日本経済の足を引っ張る「鉱物性燃料」の輸入額の急増

鉱物性燃料の輸入額が急増しています。先週金曜日に財務省税関が公表した『普通貿易統計』によると、今年1月から4月までの4ヵ月間で鉱物性燃料の輸入額は8兆8717億円であり、前年同期の4兆6979億円と比べてじつに倍増です。また、気になるロシアからの輸入額についても同様に倍増しています。原発再稼働は電力の安定供給だけでなく、鉱物性燃料の輸入額を減らすことで貿易収支を劇的に改善するのに加え、ロシアからの輸入を減らすという効果が期待できるのです。

貿易統計と鉱物性燃料

貿易相手国・上位10ヵ国

鉱物性燃料の輸入額が増えています。

財務省税関は毎月、『普通貿易統計』と呼ばれる統計データを公表しているのですが、貿易相手国の「顔ぶれ」に変化の兆しが出ているのです。まずは、「ファクトチェック」をしておきましょう。

図表1は、2022年1月から4月までの4ヵ月間における貿易額(輸出額+輸入額)が大きい順番に10ヵ国を並べたものです

図表1 日本にとっての貿易相手国(2022年1-4月)
相手国貿易額備考
1位:中国13兆0197億円(輸出:5兆8148億円、輸入:7兆2049億円)
2位:米国8兆8640億円(輸出:5兆4187億円、輸入:3兆4453億円)
3位:韓国3兆6120億円(輸出:2兆2887億円、輸入:1兆3233億円)
4位:台湾3兆5943億円(輸出:2兆1521億円、輸入:1兆4422億円)
5位:豪州3兆4781億円(輸出:6625億円、輸入:2兆8157億円)
6位:タイ2兆3939億円(輸出:1兆3206億円、輸入:1兆0733億円)
7位:サウジアラビア1兆7777億円(輸出:1910億円、輸入:1兆5867億円)
8位:UAE1兆7652億円(輸出:3228億円、輸入:1兆4424億円)
9位:ドイツ1兆7378億円(輸出:7940億円、輸入:9439億円)
10位:ベトナム1兆7104億円(輸出:7257億円、輸入:9847億円)
その他22兆3050億円(輸出:10兆3665億円、輸入:11兆9385億円)
合計64兆2582億円(輸出:30兆0574億円、輸入:34兆2008億円)

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

前年同期の上位10ヵ国

比較のため、前年同期、つまり2021年1月から4月までの4ヵ月間のデータで同じ図表を作成してみると、その違いがよくわかります(図表2)。

図表2 日本にとっての貿易相手国(2021年1-4月)
相手国貿易額備考
1位:中国12兆1352億円(輸出:5兆6240億円、輸入:6兆5111億円)
2位:米国7兆3561億円(輸出:4兆6090億円、輸入:2兆7471億円)
3位:韓国2兆9544億円(輸出:1兆8663億円、輸入:1兆0881億円)
4位:台湾2兆8931億円(輸出:1兆8105億円、輸入:1兆0827億円)
5位:タイ2兆1092億円(輸出:1兆1634億円、輸入:9459億円)
6位:豪州2兆0367億円(輸出:5711億円、輸入:1兆4656億円)
7位:ドイツ1兆5730億円(輸出:7251億円、輸入:8479億円)
8位:ベトナム1兆5104億円(輸出:6593億円、輸入:8511億円)
9位:マレーシア1兆2916億円(輸出:5800億円、輸入:7116億円)
10位:香港1兆2395億円(輸出:1兆1994億円、輸入:401億円)
その他17兆0015億円(輸出:7兆5677億円、輸入:9兆4338億円)
合計52兆1006億円(輸出:26兆3757億円、輸入:25兆7249億円)

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

貿易相手国ランキングが入れ替わった!

