10月31日の総選挙の当日、主要メディアの多くは「自民党惨敗」、「立憲民主党躍進」などと報じました。ところが、ふたを開けてみたら、自民党は多少議席を減らしたとはいえ与党で絶対安定多数を占め、立憲民主党は敗北の責任を取り枝野代表が辞意を表明しました。こうしたなか、本稿では時事通信が配信した「自民1強に終止符」なる大誤報なども題材にしつつ、メディア利権の腐敗について考えてみたいと思います。
目次
メディア利権
絶大なメディア利権
『メディア利権と野党利権は衆院選を機に崩れ始めたのか』などで議論したとおり、当ウェブサイトとしては、10月31日に投開票が行われた衆院選の本質とは、オールドメディアと特定野党という「2つの利権」の敗北にあったと考えています。
いさぎよい自民党関係者、往生際が悪い立憲民主党関係者野党も官僚もマスメディアも、結局のところは「利権」という問題に結びつきます。当ウェブサイトの持論ですが、日本を悪くしてきたのがこの3者でもあります。ただ、日曜日の衆院選の結果、現在はこの3つの利権のうち、メディア利権と野党利権が同時に崩れようとしているように見受けられます。利権というのは見かけはしっかりしていても、崩れ始めると意外とあっけなかったりするものですが、さて、日本の利権はどう動くのでしょうか。利権の問題利権を持つ官僚機構という問題... メディア利権と野党利権は衆院選を機に崩れ始めたのか - 新宿会計士の政治経済評論 |
新聞、テレビを中心とするオールドメディアは、インターネットが台頭する以前であれば、それこそ情報発信をほぼ一手に握り、完全に独占していましたし、オールドメディアがその気になれば、政治家ですら政治生命を断たれることもあったのです。
首相に就任した当初から「冷めたピザ」などと揶揄されながらも首相職を遂行し、首相在任中に脳梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人になった小渕恵三氏などに対しては、「なんだかパッとしなかった人だな」、などという印象を抱いている人も多いでしょう。
しかし、実際には、小渕政権下で金融再生法、周辺事態法、国旗・国歌法、通信傍受法といった重要な法律が次々と成立していますし、能登半島不審船事件(北朝鮮の不審船が日本領海に侵入した事件)への対応など、さまざまな意味でのちの政権に影響を与えています。
この点、個人的には、小渕元首相が韓国の金大中(きん・だいちゅう)大統領と取り交わした『日韓共同宣言』などを含め、小渕政権のすべての政策を手放しに評価するつもりはありませんが、少なくとも新聞、テレビが批判したほど小渕氏が無能な人物だったのかといえば、そこもまた微妙でしょう。
オールドメディアが民主党政権を発足させた
そして、こうしたオールドメディアの行状が最も悪い形で凝縮されたのが、2009年8月30日に投開票が行われた、第45回衆議院議員総選挙だったと思います。
この選挙では、投票の直前、2009年8月12日に21世紀臨調が主催した麻生太郎総理大臣と鳩山由紀夫・民主党代表の党首討論会を、少なくとも在京民放とNHKは中継しませんでしたし、主要紙にも大きく取り上げられたという記憶はありません。
ちなみに『立憲民主党の先祖返り、今度のポスターは「変えよう」』でも詳しく触れたとおり、公正な目で見て、討論会では鳩山代表がボロ負けし、麻生総理の側がほぼパーフェクトに勝利を収めたと考えて良いでしょう。
まずは代表から「変えよう。」いまから12年前の2009年8月、麻生太郎総理大臣との党首討論会の最後に、鳩山由紀夫・民主党代表はヒトコト、「チェンジ!」と叫びました。そして、最大野党・立憲民主党は昨日、あらたなキャッチコピーを発表しました。それはなんと、「変えよう。」、です。麻生総理と鳩山代表の党首討論ちょうど12年前のいまごろでしたでしょうか。麻生太郎総理大臣が衆議院を解散し、日本は選挙に突入。21世紀臨調は2009年8月12日、自民党の総裁でもある麻生総理と、当時の野党・民主党の鳩山由紀夫代表の2名を招い... 先祖返りする立憲民主党、今度の標語は「変えよう。」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
全480議席中、民主党が308議席を獲得し、自民党が119議席にとどまるという圧倒的な逆転劇が発生したのは、地上波テレビ、NHK、全国紙などがこの討論会の内容を公正に取り上げようとしないことに象徴される、オールドメディアの偏向報道の賜物と結論付けるのが正解です。
実際、社団法人日本経済研究センターが2009年9月10日付で発表した『経済政策と投票行動に関する調査』です。これによると、オールドメディアを情報源として重視する人ほど、比例区では民主党に投票するという傾向があったことが、明確に示されています(図表)。
