検察総長の停職解除、韓国で新たな泥仕合が始まるのか

日本を代表する韓国観察者である鈴置高史氏が執筆する一連の論考を読んでいると、まさに「歴史は繰り返す」という名言を思い出します。歴史書で見た李朝末期の朝鮮と現在の韓国が、見事に重なるからです。ことに、外交でも内政でもコロナ対策でも経済政策でも行き詰まりを見せる文在寅政権が、例の「検察総長との対決」においても苦戦を強いられているようです。

検事総長の停職事件

理解に苦しむ主張「徴用工解決し日韓スワップ再開を」』でも少しぼやいたのですが、例年だとクリスマス前後はほとんど話題がなくなるはずなのに、今年に関してはそうではありません。当ウェブサイトで取り上げてみたい話題がたくさん出て来てしまっているのです。

ただ、それらの話題についてもこなせる分量には限界があります。どうしても選りすぐって、優先順位を付けて取り上げていくしかありません。

さて、先日の『鈴置論考「韓国メディアに文在寅=ヒトラー説が登場」』では、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏の最新論考をもとに、李長期の内紛を思わせる韓国国内の争いについての話題を取り上げました。

これは、文在寅(ぶん・ざいいん)政権の犯罪捜査を続ける尹錫悦(いん・しゃくえつ)検事総長が秋美愛(しゅう・びあい)法務部長官と対決し、12月15日に行われた検察庁化委員会で、尹錫悦氏の停職2ヵ月が決定された、という事件です。

停職は結局解除された

これに、「続報」がありました。韓国の行政裁判所が昨日、尹錫悦氏の停職処分の効力を停止したのです。

「尹検察総長の懲戒効力停止」…大統領の決定を裁判所が覆す(1)

「主文、大統領が申請人に対してした停職処分の効力を停止する」。ソウル行政裁判所12部(ホン・スンウク部長判事)が24日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の停職2カ月の執行停止を認容し、このように明らかにした。<<…続きを読む>>
―――中央日報/中央日報日本語版2020.12.25 09:03

これにより、「検察対政権」の対決は、再び泥仕合の様相を呈して来ました。

リンク先の記事は3000文字を超え、中央日報としては長い記事ですが、当ウェブサイトの文責において要点をまとめると、次のとおりです。

  • ソウル行政裁は決定文で、「検察懲戒委員会の議事定足数が満たされず、決定自体が無効」、「(兆回の理由とされた)政治的な中立義務違反については推測にすぎない」などと述べ、法曹界では「尹錫悦の完勝」という声まで出ている
  • 尹錫悦氏はこの決定により、8日ぶりに検察総長の職務に復帰することとなり、クリスマス当日の25日から最高検に出勤する計画だ
  • 一方、法曹界では今回の裁判所の決定を受け、秋美愛法務部長官や文在寅大統領の懲戒の正当性が喪失したとの指摘がある。ことに、懲戒案は文在寅氏が裁可しただけに、韓国大統領府も政治的な打撃を受けるしかない
  • 尹錫悦氏が業務を再開すれば、大型金融ファンド詐欺に関与した疑惑を受ける与党の要人に対する捜査も加速する可能性があり、とりわけ側近が政治資金法違反で検察に召喚されて取り調べを受けた李洛淵(イ・ナギョン)共に民主党代表に類が及ぶ可能性もある

…。

内紛が激しくなるのか?

この記事を読んだ瞬間、個人的に脳裏によみがえったのは、2017年3月に韓国の憲法裁が全員一致で、当時の朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領の罷免を決定したときのエピソードです。

三権分立も不十分な韓国のことですが、それと同時に「水に落ちた犬を徹底的に叩く」などと揶揄される政治文化も持ち合わせています。

こうしたなか、自他ともに認める「親北派」である文在寅(ぶん・ざいいん)氏の大統領としての任期が、残り1年半を切りました。文在寅氏の任期は「北朝鮮との融和」にうつつを抜かしているあいだに、米国や日本との関係を損ね、中国への属国化が進んだ時期として、後世に記憶されるのではないでしょうか。

北朝鮮との和平を公約に掲げ、華々しく登場した文在寅政権が、2017年5月の発足以来で成し遂げた外交的な成果といえば、せいぜい米韓同盟を危機に追いやったことと、日韓関係を破綻寸前に追いやったこと、「三不の誓い」など、中国への政治的な従属傾向がますます強まったことくらいでしょう。

いずれにせよ、対北でも、対中でも、対日でも、対米でも、現在の韓国が置かれている状況は極めて厳しいと言わざるを得ません。そして、一般に危機的な立場に置かれた人は、無茶な一発逆転ホームランを目指す傾向があります。

その意味では、個人的な注目点としては、内政でも外交でも経済政策でもコロナ対策でも行き詰まりを見せている文在寅政権が、これからどこに向かおうとしているのかについて、見極めていきたいと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 通りすがりの若輩者 より:

    > 文在寅氏の任期は「北朝鮮との融和」にうつつを抜かしているあいだに、米国や日本との関係を損ね、中国への属国化が進んだ時期として、後世に記憶されるのではないでしょうか。

    それと同時に、西側陣営と袂を分かち、朝鮮半島が中華圏に完全復帰する歴史的な契機を作った偉大な大統領と記録されるかもしれませんね。

    もちろん皮肉です。

  2. 電気屋さん より:

