イラン制裁解除で韓国ウォンが暴落する可能性もある?

本稿は、ちょっとした「小ネタ」です。イラン船籍などのタンカーが海洋汚染を理由にインドネシア当局に拿捕されたそうですが、これを報じた韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事が、じつに味わい深いです。というのも、今年1月4日に発生したとされるイラン革命防衛隊による韓国船拿捕事件との関連を議論しようとしているようだからです。ただ、老婆心ながら、韓国が気を付けるべきは、それよりもバイデン政権の対イラン制裁解除ではないでしょうか。

イラン・韓国の浅からぬ因縁

イランの革命防衛隊が今年1月4日、「海洋の化学物質汚染」を名目に韓国の船舶を拿捕したとされる事件については、『イランによる韓国船拿捕の裏にある両国の浅からぬ因縁』などを含め、当ウェブサイトでは比較的注目し続けています。

注目している理由は簡単で、米国からは北朝鮮やベネズエラなどと並んで「ならず者国家」などと批判されるほどの国であるイランと、日本などに対してさんざんインチキ外交を仕掛けてくる「ウソツキ国家」が、正面から対決したらどうなるのか、まことに興味深いと考えているからです。

ことに、先週の『イラン中銀、間接的に韓国を「約束破り常習国」と非難』でも報告したとおり、イランの中銀のアブドルナスル・ヘンマティ総裁が19日、ブルームバーグの書面インタビューで次のように述べたのは興味深いところです。

韓国当局は凍結資金を解除するために可能なすべてのことをすると約束したが、彼らがこうした約束をしたのは今回が初めてでない。韓国が政治的解決の意志を見せるべきだ」。

これは、イランが過去に韓国にウォン建てで輸出した石油代金などが、米ドルに換算して90億ドル程度、韓国に凍結されている件について述べたものです。そして、この「韓国が約束をしたのは今回が初めてではない」という発言を「意訳」すれば、「韓国は何度も約束を破ってきた」、という意味でもあります。

中央日報「イラン・インドネシアの拿捕案件が影響するか?」

こうしたなか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に一昨日、こんな記事が掲載されていました。

韓国船舶を拿捕したイラン、今度は自国のタンカーが拿捕され…「海洋汚染・違法取引の疑い」

―――2021.01.26 16:53付 中央日報日本語版より

これは、ロイターなどの報道を引用する形で、インドネシア当局が24日午前5時30分ごろ、タンカー2隻を拿捕したとする記事です。うち1隻はイラン船籍、1隻はパナマ船籍だとか。

ただ、この中央日報の記事で面白いのは、韓国とまったく無関係なイランとインドネシアの話題について紹介しておきながら、記事末尾で唐突に、イランに拿捕されたままの韓国船についての言及が始まるという点でしょう。

一方、イランが海洋汚染を根拠に拿捕した韓国化学運搬船『韓国ケミ』は依然としてイラン南部の海上に抑留されている。(中略)イランは韓国ケミが海上を汚染したと主張している。反面、韓国ケミの船会社は環境法に違反した事実がなかったと明らかにした。これを受け、インドネシア海上警察によるイランタンカーの拿捕が『韓国ケミ』の釈放交渉にも影響を及ぼすか注目される」。

「韓国当局がイランのタンカーを拿捕した」というのならばまだ話はわかりますが、今回の事件では拿捕したのはあくまでもインドネシア当局であり、韓国ではありません。それとも、「インドネシアが韓国のためにイランのタンカーを捕まえてくれた」、とでも言いたいのでしょうか。

なぜ本件がイランによる韓国船舶の拿捕と関連するのか、いまひとつ理解に苦しむ点です。

あくまでも無関係でしょう

ちなみに、ロイターが報じた記事に続報もあったようです。

Indonesia escorts seized Iran, Panama-flagged tankers to dock for investigation

―――2021/01/26 17:29付 ロイターより

ロイターによると、拿捕された2隻はインドネシアのバタム島に向けて曳航されたそうで、乗組員はイラン人と中国人が61人、イラン船籍のタンカーはイラン国営のタンカー会社 “National Iranian Tanker Company” 、パナマ船籍のそれは「上海フューチャーシップマネジメント」の所有物だとしています。

