台湾が日本の5県産食品への輸入規制を基本的に解除へ

台湾政府が日本産の輸入食品に対する規制を(すべてではないにせよ)原則として解除するそうです。これは、大変に明るく前向きな話題です。この点、日本の輸出品目に占める食品のシェアはせいぜい1%と決して高くないのですが、日本政府が日本産食品をプロモートしようとしているなかで、輸入規制を解除する国が増えることは間違いなく良いことです。

台湾は日本にとって「3番手」に浮上!

以前の『「日本の友人」である台湾が3番目の貿易相手国に浮上』で取り上げたとおり、日本にとっての貿易相手国として、台湾は2021年に「4番手」から「3番手」に浮上しました。

これは、日台関係を議論するうえで、大変に象徴的な変化ではないかと思います。

この点、3位と4位の差異は微々たるものなので、今後、再逆転が生じる可能性はゼロではありません。しかしながら、日本から台湾への輸出品目を分解してみると、多いのは「モノを作るためのモノ」、つまり生産装置や部品、中間素材などが中心を占めています。

一般に、「モノを作るためのモノ」は、「B to B」、すなわち企業対企業の取引で輸出されるものであり、両国の産業構造に依存しているという性質があるため、短期間で大きく変動するものではありません。

これに加えて、近年、台湾の半導体メーカーが熊本県に工場を新設すると決定するなど、日台両国の産業の一体化が進み始めているという状況にあります。

日台で続く「善意のやり取り」

こうしたなか、日本政府は昨年、『令和3年版外交青書』のなかで、台湾を「基本的価値を共有する友人・パートナー」と位置付けました。該当する記述は、55ページ目にあります。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(『令和3年版外交青書』P55)。

中国との関係もあるためでしょうか、日本政府は台湾を公式には「国」と認めていませんが、この外交青書の書き方だと、事実上、日本政府は台湾を最上位の友好「国」として扱っているようなものでしょう。

実際のところ、日台関係は非常に良好でもあります。東日本大震災で台湾から日本に巨額の義援金が寄せられ、コロナ禍では日本が台湾にワクチンを寄付するなど、「善意のやり取り」が続いています。

また、内閣府が公表する『外交に関する世論調査』では、残念ながら台湾に対する親近感などについては調査対象項目ではありませんが、日本国民の台湾に対する親近感が高いと思われる調査結果は、多々あるのが実情です。

たとえば、『ITメディア』というメディアには一昨日、コロナが落ち着いた際に「行きたい海外旅行先」としては、ハワイ(48.7%)に次いで台湾が30.6%で2位だった、とするネット世論調査の結果を掲載しています。

コロナ後、海外旅行で行きたい場所 3位「イタリア」、2位「台湾」、1位は?

―――2022年02月06日 05時00分付 ITmediaビジネスONLINEより

このあたり、「旅行先として行きたい」と思う動機は、「両国関係が良好かどうか」だけでなく、その国の気候、風土、食事、観光名所など、さまざまな要因が関わるため、この調査をもってして「日本国民の対台湾感情が良好である」と決めつけるのは若干行き過ぎかもしれません。

ただ、興味深いのは、2015年から19年までの5年間で実際に渡航した場所として、台湾、ハワイ、韓国、米国本土、イタリアなどが並んでいる一方、台湾はハワイ、米国本土、イタリアと並び、「今後行きたい場所」でも上位に入っている、という点でしょう。

(※なお、かつては日本人にとっての人気の渡航先だったはずの「香港・マカオ」については19位に沈んでいるのは、一連の民主化デモに加え、中国による「国家安全法」の施行などで印象が悪化しているからなのかもしれない、と思うのは、ここだけの話です。)

台湾が日本産食品の輸入規制を原則として解除へ

さて、こうしたなかで、本日はひとつ、嬉しい話題もありました。

台湾国営メディア『中央通訊』が運営する日本語版ウェブサイト『フォーカス台湾』に本日、こんな記事が掲載されていたのです。

行政院、日本5県産食品の大半の輸入解禁を発表/台湾

―――2022/02/08 10:09付 フォーカス台湾より

記事タイトルにある「行政院」とは、台湾の内閣のことです。

中央通訊によると、行政院の羅秉成(ら・へいせい)報道官は8日、記者会見し、2011年から続けてきた福島など5県産食品に対する輸入禁止措置について一部食品を除いて撤廃すると発表したのだそうです。

