時事調査で内閣支持率5割下回る

選挙とは寂れた食堂街で「よりマシ」な店舗を選び、「酷い店舗」に食堂街から退去させる手続だと考えればよいでしょう。自民党食堂は安くもおいしくもありませんが、少なくとも毒物を提供する政党は国会から追放しなければなりません。こうしたなか、参院選に向けて、内閣支持率・政党支持率調査が少しずつ出そろってきました。

時事通信で内閣支持率が5割を割り込む

当ウェブサイトで「定点観測」している6つの内閣支持率・政党支持率調査(読売新聞、朝日新聞、共同通信、時事通信の4社の調査と、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)のうち、時事通信のものが、昨日出てきました。

内閣支持5割切る 物価高対応「評価せず」半数超―時事世論調査

―――2022年06月16日17時02分付 時事通信より

これとあわせて、先日は共同通信も世論調査結果を公表しているようです。

内閣支持率、4.6ポイント減の56.9%  共同通信調査

―――2022年6月13日 17:30付 日本経済新聞電子版より

さっそくですが、これをうけて先月から今月にかけての内閣支持率調査をまとめておきましょう(図表1)。

図表1 内閣支持率(2022年5月~6月)
メディアと調査日支持率不支持率
産経・FNN(5/21~22)68.9%(+3.0)24.6%(▲2.1)
朝日新聞(5/21~22)59.0%(+4.0)26.0%(▲3.0)
日経・テレ東(5/27~29)66.0%(+5.0)23.0%(▲4.0)
読売新聞(6/3~5)64.0%(+1.0)26.0%(+3.0)
時事通信(6/10~13)48.7%(▲2.1)22.0%(+2.8)
共同通信(6/11~13)56.9%(▲4.6)26.9%(+5.1)

(【出所】各社報道より著者作成)

記事タイトルにもあるとおり、時事通信の調査では支持率が48.7%で50%を割り込んでいます。また、共同通信の調査でも、支持率は前月比4.6ポイントも減り、6割を割り込みました。

「危険水域」とは到底言えない

ただ、だからといって岸田内閣の支持率が「危険水域」、というわけではありません。

まず時事通信に関しては、そもそも他メディアのものと比べ、低く出る傾向があります。また、時事通信の調査で岸田内閣の支持率が50%を超えていたのは、過去に1月と3月、4月、5月の4回のみです。

時事通信の記事のタイトルを読むと、単純に「物価で無策だから支持率が落ちた」という「因果関係」を短絡的に連想する人もいるかもしれません。単なる支持率調査から「岸田内閣が物価に無策であることに有権者が不満を持っている」という因果関係は証明できません。

相変わらず、なんともミスリーディングなタイトルです。

また、共同通信の調査でも、岸田内閣発足以来で見て支持率が6割を超えていたのは過去4回にすぎませんし、なにより、依然として内閣発足時点の支持率(55.7%)を上回っています。

当ウェブサイトとして「民間メディアが実施する内閣支持率調査が常に世論を正確に代弁している」とは思いませんが、少なくとも同じ基準で実施されている世論調査の過去実績に照らすならば、現時点の状況はまったく危険水域ではないのです。

政党支持率は相変わらず自民一強も、「維新・立憲」逆転は解消

なにより、政党支持率については相変わらずの「自民党一強」です。

図表2 政党支持率(2022年5月~6月、カッコ内は前回比)
メディアと調査日自民立憲維新
産経・FNN(5/21~22)40.5%(+3.2)5.5%(▲2.0)4.5%(▲2.0)
日経・テレ東(5/27~29)51.0%(+3.0)7.0%(±0)6.0%(▲1.0)
読売新聞(6/3~5)43.0%(+1.0)(不明)5.0%(+2.0)
時事通信(6/10~13)27.2%(▲2.3)3.9%(+1.2)3.1%(+0.1)

(【出所】各社報道より著者作成)

