利用時間数でネットに敗北しつつあるオールドメディア

10代の平日の平均新聞購読時間は0.4分

昨年の時点で、全年代のテレビ視聴時間数がネット利用時間数に追い抜かれていました。総務省が公表する『情報通信白書』などに基づけば、若年層ほどネット利用時間が多く、高齢層ほどテレビの視聴時間が長いことが明らかなのですが、それと同時に、年々、ネットの利用時間が延びるという傾向が認められるのです。こうしたなか、今年版のデータは早ければ今月中にも公表されると見られますが、今後、いったいどうなるのでしょうか。

総務省データ「主要メディアの平均利用時間」

総務省が毎年公表しているデータのなかに、『情報通信白書』などに収録されている、『主なメディアの平均利用時間と行為者率』という図表があります(図表1)。

図表1 主なメディアの平均利用時間と行為者率

(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3)

この図表自体の出所については、昨年の『ネットが「ネット以外」を上回る=総務省メディア調査』でも取り上げた、『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査』という調査が出所なのですが、あらためてこの図表をしげしげと眺め、年代別にグラフ化すると、非常に興味深いことが浮かび上がってきます。

この図表、「テレビ(リアルタイム)視聴」、「テレビ(録画)視聴」、「ネット利用」、「新聞購読」、「ラジオ聴取」という5つの行動に分け、平日・休日ごとに、年代別(10代~60代)および全世代の平均利用時間(分)を集計したものです。

平日の利用時間を年代別にグラフ化してみた

ただ、総務省の元データだとグラフがかなり読みづらいので、ここで「平日」のデータに限定し、「ネット」だけを折れ線グラフにし、ほかを棒グラフにして比較する、という作業を実施してみました。その結果が、図表2です(※出所はいずれも図表1と同じ)。

まずは、60代です(図表2-1)。

図表2-1 60代のメディアの平均利用時間(平日)

これで見てみると、60代では年々ネット利用時間が増えているものの、やはりテレビ視聴(とくにリアルタイム)の時間数は依然として多く、2021年においてもネットの約2.5倍に達していることがわかります。

ただ、ほかの年代に関しては、様子が異なります。たとえば50代はこんな具合です(図表2-2)。

図表2-2 50代のメディアの平均利用時間(平日)

50代になると、2017年ごろはネット利用時間がテレビ(リアルタイム)視聴時間の半分にも達していませんでしたが、これが2021年に入ると、ネットの利用時間が急速に伸び、テレビ(リアルタイム)視聴時間に肉薄してきているのです。

では、40代はどうでしょうか?(図表2-3

図表2-3 40代のメディアの平均利用時間(平日)

なんと、40代だと2020年の段階で、すでに「ネット」が「テレビ(リアルタイム)」を抜いてしまっています。そして、2021年においては、ネットがほかの4媒体すべての利用時間を抜き去っているのです。

若年層に行くほどネット利用時間が増える!

そして、この「ネット利用時間がほかの媒体の利用時間を抜き去る」という現象は、30代においては、すでにもっと以前から実現していました(図表2-4)。

図表2-4 30代のメディアの平均利用時間(平日)

これで見ると明らかですが、30代に関していえば、2019年の時点で他の4媒体の利用時間とネットの利用時間が均衡し、2020年と21年に関しては完全に抜き去っています。

さらに極端なデータは、20代(図表2-5)と10代(図表2-6)でしょう。

図表2-5 20代のメディアの平均利用時間(平日)

図表2-6 10代のメディアの平均利用時間(平日)

いかがでしょうか。

20代や10代に関しては、2017年の時点でネット利用時間がほかの4媒体の利用時間を大きく上回っており、その差は年々、拡大するばかり、というわけです。当ウェブサイトで新聞やテレビのことを「オールドメディア」と呼称しているゆえんは、まさに若者に見放され、取り残されているメディア、という意味もあるのです。

