ネット著作権侵害で広告代理店の責任認めた画期的判決

ネット時代が到来したことで、新聞、テレビの情報独占が崩壊しつつある反面、ひとつの課題は「広告配信」システムにあります。当ウェブサイトを含めたインターネット上のサイトの多くは、コンテンツそのもので課金することが技術的に難しく、どうしても広告収入に頼らざるを得ません。こうしたなかで、コンテンツの窃用に対し、広告代理店に損害賠償を命じた、という判決が出て来たようです。

ネット時代に崩れた新聞、テレビの情報独占

インターネット時代の到来により、新聞、テレビなどのオールドメディアが情報発信を支配・独占していた体制が、ガラガラと音を立てて崩れつつあります。

とくに、紙媒体の新聞の衰退は、かなり顕著です。

一般社団法人日本新聞協会が発表する部数によれば、今から20年前の2000年に5371万部だった新聞の発行部数(※)は、昨年、つまり2020年においては、3509万部にまで減少しました。減少率でいえば、47%に達します。

(※ただし、ここでいう「発行部数」は、朝刊と夕刊のセット契約を「1部」とカウントしたベースです。)

もちろん、すべての発行形態において、一様に減少しているわけではありません。スポーツ紙が631万部から264万部へと、約58%も部数を減らしているのに対し、一般紙(※)に関しては、4740万部から3245万部へと、約32%しか減っていないからです。

(※ただし、ここでいう「一般紙」は、セット部数を1部、朝刊単独を1部、夕刊単独を1部とカウントしたベースです。)

しかし、紙媒体の新聞は、インターネットと比べて、いくつもの不便さがあります。

パッと思いつくモノだけでも、たとえば、「▼印刷された瞬間、情報が古くなること、▼紙に情報を印刷するため、重くて嵩張ること、▼手にインクが着くこと、▼持ち運ぶのにも保存するのにも不便であること」…、といった具合に、いくらでもあります。

その一方で、2010年頃からスマートフォンが爆発的に普及し始めましたが、スマホの場合だとデバイス自体が小さくて軽く、かつ情報がリアルタイムに届くため、少なくとも紙媒体の新聞がインターネット(おもにスマホなどのデバイス)に勝てなくなるのも、ある意味では時代の必然なのかもしれません。

また、『紙媒体の新聞から10代が離れた』などでも触れてきたとおり、テレビについてはまだインターネットに対して優位性を持っているフシがありますが、それでもインターネット空間で動画の配信技術が飛躍的に向上するなか、テレビとネットの逆転も、時間の問題でしょう。

というよりも、『埼玉県民様から:2020年版「日本の広告費」を読む』などでも議論したとおり、すでに広告費の世界では、ネット全体の広告費がテレビ全体の広告費を上回ってしまいました。

おそらく、現在の新聞業界は、早ければ5年後にも、そのままテレビ業界の姿になってしまうかもしれません。

ウェブサイト側の大きな課題は「収益化」

ただし、当ウェブサイト自身を含めたウェブ評論サイトの側としては、常に大きな課題を抱えていることも事実です。

そのひとつが、「どうやって読者の皆さまから収益をいただくか」、という点です。

当ウェブサイトを含め、世の中の圧倒的に多くのサイトは、基本的には広告収入で運営されています。

なかには、「別にカネをもらう必要はない」という人は、大手の無料ブログサイトに乗っかってブログを運営していますが、その大手無料ブログサイトの運営者自身は、ユーザーが開設したブログに広告を配信し、それで収益を得ているはずです。

このように考えていくと、ウェブ広告というのは、現在の民放テレビ局のビジネスモデルとそっくりだ、という言い方もできるかもしれません。民放テレビ局の場合も、べつに視聴者が受信料を負担しているという事実はありません。基本的にはスポンサーが提供する広告料が売上高の主要な源泉です。

もちろん、なかにはNetflixやHulu、アマゾンプライムのように、コンテンツの提供自体で料金を取る、というビジネスモデルも成り立っているケースもありますが、少なくとも地上波の場合は、NHKを例外とすれば、コンテンツの提供自体でカネを取るというビジネスではありません。