しかし、この記事を読んでも、本件については韓国(Korea)のKの字も出てきません。明らかに無関係なのでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、くどいようですが、イランの資金が凍結された問題については、ある意味ではイランが自ら蒔いた種でもあるので、あまり同情もできません。

といっても、米国でバイデン政権が発足したことで、米国がイラン核合意に戻り、米国の対イラン制裁が再び解除される可能性は相応にあります。そうなると、韓国は非常に困った事態に直面するかもしれません。

もしも米国の対イラン制裁が解除され、韓国もこれに伴い対イラン制裁を解除した場合、凍結されていた90億ドルという巨額のウォン資金が、一気に米ドルなどのハード・カレンシーに両替される、という事態も生じ得るからです。

最近、韓国は外貨準備を4300億ドル程度にまで積み増している、といった報道もあるのですが、それでも外為市場の厚みがない韓国ウォンにとって、100億ドル前後の資金が一気にドル転されるのは、非常に大きなウォン安圧力として働きかねません。

日本円の場合だと、証券金融などに関連し、数兆円レベルの売買は通常のフローとしてなされていますが、韓国にはこうしたフローが乏しいため、ウォン市場がぶっ壊れてしまうかもしれないのです。

バイデン政権がイランにどのようなスタンスを取るのかはまだわかりませんが、その政策次第ではイラン制裁を解除せざるを得なくなり、玉突きでイランが所有するウォン資金が一気に売られ、ウォンの価値が再び暴落する、という事態は想定しておく価値があるでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. イーシャ より:

    ウォン売りが恐いから、外貨準備のなかのゴールドで支払うニダ。
    あっ、ゴールドもポッケナイナイしたの忘れてたニダ。
    北の将軍様、Kでは対応できないから、スーパーKの技術をパクらせるニダ。

    1. 福岡在住者 より:

      イーシャ様

      >ゴールドで支払うニダ
      とりあえず、インゴットにタングステンを仕込むという 古典的手法をチャレンジ(挑戦)するのではないでしょうか。

      そういえば、KOSPIは3月15日に「空売り禁止」の解除予定でしたが、延期ですかね。

      1. りょうちん より:

        本物の金インゴットというのを見たことがないので画像検索してみました。
        https://www.net-japan.co.jp/imitation/2007/09/1kg.html
        スイスバンクの金インゴットって本物でもパチモン臭い適当な作りなんですねw
        初めて知りました。
        刻印とか「中世かっ!」と言いたくなりましたが、あれも伝統の味なんでしょうかw

        1. イーシャ より:

          りょうちん 様
          でも刻印が本物の証なんですよね。
          日本の田中貴金属の刻印も、世界で通用するようです。

      2. イーシャ より:

        福岡在住者 様
        タングステン上の、Kクオリティーの薄いメッキがすぐ剥がれそうな。
        空売り禁止を続ける方が下げ局面で買い戻しが入らないので、致命傷が深くなりそうで楽しみ心配です。

        1. 福岡在住者 より:

          >下げ局面で買い戻しが入らない

          確かに心配ですね(笑)。 2年くらい前、偶然KOSPI取引画面を見たことがあるのですが、目がテンになりました。 その出来高・売買代金の低さ、大手以外の取引の低さ、株取引数の設定の低さ。 大企業(数社)以外は 少ないお金(小ファンド)で 操作アリアリ。

          そこに最近、借金して参入している貧乏衆がいるとしたら、、、。 たぶん、ネットで「お気軽投資」数万円の投資で、、、とかをやっているのでしょうね。

  2. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    もうイランが預けた預金はとっくに使い果たしただろうし、バイデン大統領が制裁を緩めたら、大変マズイ事になるでしょうなぁ〜。