全年代でも「ネット>テレビ」

こうしたなかで気になるのは、こうした傾向が今後どうなるか、でしょう。

図表2-1~図表2-6までのグラフについて、集計対象を「全世代」に変えると、図表3のようなグラフが出来上がります。

図表3 前世代のメディアの平均利用時間(平日)

(【出所】図表1に同じ)

これで見ると、全世代でもネットの利用時間数は2021年においてテレビの合計視聴時間(リアルタイム+録画)を超えましたが、このペースを維持すれば、下手をすれば2022年か23年には、全世代においてもネット利用時間数がオールドメディアの利用時間数を追い抜くでしょう。

ちなみに新聞(紙媒体)に関しては、テレビよりもはるかに悲惨な状況となっており、たとえば2021年において60代だと22.0分と5年前の25.9分と比べさらに減っているのですが、10代に至っては、なんと0.4分(!)なのだそうです。ほぼゼロ、というわけですね。

もちろん、「ネット利用」といっても、おそらくは新聞社やテレビ局などのウェブサイトを閲覧している時間数も含まれると思われるため、「オールドメディアが完全にネットメディアに抜かれた」というわけではありません。

ただ、それと同時に「私たち人間は生きている限り、毎年1歳ずつ年を取る」、という事実を忘れてはなりません。

そして、例年だと、この図表1~図表3の元となる『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査』が、年によっても異なりますが、早ければ7月下旬から、遅くとも9月中には公表されます。ということは、ごく近いうちに(早ければ今月中に)、2022年のデータについても確認することができる、ということです。

果たして今年版の「利用時間数」、いったいどうなっているのか、個人的には興味津々、といったところです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. sqsq より:

    まったく驚かない。10代の孫2人は食事中にテーブルの上にスマホを置いて、ユーチューブを見ている。テレビなど目もくれない。自分たちが見たいものを見たい時間に見ているのだ。
    テレビは何をやっているのか?ショップチャンネル、野球中継、韓流ドラマ、昔の時代劇、ぶらり旅、グルメ番組。ほとんど惰性。

  2. 裏縦貫線 より:

    毎々同じようなコメントですみません。
    テレビはその時々の印象に残るだけなのでまだましですが(「印象操作」としては笑えませんが)、
    新聞は、紙で残っていれば何十年何百年経っても内容は読めてしまうので、現在の読者が減ろうと利用時間が減ろうと侮るわけにはいかないと思います。
    ウクライナ侵攻の初期、偽新聞だか偽号外だかが見つかったという話がありましたが、後世のひとが見つけたとき偽物と見破れるといいですね….

    1. 匿名 より:

      1000年後に朝日新聞という名の古文書が見つかり。1070年前に日本という国は韓国人の子供をさらい、慰安婦として従軍させた。
      と1000年後には古代史に書き加えられるのでしょか?

      1. 裏縦貫線 より:

        あり得る話だと思います。

        とある民族、現世でバレたところで隣国で批判されても命を奪われる訳でもなし。数十年数百年千年後の子孫がマウントとれるのなら、ウソをつきウソを書かせるくらい安いものでは。
        隣国にはジンケンだサベツだと言って同じ国民を叩き道徳的優位をとったつもりの”お人好し”なマスコミ屋さんが跋扈し、とある民族に有利なアーカイブを日々クリエイトしてくれるので、笑いが止まらないでしょうね。

  3. 古いほうの愛読者 より:

