「デジタルファースト」掲げ経営改革に踏み込むBBC

BBC改革は進みます。デジタルファーストを掛け声に、一部チャンネルをオンライン化するなどして、今後数年で5億ポンドを節約し、あわせて最大1000人の人員も削減する方針を示したのだとか。高い倫理観と使命感を持ち、国民に対してライセンスフィーの使途を巡り納得できるような説明責任を果たそうと努力する。どこかの国の自称公共放送とは大違いですね。

英国の「公共放送」であるBBCを巡って、またしても興味深い話題が出てきました。

BBCは26日、「デジタルファースト」を掛け声に、経費節減などを目的として一部のチャンネルをオンライン化し、あわせて今後数年で最大1000人の人員を削減するとの方針を公表したそうです。

フィナンシャルタイムズを含めた複数の外国メディア(とくに英国メディア)が本件についてが報じていますが、ここではロイターの記事を参考に取り上げておきましょう。

Britain’s BBC moves channels online to cut costs

―――2022/05/27 3:25 GMT+9付 ロイターより

ロイターによると、BBCが得る「ライセンス収入」については、今後2年間は凍結されていて、その後4年間はインフレ率に連動して変動する、などと指摘。あわせて今回の「デジタルファースト」計画は、ライセンス収入の不足(2億ポンド)とビデオオンデマンドの開発(3億ポンド)を捻出するものだ、などとしています。

このあたり、なかなかに興味深い動きです。

そういえば、『BBC受信料廃止の可能性高まる:NHKに議論波及?』でも触れたとおり、英国では現在、2027年まで存続が保証されている「年間159ポンドのライセンスフィー」を巡って、その存廃が議論されているそうです。

今回のBBCの動きも、ライセンスフィーそのものの存廃を含めた将来的な不確実性に備えるために、講じた「先手」に見えます。

ロイターによれば、BBCを巡っては(動物学者の)デビッド・アッテンボロー氏が製作に関与した番組などを含めた、質の高いニューズ番組、ドラマ、ドキュメンタリー番組で「世界から高い称賛を受けている」反面、「ロンドンを中心とした都市的な視点に偏っている」などの批判もあるそうです。

いずれにせよ、BBCのライセンスフィー制度が存続するかどうかは英国民の選択でしょうし、もしかするとBBCはNetflixなどのネット配信事業者のビジネスモデルを取り入れつつ、公共放送と商業放送の中間的な存在として存続を目指すつもりなのかもしれません。

ただ、こうした議論を眺めていると、やはり納得がいかないのが、日本の制度です。

日本の場合、言わずと知れた「自称公共放送」であるNHKが、放送法(第64条第1項本文)の規定をタテに、テレビを設置したすべての視聴者に対し受信契約を(なかば強引に)迫り、事実上、半強制的に受信料を取り立てています。

放送法第64条第1項本文

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

放送法にこのような規定が設けられていることを正当化する根拠とは、「NHKは公共放送だ」、とするものですが、果たしてNHK自身が公共性の高いコンテンツ、高品質なコンテンツを流しているのかどうかという点もさることながら、それを私たち一般国民が検証する手段を持っていない点は大きな問題でしょう。

そもそもNHKは職員1人あたり1600万円近い人件費を計上するなどの乱脈経営を続けており、また、受信料収入を大いに余らせ、金融資産だけで、年金資産を含めて1.1兆円を超える金額を連結集団内に蓄え込んでいます。

仮に営利法人ならば、職員にいくら支払おうが、剰余金をいくら溜め込もうが自由ですが、NHKは「非営利法人」であるはず。そうであるならば、少なくとも職員に対する待遇は国家公務員並みに引き下げるのが筋でしょうし、金融資産を1.1兆円も溜め込めるほどの受信料水準も正当化できません。

また、もしもNHKが非営利法人ではなく営利法人だと言い張るのならば、そもそも法律で受信契約締結義務を課すのはおかしな話です。我々国民は「消費者」として、営利法人に対しては「倒産させる自由」を持たなければならないからです。

このように考えていくと、BBCとNHKは、表面的にはライセンスフィーないし受信料で存続しているという点は似ていますが、公共放送としての高い使命感と倫理観を持ち、つねに国民に対してライセンスフィー・受信料の使い道を説明しているかどうか、という点においては、天地の差があります。

残念ながら、『NHKが文化遺産「熊野古道」破壊=必要な許可を得ず』を含め、これまでに当ウェブサイトでも取り上げてきたとおり、NHKという組織には高い倫理観どころか、社会に対する説明責任を果たそうとする姿勢すら存在しない、と結論付けざるを得ないのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. わんわん より:

    BBCに続き
    フランスで公共放送受信料の撤廃へ、マクロン大統領が選挙時の公約果たす – SAKISIRU(サキシル)
    https://sakisiru.jp/27604
     NHKと総務省がどう動くか?
    たのしみです

    1. 元ジェネラリスト より:

      ふつうに、「黙殺」だと思いますけど。(笑)
      マスコミからそんな質問はないでしょうから、誰からも聞かれない。
      小野田紀美議員あたりからなら、質問は飛ぶかも知れませんが、誰も報じないでしょう。

      全然違う話題で恐縮ですが、彼女、参院選は公明の推薦を蹴るそうです。

  2. クネニョン より:

    BBCのドキュメンタリー等のコンテンツが世界的に高い評価を受けているのは有名ですが、我がNHKも軍艦島や731部隊などを扱ったドキュメンタリー調のファンタジードラマが中国や韓国で高評価されてるようですよ
    どういう経路で視聴されてるのか知りませんが

  3. SY より:

    これは興味深い記事ですね。

    20年位前は自己完結型とかの自己責任の自由奔放をやらせて頂きましたが、会社組織(コンプライアンス)としては大問題でしたね(大笑)。 米国が好き勝手に、自己責任起業家ブームをはじめたのですよ。(対日ですね) LTCM(?)とかその他イロイロ時価総額BEST10の企業がアッという間に消滅しましたね。 そういう意味では、軍事大国⁺詐欺大国、アメリカ。

     

    1. 福岡在住者 より:

      続き、(投稿間違え)の福岡在住者です。 続き

      上記のインチキ(詐欺)を支えたのが、TV等のマスメディアだったのではないでしょうか? そのウソが通用しなくなり今の「資金難」に繋がり「お役御免」? イヤイヤ 高給取り1000人雇うより「ネット情報者+有能管理者」を雇う方が利益拡大なのでしょうか? 企業としては当然ですが、場当たり的でないことに期待(失笑)します。

      昔のやり方では、もう国民は騙されない時代に近づきつつありますが、ネット世界も・・・。
      フィナンシャルタイムズは日経傘下なのですよね・・・。 ネット記事でも最近、少し前「韓国新聞系ネット記事発、ロイター経由、日本新聞系」ネット・飛ばし記事とかがありましたね。

       

  4. んん より:

    かつて年金が恣意的に運用され
    煙のごとく原資減らして
    本来の運用だけに用いるようになった
    (ちょっと遅すぎたかもね)
    犬HKも公共放送名乗るなら
    集めた銭っこは番組制作だけに使うべきですね

  5. sqsq より:

    NHKには政治家(与野党問わず)の子弟がたくさん在籍しているらしい。
    これが改革できない理由かも。

  6. 普通の日本人 より:

    返す返すも残念なのはN国党。
    選挙であれ程の支持を受けながら迷走に次ぐ迷走」。
    本当に忸怩たる重いです。
    他力本願ですがだれか新たにNHK廃止一本で出てこないかな

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