G7に豪州・インド・南アフリカでG10結成しては?

ジャネット・イエレン米財務長官が議会証言で、「ロシアが参加するならG20をボイコットする」という可能性を示唆したそうです。大変興味深い話題です。ただ、そもそもG20自体が形骸か著しいことを思い起こすならば、いっそのことG20からG7諸国などが脱退し、あらためて「G7(日米英仏独伊加)」に豪州、南アフリカ、インドの3ヵ国を加えた「G10」を結成した方が現実的ではないかと思います。

ちょっと無理がある「G20」

当ウェブサイトでは以前から、「G20は形骸化が激しいのではないか」と述べてきました。

その理由は、G20参加国を見れば、なんとなく見えてきます。

G20参加国
  • G7=日米英仏独伊加
  • 欧州連合(EU)
  • アルゼンチン、豪州、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、南アフリカ、サウジアラビア、トルコの各国

この点、G7は基本的価値を共有している国々であり、その中核には「自由、民主主義、法の支配、人権」などが据えられています。また、欧州連合(EU)加盟国もG7に準じ、こうした基本的価値を共有しています(※)。

※ただし、最近ではハンガリーが「法の支配」をないがしろにしているとして、EUの予算配分の中止手続が講じられたとする件もありますが(時事通信『EU予算配分停止、手続き発動へ ハンガリー「法の支配」違反―欧州委』等参照)、これについては本稿ではとりあえず脇に置きます。

これに対し、G7・EU以外の参加国については、基本的に自由主義経済を採用していない国も含まれていますし、人権、法の支配などをないがしろにしている国もあれば、中国、サウジアラビアのように、そもそも民主主義ではない国も含まれています。G7と「基本的価値を共有する」国といえば、豪州くらいなものでしょう。

基本的に、「約束を破る」「ウソをつく」「国際法をないがしろにする」ような国が参加しているような協議体が、私たち自由・民主主義国にも適用される国際的なルール設定に参加することは、大変によくないことです。

G20はもともと「金融政策の会議体」だった

ところで、このG20というものは、もともとは「金融の協議体」でした。つまり、各国の中央銀行総裁や財相らが集まるかたちで、1999年に第1回目が開催された会合であり、これが2008年の金融危機に際して「首脳会合(サミット)」に格上げされたものです。

したがって、本来ならば金融危機が去った時点で、このG20首脳会合は終了しているべきだったのかもしれません。

実際、世界各国の金融機関に対して適用される国際統一的な金融規制(いわゆるバーゼル規制、あるいはBIS規制)についても、バーゼル銀行監督委員会が2017年12月に「バーゼルⅢ最終化文書」を公表したことで、金融規制の世界における危機対応は一巡した格好です。

最近だと金融規制当局らは「気候変動」だの、「持続可能な開発目標」だのといった新たな「メシのタネ」を作り出そうと一生懸命になっているようですが(とくにわが国の場合は金融庁や金融庁、あとは金融庁など)、そもそも過剰な金融規制は不要です。

産経「イエレン氏がG20ボイコットを示唆」

その意味では、そろそろG20についても首脳会合、財相・中銀総裁会合などを取りやめても良いころではないか、というのが個人的な感想なのですが、これにちょっとした動きが出て来ました。

産経ニュースに今朝掲載された次の記事によると、ジャネット・イエレン米財務長官が現地時間6日、米議会の金融委員会で証言した際、「ロシアがG20関連会合に出席した場合、米国は多くの会議を欠席する」と述べた、というのです。

米、ロシアG20出席ならボイコット 財務長官「議長国に伝達」

―――2022/4/7 06:51付 産経ニュースより

産経によると、今月20日に米ワシントンで開かれる予定の財相・中銀総裁会合を巡っても、「ロシアが参加すればイエレン氏自身がボイコットする可能性を示唆したかたち」だとしています。

具体的には、イエレン氏は公聴会で「ロシアをG20の枠組みから排除すべき」とするジョー・バイデン大統領の見解に「まったく賛成する」と強調したそうであり、とくにロシア軍の市民への残虐行為が報告された問題などを踏まえ、国際会議へのロシアの参加に難色を示したとしています。

このあたり、ロシアのG20からの排除自体は難しいという事情もあるのですが、米国としてはG20各国に対し、「ロシア追放に賛同しなければ、G7が脱退する」との考えを示しつつ、ロシアの人権侵害を理由にロシアのG20追放を実現させる、といった構想もあるかもしれません。

G20をやめてG10に再編しては?