このあたり、当ウェブサイトでは記事を有料化する(あるいは「おひねり」制度を導入する)、といったことを検討してみたこともあるのですが、やはり現在の技術だと、個人が運営するウェブ評論サイトで有料制ないし「投げ銭」制を導入するのはなかなか難しい、というのが実情です。

このように考えていくと、やはり世の中の多くのウェブサイトの運営が広告収入に依存する、というのも、現状ではやむをえないのかもしれません。

著作権侵害に関する「画期的判決」

こうしたなかで、個人的にちょっと興味深いと思ったのが、こんな記事です。

「漫画村」ネット広告は不法 代理店に1100万円賠償命令―東京地裁

―――2021年12月21日18時56分付 時事通信より

時事通信によると、海賊版サイト「漫画村」に無断で著作を掲載されたとして、漫画家が同サイトに掲載する広告を募った代理店2社に対し、1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が21日に東京地裁で言い渡され、請求全額の賠償が命じられたのだそうです。

また、漫画家側の代理人弁護士によれば、漫画の海賊版サイトに関わる広告代理店の責任を認めた判決は初めてだそうですが、もしそうだとすれば、これはなかなか画期的な判決です。

そもそも著作権を侵害する海賊版ウェブサイトというものは、コンテンツの原作者にとっては、窃盗行為とまったく同じことです。

実際、判決では、この海賊版サイトのせいで自身の漫画の売上高が減ったとする原告側の漫画家の主張を認定したのに加え、海賊版サイトに広告を配信し、広告料を支払うという代理店の行為自体も、著作権侵害を幇助していると認定したそうです。

代理人の責任を認めるというのは興味深い

もちろん、この判決がそのまま確定するのかどうかはよくわかりません。

実際には「ウェブサイトの運営者をそのまま訴えるべきであり、広告代理店を訴えるのは筋違いだ」、といった反論も予想されるからです。

ただ、こうした記事を見て、個人的に真っ先に思い出すのは、当ウェブサイト自身もしばしば著作権侵害の被害に遭っている、という事実です。

具体的には、『動画サイトにアップされた当ウェブサイトの盗作が酷い』や『悪質さ増すコンテンツ窃用:どんな法的措置を講じるか』などでも述べましたが、当ウェブサイトに掲載した記事が、動画サイトYouTubeに、出所も明示せずにほぼ丸ごと剽窃された、という事件がありました。

(※なお、過去に紹介した事例に関しては、いずれも著作権侵害者本人が当ウェブサイトに対し謝罪し、再発防止を約束するなどの措置を講じたため、現在のところは該当者らに対し、刑事面、民事面での制裁については、とくに行っておりません。)

当ウェブサイトの場合、出所さえ明示して頂ければ、あからさまな商業目的などではない限り、どなたでもご自由に引用・転載していただいて良い、というガイドラインを明示しているつもりです(『引用・転載ポリシーおよび読者コメント要領』等参照)。

それにも関わらず、出所を明示せずに勝手に当ウェブサイトのコンテンツを転載する事例は後を絶ちません。

そうなってくれば、そのコンテンツ窃用者そのものに対し、コンテンツを窃用するインセンティブを提供した者――

その者が収益を得ている広告代理店、あるいはその者が窃用コンテンツを公開しているプラットフォームなど――を訴えるのが手っ取り早い、という前例ができれば、著作権侵害の救済手段が広がります。

その意味で、今回の判決自体、著作権侵害を根絶していくことができるかどうかという点で、非常に良い前例となるかもしれない、と思う次第です。

読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    新聞は軽減税率対象から除外したいです。
    飲食料品と違って除外に値する根拠が薄い(ほぼ無い)ですから。
    昔は大義名分が立ったのでしょうが、今はどう考えても無理筋だと思います。
    ついでにNHKが持つ特権も同じだと思ってます。

  2. 人工知能の中の人 より:

    製造業には製造物責任(PL)法や食品衛生法なりで責任を負うのですから、広告業含めマスメディアも投げっぱなしの商売はできなくなるようになってほしいものです。
    大抵言論の自由がーとごねるのでしょうが自分が吐いた言葉に最後まで責任を持て、今までうやむやにして免れていたのがおかしいと、そう思うのです。

    1. Sky より:

      100%同意します。自分達が励行できていないくせに、メーカーなど他業界の製造物責任を問う資格は無いと思います。

    2. ひろた より:

      広告は不当景品類及び 不当表示防止法(景表法)、不正競争防止法、消費者契約法、商品、サービスにより食品衛生法、薬機法、宅権業法などたくさんの法律により規制されています。
      屋外広告物法なんてのもあります。
      それよりもしっかりとした業界団体の規制の方が厳しい場合があります。

  3. ひろた より:

    最近YouTube が著作権に関する透明性レポートを出しました。
    それによると著作権を検出するContentsIDだけで今年上半期で7億件以上の申し立てがあったそうです。
    他にアップロードする動画がほかの動画と一致していないかチェックするコピーライトマッチツールで160万件。重複はないそうですしContentsIDを利用しない人がかなりいます。webフォームからの申し立てもありますから膨大です。
    ご参考まで。
    https://blog.youtube/news-and-events/access-all-balanced-ecosystem-and-powerful-tools/
    リンクはブログですが詳細のPDFに飛ぶことができます。

    漫画村事件は別々に調査していたお二人の弁護士の尽力によることが大きく、ブロッキング、親告罪化と表現の自由についての異論もあることからまだまだ難しい問題ですが減って欲しいと思います。

  4. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    Wikipediaとかいうのも著作権侵害の嵐では?

    1. 匿名 より:

      著作権侵害とは
      著作物で著作者の「収入」を侵害しているかどうかが基準だと思います

      著作者が好意で利用を許す理由も
      突き詰めれば自分の収入を侵害していないからです

  5. KY より:

     著作権侵害も大概ですが、何故日本国内のユーザーはぼったくり価格同然の高値でビデオソフトを購入させられるんでしょうね。海外版の価格に比べると倍以上の開きがありますね。
     ソフトメーカーはこの矛盾についてちゃんと説明できるのでしょうか。
     著作権保護の大義名分のもとに国内ユーザーが馬鹿な目を見るのも納得いきませんな。

    1. M1A2 より:

       KY様

       ゲームソフトも日本だけ高いです。
      昔から「お前の国にも売ってやる、ただし割高な値段で」を略した「おま値」という言葉が日本のゲーマー界隈で自虐的に使われていましたが、海外のゲームが日本で高くなるのはまだ理解できるんですよ。
      テキストを日本語に翻訳したり、日本人の声優でキャラクターボイスを録り直したりすればそれなりにコストもかかるでしょうから。
      でも、日本のゲーム会社が開発したゲームも日本国内の方が販売価格が高いんですよ。
      日本版と海外版で、内容も一緒、発売日も一緒、でも日本だけ値段が高い。ワケワカラン
      もうね、コストとか著作権関係の問題じゃないんですよ。
      日本は高くても売れるから高いんですよ。
      ゲーム会社から日本のゲーマーは高くても買うと思われてるから高い値段設定なんです。
      新作の発売日にフルプライスで買うのがアホみたいに思えてきます。

  6. WLT より:

    お疲れ様です。
    少し記事の趣旨とは外れますが・・・

    この訴えを起こしたのは、著作物に対する権利関係や表現の自由を守るために以前から活動していて、ついには自民党への出馬も本格的になってきた漫画家の赤松健さんですからね。
    報道のタイミングとしては実に完璧でした。
    自民党に行くと言う事で、今凄まじいレベルの人身攻撃を表現規制派やら自称フェミニスト(なぜ自称と書いたかは調べれば分かります)やら何処かしらの野党支持の人達などから受けていますが、それだけとても有望な方でもあると思います。

    赤松健さんは、同業者のみならずジャンルの違うクリエイティブ関係の方々からの人望も中々に厚いので、自民党の未だ蔓延っている古臭い体質を内部から変えられる風の一つとして、個人的に議員としての将来と挑戦も応援しています。

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