韓国でまたしてもトリプル安(株安・債券安・通貨安)

昨日は韓国で再び「トリプル安」(株安、債券安、通貨安)が発生したようです。この「トリプル安」、今年に入ってからしばしば観測されるのですが、一般には外国人投資家などが韓国の資産を売却して資金を引き上げているときに発生する、などと説明されるとおり、あまり良い兆候ではありません。その一方で、為替市場では、不自然なウォンの買戻の動きも見られました。やはり、韓国の通貨当局による為替介入なのでしょうか。

昨日再びトリプル安

先日の『韓国で「トリプル安」が発生:株式も債券も通貨も下落』では、韓国で「トリプル安」、すなわち株価、債券価格、為替相場がすべて下落する、という現象が生じたと紹介しました。

年が明けてから、どうも私たちの隣国・韓国のマーケットが不安定になっているように見受けられるのですが、こうしたなか、昨日は再び、トリプル安が発生したようです。

昨日の夜時点でWSJなどのウェブサイトで調べてみたところ、株価(KOSPI指数)、債券利回り、為替相場(USDKRW)の状況は、次のとおりでした。

韓国のマーケット指標(2022年1月25日時点)
  • KOSPI…2720.39(前日比▲71.61)
  • 2年債利回り…1.965%(前日比+2.5bps)
  • 3年債利回り…2.175%(前日比+2.5bps)
  • 5年債利回り…2.435%(前日比+2.0bps)
  • 10年債利回り…2.590%(前日比+2.0bps)
  • USDKRW…1198.71(前日比+3.02)

(【出所】WSJマーケット欄などを参考に著者調べ)

債券も株も通貨も下落するとは…

一応、市場的な説明をしておくならば、昨日の「トリプル安」はFOMCを控えた警戒感と、ロシアのウクライナ侵攻懸念などを踏まえたリスク選好の後退、と言ったところでしょうか。

ただ、一般に「安全資産」とされる国債の利回りが上昇した(=国債の価格が下落した)、というのも、なんだか不思議な気がします。

ここで、債券利回りは債券価格と逆方向に動きます。債券市場において、「利回りが上昇した」というのは、「債券価格が下落した」という意味です。たとえば10年債利回りは前日比2ベーシス・ポイント上昇の2.59%とありますが、これは、債券市場で取引されている10年国債価格が下落した、ということを意味します。

あくまでも教科書的にいえば、機関投資家はアセット・アロケーション(資産配分)を常に調整し続けていて、市場のリスク選好が高まるときには株式の比重を増やして債券の比重を減らし、逆に、リスク選好が低下しているときには株式の比重を減らして債券の比重を増やす、などと言われています。

(※ただし、この説明は若干不正確だ、というのが著者自身の持論ではありますが、この点については本稿では詳しく触れません。)

いずれにせよ、株価、債券価格が同時に下落するというのは、あまり例がありません(※皆無ではありませんが…)。ということは、この「あまり例がない」とされる株価、債券価格の同事下落が発生し、かつ、ウォン安が生じたということは、外国人投資家が韓国の資産を売り、資金を引き上げている証拠、という説明が成り立ちます。

外貨準備の「真水」は500~600億ドル程度か

もちろん、現実の市場は単純ではありませんので、機関投資家などがさまざまな思惑でさまざまな資産を売ったり買ったりしていますが、それにしても、わりと頻繁にトリプル安が観測されるというのは異例です。

昨日のUSDKRWのチャートを眺めていると、「為替介入ではないか」と疑われるような動きも見られましたが、もしかすると、韓国の通貨当局はウォン安を食い止めるために為替介入を行っているのかもしれません(その答え合わせは、来月初頭にも出て来るであろう外貨準備統計を待つ必要があります)。

このあたり、総額600億ドル相当の米韓為替スワップ協定は昨年12月末で失効・消滅してしまいましたが、それでも著者自身の予想に基づけば、韓国はコロナ禍後のウォン高局面で外貨準備をずいぶんと溜め込んでおり、500億ドル程度は外貨準備に「真水」があると考えています。