    いや、韓国の動揺ぶり、火病を起こした時を見てみたい気がしますね。我々日本はカンケーネー。

    1. 門外漢 より:

      そこで日韓スワップですよww

      1. 名古屋の住人 より:

        門外漢様

        >そこで日韓スワップですよww

        そんな大仰なものはK国には相応しくない。
        日韓スリップで十分ですなwww

        1. 匿名29号 より:

          スワップでもスリップでも借金(正確には違うけど)は踏み倒すのが正しいと信じている国なので、日本もK国タンカーを拿捕せねばならなくなります。 面倒になるばかりなので手を出さずほっとくのが一番です。

  3. マスオ より:

    > イランの資金が凍結された問題については、ある意味ではイランが自ら蒔いた種

    制裁猶予期間中に代金を支払った他国があるとするならば、その期間に支払わなかった韓国も悪いですが、他国に倣い、韓国に返済を求めなかったイランも、まさに自ら蒔いた種と言うべきでしょうね。

    なぜ資金の返済をもとめなかったか考察すると、表立って言えない、何か「密約」があったと考えるのがしっくりくると思います。

    フッ化水素横流し・・・ゴニョゴニョw

    「日本のせいで代金(の代わり)が払えなかったニダ!
    すぐにスワップを結ぶニダ!!」

    って言いだしそうです。

    1. だんな より:

      マスオさま
      イランは、韓国に支払いを要求していました。

      1. マスオ より:

        そうだったんですね。教えてくれてありがとうございます。

        「代金払え」って言われてしらばっくれるとは、ふてぇ野郎ですね。
        まさに食い逃げ常習犯。

        物を買ったら代金を払う、こんな簡単なこともできないとは。
        ますますK国嫌いになりました。

        1. イーシャ より:

          9cm に「ふてぇ野郎」なんて言ったら喜ばせるだけですよ。

          1. マスオ より:

            イーシャ様、指摘ありがとうございます。仰る通りでしたw

            訂正します。

            「代金払え」って言われてしらばっくれるとは、ちいせぇ野郎だ!

            謝罪と賠償はご容赦ください。

  4. より:

    バイデン大統領はウラン核合意に復帰するだろうと観測されており、そうなればイランへの制裁が緩和されることになるので、「アメリカガー」は通用しなくなる可能性が高いと思われます。
    すでに怒り心頭のイランとしては、口座凍結が解除され次第、資金をドル転して引き出すだろうと見込まれますので、韓国政府としては「全額ドル転だけは勘弁してくれ」と頼み込むでしょうが、果たして聞き入れてもらえるものかどうか。見たところ、交渉材料もなさそうですしね。
    さて、それでなくとも、現在韓国は株価と不動産価格の異常な高騰に見舞われており、バブル状態と見る向きも少なくありません。そこに「大量のウォン売り」のリスクが加わることになります。バブルはほんのちょっとしたきっかけで崩壊しかねず、また歴史的に見てもソフトランディングに成功した例はほとんどありませんが、「大量のウォン売り」はそのきっかけになるかもしれません。そうなると、株価/不動産の暴落→ウォンの暴落→株価……という負のスパイラルが止まらなくなる可能性も否定できません。

    以上から、イラン凍結資金の凍結解除は、単にウォンの下落に留まらず、株/不動産の暴落を招く可能性まであるため、とてもデリケートな処理が必要になるでしょう。
    まあ、文在寅政権のお手並み拝見ということで生暖かく見守りましょう。大丈夫、「最悪のケース」なんて滅多に起こりません、多分ね。

    1. カズ より:

      >株価/不動産の暴落→ウォンの暴落→株価……という負のスパイラルが止まらなくなる可能性も否定できません。

      伝説の「グランドワロス」は再現されるのでしょうか・・?

