民主主義「国家」としての実績を着々と積み上げる台湾

「分断と対立を生み出すのが得意な偽善者もいる」=中国共産党の自己紹介

当ウェブサイトでは先般より、日本にとっての極めて重要な「隣国」についての話題を取り上げることが増えています。中国の軍事的野心が世界の平和と繁栄の脅威となりつつあるなか、日本が真っ先に連携すべき「自由民主主義『国』」のひとつこそ、台湾である、というのが当ウェブサイトなりの持論なのですが、これを巡っていくつか興味深い話題が出て来ました。

日本外交と台湾

日本外交の優先順位が変わった!

日本政府、外交青書でFOIPから中韓を明らかに除外』や『外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ』などでも詳述したとおり、日本政府が4月27日付で公表した『外交青書 令和3年版』(※PDFファイル/大容量注意)の記載が昨年度と比べ大きく変わりました。

そのなかでもとくに大きな変化は、「自由で開かれたインド太平洋」、あるいは英語の “Free and Open Indo-Pacific” を略した「FOIP」という用語の重要性が、飛躍的に高まったことでしょう。

たとえば、令和2年度の外交青書では、『日本外交の6つの重点分野』には、1番目に日米同盟、2番目に近隣諸国(中国、韓国、ロシアなど)が置かれていましたが、令和3年度にはこれが『日本外交の7つの重点分野』に改められ、日米同盟の次にFOIPが置かれました。

そして、FOIPのなかに、「日米豪印クアッド」、「欧州連合(EU)」、「東南アジア諸国連合(ASEAN)」などが置かれたため、あくまでも個人的印象に基づけば、日本の外交における優先順位は次のように大きく変化したように読めてしまいます。

  • 令和2年度…米国>中国、韓国、ロシア>北朝鮮問題 など
  • 令和3年度…米国>豪州、インド>EU、ASEAN>中国、韓国、ロシア>北朝鮮問題 など

台湾は日本の「重要なパートナーであり大切な友人」

ただ、このFOIP以外にも、極めて重要なメッセージがいくつかあります。

そのひとつが、台湾でしょう。

日本政府が台湾を「国」として認めていないことは事実ですが、その反面、近年、日本は台湾を「極めて重要なパートナーであり、大切な友人」に位置付けています。

たとえば、令和2年版と令和3年版を比べてみると、こんな具合です。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である。」(令和2年版P47)

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である。」(令和3年版P55)

令和2年版の「普遍的価値を共有し」が令和3年版では「基本的価値を共有し」に改められていますが、それ以外は同じです。

個人的主観で恐縮ですが、日本外交において、「基本的価値を共有する相手」という表現は、最上級の形容詞のひとつであり、現在の日本がそれだけ台湾を重視しているという証拠でしょう。

というよりも、外交的修辞だけでいえば、すでに「台湾>中国」、「台湾>韓国」、「台湾>ロシア」なのです。

台湾は経済面でも重要なパートナーに!

考えてみれば、ウソツキ国家、無法国家などに囲まれた日本にとって、台湾は非常に珍しい自由・民主主義国家です。台湾もさまざまな曲折がありましたが、現在はほぼ完全な形で民主主義が定着していますし、また、九州よりも少しだけ小さな面積の島でありながら、半導体産業などに強みを持っています。

実際、貿易統計などで確認しても、日本にとっての台湾の重要性は、徐々に上昇していることは明らかです。

たとえば、日本にとっての輸出相手「国」としては、台湾は2020年において、中国、米国、韓国に次ぐ4番目の地位にありますが、3番目の韓国とは順序が逆転しそうになっています(『貿易統計③日本の貿易上、台湾と韓国の地位は逆転へ?』等参照)。

(※日本政府は台湾を「国」と認めていないため、台湾を「輸出相手『国』」と表記するのは日本政府の立場には反しますが、当ウェブサイトは日本政府公式ウェブサイトとは無関係ですので、この点はご容赦ください。)

この点、『反日不買運動が日本経済に与える打撃は事実上「ゼロ」』などでも触れたとおり、2021年1~3月期においてもこの順序は維持されていますが、しかし、台湾の輸出相手国としての重要性はさらに高まっている状況です。

