慰安婦巡る「主権免除」違反判決、韓国裁判所の言い分

先ほどの『【速報】日本政府が韓国で敗訴、主権免除違反確定へ?』では韓国メディアの報道についてちゃんと読めていなかったのですが、本稿ではいくつかのメディアの報道をもとに、今回の主権免除違反判決を巡る韓国の裁判所の言い分や、いくつかの報道等について、紹介しておきたいと思います。

韓国メディアの報道

先ほどの『【速報】日本政府が韓国で敗訴、主権免除違反確定へ?』で「速報」したとおり、韓国のソウル中央地裁は本日、自称元慰安婦らが日本政府を相手取って起こしていた訴訟で、日本企業に損害賠償を命じる判決を言い渡しました。

ここでは、韓国メディアの報道をいくつか確認しておきましょう。

まず、『中央日報』(日本語版)の記事です。

韓国裁判所が慰安婦被害者勝訴判決…「計画的、組織的…国際強行規範を違反」

―――2021.01.08 11:12付 中央日報日本語版より

中央日報の報道によると、ソウル中央地裁は「慰安婦被害者」(※自称元慰安婦のこと)12人が日本政府を相手取った損害賠償請求訴訟で、原告1人あたり1億ウォンの支払を命じる原告勝訴の判決を言い渡した、としています。

裁判所の判決について、日本語表現を整えて箇条書きにしておきましょう。

  • この事件の行為は合法的と見なしがたく、計画的、組織的に行われた反人道的行為で、国際強行規範に違反した
  • 特別な制限がない限り『国家免除』は適用されない
  • 各種資料と弁論の趣旨を総合すると、被告の不法行為が認められ、原告は想像しがたい深刻な精神的、肉体的苦痛に苦しんだとみられる
  • 被告から国際的な謝罪を受けられず、慰謝料は原告が請求した1億ウォン以上と見るのが妥当
  • この事件で被告は直接主張していないが、1965年の韓日(※日韓)請求権協定や2015年の(日韓慰安婦)合意をみると、この事件の損害賠償請求権が含まれているとは見なしがたく、請求権の消滅はないとみる

…。

なんだか、凄い判決ですね。

「日本政府は謝罪していない」だの、「日韓請求権協定や慰安婦合意で損害賠償請求権は消滅していない」だの、事実誤認もさることながら、自称元慰安婦の証言だけで「反人道的行為」と断じるなど、「オンリー・イン・コレア」のオンパレードです。

自称元慰安婦は歓喜

一方、『ハンギョレ新聞』(日本語版)の次の記事では、原告らが2013年8月に訴訟を起こした際、「慰安所で(略)奴隷的状態に置かれており、慰安所の設置と運営も不法に行われた」などと述べた、とも報じています。

日本軍慰安婦訴訟、被害者ら勝訴「反人道的行為…『慰安婦』被害者に賠償」認める

―――2021-01-08 11:52付 ハンギョレ新聞日本語版より

また、『朝鮮日報』(日本語版)の記事では、大邱(だいきゅう)市内に暮らす93歳の自称元慰安婦の声を報じています。

【独自】「これより大きな新年の福がありますか」 李容洙ハルモニが泣いた

―――2021/01/08 11:31付 朝鮮日報日本語版より

この人物は朝鮮日報の取材に対し、泣きながら震える声で「良かった、本当に良かった。これほどうれしいことがあるでしょうか」「神様が助けてくださって本当にありがたい、愛しています。すべての方々に感謝します」と述べたそうです。

ちなみにこの人物は慰安婦支援団体の元代表である尹美香(いん・びこう)韓国国会議員との「内ゲバ」でも知られています(『相次ぐ韓国の自爆、日本が「エサ」与えなくなったから』等参照)。

その点からも、興味深いと思ってしまう次第です。

韓国裁判所の判決のインパクト

それにしても、正直、ここまでハッキリと日本政府の不法性を指摘する判決を出すとは思っていませんでした。「特別な制限がない限り『国家免除』は適用されない」という文章を読むと、韓国の裁判所はずいぶんと踏み込んだものだという気がしてなりません。