      1. より:

        あくまでも現時点では「そういうことが起っても不思議ではない」レベルの話ですからねえ。
        ただ、伝え聞くような株/不動産のバブルが事実であるとすれば、どこかでバブルが清算されるのは経験的にも確実でしょう。少なくとも、現在韓国では個人が借金して投資に熱狂しているという報道が流れてますので、このような傾向が反転した場合、一体どうなってしまうんだろうと、他人事ながら心配でなりません(棒)

    2. イーシャ より:

      全額ドル転が嫌なら5割増しで払いなさい。
      そしたら、ドル転は80%にして、残りは全額K国株を買ってあげる。
      K国さん、いい取引でしょ。

  5. 匿名29号 より:

    金融関係には全くの素人ですが、ウォンが暴落すると世界の外為/金融市場への影響はどのようなものがあるのでしょう。 対岸の火事で済めばよいですが、火の粉が飛んでくるのは避けられないようにも思います。

    1. より:

      ジンバブエ・ドルやアルゼンチン・ペソが暴落しても世界の金融市場に大した影響はありませんでした。たとえ韓国ウォンが紙くずとなろうとも、ウォン建ての債権が紙くずになるだけで、ウォン建てでの交易がほとんどないのであれば、直接的な影響もほとんどないでしょう。
      ただし、ドル建て、円建ての債権を取りっぱぐれる(=デフォルト)可能性はあるでしょうから、そういう意味での影響はきっとあるでしょうね。

      1. 匿名29号 より:

        なるほどそうですか。
        K国に進出している日本企業も巻き込まれそうですね。

  6. 名無しさん より:

    値下がりして底値になった韓ウォンを少し買って値上がりし出したら売却して旨みを味わってみたい気もしますが、どこが底値か見計らう能力が無いと自分も損を被る恐ろしい代物です。暴落する韓ウォン。

  7. 阿野煮鱒 より:

    こういう「捕らぬ狸の皮算用」でwktkする光景は見飽きたので、「大したことは起こらない」に100won賭けておきます。懲りないというか飽きないというか、日本版永遠の十年後ですね。

  8. 匿名にさせて頂きます より:

    インドネシアがイランタンカー拿捕した事件と韓国とは何ら関係無いのが見え見えなのに中央日報が敢えて報じた裏は、拿捕に目を向けさせイラン韓国間の抜差しならぬ事案から注意を逸らす極めて幼稚な陽動作戦だと思うのです。フッ化水素の疑惑と90億ドルもの未払いは韓国国家存亡の危機である事は自明の理でそんな甘いもんじゃないと私は考えます。フッ化の不正と90億ドル未払いの関係は、支払義務の履行次第でフッ化が明るみに出るかどうか、これはとてつもない爆弾案件だと思います。米国のイラン核合意復帰で韓国の首が繋がるかどうか、状況証拠が日々積み上がる中で、恐らく韓国は夜も寝れない日々が続くと思います。
    インドネシアの案件に素早く飛びついてしまった中央日報は、恐怖に慄いている様に見えます。この先、目を逸らそうとする記事も出てくると思います。

  9. 引きこもり中年 より:

     独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、韓国のように自分は間違えないと勘違いしそうなので)
     もしアメリカがイラン制裁を解除しそうになったら、ソウルの米大使館前で文大統領の支持者が抗議のロウソクデモをするのでしょうか。
     駄文にて失礼しました。

    1. 引きこもり中年 より:

       すみません。追加です。
       もしアメリカのイラン制裁解除で、韓国ウォンが暴落したら、韓国は韓国国内のイラン資産(または、まさかのアメリカ資産)を凍結するのでしょうか。(もっとも、ウルトラCで、サムソン資産や日本企業資産もあり得ますが)
       駄文にて失礼しました。

    2. 引きこもり中年 より:

       すみません。また追加です。
      (アメリカにイラン核合意に復帰してもらいたくない)イスラエルやサウジアラビアに、韓国が接近することもあり得るのではないでしょうか。もっとも、韓国がイランに(ウラン濃縮のための)フッ化水素横流し疑惑を、どう解決するのかは分かりませんが。
       駄文にて失礼しました。

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