政党支持率については6種類揃っていませんが、その理由は、一部のメディアが政党支持率データを無料版ウェブサイトなどに公表していないからです。

それはともかくとして、どの調査で見ても、自民党に対する支持率が2ケタ台を維持している一方、最大野党である立憲民主党に対する支持率はヒトケタ台で低迷しています。

ただし、少し興味深い傾向があるとしたら、日本維新の会に対する支持率が息切れしてきたことです。昨年の衆院選直後だと、各メディアの調査で「維新>立憲」が常態化していましたが、少なくともここに列挙した4つの調査で見れば、「立憲>維新」の再逆転が生じているのです。

立憲民主党、ネット上では「脱糞」だの「焼肉」だの「最低でも店外」だのとするキーワードで「サジェスト汚染」がなされている状況ですが(『「最低でも店外」-自身で「見せ場」作った立憲民主党』等参照)、少なくともオールドメディアの調査では、いちおうは支持率で「野党最多」を回復している格好です(ヒトケタ台ですが)。

自民党圧勝ムードだが…

また、時事通信の調査によると、参院比例代表での投票先は、次のとおり、やはり自民党がトップです。

比例での投票先(時事通信・6月10~13日調査)
  • 自由民主党…37.5%
  • 立憲民主党…6.6%
  • 日本維新会…6.1%
  • 公 明 党…5.9%
  • 日本共産党…3.2%
  • 国民民主党…1.7%

ほかに「れいわ新選組」が0.9%、社民党が0.6%、NHK党が0.6%で、「投票しない・わからない」が35.1%だったそうです。

もっとも、実際の選挙では比例だけでなく選挙区での戦いもありますし、しかも参院では1人区が32選挙区も存在していますので、獲得議席の比率が上記のとおりになるわけではないでしょう。しかし、少なくとも比例だけで見れば、自民党は圧勝ムードです。

このあたり、自民党の和田政宗参議院議員あたりは、来月の参院通常選挙で自民党が苦戦することを警戒していますが(『和田政宗議員、「岩盤支持層の離反で自民苦戦」を予想』等参照)、メディアの調査と和田氏の懸念、いったいどちらが正しいのか、その結果が気になるところです。

こうしたなか、時事通信の世論調査で興味深い点がもうひとつあるとしたら、こんな記事でしょう。

反撃能力「必要」6割超 防衛費増額、5割近くが容認―時事世論調査

―――2022年06月16日17時02分付 時事通信より

これによると同じ世論調査で、自民党が提唱する「反撃能力」を「必要」と答えた割合が6割を超えたうえ、防衛費をめぐっても増額を容認する意見が5割近くに達したのだそうです。

とくに「反撃能力」をめぐっては、「必要」が自民支持層では7割を超え、公明支持層でも5割超に達し、また、立憲民主党支持層でも5割弱が、日本維新の会支持層に至っては8割近くが「必要」と答えたのだそうです。

このように考えていくと、かつての日本世論の「軍事アレルギー」も、ずいぶんと変わったものです。

個人的な意見ですが、こうした日本国民の意識の変化を促したのは、内外の情勢の変化です。とくに北朝鮮による核・ミサイル開発、ロシアによるウクライナ侵攻、中国による海洋進出といった危機的状況に加え、国内的にはオールドメディアの社会的影響力が著しく減退している、という事情もありそうです。

酷い店を食堂街から追放する

いずれにせよ、普段から当ウェブサイトで申し上げているとおり、私たち有権者は、選挙では必ず投票しなければなりません。なぜなら、投票することが、社会をより良い方向に変革するうえで最も近道だからです。

選挙というのは、寂れた食堂街にある食堂を応援するようなものだと考えればよいでしょう。

「日本商店街」の食堂は「自民党食堂」、「立憲民主党食堂」、「日本維新の会食堂」、「公明党食堂」、「日本共産党食堂」などに加え、今回の参院選でも「新規開店」する食堂がいくつか参戦してくるようです。