図表 情報源と比例区投票先の関係
(【出所】(社)日本経済研究のレポートのP7を参考に著者作成)
つまり、新聞、テレビなどのオールドメディアこそが、2009年8月の政権交代の「犯人」なのです。
反省しないオールドメディア
ただ、ウェブ主自身、2010年に開設した『新宿会計士のブログ』(※現在は無期限休刊中)のころから一貫して申し上げているとおり、オールドメディアの側からこの時代の激しい偏向報道の数々に対し、何らかの「反省の弁」、あるいは「検証」がなされたという話は一向に聞きません。
それどころか、オールドメディア側は、(メディアにもよりますが)総じて自民党に対して批判的、民主党(とその後継政党である民進党、立憲民主党など)に対してはかなり肯定的な報道姿勢を継続しているように思えてなりません。
ただ、現実には2012年12月、当時の野田佳彦首相が衆院解散に踏み切ったことで実施された総選挙で、480議席中、奇跡的な再登板を果たした安倍晋三総理が率いる自民党が294議席を獲得して圧勝し、民主党が57議席という惨敗を喫しました。
2012年12月26日に発足した安倍晋三政権は、2度の衆院総選挙、3度の参議院議員通常選挙を制するなどし、安倍総理が持病の悪化で退任する2020年9月16日まで2822日間続きました。これは戦前も含めた歴代内閣で「連続在任日数」としては過去最長です。
この安倍政権時代に、政権とメディアの力関係は大きく変わったのかもしれません。
いや、正確にいえば、安倍政権が強くなったというよりはむしろ、インターネットの力が強くなったというべきでしょうか。
もりかけ問題はメディアの問題点の象徴
その象徴が、「もりかけ問題」です。
『もりかけ問題がもたらす野党・メディアのテーパリング』などでも詳しく論じましたが、「もりかけ問題」、すなわち安倍総理の「個人的友人」(?)が経営する学校法人に安倍総理が何らかの便宜を図ったとされる疑いに関しては、オールドメディアがこの4年半、政権攻撃の材料にしてきました。
立憲議員「コロナ対策を頑張った立憲に来ると思っていました」「総理、嫌でしょうが『桜を見る会』について質問させていただきます。時間が余ればコロナ対策もやります」。これは、2020年3月4日に立憲民主党の福山哲郎幹事長(参議院議員)が参院予算委員会で発言した内容であり、立憲民主党にとって「コロナよりもスキャンダル追及が大事だ」ということを象徴する発言でもあると思います。こうしたなか、衆院選も終わりましたので、本稿では「元祖スキャンダル」である「もりかけ問題」を振り返ってみたいと思います。2021/11/03 08... もりかけ問題がもたらす野党・メディアのテーパリング - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかし、2017年10月の第48回衆院選では、やはり安倍総理が率いる自民党が465議席中284議席を獲得して圧勝し、これに対し当時の最大野党だった民進党が分裂するなどして出来上がった「希望の党」が50議席、立憲民主党が55議席にとどまりました。
有権者がこの2017年10月の時点で、「もりかけ問題」は国政上の争点ではないとする判断を下していたのです(もっとも、この2017年の総選挙は野党分裂という「敵失」にも助けられた格好だ、という言い方もできなくはないですが…)。
ただ、この「もりかけ」事件だけでなく、もうひとつ出てきたのが、コロナ禍です。
2020年9月16日、第二次安倍政権以降、ずっと官房長官を務めてきた菅義偉氏が総理大臣に指名され、菅内閣が発足。『菅義偉総理大臣の事績集:「日本を変えた384日間」』でも述べたとおり、本当にさまざまな仕事をしました。
たかが384日、されど384日。この384日には、日本の歴史を変えるほどのインパクトをもたらしました。今月4日で辞任(内閣総辞職)した菅義偉総理大臣の個人ブログサイトが更新されていたのですが、菅内閣の1年間の「功績」が24個ほど列挙されており、これが圧巻というほかありません。そんな有能な宰相を辞めさせた私たち日本国民に、反省点はないのでしょうか。東京オリパラを強行したスガは辞めろ!今年7~8月頃がピークでしたでしょうか、世間では、菅義偉内閣に対する批判が殺到し、各メディアの調査による内閣支持率も、昨年9... 菅義偉総理大臣の事績集:「日本を変えた384日間」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の推進、デジタル庁の発足、携帯電話料金改革、不妊治療への保険適用、東京2020の1年遅れでの開催など、本当にさまざまな成果を残したのですが、それらのなかでも特筆すべきは、コロナ対応です。