その狙いについて中央通訊は、次のように指摘しています。

日本が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)への加入を昨年9月に申請した蔡英文(さい・えいぶん)政権にとって、5県産食品の禁輸解除が課題となっていた」。

…。

正直、そのような側面もあるのかもしれません。これに加え、日本の側の事情を付記しておくならば、そもそも論として、日本の輸出品目に占める食品(とくに水産物など)の輸出高は、決して多くありません(図表)。

図表 日本の輸出品目(2021年)
品目金額構成割合
食料品及び動物8216億円0.99%
飲料及びたばこ1711億円0.21%
原材料1兆4059億円1.69%
鉱物性燃料9928億円1.19%
動植物性油脂337億円0.04%
化学製品10兆5539億円12.70%
原料別製品9兆9259億円11.95%
機械類及び輸送用機器47兆7931億円57.52%
雑製品4兆9238億円5.93%
特殊取扱品6兆4711億円7.79%
合計83兆0928億円100.00%

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

日本にとって最大の輸出品目は「機械類及び輸送用機器」であり、これに「化学製品」、「原料別製品」などが続きますが、要するに「モノを作るためのモノ」が日本にとって重要であり、食品は輸出高全体でわずか1%を占めているに過ぎません。

日台友好には間違いなく前向き

しかし、それでも日本政府が今後、農作物などの輸出に力を入れてプロモートしていこうとしているなかで、こうした台湾の決断は、日本の産業にとっては間違いなく良い方向でしょう。

中央通訊によると、台湾では最大野党・国民党などが反対の姿勢を示しているなか、台湾政府は「国民の健康を第一に考え、国際標準と科学的根拠にのっとり対処する」との立場を強調してきたのだそうですが、その科学的な根拠に従い日本産食品の輸入規制を撤廃したことは、歓迎したいと思う次第です。

いずれにせよ、今回の台湾政府の決定には、やや政治的な決断という側面もあるのかもしれませんが、日台友好という側面からは、決して悪い話ではないとも思う次第です。

読者コメント一覧

  1. へちまはたわしのみに非ず より:

    普通貿易統計から台湾パイナップル単体の輸入量は判りませんでしたが、昨年台湾から果実輸入量の倍増が確認できました。
    とりわけ2021年4月から6月は例年の3倍ほどの輸入量であり、これにパイナップルの占めるところが大きいのではないかと思います。
    色んな意味で味を占めた方が多ければ、昨年同様の基調となることを期待しています。

    ・台湾 果実 年別輸入量(単位 トン)
       その他果実 バナナ 柑橘類 
    2017  5,140   1,053  48
    2018  5,967   1,751  19
    2019  7,629   2,852  58
    2020  9,597   3,324  53
    2021 24,641   2,861  92

    ・台湾 その他果実 年月別輸入量(単位 キログラム)
    月  2021年    2020年   2019年
    01  352,040  415,289  301,821
    02  308,906  319,958  288,440
    03 1,709,123 1,046,280  755,697
    04 6,776,524 1,990,126 1,346,898
    05 6,443,464 1,907,924 1,120,649
    06 4,905,935 1,479,753 1,300,225
    07 1,916,807  919,000  763,764
    08  777,229  286,634  343,951
    09  384,075  308,505  305,991
    10  314,099  201,442  353,427
    11  276,440  350,905  300,509
    12  476,857  370,859  447,822

    財務省 普通貿易統計 国別概況品別表(106:台湾)
    https://www.customs.go.jp/toukei/info/tsdl.htm

  2. 世相マンボウ . より:

    台湾の人たちにとそれに支えられた
    今の台湾政権のこの正しい決定を
    とても嬉しく歓迎します。

    なんせ、この日本においても
    根拠なき原発風評被害拡散活動に邁進する
    韓流政党立憲民主党や
    オウム真理教と同じ考案指定の共産党、
    一般国民以下の心根の間違って総理になった
    鳩ポッポ菅直人などがいてしまうのです。
    台湾にも無法国家中国の息のかかった
    勢力が跋扈する中で、
    よくぞよくぞ正しい決定をしていただいた
    と感謝にたえません。

    わたしたち日本人も台湾を見習って
    原発風評被害拡散活動をしてしまっている
    そんなこんなの生き様の不実な人たちに対して
    その人達がうざこいから(笑)と放置せず
    その恥ずかしい行いを悔い改めさせることに
    きちんと対処をするべきと感じます。

  3. 迷王星 より:

    お早うございます.