    インターネット利用時間の増加のひとつに,読むに値しないサイトの割合が増加して,必用な情報にたどりつくまでの所要時間が増えたこともあると思います。WEBの記事が玉石混交なのは皆さんも分かっていると思います。統計的に言えば,無償で有用な情報を提供してくれる人は少なくて,お金を稼ぐために書かれた投稿が多いです。
    例えば,購入する商品を選択するために商品情報を調べてみよう,と思った場合で,キーワードを入力して検索した場合を考えます。Amazonのクチコミが沢山ある商品なら,それだけでも選べますが,そうでない場合は,多くのWEBから情報をさがすことになります。出てくる情報の大半が販売サイトか商業目的のものです。販売者以外に,アクセス数稼ぎの怪しい記事など,いろいろなものがあります。必用な情報にたどり着くまでに,かなり努力を要します。
    テレビや新聞で報道されるニュースは,もともとテレビ局や新聞社がWEBで発信している情報がひかかってきます。中身はテレビや新聞と同じです。内容の比較はできますが,共同通信などから買っている記事は,中身が全部同じで,検索を面倒にしています。余力があれば,海外サイトの記事と比較してみる方法はあります。
    他方,学術系(理系)の情報は,もともと高度な専門教育を受けている人しか書けないので,変な記事は少なくで,学術論文を比較検討する要領で,容易に正しい情報が得られます。例外的にコロナ関係は怪しい記事も多いので,これは,学術論文やプレプリントのサイト(研究機関からしかアクセスできないものも多いです)のほうで,情報収集したほうがよいようです。WEBの一般向け記事は「○○先生はこう言っていた」というものが多くで,原論文を読んだ形跡もないので,信頼性が薄くなります。
    厄介なのは経済記事などで,これは対立する主張や,異なる見解の主張が見つかることが多く,骨が折れます。やってはいけないことは「これは○○氏の書いた記事で,過去にこの人の書いた話は間違っていたので,信用できないから無視しよう」ということでしょう。あるいは,自分か嫌いな組織の人だから信用できない,とか。この種の主張は,どれもある程度有用な情報と,結果的に誤りとなる予測が書かれています。最後の結論の予測だけ読むのではなく,自分が知らなかった有用な情報を収集することが大切です。あとは,そういう情報を積み重ねていって,いろんな事態が起こり得ることを想定して,対策を考えておくことだと思います。赤旗の日曜版とか,普通の新聞に書いてない話もあって,結構面白いですけどね。もちろん,そのまま損じるわけではないですが。
    WEBの情報は,自分の考えに合った記事しか富まない人も多いです。自分の思い込みと一致した情報は「フェイクニュース」だと信じるようになる人も多いので厄介です。

    1. 朝日新聞縮小団 より:

      私などは現代のほうが新聞雑誌テレビという一方向メディアの時代よりも国民の情報リテラシーはずいぶんと上がっていると感じますよ?
      厄介な人の数は逆に減っていると感じますね。
      例えば政治系のYou Tubeチャンネルでは保守系なら朝日や毎日の記事やコラムを紹介してそれのおかしさを解説することが多いです。
      つまり両論を見ることが出来るわけですね。
      朝日毎日を信じるか、そのチャンネルの解説を信じるかは受け手次第。
      これが以前なら朝日新聞を読んで世に憤慨して終わってたのですから。
      心配なのは革新系の政治チャンネルの視聴者ですね。
      モリカケサクラトウイツガーと9条守れ言論の自由、人権守れって、オールドメディアの延長でしかないので。

    2. 匿名 より:

      もう諦めて、多くの日本人に学びなさい
      左翼老人という日本人から最も嫌われた存在になりたければオールドメディアに縋りついても良いですが

  4. 匿名 より:

    スポンサーの関係か知りませんが隣国推しが酷いです。日本人は、もうテレビを観て無いです

  5. 理系初老 より:

    オールドメディアでは得られず、ネットで得られるちょっとした情報:
    OFIPの重要な仲間オーストラリアの駐日大使が政権交代で変わりましたが、心配いりません。彼が長崎の式典に参加した時に立ち寄った福岡での様子です。
    https://pbs.twimg.com/media/FZeCB9EakAEjy_m?format=jpg&name=small

    1. 理系初老 より:

      オールドメディアでは得られず、ネットで得られる知りたい情報2,3:
      https://pbs.twimg.com/media/EiNQg8JVoAAtZux?format=jpg&name=large
      個人的一押し議員小野田氏の記念写真。菅さんもおひさしぶりです。
      https://twitter.com/i/status/1558649928485744640
      短い動画の最後の方、そうだ、マスゴミから逃げるのだ。

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