菅総理は5月7日に「1日100万回以上ワクチンを打つ」などと宣言したのですが、本当に6月以降、1日100万回接種が実現し、いまや日本全体で累計接種回数が1.9億回を超え、希望する国民へのワクチン接種は9割方完了したと考えて良いでしょう。
偏向報道と倒閣報道、そして大誤報
コロナ倒閣に成功し、岸田政権攻撃へ
それなのに、オールドメディアは菅総理のワクチン接種が「遅い」、「遅い」と人々の不満を煽る報道を繰り返しました。
また、7月以降、新規陽性者数が大きく増える局面では、「菅政権のコロナ対策はうまく行っていない」などとする印象操作報道を一生懸命に行い、これが菅内閣に対する支持率の低下につながった可能性はかなりあると考えられます。
結局、菅総理は9月初旬、「内閣総理大臣としてコロナ対策に専念する」と称して自民党総裁選への不出馬を表明し、10月4日に内閣総辞職に踏み切りました。
印象操作の末に倒閣するという意味では、2009年の麻生太郎内閣と同じような現象が発生した、といえるのかもしれません。
さらに興味深いのは、「その後」です。
10月4日に岸田文雄内閣が発足したのですが、その新首相に対する支持率は、「内閣発足直後」にしては非常に低調だったことが、主要メディアの調査で示されたのです(『政権支持率「ご祝儀限定的で衆院選に不安」、本当に?』等参照)。
メディア各社が申し合わせたように内閣支持率・政党支持率調査などを打ち出してきました。予想どおり、内閣支持率は不支持率を大きく上回っているものの、報じるメディアによっては、この結果に対しても、「ご祝儀は限定的」、「衆院選に不安」などとケチをつけているようです。もっとも、自民党が衆院選で、どの程度苦戦するのかについては疑問です。政党支持率に関しては、相変わらず自民党が立憲民主党を「数倍」で圧倒しているからです。「6つの世論調査」を定点観測する意味当ウェブサイトでは以前から、6つの世論調査(読売新... 政権支持率「ご祝儀限定的で衆院選に不安」、本当に? - 新宿会計士の政治経済評論 |
また、岸田首相は就任早々、10月14日に衆議院の解散に踏み切りましたが、『選挙前の情勢世論調査、選挙の公正を歪めていないか?』などでも報告したとおり、メディアは選挙期間中に何度も調査を実施し、「自民党が惨敗する」との予測を示していたのです。
選挙前の情勢分析に関するメディア記事がひっきりなしに出て来ます。そして、著者自身、どうもメディア各社から目を付けられたらしく、平日の真昼間から、読売新聞、共同通信、フジテレビなどからジャンジャン電話が掛かって来ます。端的に言って迷惑です。そして、驚くことに、メディア各社は選挙直前であるにも関わらず、平気で選挙情勢を記事にしているようですよ。平日の世論調査の迷惑電話、規制できませんかね?当ウェブサイトでは現在進行中の選挙についての話題にはできるだけ触れないという方針を取っているのですが、ただ、... 選挙前の情勢世論調査、選挙の公正を歪めていないか? - 新宿会計士の政治経済評論 |
ちなみに当ウェブサイトでは、『衆議院解散で問われる有権者の見識は「最大野党選び」』などでも申し上げてきたとおり、立憲民主党が躍進するようなことがあれば、有権者の見識が問われることになる、などと考えていました。
劣化版選挙互助会に有権者がどう審判を下すかさきほど、本日午後1時からの衆議院本会議で、大島理森衆院議長が天皇陛下の衆院解散詔書を読み上げ、これによって衆議院が開催されました。今上陛下がご即位されて以来、初の衆院解散です。こうしたなか、甘利明・自民党幹事長は本日、国会内で記者団に対し、今回の選挙を「自由主義か、共産主義か」と発言したそうですが、なかなかに言い得て妙です。当ウェブサイトでは公選法を意識し、本稿以降、とくに個別選挙区などに関する話題を控えるつもりですが、どうか有権者の皆さまにはくれ... 衆議院解散で問われる有権者の見識は「最大野党選び」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
当ウェブサイトとしては、「自民党は多少議席を減らすことはあっても立憲民主党が躍進する可能性がそこまであるのかは疑問だ」、などと考えていたのですが、世間ではそうではなかったようです。
こうしたなか、産経新聞社の『夕刊フジ』といえば、2月に拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』を刊行した際に記事に取り上げていただいた恩もあるのですが、だからといって記事を批判してはならないという話にはならないと思います。
