英国内の「G7拡大構想」の欠点は「ウィークリンク」

米国でバイデン政権誕生はほぼ確実と見られますが、それと同時に安倍・トランプ両政権の「置き土産」とも呼べるものが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」などの構想です。そして、このFOIPに日米だけでなく、豪州、インド、英国、フランスなどが関心を示しているのは非常に良い兆候です。ただし、ここで少し気になる報道もあります。英国で「G7に韓国、豪州、インドを加えたD10」という構想が出て来ているのです。

焦点は「バイデン政権下の米国社会のメディア不信」

すでに報じられているとおり、米国で14日、各州での選挙人投票が終了しました。次の産経ニュースの記事を含め、いくつかのメディアの報道によれば、ジョー・バイデン氏が306人の選挙人を確保し、選出が確実になった、などとされています。

バイデン氏の選出確実に 大統領選挙人が投票

―――2020.12.15 08:40付 産経ニュースより

もちろん、米大統領選は選挙人投票で終了するだけでなく、各州が連邦議会にその結果を送付し、来年1月6日の連邦議会で選挙人投票の結果を集計することで正式に確定します。しかし、今回は「造反」も発生していないようであり、バイデン氏が大統領に就任することは確実と見て良いでしょう。

もっとも、当ウェブサイトでは『連邦最高裁が訴訟を棄却したことで新たに生じる問題点』などでも報告したとおり、トランプ陣営は今回の選挙で「大規模な不正があった」と主張しており、いまでもトランプ氏は選挙結果を受け入れないと述べています。

もちろん、現在の状況は「選挙結果をひっくり返すような不正は裁判の手続では認定されなかった」という状況であり、法的にはバイデン氏の正当性がるとされている状況ですが、ただ、漏れ伝わる情報によれば、依然として今回の選挙結果に納得していない有権者も多いようです。

そうなると、認知症も疑われるバイデン氏が次期米大統領に就任したところで、米国社会が「バイデン新大統領」のもとに本当に団結するのか、という疑問もありますし、また、米国の有権者にはメディアに対する不信が刷り込まれている可能性はあるでしょう。

あくまでも主観的な印象ですが、わが国でも2009年8月の衆院選で民主党が圧勝し、政権交代が発生して以降の3年3ヵ月間で、日本では新聞やテレビを中心とするマスメディアに対する不信を公言する人がずいぶんと増えた気がします。

それと同じことが、米国でも発生するのかもしれません。

日米を基軸に対中包囲網

もっとも、トランプ政権が推し進めた「米中対決」については、バイデン政権下で巻き戻る、とシンプルに考えるのも違うと思います。

米国では大統領に強い権限が集中していることは事実ですが、それと同時に大統領には法律を制定する権限はありません。大統領にできるのは出来上がった法律を承認するのみであり、トランプ政権下の米国で制定された法律を変えることができるのも連邦議会だけです。

これに加え、米国外でも中国包囲網が出来上がりつつあります。その一例が、安倍晋三総理大臣とドナルド・J・トランプ大統領が推し進め、多くの国を巻き込みながら、どんどんと動き出している「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想でしょう。

以前の『日米同盟、3が挫折も4から5、6へ発展していく展開』でも報告しましたが、この連合は現在進行形で発展しており、現時点では日米豪印の「クアッド」が参加していますが、これに英国やフランスも関心を示している状況にあります。

さらに、英国や豪州などを中心に、現在の「ファイブアイズ」と呼ばれる情報共有などの枠組みに日本を招こうとする動きもみられますが、これなども安倍・トランプ両政権の「置き土産」のようなものだといえるのかもしれませんね。

参考 1から7で読む同盟関係
  • 「1」=日本単独
  • 「2」=日米2ヵ国
  • 「3」=日米韓3ヵ国
  • 「4」=日米豪印(クアッド)
  • 「5」=①日米豪印+英、②ファイブアイズ(英米加豪+NZ)
  • 「6」=①日米豪印英仏6ヵ国、②シックスアイズ(日英米加豪+NZ)
  • 「7」=G7(日米英仏独加伊)