ただ、個人的には「G20からロシアを排除する」よりも、「G20そのものを取りやめてしまう」というほうが、スッキリとしているような気がします。

この点、先ほどの産経ニュースの記事の末尾は、次のような記述があります。

日米欧の先進7カ国(G7)が対ロシアで連携を強める中、米国などのボイコットが広がれば、途上国と先進国が集まるG20の形骸化が進む公算が大きい」。

しかし、そもそも論ですが、G20は「先進国と発展途上国」というよりも、「基本的価値を共有しない国々が集まる場」という言い方の方が正確ではないかと思いますし、そのような場が、「自由主義世界にも統一して適用されるルール」を形成するにふさわしい場なのか、個人的には大変疑問でもあります。

これについて、当ウェブサイトでは『G20が露追放できぬなら、いっそG7が脱退しては?』などでも述べたとおり、いっそのこと「G20からG7や豪州が抜けてしまう」というのはひとつの手ではないかと思います。

具体的には、G7と豪州、インド、南アフリカあたりで「G10」を再結成し、明らかに基本的価値を共有しない各国と決別する、という考え方です(※インドや南アフリカがG7と基本的価値を共有しているかどうかについては若干微妙ですが…)。

また、こうしたG10構想は、日本にとっては「クアッド」(日米豪印)協議体とも整合する発想でもありますし、将来的に中国を牽制するという点においても、ある意味では有益だと考えられます。

いずれにせよ、G20のありかた、あるいはG20そのものを巡る議論は、注目点のひとつといえるかもしれません。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    毎度、バカバカしいお話を。
    韓国が、「G20からG10に再編するなら、日本の代わりに韓国をいれるべきだ」と言い出したんだって。
    おあとがよろしくないようで。

  2. 匿名 より:

    韓国?オワコン😆

  3. くろだい より:

    まあ、こんなご冗談もありますしねえwww

    (The international community you always hear about.)
    https://9gag.com/gag/azMQY4m

    そういえばインドと南アフリカは先の国連総会でロシア避難決議を棄権していたような…
    まあ、それぞれの国々に事情はあるでしょうしね。
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220303/k10013511441000.html

    1. 雪だんご より:

      「いつもの国際社会」ですか。
      これはクスッとくる良いギャグ。作った人に拍手を送りたくなります。

  4. G より:

    まあ、G7には間に合わなかったけど新たに何かグループがあったら入りたい国が挙げられた3か国以外にもあって、その中には自他ともに認める相応しい国もあれば某隣国みたいな国もあって。
    そういう自薦してくる国々を政治力で振り分けて好ましいグループを作りあげるのは大変。
    邪魔なのが入り込んじゃったのがG20で、個人的にはもうこりごりって思う。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      韓国が入った頃は今より親米だったからね
      今現在親米な国を入れても、将来的にずっと親米とは限らないから、新しい組織作っても無意味だったりする展開も有り得る

  5. G より:

    それよりも、、、面倒いから新国連作らない?変なのが常任理事国に入って機能不全になってるんだから。
    まあ安保理だけ解体してあらたに組織作り出してもいいね。
    安保理の枠内で考えるから彼らの拒否権でもって動けなくなる。安保理を廃止するってのは国連総会で出来るのでは?(素人考え)

  6. 理系初老 より:

    ガルージン駐日ロシア大使公開SNS
    「過去8年間にわたりウクライナで実際に起きていたことについて、米国政府とNATO関係者とが強迫的に絶えず嘘を付き続けているのは、厚かましい限りである。キエフ政権がドネツク、ルガンスク両州の民間人に行った残虐なジェノサイドを、彼らは事実上正当化している。」
    に対し、
    ラーム・エマニュエル駐日米国大使公開SNS
    「きっと制裁で予算が厳しくなり、ケーブルテレビを解約せざるを得なかったのでしょう。それなら私がお手伝いしましょう。」
    とリプライ。
    —-エマニュエル氏には期待しています。ということは、安倍さんをprimary targetとするアベガー派の抹〇リストに彼は載っていると推察される。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告