その夕刊フジに選挙直前、こんな記事が掲載されていたからです。
自民が“大幅減” 小選挙区で苦戦、37議席失う 立民は躍進、候補者一本化効果で20議席増 選挙プランナー・松田氏分析
―――2021.10.29付 zakzakより
さりげなく記事タイトルを改編した時事通信
結論からいえば、この夕刊フジを含めた選挙予測は大外れだった、というわけです。
もっとはっきり申し上げてしまえば、こうした既存メディアの報道に対しては、どうもなかば眉に唾を付けながら眺めていたフシがあります(※といっても、当ウェブサイトではポリシーとして、選挙予測はしないことにしています)。
そして、すでに『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』などでも速報したとおり、蓋を開けてみたら、10月31日の選挙結果は、自民党が15議席ほど勢力を減らしたにせよ、ほぼ危なげない勝利を収めたといえるのではないでしょうか。
今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?... 衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論 |
それなのに、オールドメディア側は、10月31日午後8時の時点で「自民党の単独過半数は微妙」、「立憲民主党が大躍進」などとする観測を報じていたのですが、あとから振り返ったときのためという意味も込め、選挙当日のオールドメディアの迷走の証拠として、時事通信のこんな記事について紹介しておきたいと思います。
「自民1強」に疑問符【21衆院選】
―――2021年11月01日03時48分付 時事通信より
記事タイトルに「自民1強に疑問符」、とありますが、じつは、この記事のタイトル、著者自身が当初、10月31日深夜に閲覧した時点では、『顔変える戦略不発、「自民1強」に終止符』でした。
時事通信は、記事タイトルを途中で改変した!
- 改変前『顔変える戦略不発、「自民1強」に終止符』
- 改変後『「自民1強」に疑問符【21衆院選】』
この記事を読んだ人は当初、タイトルを眺めて、「あぁ、自民1強に終止符が打たれたのか」、と思ったに違いありません。残念ながら著者自身、うかつにもその画面コピーを保存し忘れたのですが、これについては時事通信社が発信したツイートを見ると、オリジナルの記事タイトル、そしてそのリード文が残っていることが確認できます。
時事ドットコム(時事通信ニュース)
4年ぶりの衆院選で自民党は、大幅に議席を減らす見通しとなりました。不人気の菅義偉前首相から岸田文雄首相に「党の顔」を代えることで、逆風を和らげる戦略は不発。有権者は「自民1強」にノーを突き付けました。
―――2021/10/31 23:46付 ツイッターより
記事のリード文についても、改変前後のものを示しておきましょう。
記事リード文
- 改変前「4年ぶりの衆院選で自民党は、大幅に議席を減らす見通しに。不人気の菅義偉前首相から岸田文雄首相に『党の顔』を代えることで、逆風を和らげる戦略は不発。有権者は『自民1強』にノーを突き付けた」。
- 改変後「4年ぶりの衆院選で自民党は、過半数を維持したものの、議席を減らした。不人気の菅義偉前首相から岸田文雄首相に『党の顔』を代えることで、逆風は和らいだが、有権者は『自民1強』に疑問符を突き付けた」。
時事通信の大誤報
何とも苦しい言い訳です。
当ウェブサイトではすでに『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』などでも報告したとおり、自民党はたしかに261議席と公示前の276議席から15議席減らしていますが、これは単独過半数(233議席)のラインを大きく上回ります。
今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?... 衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論 |
また、委員長職を独占するための、俗にいう「絶対安定多数」のラインが261議席であり、議長を輩出すれば260議席とこのラインを1議席下回ってしまいますが、連立相手である公明党が32議席であるため、自公合わせて292議席で、引き続き安定的な政権運営が可能です。
ついでに『メディア利権と野党利権は衆院選を機に崩れ始めたのか』などでも触れたとおり、広い意味での「改憲勢力」が、衆議院側で3分の2を超えたという点についても無視できません。