「自民党食堂は高いし不味いし出てくるのも遅い」。

これは、まったくそのとおりです。

ですが、「立憲民主党食堂」に入っても料理は出てきませんし、メニューに書いてあるのは隣の「自民党食堂」の悪口ばかりであり、ウェイターは注文すら聞いてくれません。「日本共産党食堂」に入ると、出てくるのは料理でなく毒物です。

そのように考えていくと、まずは、誰も入店しないことを通じて「最も酷い食堂」を食堂街から退場させることを優先すべきでしょう。もしかしたら、その跡地にもう少しマシな食堂が進出するかもしれません。

その意味では、この参院選も、私たち国民は「日本の主権者」、「主人公」として、貴重な一票の権利を熟考して使用すべきであることは間違いないのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 通りすがり より:

    最初に内閣支持率50%割れが出てくるのは絶対時事通信だと確信してましたwww
    それでも各社が恣意的に下駄を履かせているんじゃないかとまだ疑っていますが。
    何もしなければ失態しない、がモットーでも時間と共に確実に綻びが出てくる。
    未成年飲酒もその一つだし、離党だけで済ませようとした事後の対応のマズさもこれに拍車を掛けている。
    記録的な円安も真実を報じれば取るに足らないことだが、円安は悪であると懸命に刷り込もうとしているマスゴミさん、岸田を蹴落としたいのか守りたいのかどっち?w

  2. 舎人(とねり) より:

    選挙にむけて、既存マスコミの調査では、どんどん支持率が低下してくるのではないでしょうか。これまでは既存マスコミが相当に数字を盛っていたんだと思います。

    ただ数字を盛ったままでいると、与党が選挙に負けた時に
    「既存マスコミの支持率調査は全く当てにならない」ということになってしまうので徐々に軌道修正しているんだと思います。

    ツイッターなどのSNSの調査や和田議員の見方を踏まえると、おそらく
    岸田政権はこれで終わりでしょう。既存野党も伸びは期待できず、新党が議席とるとみます。

    1. 引きこもり中年 より:

      舎人(とねり)さま
      >「既存マスコミの支持率調査は全く当てにならない」ということになってしまうので徐々に軌道修正しているんだと思います。
       マスゴミの事前予測では、自民党大敗のはずが、実際は自民党が大勝しても、「既存マスコミの支持率調査は全く当てにならない」になるのではないでしょうか。

  3. 引きこもり中年 より:

    独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (というより、所詮、素人考えなので)
    本日の朝日新聞のインタビュー記事で、「岸田総理が支持されているのは「安心、安全、安定(不変)」感を国民に与えているからだ(意訳)」とありましたが、だとすれば、不変が安心、安全につながらなくなったら、岸田総理の支持率も下がるのでしょうか。(もちろん、前と全く同じという訳にはいきませんから、変えるべきところは変えるべきですが、それを実質は変わらないと見せることも必要でしょう)
    もし、立憲が議席を伸ばすためには、(自民党は現状維持でよいのですから)「変わらなければ、安心、安全は得られない」と訴えるしかないのでしょう。もちろん、「変わることで安心、安全が得られる」と国民が納得しなければなりませんし、変わった結果、立憲の中に変化についてこれない人が出てきますが。
    駄文にて失礼しました。

  4. マスオ より:

    まぁ、メディアとしては、岸田を擁護したい反面、あまり自民党が勝ちすぎるのも阻止したいという感じじゃないですかね。
    メディアとして、正しい投票判断材料になるような公正な報道を望みますがね。
    マァムリダナ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ

    1. 通りすがり より:

      メディアは果たして「岸田を擁護したい」んでしょうかね?
      どうも私はそうではないんじゃないかと思えてなりません。自民が勝ちすぎるのを阻止したい考えは当然あるとは思いますが。