また、日本から見た輸入相手国としては、すでに台湾と韓国の地位は逆転しています。

実際、先日の『【緊急速報】「酢豚パイン問題」が台湾パインで深刻化』でも報告したとおり、街中で台湾パイナップルを見かける機会も目に見えて増えて来ました。台湾パイナップルなど農作物が日台貿易高に占める金額的な重要性は低いものの、これは日台友好を象徴するものではないでしょうか。

ことに、台湾パイナップルの輸入が増えているのは、その柔らかさ、美味しさもさることながら、もともと中国が不当に発動した輸入禁止処分により、台湾が日本に対してプロモーションを仕掛けたという経緯もあります(『台湾産パイナップル禁輸が中国へのセルフ経済制裁に?』等参照)。

余談ですが、中国が「台湾は中国の一体不可分の領土」だと騙っているわりに、台湾からさまざまな製品類を「輸入」していたというのも噴飯物ですが、台湾パイナップルの事例は、ある意味では現在の日中台3ヵ国関係を象徴するものではないかとすら思えてなりません。

中国に迫害される台湾

台湾のWHO総会オブザーバー参加は実現せず

もっとも、その台湾は現在、国際社会(あるいは中国の圧力)からの迫害に遭っています。

その典型的な事例は、台湾の世界保健機関(WHO)への参加問題です。

当ウェブサイトでは『【資料】G7外相会合コミュニケ』でも紹介したとおり、今年5月にロンドンで開催されたG7外相・開発相会合では、台湾のWHO総会へのオブザーバー参加を支持する内容が盛り込まれましたが、結果的には招待状が届きませんでした。

台湾のWHO参加、中国が妨害工作 年次総会の招待状が期限過ぎても届かず 「やはり中国の御用機関」石平氏 (1/2ページ)

―――2021.5.12付 zakzakより

産経系のメディア『zakzak』に昨日掲載された記事によると、台湾外交部は11日、今年のWHO年次総会(5月24日~6月1日)の招待状が、期限の10日を過ぎても届かなかったと明らかにしたのだそうです。

そのうえで『zakzak』は、台湾外交部の欧江安(おう・こうあん)報道官の次のような発言を紹介しています。

中国の悪意ある妨害は、WHOが技術的議論に台湾を参加させることができない主な障害だ」。

正直、防疫上の観点からは、台湾の経験を諸国が共有する非常に貴重な機会となり得るなか、台湾のWHO参加が実現しないことは、地球人類の健康にとっては大きな損失でしょう。

ちなみに『zakzak』には、こんな記述もあります。

台湾は2009年以降、8年連続でWHO総会にオブザーバー参加していたが、17年以降、中国の反対などで参加できなくなった。17年といえば、テドロス氏が事務局長に就任した年だ」。

ちなみに「テドロス氏」とは「『中国ベッタリ』とされるテドロス・アダノム事務局長」(zakzak)のことです。

中国、民主主義サミットを「政治的な茶番劇」

さて、中台関係を巡っては、昨日、こんな話題もありました。

中国、台湾総統ら出席の民主主義サミットを非難「政治的な茶番劇」

―――2021年5月12日 14:30付 AFPBBニュースより

AFPBBニュースによると、デンマークの首都・コペンハーゲンで開催された民主主義サミットを巡り、在デンマーク中国大使館が11日、「政治的な茶番劇で、ひとつの中国の原則に反する」などと非難したのだそうです。

これは、いったいどういうことでしょうか。

AFPによると、問題の会合は10日から11日にかけて、テレビ会議形式で行われた「コペンハーゲン民主主義サミット」で、デンマークのイエッペ・コフォズ外相に加え、台湾の蔡英文(さい・えいぶん)総統、香港の民主活動家である羅冠聡(ら・かんそう/ネイサン・ロー)氏が出席したものです。

しかも、この会合を主催したのは、北大西洋条約機構(NATO)の元事務総長であるアスナ・フォー・ラスムセン氏が創設した「民主主義同盟財団」という非政府組織(NPO)であり、AFPは同NPOが「今年3月、中国政府の制裁対象に指定された」、などと述べています。