いさぎよい自民党関係者、往生際が悪い立憲民主党関係者野党も官僚もマスメディアも、結局のところは「利権」という問題に結びつきます。当ウェブサイトの持論ですが、日本を悪くしてきたのがこの3者でもあります。ただ、日曜日の衆院選の結果、現在はこの3つの利権のうち、メディア利権と野党利権が同時に崩れようとしているように見受けられます。利権というのは見かけはしっかりしていても、崩れ始めると意外とあっけなかったりするものですが、さて、日本の利権はどう動くのでしょうか。利権の問題利権を持つ官僚機構という問題... メディア利権と野党利権は衆院選を機に崩れ始めたのか - 新宿会計士の政治経済評論 |
というのも、立憲民主党と距離を置く日本維新の会が41議席、国民民主党が11議席をそれぞれ獲得し、自公と合わせた議席数は345議席(※議長を除くと344議席)で、3分の2(310議席)を大きく上回っています。
もちろん、公明党や国民民主党などを「改憲勢力」とみなすのは少し乱暴ですが、たとえば自民党としては、公明党の了解がなくても、日本維新の会や国民民主党と合意すれば、議長を除いて312議席とギリギリ改憲の発議が可能です。
いずれにせよ、当初の「自民1強に終止符」というタイトル、「自民1強にノー」「自民党が大幅に議席を減らす」というリード文自体、かなり不正確です。大誤報と言っても過言ではないでしょう。
それなのに、時事通信がこれを「訂正」「読者の皆さまへのお詫び」などとせずに、シレッと「サイレント訂正」をしてしまったのです。
本当に、お粗末です。
しかも、時事通信といえば、共同通信と並び、地方紙など多くのメディアに記事を配信する「配信元」のひとつでもあります(事業規模などは異なるようです)。
正直、通信社自身がこんなことをするから、マスメディアに対する信頼が損なわれるのでしょう。
「真相究明」と「再発防止策」がない、腐敗し切った業界
著者自身も不肖ながらビジネスの世界に身を置いていて、何かミスをしたときには、それに関してひととおり真相の究明と再発防止策を講じる、ということの重要性を、ある程度は認識しているつもりです。
もしもオールドメディア業界にその認識があるならば、まずは①2009年8月30日に何が発生したのか、②その原因は何なのか、③そのことで日本にどんな影響が生じたのか――、について、ちゃんと真相究明を行い、再発防止策を講じるのが筋でしょう。
しかし、くどいようですが、オールドメディア(あるいは個別の新聞社やテレビ局など)がそれをやったという話は、現時点までに見聞しません。
それどころか、2017年以降の「もりかけ」報道、今年のコロナ禍報道などにみられるとおり、人々の行動を誤らせるような偏った報道、不適切な報道は留まるところを知りません。
メディアといえば、不祥事続きです。ここ数ヵ月に発生した事例をいくつか列挙するだけでも、この業界が腐敗し切っていて、自浄作用が働かなくなっていることは明らかでしょう。
たとえば北海道新聞では、自社の新人記者が不法侵入により私人逮捕されるという不祥事を起こし、自社内で調査報告書を作成したものの、それを登録読者限定でしか公表せず、しかも記事に「noindexタグ」を付けたという事例がありました(『社内調査報告記事にnoindex設定した北海道新聞』等参照)。
「noindexタグ」を仕込む北海道新聞に「国民の知る権利」を騙る資格はない以前の『許されない違法取材:新聞記者、建造物侵入容疑で逮捕』で、北海道新聞の記者として勤務する22歳の女が建造物侵入容疑で逮捕された、とする話題を取り上げました。これに関する北海道新聞社の調査報告書が掲載されたらしいのですが、ここで極めて不自然な点が2つあります。それは、検索エンジンに引っかからないことと、会員登録しなければ記事自体が読めないことです。違法取材・建造物侵入者逮捕事件の「その後」以前の『許されない違法取材:新聞記... 社内調査報告記事にnoindex設定した北海道新聞 - 新宿会計士の政治経済評論 |
テレビ朝日は東京五輪閉会式の当日、同社関係者がコロナ禍にも関わらず、国や東京都などの自粛要請を無視して大人数で集まってカラオケ店で打ち上げを行い、女性局員が泥酔してビルから転落するという不祥事を起こしています(『徹底して自分に甘いテレビ朝日:説明は明らかに不十分』等参照)。
せめて1ヵ月くらい自主停波しては?「甘い、甘い、甘すぎる」!昨日の『「転落事件」から1ヵ月:ダンマリ決め込むテレビ朝日』の「続報」が出てきました。株式会社テレビ朝日が(なぜかPDFファイルで)例の不祥事についてやっと1ヵ月ぶりに詳細を発表したのですが、事実関係の調査と発表になぜ1ヵ月もの時間を要したのか、そして関係者に対する処分があまりにも軽すぎないか、読めば読むほど疑問に感じます。テレビ朝日がやっと報告書を公表昨日の『「転落事件」から1ヵ月:ダンマリ決め込むテレビ朝日』では、テレビ朝日とい... 徹底して自分に甘いテレビ朝日:説明は明らかに不十分 - 新宿会計士の政治経済評論 |