      これも素人考えなので異論はいくらでもありだと思いますが、基本的に何もしない、提言があっても検討するフリだけの岸田内閣はマスゴミにとっては御しやすく彼らが危惧する方向へ直ちに国家運営の舵取りをするような政権ではない、とタカを括っていると思われます。
      もしマスゴミがいつもの調子で岸田内閣を攻撃した結果内閣支持率が急転直下、直近の選挙で自民党が議席を減らすなどで引責し短命政権となり、当然の帰結として安倍元総理の再登板や高市総裁の誕生を招くことになった場合を何よりも危惧しているのではないでしょうか。

      立件共産党や日本共産党が国民の大きな支持を以て政権を奪取することは現状一切考えられない以上、波風の立たない自民政権ならまだまし、と考えているのではないかと思います。
      自民政権はクソだが、クソはクソでもよりマシなクソに留めおこう、と。

      ただ先日の青山議員の申し入れに対する岸田総理の発言を見るにつけ、その本気度によっては今後マスゴミの方針が変化しそうな気もします。この岸田総理の発言もいつもの「検討使」的発言のひとつなのかも知れませんがw

  5. ちょっと待って より:

    支持率が高くても選挙に圧倒的に勝つとは限らないと思う。
    選挙に行かない人が多いから。
    >>「自民党食堂は高いし不味いし出てくるのも遅い」。
    と感じるのは、働いている世代が多いのではないか。

    現在ロシア艦が千葉県沖を南下、中国は津軽海峡通過、こういうニュースって自民党に追い風だよな。
    日本人は不安感に弱いから。
    憲法改正を出来る政党を選んでいかなくてはいけないと思う。
    戦うか戦わないかの選択肢さえない今の状況は主権が無いのと同じ。

    1. 匿名 より:

      日本人はーてアホか
      日本人を差別するレイシストは日本にいらない
      データも示さず上から目線で何様だ?立憲やマスコミとあなたは変わらんわ

      1. 匿名 より:

        お前もな

  6. 一之介 より:

    日本維新の会の支持率が落ちてきた原因の一端は、ロシアのウクライナ侵略に対する橋下宗男さんの論調がすくなからず影響していると思います。また党としての選択的夫婦別姓の考え方に違和感を持つ保守層の方も多いかもしれませんね。と、勝手に推察します。残念ながら日本では、安心して政権を任せられる2大政党(制)にはまだまだなり得ない。とりあえず選挙毎に、自民党宏池会を絶滅に追い込むことで国益の最大化を図りましょう。立憲共産党、社民党、他烏合の党は自然と絶滅していきますから。

  7. 迷王星 より:

    いつも興味深い記事を有難うございます.

    >まずは、誰も入店しないことを通じて「最も酷い食堂」を食堂街から退場させることを優先すべきでしょう。もしかしたら、その跡地にもう少しマシな食堂が進出するかもしれません。

    なるほど,この政党や政治家を食堂に喩える喩えを敷衍すると,いわゆる「マスゴミ」の近年の凋落ぶりも,グルメサイトが自らの利益目的で恣意的にレーティングを操作して実態とかけ離れたレーティングを表示したりしていれば,次第に利用者からの信頼を失って相手にされなくなって来るのに相当する訳ですね.

    つい先日も某有名グルメサイトがレーティングアルゴリズムを恣意的に変更したことは違法だという司法の判断が下されましたが,グルメならぬ政策のレーティングサイトと呼ぶべき新聞やテレビニュース報道が十余年前のような自らの思惑の実現のために実態とかけ離れたレーティングで食中毒を平気で出す(実際,十余年前の民主党食堂は日本の産業を瀕死の状態にまで追い込む大変な食中りを出し続けた)食堂に客=国民を強引に誘導するような真似を続ければ続けるほど(今も相変わらず理解不能なレーティングを続けてますが),ますますインターネットを駆使して様々な経路で情報を入手し自分で判断する若い顧客からの信用を失い続けることになるという訳ですね.

    迂闊なことに政党・政治家食堂論という比喩がこういう広がりを持つとは今まで気づきませんでした.良い視点を与えて頂き有難うございました.

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