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だれが首相・外相になっても日韓関係は何も変わらない

昨日の『岸田首相外交デビューも韓国の大統領とは遭遇すらせず』でも紹介したとおり、岸田文雄首相は英国でさっそく、「AUKUS」構成国である英米豪各国との会談をこなしましたが、韓国大統領とは「遭遇」すらなく、日韓首脳会談についてもまったく実現しませんでした。こうしたなか、「宏池会のナンバー2」でもある林芳正氏の外相への就任観測が高まっていることをうけ、韓国メディアが「駐日韓国大使との面会など対話の糸口を見つける可能性もある」などと述べたのだそうです。

ゼロ泊2日の強行軍:英米豪と相次ぎ会合

昨日の『岸田首相外交デビューも韓国の大統領とは遭遇すらせず』では、ゼロ泊2日という強行軍で「外交デビュー」を果たした岸田文雄首相が、米国、英国、豪州(つまりいわゆるAUKUS諸国)との首脳会談ないし懇談をこなしたという話題を取り上げました。

開口一番に「FOIP」、菅総理の大きな遺産岸田首相の「外交デビュー」は「ゼロ泊2日」の強行軍でスタートし、報道や外務省発表などによれば、英米豪3ヵ国との首脳との会談ないし懇談が行われました。そのなかでも強調すべきは「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」重視路線がしっかりと引き継がれていたことでしょう。そして、今回の強行軍でもうひとつ特徴があるとしたら、そもそも「あの国」の大統領とは「遭遇」すらしなかったことを、その国のメディアが記事にしていることではないでしょうか。岸田首相「ゼロ泊2日」...
岸田首相外交デビューも韓国の大統領とは遭遇すらせず - 新宿会計士の政治経済評論

その際、昨日の時点で日英首脳会談については「外務省ウェブサイトには掲載されていない」と申し上げたのですが、これについては現時点で日米、日豪、日英の3つの会談についてのリンクが揃っていますので、まとめて提示しておきたいと思います。

日米首脳間の懇談

―――2021年11月2日付 外務省HPより

日豪首脳会談

―――2021年11月2日付 外務省HPより

日英首脳会談

―――2021年11月2日付 外務省HPより

昨日も申し上げましたが、岸田首相がこの「強行軍」のなか、この3ヵ国を選んで首脳会談を実施したというのは、大変に示唆に富んでいます。

そして、どのリンクを見ていただいてもわかりますが、岸田首相はジョー・バイデン米大統領、スコット・モリソン豪首相、ボリス・ジョンソン英首相の3者とは、どの会見でも共通して「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の推進に言及しています。

FOIPこそ日本の新たな命綱に!

外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ』などでも報告したとおり、このFOIP自体、いまや日本にとっては外交、防衛協力などの面においては日米同盟に次ぐ重要性を持っています。

FOIPを最優先にした日本外交が迎えた大きな転換点昨日の『日本政府、外交青書でFOIPから中韓を明らかに除外』で「速報」的に取り上げたとおり、今年の外交青書における最大のポイントは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の優先順位が中韓よりも上位に来たことではないかと思います。まさに、日本外交にとっての転換点でしょう。外交青書から判明する「日本外交の転機」外務省が27日、『外交青書一覧』のページにおいて、『外交青書・令和3年版(※PDF版/大容量注意)』を公表したとする話題は、昨日の『日本政...
外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ - 新宿会計士の政治経済評論

その最大の理由はいうまでもなく、中国の脅威に対処しなければならないためですが、それだけではありません。

そもそも国と国とが仲良くおつき合いするためには、基本的な価値を共有していることが望ましく、こうした基本的価値を共有していない相手国とは付き合うだけでも一苦労です。

たとえば、日本は自由・民主主義国であり、法の支配が貫徹する国家ですが、そんな日本が自由のない国、軍事独裁国家、共産主義国家、人治主義国などとうまくおつき合いしていくためには、「相手が日本と基本的価値を共有していない」という点を念頭に置かねばならず、それだけで大変な負担です。

また、「約束を守らない」、「条約を守らない」、「ウソをつく」、「武力で相手を威嚇する」、といった国があれば、そんな国とはそもそもの友好関係を構築する以前に、相手と基本的なレベルで意思疎通ができないということでもあります。

だからこそ、日本がFOIPを推進し、FOIPに賛同する国との関係を優先するというのは、国家戦略としては極めて正しいと言わざるを得ず、FOIPにコミットする国・理解を示す国、とくにクアッド(米豪印)、カナダ、ニュージーランド、英国、台湾、ASEANなどとの連携が大事です。

逆にいえば、①FOIPに強くコミットしている国、②FOIPにコミットしているがその度合いが弱い国、③FOIPにコミットするに至ってはいないが理解してくれている国、④FOIPにまったくコミットしていない国、⑤FOIPを敵視している国――などとのあいだでは、それに応じた外交関係とならざるを得ません。

FOIPは日本の外交にとっては命綱なのです。

「林氏が外相就任で韓日関係改善」…?