韓国自身は「国連国家免除条約」に参加していませんが、今回の判決自体、国家免除に関する国際的な潮流とも反する判決であり、これはかなりの「冒険」でもあります。

ここまで言い切ってしまうのならば、日本政府としては国際司法裁判所(ICJ)でキッチリと片を付けるべきと判断するかもしれません。

ドイツがイタリアを相手取って国際司法裁判所(ICJ)に提訴した事例を踏まえるならば、もしもICJなどの場に判断を委ねるならば、韓国はどうやって勝つつもりなのでしょうか(※もっとも、韓国は最初からそれに応じるつもりはないのでしょうが…)。

なにより、国家免除条約上は国家財産の差押は認められませんが、韓国の裁判所はいったいどうやって賠償金を取り立てるつもりなのでしょうか。疑問です。

また、日本政府の次の一手にも注目が集まるでしょう。というのも、日本は国連国家免除条約を締結しているため、同条約の趣旨に照らすならば、控訴すると韓国の裁判に応じたことになってしまいかねないからです。

もちろん、韓国は同条約を締結していないので、控訴自体は可能と思われますが、下手に控訴して韓国の裁判の土俵に乗っかるような愚を日本政府が犯すとも思えませんし、思いたくもありません。

本件については引き続き、日本政府の反応などについても調べてみたいと考えています。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 凡人 より:

    半島人は狡猾だと言われるんですが、個人的には頭を使って狡猾しているようには思えません。
    ただ単に徹底的に未開で稚拙な、幼稚園児的な行動をしているだけなのでは、と思っています。
    その行動を日本人が頭を使って考えて、一周回って狡猾という言葉に当てはめているか、或いは半島を良く見せたい人達が情報操作として狡猾という刷り込みをしているかのどちらかではないかと感じています。

    心底、コロナと半島との関わりは持ちたくないものです。。。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      どうも半島の連中は「ハッタリラッキー」系キャラの行動様式を地で行ってる様にも見えますナァ

  2. イーシャ より:

    昨日来 KOSPI が連日 2% を越える異常な上昇を示しています。
    下げ局面では反動が大きいでしょう。
    米国株が大きく下げた翌日などを狙って「韓国へ貸し付けたままになっているあらゆる資金の返還請求を行うと共に、韓国株・韓国債券への投資も全て引き揚げる」旨発表(実行)して、Kバブルを崩壊させてあげれるといいと思います。
    借金漬けの彼の国は、破綻へ一直線でしょう。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      ソレやっちゃうと後から日本ノセイダースが涌いてきて謝罪シロだの賠償サセテヤルだのうっといことになるので、
      無言で静かに速やかに引き揚げるのが佳いかと…

      1. イーシャ より:

        日本が最後まで助けてやった通貨危機のときですら、日本が引金を引いたことにする相手。
        気にしても始まりません。はっきり棒で殴りましょう。

        まぁ、破綻させることを直接の目的とする必要はありません。
        日本の主権を否定し、日本国の資産を差し押さえしかねない国に、資産を置いておくことはできません。リスク管理の一環として資産を引き揚げればよいだけのことです。
        タイミングについては、しばらくKバブルが崩壊しないと見るならば、配当で多額の資金が半島外へ流出するのに合せるのもいいですね。

      2. 門外漢 より:

        引っ掛かったオタク 様

        紳士的にやろうが、中国的にやろうが、どうせグダグダ言うのです。
        日本は日本の信じる道を行けば良いのです。
        最悪(最善?)国交断絶で済むのですよ。

  3. 犬HK より:

    何でもアリな国がトンデモ判決を出したに過ぎませんね。

    遺憾砲を打つだけの日本が残念という声も聞こえますが、遺憾砲すら出さなくてもいいとさえ思いますけどね、イチイチこんなのに付き合っていられません。

  4. マイナンバー より:

    日本政府が下手な妥協などせず、「韓国政府は国際法違反の状態を是正せよ」「日本企業ましてや日本国政府に実質的損害(資産現金化)が生じれば必ず報復措置をとる」と正論を言い続けている限り、韓国政府はできる限りの時間稼ぎをするでしょうし、もしかしたらこの状態が常態化するのかもしれません。注意点は、韓国政府が他国も巻き込んでのあの手この手を駆使する狡猾国家である点。いくら国民情緒が憲法の上にある国家だとしても、本日の判決は自縄自縛の度合いが強すぎてある意味哀れ。来週(13日)の判決も同様でしょう。

  5. WindKnight.jp より:

    国民の財産や生命に責任を持たない司法って、怖いねぇ。

  6. カズ より:

    おそらく日本政府は主権免除を理由に韓国内での訴訟に関与することはしないと思います。
    そして上訴期間(韓国は一週間?)の経過時点までに韓国政府による是正措置が講じられなければ、新たな国際法違反が確定してしまうのでしょうね。

    日本政府は、プロセスとしての遺憾砲を発した後、一審判決の確定をもって即時対抗できなくはないのかと・・。
    自称徴用工の件と違って当事者なのですから・・。

  7. 匿名 より:

    >「オンリー・イン・コレア」

    このサイトにおける標準表記なのでしたらすみません。
    コリアとコレラがごっちゃになってませんか?
    それとも、病原体のような存在である、というネタ的な比喩だったりすのかな

  8. たけ より:

    文在寅が困るだけで、どうでもいい茶番。
    これは対日対米、どちらも詰んだようなもので、もう身動き取れない。
    本当に頭が悪いのか、追い詰められてこうするしかなかったのか…

  9. きたたろう より:

    >この事件で被告は直接主張していないが、1965年の韓日(※日韓)請求権協定や2015年の(日韓慰安婦)合意をみると、この事件の損害賠償請求権が含まれているとは見なしがたく、請求権の消滅はないとみる

    被告が主張してないのに、請求権の消滅はない?これで裁判が成立するならなんでも有りの良いとこ取り。韓国チームがホームに滑り込んでアウト、「韓国チームは直接主張してないがセーフとする」と審判が言ったら、その審判は処分されるでしょう。そんな裁判が果たして成立するんでしょうかね?

    1. 門外漢 より:

      きたたろう 様

      >そんな裁判が果たして成立するんでしょうかね?

      何処の国だと思ってるんです?韓国ですよ。
      原告が居なくても成立しますよ。

  10. ぷー より:

    何故この裁判の自称元慰安婦は12人なのですか?2015年の合意の際、賠償金を受け取らなかった方は7人だったと記憶しています。いつの間に増えたのですか?新たに認定された?今更?些細なことですが気になります。

    1. きたたろう より:

      些細な事でも大事な事ですね。そもそも彼ら彼女らは真実の追求をしてる訳ではなく、何らかの形で日本を叩く事が出来れば良しとしてる感じがします。反日自体が目的化してるのでしょう。
      そんなことが何時までも続けられるとは思いませんが⋅⋅⋅⋅⋅

  11. 夕刻 より:

    いまも,いままでも,日本政府は韓国に対して「国際法違反を是正せよ」と〇鹿の一つ覚えのようにいいますが,国際法に違反したからといって,なにか罰則や制裁を受けるなど,何らかの不都合,不利益が生じるのでしょうか?。何も無いなら,こんな,法治もまともに機能しないような,ならず者国家が困ることなど全く無いように思います。近時,いままでの流れのように,コトはすべて,事なかれ主義の日本政府は「まことに遺憾に思う」程度でしょう。隔靴掻痒,忸怩たる国民の願いなど,遠く及ばない気がします。

  12. 引っ掛かったオタク より:

    まずはとりあえず釜山の領事館に大使館機能を集約してソウルの大使館は賃貸契約解消、連絡事務所程度に縮小してしまいましょう!
    なんなら空港のテナント小さいとこでも一つ押さえてペッパー君でも置いておけば宜しい
    賃料も大事な血税ですし♪
    で、駐在大使は何かしらで帰国以降半島には戻さず粛々と疎遠にしはじめていきましょう~

  13. HN忘れた より:

    しょうがないですよ、だって韓国人ですもの。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告