 

同盟の「ウィークリンク」

もっとも、日中対立、米中対立局面などを考えると、FOIPなどの連合に加わる国が増えれば増えるほど良い、とする考え方もあるのですが、当ウェブサイトとしては「無節操に同盟を増やすこと」には慎重であるべきだと考えています。

というのも、同盟ないし連合に加わる国が増えれば増えるほど、中国にとっては「ウィークリンク」、つまり同盟ないし連合体の最も弱い部分に対し、付け入る隙が生じて来るのです。この「このウィークリンク」(weak link)とは、「鎖の強さは最も弱い部分で決まる」とする格言のことだそうです。

すなわち、具体的には日本や米国と「自由、民主主義、人権尊重、法治主義ないし法の支配」などの価値観を100%共有していない国が同盟の輪っかに入っているときに、その国が「ウィークリンク」になってしまう可能性があるのです。

こうしたなか、昨日の夜以降、時事通信などいくつかのメディアに、こんな記事が掲載されていました。

来年のG7、韓国招待 印豪も―議長国の英

―――2020年12月15日20時01分付 時事通信より

時事通信によると、英政府は15日、英国が議長国を務める来年のG7サミットに豪州、インド、韓国の3ヵ国を招くと発表したそうです。

この3ヵ国は、トランプ大統領が提唱した「G7+4」構想(『ロシア、インド、韓国がすんなり拡大版G7に入るのか』等参照)に含まれた4ヵ国からロシアを除外したものでしょう。

参考 G7+4

(【出所】米国務省HP資料を著者が加工)

時事通信はまた、英国内などではG7に3ヵ国を足した民主主義10ヵ国の連携強化を目指すとされる「D10」なる構想も出ているとしています。

ただし、くどいようですが、個人的にはG7の拡大には慎重であるべきだと思います。現在、G7以外にも「G20」という枠組みが存在しているのであり、G7をG11やG12などに拡大してしまうと、G20との差別化が図られなくなってしまいかねません。

また、G7は「日米英仏独伊加+EU」という、「普遍的価値」を共有する国々の協議体であり、豪州はともかく、ロシア、韓国、インドにそれに加わる資格があるとも思えません(※といっても、インドはFOIPのメンバー国ですが…)。

時事通信は記事タイトルで「韓国」と述べていますが、韓国をG7に含めた場合、G7自体が「普遍的価値」を共有する国々ではなくなってしまいかねませんし、また、韓国が「ウィークリンク」として中国やロシアなどに突き崩される可能性も懸念すべきでしょう。

韓国自身も困ってしまいませんかね?

もっとも、G10ないしD10構想を巡っては、韓国自身もこれに入るべきかどうかという問題があることは間違いないでしょう。

というのも下手に「民主主義諸国同盟」に入ってしまうと、その同盟内部では北朝鮮に対する制裁を強めるように圧力を受けるでしょうし、また、中国に対しても毅然とした態度を示すことが求められるからです。いわば、針のむしろに座らされる、という言い方をしても良いでしょう。

とくに、文在寅(ぶん・ざいいん)政権下で一貫して北朝鮮に対し宥和的な姿勢を示してきた韓国は、北朝鮮非核化の進展具合を巡って、主要国からは糾弾される立場になりかねません。

また、中国に対し「三不の誓い」(THAADを追加配備しない、米国のミサイル防衛に参加しない、日米韓3ヵ国同盟に発展させない)を立てたことを巡っても、それなりの説明を求められるはずです。

つまり、これまでの韓国は米中2ヵ国からの圧迫を受ける立場にあったのですが、今後は米国だけでなく、G7諸国すべてからの圧力を感じることになりかねません。それに韓国が耐えられるのか、というのが疑問でもあるのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いずれにせよ、当ウェブサイトとしては改めて、「韓国をG7に参加させること」については大きな問題がある、と指摘しておきたいと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. だんな より:

    時事通信から
    ドイツの軍艦派遣「強く支持」 岸防衛相、共同訓練に期待
    https://www.jiji.com/sp/article?k=2020121501096&g=int
    という事で、ドイツも中国包囲網側にも足を入れておこうと考えた様です。
    拡大G7は、韓国が自由民主主義側で亡くなった事が、世界的に認知されていない駄目だと思います。
    韓国が、G7に招待されて困るなんて事は、有りません。もう中国も止めないんじゃ無いかなぁ。
    コウモリとして参加して、合意しても守らないニダとなり、ウリナラは、G7メンバーに相応しい、K防疫の先進国ニダとのたまうでしょう。

  2. 匿名 より:

    米韓同盟破棄に至ってない実績があるので
    それにドイツの慰安婦像の件もあるし
    自身を持って加入するでしょう。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    豪州ぐらいまででしょう。入って良いのは。D10とかG10になると腐ったリンゴが挟まる。腐り物は、他も腐らす。特に必ず韓国は足を引っ張ります。中国はソコを狙いますよ。

    事前に加盟国でキッチリルール決めしても、チャランポランにウヤムヤにする。例えば、次のように韓国に聞いたとします。

    「北朝鮮への制裁は続けているのか?」
    「THAADの追加配備は何時するのか?」
    「三不の誓いは破棄すると中国に通告せよ」
    「GSOMIAは何時でも止めれるというものでは無い。発言を取り消せ」

    全部破ります。平気ですから(笑)。英国が来年G7に呼びたいなら、ゲストで結構ですよ〜。

  4. たけ より:

    遠く離れた国から見れば、韓国はまだ西側民主主義諸国の一因、という認識なのでしょう。
    無理もないです。だってほとんど関わりも無く、何も知らないのですから。

    1. 匿名 より:

      EUやイギリスにとっては韓国は日本のような国という漠然とした認識かもしれない。

  5. 福岡在住者 より:

    日本もドイツも「G7拡大」には反対しています。
    https://www.donga.com/jp/article/all/20200728/2133814/1/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E7%B6%9A%E3%81%8D%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%82%82%E3%80%8C%EF%BC%A7%EF%BC%97%E3%82%B5%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%88%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E3%80%8D

    ただし、G7サミット主催国がG7以外の国をオブザーバー(議決権無し)参加させることは可能だったと思います。
    日本ですと、「伊勢志摩サミット」に当時の韓国大統領(パククネ)を招待する予定でしたが、何故か恐れをなしてアフリカへばっくれました。
    https://newsphere.jp/world-report/20160531-2/

    1. りょうちん より:

      >G7サミット主催国がG7以外の国をオブザーバー(議決権無し)参加させる

      G7首脳が仲良く和気藹々としているところをわざわざ呼びつけて見せつけるシステムですねw。
      またG20の写真撮影時みたいなムンムンGIFが増えるな!!

  6. イーシャ より:

    「お前がウィーケストリンクだ」 from ドクター・フー
    みたいにできると楽なのに。

  7. 匿名 より:

    参加っていってもオブザーバーみたいな感じかと。別に何の問題もないのでは。嫌がるのではなく、韓国も対中包囲網になんちゃらとか日本側(政府要人でなくても良い)からの発言で、煽ってあげれば良いかと。煽られると来たくなくなる。純日本人さん達はナイーブ過ぎてマジで笑える。ブリカスの爪の垢でも煎じて飲めば良い。慰安婦像や、ココでの嫌韓やヘイトもそうだし、DHCの件でも、ナイーブ過ぎて。逆効果でしかないことを、正しいことだと思い込み、延々とやれるナイーブさ。

  8. カズ より:

    これは、メッセンジャーとしての招集なのかと・・。

    韓国を呼んでおかないと、西側諸国の団結の固さが中国側にシッカリと伝わらないんですよね。たぶん。

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