さらには、厳冬期の北海道を踏破しようという無謀な若者の話題を美談として報じた琉球新報の事例もありましたが(『真冬の北海道野宿計画を「美談」にしたメディアの責任』等参照)、これについては本人が諦めるというオチもつきました(『メディアの意識は一般社会常識と比べ遊離していないか』等参照)。
先日の『冬の北海道に徒歩で挑む沖縄の若者に辛辣な大人の意見』で取り上げた若者の日本列島縦断という話題を巡っては、その後も北海道在住者などを中心に、「無謀だ」、「せめて時期を選んでくれ」、といった悲痛な意見が寄せられているようです。ただ、個人的な見解ですが、おそらくこの方は北海道に上陸すらできずに、下手をすると西日本を抜けることもできずに旅を終えるのではないかという気がしてなりません。こうしたなか、もうひとつ気になるのが、この無謀な計画をあたかも美談であるかのごとく報じたメディアに責任はないの... 真冬の北海道野宿計画を「美談」にしたメディアの責任 - 新宿会計士の政治経済評論 |
先日から当ウェブサイトで取り上げている、厳冬期に徒歩で北海道を目指そうという沖縄の青年の話題については、結局、ご本人がその挑戦の無謀さを理解したうえでいったん中止にするという結末を迎えたようです。未来ある若者が命を落とすことにならず、まずはホッとしている次第ですが、その一方で、この一見ささいな(?)騒動の背景には、やはり「メディアのセンスが社会常識と著しく遊離している」という問題があるように思えてなりません。無謀旅行騒動の顛末『冬の北海道に徒歩で挑む沖縄の若者に辛辣な大人の意見』や『真冬の北... メディアの意識は一般社会常識と比べ遊離していないか - 新宿会計士の政治経済評論 |
こうした事例を列挙し始めると、本当にキリがありません。
そして、反省しない業界というものは、得てして同じような事件・事故・不祥事を繰り返すものです。
ことに、現代社会ではインターネットが急激に社会的影響力を増しています。
インターネットの世界では、オールドメディアであろうがニューメディアであろうが、人々はそのメディアに書かれている内容を読んで、そのレベルが高いか低いかを判断します。独占競争で偏向報道を続け、社会から批判されても頑なに反省をしないという態度が許される空間ではありません。
実際、本稿でも取りあげたとおり、いくつかのメディアの報道記事は長くインターネット空間に残ってしまいますし、選挙前の報道についてもこうやって当ウェブサイトのような意地悪なサイトに取り上げられてしまう、というわけです。
いずれにせよ、今後、オールドメディアの社会的影響力は、低下することはあっても上昇することはないのでしょう。
菅総理、辞める必要もなかった?
ちなみに、メディアの調査などでは菅義偉内閣への支持率が極端に低下していたこともあり、このことが菅総理に続投を断念させた原因のひとつだった可能性はあるのですが、今になって思えば、菅総理が支持率など気にせず、続投していたとしたら、どうだったのでしょうか。
意外と、自民党は危なげなく勝利を収めていたかもしれません。
そのように考えるならば、じつはそもそも菅総理自身が辞める必要はなかったのではないか、という気もします。
いや、もっといえば、どこかのタイミングで、「記者クラブが内閣官房長官記者会見などを主催する」、という形態ではなく、総理大臣や各大臣が直接、ニコニコ動画やYouTubeなどのプラットフォームなどを通じて会見し、それにチャット機能で一般視聴者から質問を受ける、といった展開もあるかもしれません。
それにコロナ禍でリモートワークが定着しつつあるわけですから、いっそのこと記者会見は一般国民にネット開放してしまえば良いのではないでしょうか。
そうなると、新聞、民放、NHKなどの存在意義はさらに低下するでしょうし、この際、NHKについても解体・廃局し、都心部の大量の不動産物件や1兆円を超える莫大な金融資産を国庫返納させれば財政再建にも寄与します。
こうした議論こそが、今後の日本で求められているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
View Comments (34)
菅首相が辞めた効果(影響)は、有ったんじゃないかな。
接戦の小選挙区の分くらい。
菅総理があっさり退任すると宣言したことで、野党やメディアは攻め手を失いました。また、自民党総裁選に注目が集まったことで、野党の国益と関係ない(あるいは明らかに害する)稚拙な主張は、ほぼ相手にされず埋没しました。党全体のことを考えたガースーは、やはり策士だったのでは?