さて、ここで「④FOIPにコミットしていない国」の典型例は韓国であり、「⑤FOIPを敵視している国」の典型例は中国とロシアでしょう。

そして、その韓国において、「このFOIPという認識がまったく欠落した状態で新聞記事を執筆してみたら、こんな具合になってしまった」という典型例を発見しました。出典は、韓国の「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)です。

岸田首相の最側近、林元文科相が外相に起用されれば韓日関係は?

―――2021-11-03 07:28付 ハンギョレ新聞日本語版より

これは、甘利明氏が自民党幹事長職を辞することに伴い、自民党幹事長に起用される茂木敏充外相の後任として、林芳正氏が「有力視されている」という点に注目した記事です。

この点、「保守派」(?)とされる中央日報にも数日前に似たような記事が掲載され、これについては当ウェブサイトでも昨日の『日本は日韓諸懸案の「解決」に積極的に動く必要はない』でも紹介したばかりですが、「左派メディア」でも似たような記事が出て来るというのには、正直、驚きます。

衆院選後の日本外交に韓国の姿見当たらず衆院選後の外交がさっそく始動しました。岸田首相はCOP26参加のために訪英中であり、また、自民党幹事長に起用される茂木外相の後任にはだれが就任するのかも気になるところですが、それ以上に興味深いのは、日本外交に韓国の姿がいまのところ見えてこない点です。そして、その韓国は米中両国間での戦略的あいまい性が破綻しそうになっているようなのですが、その一方で岸田首相はCOP26で文在寅韓国大統領と遭遇すらしなかったようです。日本外交に「韓国」なし?さっそく始まった衆...
日本は日韓諸懸案の「解決」に積極的に動く必要はない - 新宿会計士の政治経済評論

ハンギョレ新聞によると、林氏自身が「岸田文雄首相率いる穏健派の派閥『宏池会』のナンバー2とされる人物」で、その宏池会が「韓国や中国など周辺国との関係を重要とする伝統」を持っていて、林氏自身が「その伝統」を「忠実に受け継いでいる」などと主張しているようなのです。

林氏は河村建夫氏に引導を渡した張本人

この点、たしかにハンギョレ新聞の指摘どおり、林氏は『文藝春秋』11月号のインタビューで、中国に対する「単純な強硬姿勢だけではうまくいかない」、「日中経済は切っても切れないほどに絡み合っている」などと述べたことは事実でしょう。

この点、林氏のこの発言は、基本的には「一般的な貿易と経済安保の線引きが重要になってくる」という意味においてなされたものと考えて良く(※著者私見)、いわば、「現在の日中関係を制約条件として考えるべきだ」という程度の指摘に過ぎないというのが、個人的な見方です。

ただ、ハンギョレ新聞にいわせれば、こうなります。

こうした脈絡から、林氏が外相に起用されれば、行き詰まっている韓日関係を変えるきっかけになるという期待の声が上がっている」。

…。

だから、どうしてそうなるんでしょうか?

この点、ハンギョレ新聞のいう「林氏は宏池会のナンバー2だから中韓との関係を重視している」という点が事実だったとしましょう。

韓国が日本との約束(たとえば慰安婦合意)、国際法や条約(たとえば日韓請求権協定、主権免除原則、外交関係に関するウィーン条約など)を破っている状態を韓国自身が是正することなしに、無条件に日本が韓国に譲歩するとでも思っているのでしょうか。

そもそもハンギョレ新聞の認識が不足している部分があるとしたら、林氏自身、日本国内の「親韓派」の最右翼だった河村建夫・前日韓議連幹事長の山口3区からの衆院選立候補を断念させた張本人である、という事実です。

当ウェブサイト流に言わせていただければ「古き悪しき日本の親韓派政治家」のひとりである河村氏が引退したことで、今後は日韓議員外交というチャネルもこれまでほど円滑に機能するという保証はなくなりました。

その意味では、林氏こそが日韓の議員外交チャネルを「機能不全」に陥らせた張本人でもあるのかもしれません。

日韓関係深化はもう無理:中国も怒るはず

さて、日本が韓国との関係を深めることが難しくなった大きな原因は、韓国が歴史問題など、日本との間でさまざまな懸案を発生させていることにありますが、それだけではありません。

結局のところ、韓国が中国との関係悪化を恐れるあまり、「戦略的あいまい性」などと称し、米中双方間で中立を維持しようとしているからです。

現在の米中関係は、米国、中国それぞれの同盟国に対し、「どちらに着くのか」という選択を迫るくらいには緊張が高まっていると考えて良く、当然、韓国のような態度は米国からは是認されなくなるでしょう。