    法曹界は既に文大統領に見切りをつけ始めていると言う事ですかね?
    クネクネ没落で棚ぼた的に(あと親北朝鮮勢力の後押し)権力を握った文大統領ですが、全方位で行き詰まりを見せており後継者擁立にも失敗した為、盧武鉉の後を追う事が必至の状況です。
    残る手段は抗日しか有りません何やらかすか非常に楽・・・もとい懸念しております。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    帰社中にスマホ見たら、ビッグニュースでした(笑)。中央日報です。

    このまま一気に行ったら、変なピリオドの打ち方ですね。朝鮮人らしくもっと泥試合をしてもらわないと(笑)。行政裁判所が、尹錫悦氏の停職処分の効力を停止した。裁判官があろうことか、、、さすがに見てるだけならオモロイです。

    朴槿恵の時はローソクデモ、今回は保守系が弱っているので、いきなり文も倒れないでしょう。でも有力者の元法務部長官・曹国氏の妻もパソコンのハードディスク入れ替えたりしてアリバイ作るも失敗。「検察に裏切られた!」と言ったとか。

    更に李洛淵代表に火の粉が移ったらアウトッですネ。でも見ない関わらないがキモですから、ほっときましょう。さて、明日も何かあるかな〜♪〜。いや〜水に落ちた犬ならぬ寅まで叩くか(笑)。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      泥仕合は勝手にやってくれりゃいいのですが、
      泥飛沫や泥塊を周辺国に撒き散らされると迷惑するので、ヘル朝鮮だけで完結していただきたいものでありんす

      1. めがねのおやじ より:

        引っ掛かったオタク様

        ごもっともです。我々日本人は関わらないのが一番です。でも、こうなるとメシウマ、酒ウマになる私です(笑)。

  4. イーシャ より:

    朝鮮人なんだから、朝鮮人同士の権力争いに夢中になるでしょう。
    日本がかわることではありません。放っときましょう。
    それでも気になるなら、誰がポアされるかを予想するのも一興かと。

  5. 匿名 より:

    鈴置高史氏も福島香織氏も昨年1月まで日経ビジネスに記事が掲載されていたが、以降、相次いで他へ移ってしまった。日経に何があったのか?
    以後、日経の記事は深読みするようにしています。

  6. カズ より:

    何者でもないから何者にもなれる!

    ・・とは言っても、何者でもないままで居たい人は、何者にもなれないのだと思いました。
    旗色を示さない人に支援は得られず・・。誰にとっての味方でもないのですしね。

    このままでは、誰かに(北?中?露?)、もしくは何か?に身を捧げるほかなくなるのかと・・。

    そうでなければ、保身のために為すべきは、前・前々大統領の早期量刑確定と特赦の実施を慣例化させることくらいなのかもです。

  7. たけ より:

    色々追い詰められていて、
    もう思い切った政策も取れないのでしょう。
    ワクチンの件でも突き上げられてますし、
    叩きどころだと思います。
    情け無用でお願いしたいところですが、
    自民も今はグッダグダですね。
    ほんとチャンスを活かせない。

  8. めたぼーん より:

    本格的な自壊の始まりかな。お互いの復讐の炎の火の粉を避けつつ、ガソリンを注入出来ると良いのですが。

  9. 名無しの権兵衛 より:

     今回の文在寅政権と尹錫悦検事総長との争いは、「李朝末期の内紛を思わせる韓国国内の争い」とは、様相が違うと思います。
     というのは、尹錫悦という人物は、ソウル大学在学中の光州事件における流血を伴う鎮圧と関連した模擬裁判に検事役で参加し、弾圧を行った全斗煥大統領に死刑を求刑しました。当時の状況では、模擬裁判であっても死刑を求刑するのは容易ではなく、彼はこの模擬裁判の後しばらくの間、江原道に逃れたそうです。また、朴槿恵政権時には、崔順実ゲート事件の特別検事の特別捜査チーム長を務めました。そして、今回は文在寅政権の不正疑惑捜査を陣頭指揮しています。
     即ち、彼は、全斗煥や朴槿恵の保守派政権に対しても、文在寅の革新派政権に対しても、是々非々の態度で臨んでおり、彼の信条は「法と組織には忠誠を誓うが、人には忠誠を誓わない」だそうです。
     つまり、韓国社会では当然の「甲か乙かのいずれか」ではなく、「丙」に属する人のようです。その点で、毛色の違った人物であると思います。しかし、来年1月にも「高位公職者犯罪捜査処」が発足すれば、「訴追対象者第1号」になってしまう可能性も大きいと言われています。

    1. ちかの より:

      名無しの権兵衛様
      そうなんですよね。ユン総長って、ちょっと韓国人にしては、変わり者っぽい人みたいなんですよね。
      罪があれば追求して罰する、という当然の姿勢ですが、ウリもナムも関係ない態度というのはアチラ的にはどうなんでしょうか。
      ムンムンもその辺を勘違いして「朴槿恵を追求していたから」ウリだと思って、総長に起用したというw

  10. CB223 より:

    それにしても、

    >検察懲戒委員会の議事定足数が満たされず、決定自体が無効

    何なんでしょうね!これは?
    いくら「結論ありき」とはいえ、トホホにも程があるでしょうに!

  11. 普通の日本人 より:

    やれ~やれ~ 絶賛煽り中
    って これお祭りですよね
    半島文化そのままですね。
    民主化とは言いますが文化はそう簡単に変わらない。
    中国に共産党が根付いたのは独裁文化がぴったりだったから。(エンペラーが複数になっただけ)
    私はそう思っています
    ロシアしかり、世界的に見ても独裁国家は半数ぐらい有るのでしょうか
    人間として生まれたら、生物として生まれたらそうなるのかな
    そうみれば彼等は正直に生物としての本能に生きる人たち。ですよね

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