メディアだけでなく国民の悪意は想像以上に大きかったと思います。ただそれが煽られた軽薄な流行モノでしかなく、自分が引けば簡単に弱まってしまうとも見抜いていた。
引かなければその悪意も継続し総裁選も実質行われないようなものになってたと考えると、続けたまま同様の勝利は厳しかったと考えます。
>菅総理があっさり退任すると宣言したことで、野党やメディアは攻め手を失いました。
これね、効果あったと思うな。
徳川慶喜の大政奉還を連想しました。大政奉還で討幕派は一時は攻め手を失ったんだから。
そこを謀略などで強引に切り拓いたのが西郷隆盛の武力討幕だった。
そもそものこと、
メディア各社が出していた菅政権への支持率が真に民意を反映していたのかは極めて怪しいと思われます。
未曾有の事態で結果として多少の不手際があったとしてもそれは致し方ないことですし、
すべての元凶を政権に押し付けるほど国民は馬鹿じゃないと思います。
今回の総選挙は投票には行ったものの個人的にはあまり気乗りがしませんでした。
あんな理不尽な偏向捏造報道で菅さんが退陣せざるを得なくなったのが納得できなかったからです。
売国メディアをいかにして殲滅するかが日本の最重要課題です。
>反省しないオールドメディア
記事が事実と違ったわけじゃない!事実が記事と違っただけなんだ!
щ(゚д゚щ)ゴラー
ってな感じで、反省すべきは「事実」の方だと思ってるんじゃないかな?
>七味様
それなんてシュターデン提督w
思うに、オールドメディアと反日野党はメルカッツとファーレンハイトそしてシューマッハの居ない門閥貴族連合とトリューニヒトの居ないトリューニヒト派閥(ドーソン大将とか。)なんじゃ。
…トリューニヒトのような傑物に出てこられても困りますが(苦笑)
出口調査の仕組みを聞いてメディアの票読みが大きく外れた理由が分かった。
そもそも出口調査に応じる人は政権に不満をもつリベラル派が多いので、データをそのまま使うと予想が外れることはメディアも知っている。そこで過去の経験等で補正を施すらしい。
今回この補正が全く機能しなかったということ。
これを聞いて、最初に浮かんだ疑問は、「じゃあ無作為に電話をかける世論調査は?」
こっちのデータは補正しているのか? 常に内閣支持率が低い理由がわかった気がする。
であれば、あれは世論調査といえるのか。単なる「不平調査」「リベラル意見箱」じゃないのか。
有権者と直接接触でき、かつ選択肢が明確な出口調査の結果ですらアレですから、普段の世論調査の信頼性はさらに低いと言わざるを得ません。「世論調査」は「世論操作」の効果を確認・増幅するためのツールにすぎないと思います。調査時期も極めて志位的、いや恣意的ですし。
出口調査と実際の議席数の乖離がひどくなったのは、メディア不信が進んだ結果といえるのでは?
YouTube 「なぜ議席予測が外れたのか?・・」↓
https://www.youtube.com/watch?v=-aYAjHitiec
大きく外した順にいえば、その1番はNHK、2番はフジテレビでしょうか。
上記のYouTubeを見る限りでは、報道各社ともにまだまだ予測が外れた理由を解明できそうにはありません。
世論調査の方法が正しいかどうかを判断する数少ない手段の一つは議席予測とその結果の比較なのに、それを外してしまった。
NHKおよびその他のマスコミさん、「外れた理由を解明して、それを修正した」と報道して、それを次の参議院選挙で証明しないと、あなたたちの世論調査は今後紙くず報道の扱いを受けてしまいますよ。
このYouTubeの下にある公開コメントも面白い。
出口調査をやっても、それに正直に答えるとは限らない、と。
もしも、今のマスコミには正直に答えたくないという人が増えているならば、世論調査を修正する方法はないだろう。
ご紹介の動画おもしろかったです。。
最後で名前の出ていた方のブログを拝見したところ、各社の議席予測を小選挙区の接戦区に絞って数値を分析していて、興味深かったです。
2021年衆院選 各社情勢(結果予測)に関する考察
http://blog.sugawarataku.net/article/189107231.html
・小選挙区全体での的中率は、各社85%程度と低い値でほぼ変わらない
・接戦区の得票率予測に絞ると、読売が自民に辛め、朝日が党の偏りなく的確だった。選挙区個別を見ると朝日が全て正確だったとは言えない。
まあ、「マスコミが選挙結果に影響を与えるべく数値を操作している」陰謀論については、このブログでも否定していますね。中の人に近い人ほどその傾向があるように思います。
今回のハズレが参議院選挙でどれだけ修正されるのでしょうね。
あんまりハズレが続くようだと、弊害と言われるようになると思います。
朝日は自分がリベラルだと自認しているので、保守寄りに大きく補正したのかな?
