佐渡金山の世界遺産登録に委員国の約半数が「前向き」

日本政府が目指している佐渡金山の世界遺産登録は、単なる世界遺産の話に留まらず、日韓関係を「国際基準」にアップグレードするうえで非常に重要な試金石でもあります。こうしたなか、佐渡金山の地元・新潟県のメディアは先週、ユネスコ世界遺産の委員国21ヵ国のうち、約半数が佐渡金山の世界遺産登録に向けて前向きな反応を示しているとする話題が取り上げられていました。

世界遺産登録の「3つのポイント」

ロシアによるウクライナ侵攻が発生してしまったためでしょうか、それとも韓国で大統領選があったためでしょうか、

「佐渡金山の世界遺産登録を韓国が阻止しようとしている」、とする話題については、最近、あまり見かけなくなった気がします。

ただ、これは相対的に報じられることが減っているというだけのことに過ぎず、引き続き、佐渡金山の世界遺産登録という課題がなくなったわけではないことは間違いありません。

この点、『やるなら徹底的に:佐渡金山登録を巡る3つのポイント』などで指摘してきたとおり、注意しなければならないポイントは、3つあります。①ファクト(事実関係)をベースにすること、②(韓国に対して、ではなく、)「全世界に対して」説明すること、③その過程で、相手国のウソについては徹底的に粉砕すること、です。

(※なお、この「3つのポイント」は、べつに今回の世界遺産登録に限らず、対韓外交全体において、すべてに当てはまることでもあります。)

結局は「2つの本質的問題」にぶち当たる

このあたり、韓国政府・メディアなどが佐渡金山の世界遺産登録に反対している言い分は、この施設で戦時中、朝鮮人の違法な強制労働が行われたからだ、とするものです。

「違法な強制労働がなされていた」ことが世界遺産登録を阻止する理由になるかどうか、という点もさることながら、そもそも韓国が主張する「違法な強制労働」とやらが歴史的事実なのかどうか、といった点を突き詰めていくと、どうも韓国側の主張にはかなりの無理がありそうです。

ただ、そもそも韓国が主張する「歴史問題」というものは、結局のところ、本質的には次の2つの特徴の少なくとも1つを有しています。

日韓歴史問題の2つの特徴
  1. 日韓間の請求権に関するあらゆる問題は、1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みであり、韓国が歴史問題を主張することは、この請求権協定に反する状態を創り出そうとするものである
  2. 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである

(【出所】著者作成)

「佐渡金山の世界遺産登録阻止」に関しては、②の特徴、すなわち「事実ではない内容をでっち上げて日本を貶める」という視点では、韓国が主張する「いつもの歴史問題」とまったく同じであると考えて良いでしょう。

ただし、日韓請求権協定破りなどが関わらないという点においては、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題ほど複雑ではありません。日本政府が本腰を入れて、「客観的な事実関係」を国際社会に対して淡々と説明すれば済む話だからです。

だいいち、『佐渡金山の世界遺産登録を巡って日本に「3つの朗報」』などでも述べたとおり、政治、宗教、歴史などを理由として世界遺産登録が取り消された事例がないことについては、韓国メディア自身も報じているところでもあります。

新潟日報「佐渡金山に半数が前向き反応」

その意味では、日本政府が「普通に頑張れば」、世界遺産登録は成功する可能性が非常に高いと考えて良いと思う次第ですが、これに「続報」がありました。新潟日報に先週、こんな記事が掲載されていたのです。

佐渡金山に前向き反応 ユネスコ委員国の半数

―――2022/4/8 20:45付 新潟日報デジタルプラスより

新潟日報によると、自民党が8日に党本部で開いた政務調査会の合同会議で、外務省がユネスコ委員国21ヵ国への働きかけ状況を説明。「これまで約半数の国から反応があり」、「現時点で否定的な意見はない」と述べたのだそうです。

この点、世界遺産登録は一般に、委員国21ヵ国の全会一致で承認されるそうですが、規定上は3分の2の賛成があれば承認されます。現時点において楽観視すべきではないものの、新潟日報の報道が正しければ、少なくとも「3分の2の賛成はとうてい得られない状況」ではなさそうです。

世界遺産登録は日韓関係の将来の試金石

ところで、この話題を当ウェブサイトで取り上げると、「世界遺産登録などのくだらない話を話題に取り上げるな」、「こんなことに貴重な外交リソースを割くのはおかしい」、といったコメントが寄せられることもあります。