    >今回の台湾政府の決定には、やや政治的な決断という側面もあるのかもしれませんが、日台友好という側面からは、決して悪い話ではないとも思う次第です。

    まあそうだと言えばそうなのですが,本来,科学的根拠に基づかずに輸入禁止にしていたのですから,会計士様が日韓問題で良く言われる「ゼロ対100」のようなもので,日本からすれば本来は輸入禁止解除が当たり前の話です.

    無論,台湾側で少なからぬ民衆が非科学的な先入観から福島および隣県産に対する放射能汚染の恐怖を持っている現状を考えると,輸入禁止を解除することが少なからぬ台湾民衆からの不興を買う危険性があるのは確かで,そのリスクを取ってまで輸入禁止解除を実現する蔡英文総統の強力な指導力と覚悟は賞賛に値するのも事実ではありますが.

    因みに非科学的な先入観だけでなく日本に対する嫌がらせとして輸入禁止を続けている韓国に対しては,つい最近,カナダで大腸菌汚染で少なからぬ人数の食中毒事故を起こして輸入禁止を喰らっているキムチや寄生虫クアドによる汚染で軽い下痢などを日本で発生させているヒラメなどの海産物を始めとする生鮮食品(含:農産物)に関して徹底的に細菌検査をすることで,実際に有害な細菌や微生物による汚染を証明して,韓国産のキムチや生鮮食品の輸入を科学的根拠に基づいて禁止してあげるのが適切だと考える次第です.

    無論,仮に韓国が今回の台湾の処置に倣って北関東・東北産に対する輸入禁止を解除してもCPTPPへの韓国の加盟を日本として認めない理由として「国際条約や国家間の約束を守らない限りNGだ」を使って拒否し続けねばならないのは言うまでもありません.

  4. G より:

    食の安全という面では、国民に広がる風評も考慮しなきゃいけないのはしかたないことです。一義的には国民を教育していくべき、という話ですが、それが容易でないことも理解します。

    そんな困難な一歩を踏み出してくれた台湾には感謝ですね。もちろんTPPの要件もあるでしょうが、それ以上に日台友好の賜物です。

    放射能絡みの規制が科学的根拠が全くないというのは当然です。でも、だからといって、撤廃は当然とふんぞり返るのも間違いで恥ずかしいことです。間違った国民の感情をコントロールするのはすごく難しい。だから、台湾にはありがとうと言いたい。

    まあ、韓国にこれを期待するのはほぼ無理ですね。対日感情云々じゃなくて、単純に政府の能力不足だと私は思います。そもそも侮日で政権維持しなきゃいけないなんて能力不足以外の何ものでもないですよ。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      韓国政府は国民に黙って解除する可能性あるかも

  5. りょうちん より:

    なんでこのタイミングで?
    というか政治的に利用できるカードとして保持したけど結局、切りどころが無くて投げ出した感。

  6. 無病息災の男 より:

    台湾は、日本が主張しているTPP加盟の基準を満たすことに対して積極的な発表を行いました。
    これで、中国、韓国がTPPに加盟することは、ほぼ絶望的になったと考えてよいのでしょうか?

  7. 門外漢 より:

    雪崩をうって親台に走るのはちょっとどうかな?と思ってます。
    台湾が北や南に比べて親日だというのは、そうなのでしょう。
    輸入食品問題は、TPP加入を狙って出来るだけ非関税障壁は下げて置こうと言うのもあるでしょう。
    中国の侵攻を前にして、日本のご機嫌を取っておこうと言う事もあるのでしょう。
    残念ながら日本に中国を阻止する力なんてありません。岸田政権なら、ヘルメット5000個くらいは贈るでしょうけど。
    台湾人と言っても選挙の結果を見ても判るように、半分は親中です。勿論工作員も居るのでしょう。
    新幹線の増備も中国製になりそうですし、なかなか敵は5000年の歴史を持つ強か者です。
    反中の意思を見せるために、台湾の現政権を応援するくらいは良いとして、台湾全部を一括りにしない方が良いでしょう。

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