「政治的な茶番劇」と聞くと、個人的にまっさきに思い出すのは「全人代」でしょう。

また、「法治」だの「和諧」だの「民主」だのという空虚な文言が躍る中国共産党の「社会主義核心価値観」という標語を見ると、正直、乾いた笑しか出て来ません。

AFPによると、デンマーク中国大使館は次のように述べているのですが、これがまた傑作です。

欧米の政治家の中には、『民主主義』と『自由』の名の下に他国に内政干渉し、分断と対立を生み出すのが得意な偽善者もいるが、そうした試みは失敗する運命にある」。

この表現、まさに、台湾とほかの自由主義国家の連携を妨害し、分断と対立を生み出そうとしている、現在の中国の行動そのものでしょう。

中国の「自己投影」

当ウェブサイトではこれまで、長らく、中国や韓国、北朝鮮などの行動を眺めて来ましたが、その際、ひとつ気付いたことがあります。

中朝韓などが相手国を批判するときには、たいてい、「自分の国がやっていること」を、そのまま相手に投影する、という特徴があるのです。

たとえば、韓国はしばしばウソの歴史、歪曲・捏造した歴史を自国民に教え込んでいますが、その韓国が日本に対して「日本は歴史を捏造・歪曲するな」と要求してくるのも、こうした「自己投影」の一種ではないかと思う次第です。

いずれにせよ、当ウェブサイトとしては以前からお伝えしているとおり、「中国が外交上手だ」とする世間の俗説には、最近、かなり懐疑的でもあります。

むしろ在デンマーク中国大使館の声明は、台湾がれっきとした民主主義国家であるという評価を欧州に広めるきっかけにすらなりかねないと思うのですが…。

台湾は友人を増やす

さて、とても当たり前の話ですが、台湾が将来、「台湾共和国」としての道を歩むのか、それとも「一国家二制度」などのかたちで中国と合邦するのかについては、私たち日本人が口を出すべき筋合いの話ではありません。

ただ、それと同時に、その選択は台湾人自身が行うべきであり、中国が侵略によって台湾を武力併合するようなことは絶対に許されませんし、『台湾防衛にコミットした日本:日米同盟は経済同盟に!』でも取り上げたとおり、むしろ日本は安全保障に対し覚悟を持つべきです。

こうしたなか、台湾が中国によるイジメを受けていることは間違いありませんが、それと同時に、やや希望的な観測で恐縮ですが、今後は世界に着々と友人を増やしていくのだと思います。

完全な形での自由主義、民主主義を実施していることは、西側諸国に対して胸を張っても良い話ですし、また、さまざまな国際機関から排除されながらも、自助努力で経済発展してきたという姿勢は、尊敬に値するのではないかと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. だんな より:

    >「分断と対立を生み出すのが得意な偽善者もいる」

    特定野党とマスゴミの話かと思いました。

  2. はにわファクトリー より:

    不肖はにわは日本文明というものがこの地上に存在していると考えています。そして台湾島は、中華文明の正統を受け継ぐ一方、日本文明の正統をも引継ぎブレンドすることに成功している。そのように思えてなりません。

  3. 羊山羊 より:

    台湾をグループBかAに上げるべき。
    というかするでしょう。
    経産省がtsmcを誘致する時の条件にするはず。
    同じ省内だから簡単な事案。

    同時に韓国をCにすると面白いんですが。

    1. りょうちん より:

      TSMCは既に米国本土に大量の工場建設を発表したので、日本の筋はなくなりましたよ。
      誘致するなら本気の優遇措置をしないといけないのにそういうダイナミズムが日本には欠けているのです。

      1. 羊山羊 より:

        つくばに後工程の研究所設立で経産省の顔を立てました。経産省は大喜びだったので見返りはあると思います。製造装置や材料の台湾への輸出は増加の一途ですからA昇格はいいタイミングだと思います。

        ホント、日本の役人のやる事はショボいです。

  4. ぬくぬく@河野談話破棄 より:

    >とても当たり前の話ですが、台湾が将来、「台湾共和国」としての道を歩むのか、それとも「一国家二制度」などのかたちで中国と合邦するのかについては、私たち日本人が口を出すべき筋合いの話ではありません。

    日本の国益を考えればたとえ台湾人が支那に併合されることを望んだとしてもそれを認めるわけにはいかないでしょう。自由や民主主義を知った台湾人が支那共産党の独裁支配を望むわけがありませんが。シーレーンが支那に支配されてしまうからです。日本は米国などと違いできることは多くありませんが。

    1. 迷王星 より:

      >日本の国益を考えればたとえ台湾人が支那に併合されることを望んだとしてもそれを認めるわけにはいかないでしょう。

      それは正に帝国主義ですよ、他国それも民主制を採用している国民多数の意志を自国の利害を理由に干渉する行為は。(だから私は現代のアメリカも帝国主義的な行動をしょっちゅう行っていると判断しています)