しかし、当ウェブサイトでは、この件を「くだらない話題」とは考えていません。むしろ、日韓関係の今後を方向付けるという意味では、大変に重要な話題である、とすら考えています。

「韓国政府が難癖をつけて日本政府の行動を阻止しようとしたにも関わらず、日本政府がその難癖を相手にせず、(韓国ではなく)世界各国に対して説明を試みた」という意味では、「密室ベースで話し合う」という、これまでの「悪しき日韓関係」の前例が崩れたもうひとつの事例となるからです。

もちろん、世界遺産登録が成功するに越したことはありませんが、万が一、韓国の妨害活動によってこれが失敗に終わったとしても、「日本が韓国に配慮しなくなった」、「日韓関係の特殊性(※)を考慮しなくなった」という点では、大変に良い事例と言わざるを得ないからです。

(※もっとも、特殊なのは「日韓関係」ではなく「韓国」なのかもしれませんが…。)

その意味では、「密室ベースで韓国の理不尽な価値観に配慮する」という古き悪しき外交から、「公開ベースで韓国の理不尽な価値観を世界的な基準に照らして評価する」という意味で、日韓関係を「国際基準」にアップグレードする非常に重要な試金石でもあるのです。

オマケ:現政権は次期政権に難題を押し付けている?

なお、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は、あと1ヵ月後には青瓦台(韓国大統領府)を去り、尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏にその座を譲ります。

ちなみに、今朝の『鈴置論考「保守政権で米韓関係はむしろ構造的に悪化」』でも触れたとおり、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が、現政権が次期政権を混乱させる目的でさまざまな妨害活動を行っている可能性に言及しています。

最近、韓国政府からは、「CPTPPへの参加申請書を提出する」などの動きも出ていますが、これはおそらく、あと1ヵ月で次期政権に残す政策課題を積み上げることで国政を混乱させ、次期政権の妨害をするためではないか、と考えると、スッキリと説明ができます。

このように考えていくと、「佐渡金山の世界遺産登録妨害」も、現政権が次期政権に残す「トラップ」という性質もあるのかもしれない、と思う次第です。

(※なお、「韓国の現政権が次期政権を妨害するために難題を押し付けようとしている」とする話題については、近日中に、別稿にて是非議論したいと考えています。)

読者コメント一覧

  1. sey g より:

    この件を取り上げるなというコメントに対して、疑問があります。

    自分と会計士様とは別人格、別の人間です。
    他人に希望を要求する権利をそのコメント主は有しているのでしょうか?
    無料のブログが気に入らなければ、見なければいいだけの話。
    あの件で話せとか、この件は話すなとか それは会計士様の自由で、こちらがどうこうできる話ではないと思うのです。
    何故、彼等は自分の要求を押し付けるのか?
    その理由が謎です。

  2. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    江戸時代の佐渡金山は強制労働の代名詞だから
    そんなのを国際的な遺産として宣伝しないで欲しい

    1. 匿名 より:

      バシラス・アンシラシスは土壌常在菌は煽りコメントの代名詞だから
      そんなのをコメント欄に残さないでほしい

      1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

        ドサ回りという言葉があるくらいで
        江戸時代は佐渡と言えば強制労働の代名詞

    2. 農民 より:

       かのヴェルサイユ宮殿の建設労働者も、過酷な環境で死者が多発したようですよ。トイレの水がないとか今で言えばムダなハコモノだとか、ケチのつけどころはいくらでも。現代の価値観のキレイキタナイなどで分けるのは文化に対する理解や関心が足りないのではないでしょうか。偉大な指導者の号令で奴隷を動員して造られた貴重な人類の財産、いくらでもありませんか?仮に恥だとしても、確として存在するものを今隠しても何にもなりません。「キレイナ文化の発表会」など、面白みが無さそう。
       ピラミッド建造なんかは、週休病欠完備で酒まで飲めたとか聞いたことがありますが。そういった知識の広がりこそが重要に思えます。
       個人的にはロシアの踊り子がウクライナの踊り子に改題されたこと(のタイミング)にすら違和感を覚えます。被写体がウクライナ人であることが確実視されているので妥当ですが。

  3. HNわすれた より:

    「くだらない」ことかもしれませんが、仏像を盗んでいって、盗まれたお寺に人形をもってきて「これでいいだろう」といってきた韓国のお坊さんには魂消ました。韓国では民衆はもとよりですが宗教家までアレなんですね。 あの仏像が返されるまでお付き合いするべきではありません。

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