だからこそ、米中間で旗幟を鮮明にしなければならないのですが、この事情は日本であれ、韓国であれ、台湾であれ、同じことがいえます。

ところが、日本は早いうちからFOIPを提唱し、米国とガッチリ同盟を組んでいる立場ですが、韓国はいまだにFOIPにコミットしようとしていません。

また、韓国は中国との関係においても、米国、日本の両国と距離を取らねばならず、とりわけ直接同盟を結んでいるわけでもない日本とは、下手に防衛協力を復活させようものなら、中国から何を言われるかわかったものではありません。

いずれにせよ、このように考えていくと、今後、日本で自民党政権が続く限り、そして韓国が日本との約束を破り続けている限り、だれが首相になっても、だれが外相になっても、日韓関係が深化する方向には進まないと考えておいて間違いないと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 福島に対する姿勢や自称徴用工など問題を引き起こしてから解決することなく関係改善のポーズだけ見せて妥協を飲ませようとする手法ですね。
    次期大統領選に向けて小さく外交点を稼ごうとしているのでしょう。ハンギョレも片棒を担いでいると。
    まあ日本が相手にしなければ逆にそのポーズが韓国民から不評となることには気づいていないようですが。

    東京五輪外交が頓挫した現在、他に動機は見たありませんね。終戦宣言なんかまだやっている時点で米国の忠告を聞く姿勢にもなっていないでしょう。

    このまま一人遊びを開発していく様子を日本としては冷淡に監視していくのが望ましいですね。
    他者の失敗も勉強にはなりますし。

  • ここんとこ日本からのメッセージは「約束守ってね」で一貫してるのです♪
    なのに「約束を守らなきゃだめなんじゃないか?」という意見がいっさい出てこないのも、すごいものなのです♪

  • >だれが首相・外相になっても日韓関係は何も変わらない
    自民党政権のうちは、変わらないですね。

    >だから、どうしてそうなるんでしょうか?
    朝鮮脳だからでしょう。

    >日韓関係深化はもう無理:中国も怒るはず

    中国は、韓国を自由民主主義側への窓口にしたいので、怒らないと思います。

    >米中間で旗幟を鮮明にしなければならない

    アメリカは、そう考えるかも知れませんが、中国は明確にアメリカ側に立たなければ良いと考えるでしょう。

    • 朝鮮脳では「見たいものしか見ない。見たくないものは見えない」ので、こういう分析になるのでしょうね。

  • 民主主義国家においては、民意に反した政策は続きにくいものです(もちろん民意は万能ではありませんので、時の政府がリスクを取ってでも、国益にかなうと判断すれば、逆になることも例外的にありえます)。日本の対韓政策が改められたのは、民意が変化したからです(まだ一部には”知識人”と称される人が残っていますが)。従って、首相が変わろうが、外相が変わろうが、変更になるわけがありません。同様に、韓国の政策も、韓国民の民意が変わらない限り、”国際法違反ではなく解釈の問題””被害者中心主義で解決を”という独りよがりの解決法から変わらないでしょう。大統領に誰がなろうと同じです。来年以降の韓国の新大統領が、国益を考え、民意に反する政策を採る可能性はゼロではないでしょうが、期待薄だと思います。とすれば、日本としては、日韓関係が段階的に先細り(テーパリング)する前提で、諸政策を立案・推進していかねばなりません。韓国マスコミがその覚悟もなく、(日本側の)首相や外相の交代といった表面的な事象に期待を寄せるのは笑止の限りです。

    • 二階が幹事長になった頃は、国民の間にもまだ韓国融和派が多かったからね
      その二階も、辞める直前頃は韓国融和路線に党内を引っ張るのができない感があったね

    • 全く同感です。もはや行き着くところまで行くしかないのでしょう。いずれ韓国が衰退した時に目が覚めるのではないでしょうか。

  • 誰が大統領でも左右に関わらず天安門軍事パレードで黄色のスーツ!

    男性が着ると、ただの芸人。

  • >「強行軍」のなか、この3ヵ国を選んで首脳会談を実施したというのは、

    正確にはその3ヵ国に加えてベトナムとの合計4ヵ国と首脳会談を行ったのですね.

    ソース:同じく11月2日付の外務省の下記ページ

    日ベトナム首脳会談
    https://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea1/vn/page3_003148.html

    言うまでもなく我が国の船舶の南シナ海における航海の自由・安全を確保する上で,ベトナムは極めて重要な場所にあります.だからこそ,同海域での共産チャイナの横暴にベトナムが対処するのに必要な巡視船などの装備の幾つかを無償供与する等,対中問題において日本とベトナムとは互いに相手の協力を必要とする関係となっているので,日本が追求するFOIPの理念を実現する上ためにも,米英豪に加えて短時間であってもこの機会を捉えてベトナム首脳と意見交換をしたのは非常に良かったと思います.

    FOIPという理念の実装母体であるクァッド参加国の残り1つのインドのモディ首相もグラスゴーにいらっしゃった様ですが,短時間の会談はおろか(バイデン大統領とのように)極く短時間の懇談(立ち話)もセッティング出来なかったのは,恐らくは互いのスケジュールが合わなかったという理由でしょうが,少し残念でした.