図表1、図表2の2枚を眺めていて、気付くポイントは、2つあります。

ひとつは、2021年1-4月期においては、輸出額が26兆3757億円と輸入額25兆7249億円を上回っており、小幅ながらもいちおうは貿易黒字を計上していたのに対し、2022年1-4月期においては輸出が30兆0574億円、輸入が34兆2008億円で、4兆円を超える貿易赤字に陥っていること。

そしてもうひとつは、上位4ヵ国(中国、米国、韓国、台湾)を除くと、貿易相手国が入れ替わっていることです。

2021年と2022年を比較したときのランキングの変動
  • タイ…5位→6位に転落
  • 豪州…6位→5位に上昇
  • ドイツ…7位→9位に転落
  • ベトナム…8位→10位に転落
  • マレーシア…9位→ランク外(12位)に転落
  • 香港…10位→ランク外(13位)に転落
  • サウジアラビア…ランク外(12位)→7位に上昇
  • UAE…ランク外(14位)→8位に上昇

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

ざっくりとした傾向があるとしたら、資源国ないし産油国のランキングが上昇し、製造立国などのランキングが低下した、といったところだと思いますが、通常、ここまで大きな変動はめったに見られません。やはり、原油価格などの高騰の影響もあり、鉱物性燃料(石油、石炭、天然ガスなど)の輸入が相当に増えたと見るべきでしょう。

鉱物性燃料の輸入状況

ここで、毎月の輸入額について、鉱物性燃料(A)とそれ以外(B)に分け、それらの金額を左軸に、鉱物性燃料が輸入全体に占める割合【A÷(A+B)】を右軸にしてグラフ化してみたものが、図表3です。

図表3 鉱物性燃料の輸入状況

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

いかがでしょうか。

明らかに、鉱物性燃料の輸入額、日本の総輸入に占める割合については、いずれもここ数ヵ月で顕著に伸びていることがわかるでしょう。

鉱物性燃料が貿易収支の足を引っ張っている!

しかも、2022年4月において、鉱物性燃料の輸入額は2.53兆円で、日本の輸入総額に占める割合も39.56%と4割近くにまで達しています。図表3に示した期間で最も低かった2020年6月の0.62兆円(同13.77%)と比べて、金額では4倍、シェアでも3倍近くに増えた計算です。

鉱物性燃料の輸入額を、貿易収支とも比較しておきましょう(図表4)。

図表4 鉱物性燃料の輸入額と貿易収支の状況

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

この図表4は、貿易収支(折れ線。ただし便宜上、ここでは「輸出額-輸入額」として計算しています)と鉱物性燃料(縦棒)を比較したものですが、「鉱物性燃料」の輸入額が貿易赤字の主要因のひとつであることが大変によくわかるのではないでしょうか。

もし鉱物性燃料の輸入額が半額だったら…?

「もしも」の議論として「鉱物性燃料の輸入額が現実の半額だった」と仮定すると、貿易収支はどう変わるのかを赤線で示したものが、図表5です。

図表5 鉱物性燃料の輸入額と貿易収支

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

仮に鉱物性燃料の輸入額が半額だったとしても、2019年1月、2020年1月、2020年5月、2022年1月の4つの月については貿易収支が赤字に転落してしまいますが、それ以外の月に関しては貿易黒字基調を維持していたことがわかります。

鉱物性燃料輸入相手の上位10ヵ国

一方で、鉱物性燃料に限って、この2022年1-4月期にどの国から輸入していたのかについて調べてみると、上位順に豪州、サウジアラビア、UAE、米国、カタールなどが並んでいます。これを2021年1-4月期と比較しておきましょう(図表6)。

図表6 鉱物性燃料の輸入相手国(1-4月期、2022年と21年の比較)
相手国2022年2021年
1位:豪州2兆0696億円8503億円
2位:サウジアラビア1兆5337億円8434億円
3位:UAE1兆3642億円6538億円
4位:米国5824億円4669億円
5位:カタール5309億円3878億円
6位:ロシア5180億円2367億円
7位:インドネシア3763億円1212億円
8位:クウェート3457億円2014億円
9位:マレーシア3432億円1978億円
10位:韓国1973億円1564億円
その他1兆0106億円5820億円
合計8兆8717億円4兆6979億円

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

いかがでしょうか。

ざっくり倍増、といったところであり、国によっては倍増以上の増加を示しているケースもあります。

ロシアからの輸入を減らすには?

