等参照)、これを受けてロシアでは国外逃亡を図る人もいるようです。
もちろん、この8ヵ月あまりでさまざまな展開があり、また東部・南部などでロシアによる占領や戦闘は継続していますし、ロシアにとっての「戦果」(?)としてウクライナの4州の併合宣言も行ったのですが、ただ、ロシアはすでに戦略的には敗北したと考えて良いでしょう。
NATO東進の実現
その大きな要因のひとつは、NATOの東進が実現したことにあります。
この点、今回のロシアの開戦要因を、「西側諸国が当初の約束を破り、NATOを東進させるそぶりを見せたから、ロシアとしてもやむを得ず開戦せざるを得なかった」などとする意味不明な陰謀論を、いまだに唱えている人もいます。よっぽど「どっちもどっち」論に持ち込みたいのでしょうか?
(※なお、「NATOを東進させないという約束を西側が破ったことに責任がある」などと主張している人たちは各所で論破されていますが、ほとぼりがさめたくらいにまたぞろそれらの持論を展開し、再び論破されるという面白い現象も発生しているようです。)
ただ、一万歩くらい譲ってこの意味不明な陰謀論が事実だったと仮定しても、ロシアの戦略的敗北という点については変わりません。
ちなみにこの「戦略的敗北」という発言は、もともとは今年6月の時点で英軍の制服組トップが述べたものです(『英軍制服組トップ「ロシアはすでに戦略的に敗北した」』等参照)が、この発言自体も今になって振り返ればかなり正確な認識だったと考えてよいでしょう。
考察するに、ロシアが今回の戦争を始めた大きな理由が、「NATOの東進を防ぐこと」に加え、「ウクライナを最低でも中立国に、あわよくば親露国に作り替えること」にあったからですが、結果的にスウェーデンとフィンランドNATO加盟手続が進行中であり、ウクライナが親露国になる可能性もおそらく永遠に失われたからです。
ウクライナ国民の8割超が「戦争継続」を支持
こうしたなか、さらに心強い話題が出てきました。
産経ニュースによると、ウクライナの調査機関「キーウ国際社会学研究所」が実施した調査で、ウクライナ国民の8割超が依然としてロシア軍への軍事的抵抗を続けるべきと考えていることが判明したのだそうです。
ウクライナ国民の8割超「抵抗継続を」 露軍攻撃再開、恐れより怒り招く
―――2022/10/26 09:30付 産経ニュースより
調査は10月21日から23日にかけて実施され、クリミア半島や東部の一部占領地域を除く18歳以上の国民1000人に電話調査を行い、ロシア軍がウクライナ全土への攻撃を再開するなかで、戦争の継続を望むかどうかを尋ねたのだそうです。
「その結果、『露軍による都市への攻撃が続いても、軍事的抵抗を続けるべき』との回答を選んだ人は86%にのぼり、『都市への攻撃をやめさせるために、ロシアへの妥協があっても、即座に和平協議を開始すべき』との回答(10%)を大きく上回った」。
しかも、この調査自体はロシア語とウクライナ語で実施されたそうですが、ロシア語で回答した住民も66%が抵抗継続を求めるなど、ウクライナ国民にロシアへの敵愾心が根強く広がっていることがうかがえます。
ロシアを敗北に追い込め!
これに対し、ロシア国民の側はどう考えているのかが気になるところですが、想像するに、かなり士気は低下しているのかもしれません。
たとえば、ロシアは厳しい金融制裁の影響で外貨準備も凍結され、国際的な債券市場からも事実上締め出されてしまいましたし、輸出規制の適用も受け、マクドもスタバもクレジットカード会社もロシアから撤収してしまいました。インチキマクドもどき、インチキスタバもどきでロシア国民は惨めな気持ちを味わっているのかもしれません。
そして、西側から輸入した航空機や自動車などの輸送用機器は「共食い整備」を余儀なくされていますし、こうした「共食い整備」が限界を迎えれば、ロシアの社会インフラは年を経るごとに加速的にボロボロになっていくことでしょう。
さらには、ロシア軍が「意外と弱かった」ことが世界に示されてしまったためか、ロシアの軍需産業は今後、苦戦が予想されますし、ロシアのさまざまな武器が西側諸国に鹵獲されたことを受け、ロシアの戦い方、軍事機密などは相当程度、西側諸国に流出したものと考えられます。
そもそも戦争の早期終結に失敗した時点で、ロシアが戦争の泥沼に嵌ることは避けられなかったのかもしれませんし、局所戦に勝利することと、国家全体の目標を正しく考えることは、まったく別の論点であるという点が改めて明らかになった格好です。
なにより、今回の戦争は日本から遠く離れた国のものであるとばかりは言っていられません。私たち日本人にとっても関心を持たざるを得ないものです。
とくに習近平(しゅう・きんぺい)体制が3期目に入るなか、中国の台湾侵攻という野心を挫くためにも、今回の戦争は何があってもロシアの敗北で終わらなければならないのです。
その意味では、私たちの国・日本としても、原発の再稼働や新増設を進めてエネルギー輸入を減らし、ロシアに対してのみならず、中国や北朝鮮といった無法国家への対処も強化しなければなりませんし、その過程で友好国のふりをした無法国家に厳しい対処も必要でしょう。
なにより、故・安倍晋三総理が提唱し、菅義偉総理が日本外交に実装した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の理念をしっかりと受け継ぎ、自由、民主主義、法の支配、人権といった基本的価値を大切にしていかねばならないことは、いうまでもありません。