朝日は10月25日に自民単独過半数獲得を報じていた。
今回は電話とネットを併用して調査をしたとのこと。
では週刊朝日、アエラのあの記事は何だったのかという疑問はさておきw
今後はマスコミ各社も電話とネットを併用した世論調査をするようになるでしょう。
製造業における《製造物責任法》や《トレーサビリティ》の価値観が、メディア界では自力ではなく他力で行われる、という事ですかね…。
誰もが心が強い訳では無いし、誰でも心が弱くなる瞬間があるだろうし、時に魔が刺す事もあるだろうってのは分かりますが、魔が刺した事を誤魔化そうとして嘘を吐くと、嘘が嘘を呼び込んで、帳尻が合わなくなってしまうんじゃないかなーって。
自らの間違いをシレっと無かったことに修正しようとする姿勢は言語道断ですが、まぁ、確信犯なので、お詫びも反省もしないでしょうね。
世論調査、予測と言えば、イギリスのEU離脱、前々回のアメリカ大統領選挙、そして今回の日本の国政選挙ですが、マスコミの予想は当たらなくなってきたように思います。恐らくですが、今までは、「こういう報道を繰り返せば世論はこうなる」っていう、自身の願望変数みたいなのが高かったけれども、それが通用しなくなってきたので、ハズレも大きいという事でしょうか。
どうでもいいことですが、社内で「きのこの山」と「たけのこの里」を両方1箱ずつ配って、「どちらを先に食べ終わるか」を元にどちら派が多数か検証したところ、見事に「たけのこの里」が勝ちましたw
私は「きのこ」派だったので、残念な結果となりましたw
失礼しました。
やっぱり、きのこ派たけのこ派争いでも自身の願望変数が高いと予測を見誤りがちですかね?!
…こちらもスレ違い失礼しました。
今思えば自民党歴代総理の評価もメディアからの情報ですし田中角栄氏も本当に悪人だったのかも怪しですね。
風と太陽、ではありませんが本当に政権交代を望むのなら野党を甘やかすのではなく健全な野党に育てる方が早いと思います。
中世に逆行したかのようなメディアによる魔女裁判、キリストの裁判を想起させるようなやり方はあまりにも時代錯誤的。
科学技術=人類の知恵と言えるので、人類の知恵の最先端であったオールドメディアがまた人類の知恵の最先端であるネットに駆逐されようとしているのは当然と言えるのかもしれません。
私はオールドメディアの意識改革には期待していません。無理だと思ってます。
そういえば今回の選挙では10代の投票率が大きく伸びたそうです。
民主党が推進し、オールドメディアが後押しして実現した選挙権年齢引き下げも自民党の票を増やすだけの結果になりました。
マスメディアは、かつての民主党政権誕生の「夢をもう一度」を妄想し続けているのかも知れませんが、「市民」ならいざしらず国民はそう簡単に流されなくなったということです。
自民党総裁選の時も「公平を期する」とかで、立憲民主党の議員ばかりTVに出していましたね。 維新や国民民主も野党なのですが。
少し前は「大きなかたまり」というキャッチフレーズ、今回は「野党協力」ですか?(ここでも維新を外しています) マスメディアと立憲民主党が中心となり主にTVで共闘しているという印象です。
単に話題作りでパフォーマンスのみをやり過ぎたことが、民主党政権惨敗後の連敗続きの原因だと思っています。 具体的な例の一つに、志位さんを中心に配置して維新抜きの各野党党首が拳を突き上げたり、それぞれの腕を持ち上げたりとか・・・笑しか出てこない。
立憲民主党さんは、野党間の選挙協力(特に日本共産党との)をもう少し静かにやっていたら、ここまで比例票で惨敗しなかったのではないでしょうか。 それにしても、日本共産党との協力とかどこから湧いてきたのでしょうかね。