今年の外交青書で「不法占拠・固有領土」表現が復活か

いくつかのメディアが、「今年版の外交青書の概要が判明した」と報じました。北方領土については「日本固有の領土」、「ロシアが不法占拠している」とする表現が復活する一方、中国や韓国に関しては昨年の表現をほぼ踏襲しているようです。ただし、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の優先順位がどうなっているのか、といった点に関しては、現時点ではまだよくわかりません。

令和4年版外交青書

本稿において「速報」的に取り上げておきたいのが、今年の外交青書に関する話題です。令和4年版外交青書の概要が31日に判明したと、いくつかのメディアが報じています。本稿では産経ニュース、日経電子版の次の記事を眺めてみます。

外交青書、北方領土「不法占拠」「固有の領土」復活

―――2022/3/31 11:44付 産経ニュースより

ロシアの侵攻「国際秩序への挑戦」 外交青書で批判

―――2022年3月31日 13:45付 日本経済新聞電子版より

いつも思うことですが、まだ政府が発表していない内容をメディアがリークするというのも奇妙な風習だと感じます。

それはともかく、例年の外交青書の発表時期から判断する限り、きちんとした内容については1ヵ月もすれば判明すると思いますが、とりあえずはこれらのメディアの報道内容を眺めてみましょう。

ロシアとの関係では「不法占拠」「固有の領土」復活

まずは、ロシアとの関係です。

産経によると、北方領土については「日本固有の領土であるが、現在ロシアに不法占拠されている」と記述したそうです。ちなみに「不法占拠」平成15年版以来、「日本固有の領土」は23年版以来のことだとか。

また、外交青書ではウクライナ侵攻についても触れられており、「国際秩序の根幹を揺るがす暴挙」、「歴史の大転機」などと記述されている、としています。

次に、同じく産経によると、日米同盟に関しては菅義偉総理とジョー・バイデン米大統領が昨年4月に発表した共同声明(『台湾防衛にコミットした日本:日米同盟は経済同盟に!』参照)や、岸田文雄・現首相とバイデン氏の間でも同盟の抑止力・対処力強化で一致したことに言及しているそうです。

中韓に関しては昨年の表現を継承か

また、日経によると、中露を念頭に「日本の周辺には強大な軍事力を有する国家が集中し、軍事力のさらなる強化や軍事活動の活発化が顕著だ」などと指摘し、国・地域別の記述は中国を先頭に位置付け、尖閣諸島周辺での中国公船の活動を「国際法違反」と断じたそうです。

ただし、日中関係については「最も重要な二国間関係のひとつ」と位置づけ、また、韓国についても「重要な隣国」との文言を継承した、などとしています。

【参考】昨年の外交青書の記載

東シナ海を隔てた隣国である中国との関係は、日本にとって最も重要な二国間関係の一つであり、両国は緊密な経済関係や人的・文化的交流を有している。(同P49)

韓国は重要な隣国であり、日韓両国は、1965年の国交正常化の際に締結された日韓基本条約、日韓請求権・経済協力協定その他関連協定の基礎の上に、緊密な友好協力関係を築いてきた。しかしながら、2020年においても、旧朝鮮半島出身労働者問題を始めとして、2015年の慰安婦問題に関する日韓合意の趣旨・精神に反する動きや竹島における軍事訓練など、日本側にとって受け入れられない状況が続いた。(同P39~40)

(【出所】『外交青書2021』第2節『アジア・大洋州』

FOIP

このあたり、個人的には「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の位置づけが気になるところです。

昨年の外交青書では、日本の外交上の優先順位で、日米同盟に続きFOIPは2番目を占め、中国、ロシア、韓国などの「近隣国」よりも上位に位置付けられていました。また、FOIPからは中韓両国が明確に排除されているというのも印象的です。

【参考】FOIP

(【出所】防衛白書)

この点に関しては、少なくとも本日公表された産経や日経の記事には記述がありません。

ただ、さすがに『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』でも述べたとおり、安倍晋三、菅義偉の両総理が日本にもたらした「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)に基づく外交・安全保障の考え方を、これからの日本は重視しなければならないはずです。

このあたりについては、おそらく4月下旬には出て来るであろう外交青書の原文を読んでみたいと思う次第です。

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