      その手の帝国主義的な行動をアメリカやロシアや共産チャイナがやるなら許される(というよりも他国はそれを罰しようがない)けれども、安保理事会の常任理事国ですらなくドイツ共々、連合国憲章の敵国条項から御指名を受けている日本が帝国主義的な行動で台湾国民の意志決定に干渉し意志の変更を強要すれば、日本人の多く(外務省も)が既に死文化していると勝手に希望的観測をしている敵国条項が実は現在も立派に有効な条文であると証明される事態になりますよ。

      そもそも、上に引用した文こそ、他人がやれば不倫、自分がやればロマンスの典型ですよ。上の引用文中の国名を置き換えてみれば良く分かります。

      -中華人民共和国の国益を考えればたとえ日本人がアメリカに併合されることを望んだとしてもそれを認めるわけにはいかないでしょう。

      この上の文の通り、ぬくぬく様はその場合に共産チャイナが日本に対して軍事行動を起こしたり、在日チャイニーズに決起させてテロ行為で日本社会を麻痺させたりして、日本人の意志を踏みにじることを共産チャイナの国防上の正当な行為として認めるのですか?

      私はそんな共産チャイナの行動を正当な行為と認める気は全くしません。日本がどんな道を歩むのかを決める権利があるのは日本国民だけですからね。

      ですから、同様に台湾人の総意としてフェアで民主的な手続きに従って共産チャイナへの吸収合併を決めたならば、日本にとってどれほど都合が悪くとも台湾人の総意として日本は認めるべきだと考えています。

  5. Naga より:

    台湾がどうするかは台湾が決めることだと思いますが、圧力を受けない完全に自由な状態での意思表明でないといけないと思います。
    他国はそれが担保されるように助けるべきと思います。

  6. 農家の三男坊 より:

    >令和2年版の「普遍的価値を共有し」が令和3年版では「基本的価値を共有し」に改められています

    重要なポイントを見逃していたことに気づかせて頂きました。
    個人的な感想ですが、”中韓に配慮したかもしれない”と危惧しています。

    個人的に理解する言外の意味
     普遍的:外れたものは異端であり正すべし、さもなくば化外。
     基本的:外れたものも仕方なく存在は認める

    1. はぐれ鳥 より:

      農家の三男坊さま

      「普遍的」と聞くと、キリスト教社会では「ローマ・カトリック教会」を想い出すのではないでしょうか?カトリックとはそのような意味だと聞くからです。とすれば、この言葉には若干宗教的独善の臭いが付きまといます。それで外務省は、そのような宗教臭さの感じられない「基本的」という無機質な言葉に変えただけのような気がします。ですから、仮に配慮したとすれば、中韓というよりインド(昔からキリスト教国との付き合いが深い)ではないでしょうか?

  7. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    在デンマークの中国大使の力を背景にした、発言の見苦しいこと!あんな愚連隊国にWHOのテドロスも、懐柔されまくり。最早、国際連合なぞ必要ナシです。

    実際は日本を取り巻く各国の「友邦ランキング」は、日本=米国>豪州=インド=台湾=英国=NZ=仏国> ASEAN +東南アジア数国>加=ポーランド他EU=独ではないでしょうか。コレを限りなく続けても、韓、中、露、北は入りません。

    台湾防衛に日本はコミットしました。来たる時、更に中国が台湾イジメをすれば、日本は自分の傷として受け止めるべきです。

  8. りょうちん より:

    こんな記事も
    https://grandfleet.info/indo-pacific-related/china-threatens-bangladesh-that-joining-the-quad-would-undermine-bilateral-relations/
    ワクチン外交の末路? クアッドに参加すれば2ヶ国関係を損なうと中国がバングラデシュを恫喝

    1. りょうちん より:

      あ、貼る場所(タブ)間違えました・・・。

  9. CB223 より:

    会計士様
      皆様

     前回の台湾総統選挙では当初、祭英文氏は、対立候補の韓国●(カン・コクユ)に苦戦していました。
     仮に中国共産党による、あの時点での香港弾圧がなかったならば、祭英文氏の続投がなかったかも知れないのです。

     ゆめゆめ、ご油断めさるな!

  10. 匿名 より:

    香港ってWHOに代表送ってなかったでしたっけ?

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