あらためて、「ウクライナに栄光あれ」、と申し上げておきたいと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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毎度、ばかばかしいお話しを。
憲法9条信者:「戦争は嫌いだから、ウクライナは無条件降伏すべきだ。だから、戦争継続を支持しているウクライナ人は間違っている。岸田総理は、そのためにウクライナに圧力をかけるべきだ。それをしない岸田総理は間違っている」(憲法9条信者の意見を聞いた岸田総理が、本当に言い出したりして)
これって、笑い話ですよね。
笑い話で済めば良いのですが、、、、、
何も考えていない岸田、林コンビには十分ありえることだと思います。
もうすぐ、国を挙げての反日教育で世界一の反日無法国家になった隣国とも、戦時出稼ぎ労働者詐欺問題で手打ちになりそうですからね。このコンビ、ややこしいことを原理原則に基づいて簡単に考える能力が決定的に欠乏していると思われます。
ウクライナ支援国の多くが武器、弾薬を送っているのに対し、日本が武器以外しか支援しないのを
歯ぎしりしながら見ています。残念でなりません。
ウクライナは侵略者から自衛するために戦をしているのに、日本が武器支援しないのは日本のためにもならないと思います。何とかならないのか。
ただ、現実、ウクライナに送られている武器は、東側のものか、
西側製ならインスタントに使えるものばかりですが。
武器って、扱いが難しいものなのです。
2014年から始まったハイブリッド戦争ですが、華やかな名前に比して厭戦気分を高める為だけの首都ミサイル攻撃やドローン攻撃。恐怖を植え付ける為の占領地での略奪、暴行など、実態は案外と地味だなあというのが印象です。(もっとこうインフラ施設をサイバー攻撃してルパンの様に華麗に強襲、占領するイメージでしたが)
ハイブリッド戦争の行く末が気になる次第です。
また、無法国家群との対話という観点からは、ロシア人とコミュニケーションをとりたいと思ったら悠長に酒やウオッカなどの飲み交わしながら会話などではなく、戦場の局地戦に置いて肉体言語で直接語り合う以外の方法がないことが今回、判明したのではないでしょうか。そう考えるといかに27回も会談を行った安倍総理の辛抱、忍耐強さが際立ちます。
人の家にミサイルや砲弾をぶち込む人間が許される世界であってはならない。某維新の政治家は無責任な放言をする暇があるなら戦地で戦争の被害者の意見でも聞きに行くべきでしょう。北海道で彼を支援する人などもういないのではないでしょうか。
統計データは統計の取り方で相当ぶれますが,8割以上が戦争継続支持というのは,欧米メディアの分析よりかなり高いですね。
ロシアの武器製造能力ですが,旧ソ連時代は国内の部品だけで製造できていたのが,ソ連崩壊後,西側の部品をかなり使うようになってしまって,国内の工場が幾つか廃業したのか,国内の部品だけで製造するのが難しくなってしまったように見えます。それが,武器不足の原因でしょう。西側もサプライチェーンがグローバル化して,1ヶ国の部品だけで作れる製品が減っているようにも感じます。中国はどうなんでしょう。武力でも台湾を取り返すと,宣言してしまっていますけど。
遺憾砲ばかり撃っていないで,早く憲法を改正して,日本もNATOに参加するくらいのことをしないとダメです。
ロシアが徴兵を強化して兵員補充していますが
徴兵され2~3日の準備期間を終えて、すぐに最前線に配置されるとのこと・・・
訓練もなければ、装備もない、骨董品かサバゲーのおもちゃが支給される場合すら
つまるところ
防衛戦が突破されるまでの時間稼ぎ、
はじめから戦死前提の肉盾として使えれば良い程度の話みたいですね。
これでロシアの士気が上がる方が不思議だし、徴兵対象だったら国外逃亡するわなぁ
ヘルソン攻防戦での詳細が明かされつつある。
ロシアは防衛線を敷きウクライナ軍が攻める構図。
ロ軍はスペツナズと空挺団の精鋭1万が陣地に籠る。
囚人兵、動員兵をウ軍に向かって突撃させる。
当然、ウ軍の歩兵による銃撃と砲兵による砲撃を受ける。
最初からロ軍はそれが狙いでおよその位置を特定しウ軍へ砲撃。
被害はウ軍:ロ軍で1:5.5の割合。
ロ軍の方が損害が大きいがウ軍も確実に被害が出ている。
無防備の歩兵を撃ち殺すことにより精神を病み戦線離脱するウ兵も後を絶たない。
ロ軍後方には伝統の督戦隊が配備。
戦闘拒否、脱走、投降のそぶりを見せれば容赦なく後ろから撃ち殺す。
8月下旬からヘルソンへの本格侵攻が始まった。
だが武力による制圧はできず領地奪還は非常に緩やか。
補給線破壊による兵糧攻めに切り替えるもロ軍を切り崩せずにいる。
ロシアは部分動員第1波20万人動員を完了。
ウクライナは早くも部分動員第2派を警戒している。
この戦術を東部戦線でも取られたら非常に厄介。
領地奪還もウ軍は相当な犠牲を払い時間がかかることとなる。
ここにきてロウ戦争は総力戦、殲滅戦、消耗戦の色彩を強める。
ロシアはイランに自爆ドローン、弾道ミサイルを数千発注文。
主にウクライナのインフラ(特に変電所)を狙っている。
ウクライナの継戦能力を奪うことが目的。
武器供給が続く限りウ軍のクリミア奪還は既定路線。
だが米国中間選挙、武器在庫、欧州経済不振と暗雲が立ち込めている。
また、ロシアも確実にこの戦術を遂行できるとは限らない。
イランも国内に不穏な空気が漂う。
現時点ではこの戦争の落としどころは見えない。