外国人投資家の資金流出による韓国ウォン安は続くのか』などでも触れたとおり、現在の韓国には、米韓為替スワップもなく、日韓通貨スワップもありません。

こんな状態で、韓国の通貨当局がどこまでウォン安に対処することができるか(あるいはできないか)については、しばらくチェックしてみる価値があるのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. イーシャ より:

    2020年3月10日の第8回以来、韓国とは輸出管理政策対話ができていません。
    そろそろ、グループBからグループCに格下げすべきではないでしょうか。
    (グループDでも構いませんが)

    2720まで押されたKOSPI…「対外悪材料追加されたらお手上げ」” (中央日報日本語版 2022.01.26 06:57)

    いいタイミングだと思いませんか?

    1. だんな より:

      イーシャさま
      引用記事が被りましたm(__)m
      今日は、ダウも落ち着いた後なので、これで下げるようだと、外国人投資家が逃げ出しつつあるという事でしょう。

    2. ちょろんぼ より:

      イーシャ様

      グループC・Dなんて、もったいないです。
      グループKの方がよろしいかと思います。
      あちらの国の人達は何か起これば、すぐK〇〇というでしょ?
      ぴったりだと思います。

  2. だんな より:

    中央日報から
    2720まで押されたKOSPI…「対外悪材料追加されたらお手上げ」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/f34540b4d7c68fa71b40762a4c1d06decc50e78a
    >個人投資家が5860億ウォンを買い越したが、外国人投資家の4623億ウォン、機関投資家の1715億ウォンの売り攻勢を吸収するには力不足だった。

    未だ買っているのは、個人投資家のようです。

    1. ちょろんぼ より:

      だんな様

      当然です。
      株式投資:少ない資金で高い利益を得る一番簡単な方法は、年初来安値で買うのが
      一番です。 但し、次から次へと年初来安値が続き、買ったはいいが購入価格が
      年初来安値でなくなり、損失が大きくなる事はありえます。
      「落ちるナイフはつかむな」という格言はありますが、ま!そこは度胸の世界

  3. より:

    韓国銀行は、昨年8月、11月に続き、今月も基準金利を0.25%引き上げました(1.25%)。
    利上げの目的がインフレ抑止なのか、通貨防衛なのかはわかりませんが、USD/KRWの動きを見ると、1183まで戻していたKRWが、14日の利上げ発表以降むしろウォン安方向に動いており、とりあえず通貨防衛の役には立たなかったようです。

    さて、今日のFOMCの動きがどうなるか。伝え聞くアメリカのインフレ状況はなかなかゆるくないようなので、ひょっとしたら、電撃的にFRBが利上げに踏み切る可能性もあるかもしれません。
    どうなりますかね。

  4. 世相マンボウ_ より:

    トリプル安の危機的状況なのに、
    昨日の日本のメディアの報道は
    「韓国GDP、21年伸び率は
     11年ぶり高水準 輸出が好調」?
    という韓国中央銀行の?な発表のほうを
    日経までもがでかでか取り上げています。

    それでもこれまでウォン安になると
    いつもでかでか報道される
    「韓国外貨準備高 過去最高を記録」
    などの?な発表までは
    今回はさすがに見られないようです。

    およそモロモロ韓流ゴリ押しや
    ウザコイからとのおかしな配慮はやめて
    過去に外貨準備高水増しバレて
    アジア通貨危機の引き金引いた
    前科のある韓国ウォンなどの事実を
    日本国民があまり知らされていない
    日本の報道姿勢はいかがなものか
    と感じています。

  5. どみそ より:

    トルコとの通貨スワップが役に立つときです。
    関わってはいけない国に 関わってしまったトルコ ご愁傷さまです。

  6. カズ より:

    (余談です)
    彼らは経済がトリプルパンチを喰らって空の彼方に吹っ飛ばされても、
    “bye-bye kim(バイバイきーむ)” なんて言わないんでしょうね。きっと。

    アニメの敵役が ”憎めないキャラ” なのは、自ら公言した約束だけは比較的に守るから。
    *自ら公言した約束も守らないと ”憎めなくもないキャラ” にしかなれないんですよね。

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