しかも、ロシアからの鉱物性燃料の輸入額についても倍増しています。

つまり、今年1月から4月までの4ヵ月間だけで、ロシアから5180億円も鉱物性燃料を入している、ということであり、これを「由々しき問題」といわずして、どういえば良いのか、という気がする次第です。

いずれにせよ、日本が原発再稼働などを通じて安定電源を確保すれば、①鉱物性燃料の輸入を減らすことを通じて貿易収支を改善することができる、②ロシアからのエネルギーの輸入を減らすことができる(かもしれない)、③電力不安が解消する、といった具合に、経済への効果は抜群です。

ただ、ロシアからの鉱物性燃料の輸入については、その半額近くが液化天然ガス(LNG)であり、とくに(岸田文雄首相のおひざ元でもある)広島ガスは樺太沖の「サハリン2」から年間約20万トンを調達しています。

広島ガス、LNG相互融通の協定先拡大 サハリン2、現時点で影響なし

―――2022年05月11日17時04分付 時事通信より

やはり短期的にはにはロシアからのガスなどの輸入を減らすというのも難しいという事情もあり、悩ましいところではあります。いずれにせよ、改めて貿易統計という事実を突き付けられれば、原発再稼働は待ったなしであるように思えるのですが、いかがでしょうか。

読者コメント一覧

  1. sey g より:

    一時期、石油がかなり安くなり 原子力発電より火力の方がトータルで安いので 原子力は無駄だという論がありました。

    戦後すぐの政治家は 石油の輸入量を減らすため 原子力発電所の増設をしました。
    短期的でなく長期的戦略によるものです。

    東電の事故があったにせよ 鉱物資源のない日本で原子力発電所をなくすのは無理があります。

    あの事故から10年以上経ち 原子力発電所を無くすための努力ではなく、何があっても事故を起こさない努力をすへきところを、あの委員会は、、、。

    政治家は決断すべきです。
    原子力をなくし、鉱物資源の輸入で生活水準を下げていくか?
    それとも、安全な原子力でさらなる経済発展をとげるか?

    原子力をなくして、経済発展は 資源のない日本では難しい事を説明すべきです。

  2. 引っ掛かったオタク より:

    千島列島及び南樺太を返還させ、北樺太は長年北方領土不法占拠を続けたことに対する賠償として割譲させる!
    くらいの勢いは要りそうです。
    なんせ連中の中では既に北海道はロシア領らしいですから。
    サハリンだって明治初期まではロシア人皆無が急に入植始めたのにアイヌもロシア人扱いとは…

  3. namuny より:

    もし原子力発電がもっと多くて石油等の輸入額が少なければ、その分円高になっていただけです。
    利益を発電業者と輸入業者が得るか、輸出業者が得るか、の違いしかありません。
    (日本の海外資産が多くて破綻することがあり得ないので)
    月当たりの輸出入額がそれぞれ7~8兆円、年間各100兆円弱に対して
    グラフから月当たり0.5~1兆円の石油系の赤字分、つまり、約1割なので為替が1割円安側に動く効果があった、というだけと思います。

    90年代から今まで、米国ではおよそ2倍のインフレが発生しているので、物価ベースで考えるなら、本来の為替は1ドル60円くらいが正しいはずです。でも、もしそんなであれば国内の製造業は壊滅でしょう。
    (民主党政権時代の異常円高は、実は異常ではなく、為替を放置した際の本来の円高)
    逆に、今中国に外注する際に、コストが日本国内とトントンになる為替は125円程度だそうで、ついにこれを超えたということも言えます。

    つまり、黒田さんが中国などののコストが上がるまでひたすら頑張って異次元緩和をし、石油を輸入して円安誘導をなりふり構わず行ったので日本の製造業が守られたという側面も少なからずあったと思っています。
    原発は、中国のコストが追い付いてきたということで、必要に応じて、円高が進みすぎないように適正に再起動していくのが正解だと考えています。

    1. 匿名 より:

      石油系の赤字は為替よりも資源高によるものの方が大きいので。為替だけなら輸出と相殺されると思います。日本が資源をがぶ飲みするのをやめればその分価格も下がるか、他国が購入先を選ぶ余地を残すこともできる。それに加え二酸化炭素排出量削減という名分も立ちますしね。国際貢献や環境保護を名分にされている方々は特に原発再稼働に力を入れるべきかと。

  4. sqsq より:

    1970年代のオイルショックで石油が高くなり、燃費のいい日本車の米国への輸出が大きく伸びた。
    今度の鉱物性燃料の価格高騰で何が起こるのだろう。

  5. 古いほうの愛読者 より:

    鉱物性燃料輸入より,iPhone輸入のほうに問題を感じています。
    売れるスマホが日本で作れない,という意味で。

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