朝鮮日報「韓国製サブマシンガンがイランの博覧会に」

日本が韓国に対して発動した、輸出管理を適正化する措置を巡っては、当ウェブサイトとしてもかなりの関心を抱いて追いかけてきたテーマのひとつです。こうしたなか、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)は昨日、韓国製のK7消音サブマシンガンがイランの武器博覧会に展示されていたと報じました。やはり、「輸出管理を巡る不適切な事案」とやらについては、是非とも知りたい気がします。

輸出管理の仕組み

当ウェブサイトでこれまでに何度となく言及して来たのが、輸出管理の仕組みです。

これは、『外国為替及び外国貿易法』(以下「外為法」)第48条第1項に規定されるもので、安全保障上の必要性に応じて戦略物資の外国への輸出について許可制とすることができる、とする仕組みのことです。

【参考】外国為替及び外国貿易法 第48条第1項

国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

まともな先進国の多くがこの輸出管理の仕組みを導入しています。

具体的には、主要国同士で品目を決めて、それらの品目の輸出について許可制にする「リスト規制」と、リスト規制品にない品目であっても、軍事転用されかねない品目を許可制にする「キャッチオール規制」の2本から成り立っています。

これに関連し、日本政府は昨年7月に、韓国に対する輸出管理を適正化する措置を発表しました(2019年7月1日付経産省『大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて』等参照)。

措置の内容は、リスト規制品のうちの3品目の輸出管理を厳格化することに加え、韓国を「(旧)ホワイト国」から除外するというものであり、その理由のひとつとして、経産省は「韓国に関連する輸出管理をめぐって不適切な事案が発生した」ことを挙げました。

経産省はこの「不適切な事案」が何だったのかについて明らかにしていないため、あくまでも状況証拠から想像するしかありません。しかし、あくまでも個人的な分析に基づけば、やはり、韓国が何らかの不正貿易に手を染めていた可能性は排除できません。

フッ化水素流用疑惑

たとえば、財務省が公表する『普通貿易統計』をチェックすると、『HS番号2811.11-000』(フッ化水素、フッ化水素酸)の韓国に対する輸出量が2019年6月頃まで水膨れしていて、しかも韓国向けの輸出量は全体の9割前後に達していたことがわかります。

図表1が数量、図表2が金額で、それぞれ韓国に対する輸出(A)と全世界に対する輸出(B)を左軸に、AのBに対する比率を右軸に示しています。

図表1 HS2811.11-000の輸出(数量)

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

図表2 HS2811.11-000の輸出(金額)

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

※ただし、日本のフッ化水素等の輸出は、この「HS2811.11-000」だけでなく、再輸出品「HS0000.00-190」にも含まれている可能性があるため、図表1、図表2が日本から外国に輸出されたフッ化水素等の全量ではないかもしれないという点にはご注意ください。

これで見ると、ちょうど1年前、つまり2019年8月以降、韓国に対する「HS2811.11-000」の輸出は、数量、金額ともに激減していることがわかります。

また、輸出管理適正化措置が発表されたのが7月であることから、過去4年間について、7月から6月までの1年間の「HS2811.11-000」の対韓輸出数量・金額を集計してみると、激減していることは、さらに明らかでしょう。

図表3 HS2811.11-000の対韓輸出数量・金額の集計
期間数量金額
2016年7月~2017年6月23,937トン38億5182万円
2017年7月~2018年6月33,701トン61億5623万円
2018年7月~2019年6月37,987トン78億5275万円
2019年7月~2020年6月3,459トン12億4429万円

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

もっとも、2019年7月からの1年間に関しては、数量は前年同期比で10分の1以下に減っているのですが、金額についてはそこまで激しい落ち込みは見られません。このことから、日本から韓国に対し、輸出数量が急減したのは、単価が低いフッ化水素ではないかという想像が働きます。

さらに不自然な点があるとしたら、先ほどの図表1、図表2で眺めると、「HS2811.11-000」の日本からの輸出高について、2019年6月頃まで、数量、金額ともに8~9割を韓国向けが占めていた、という事実です。

さらにいえば、韓国メディアは口を開けば「フッ化水素」は「半導体材料」だと主張するのですが、そのわりに『半導体製造装置の対韓輸出はむしろ最近増えた』などでも報告したとおり、日本から韓国への半導体製造装置の輸出額は、むしろ増加しています。

なにより、2017年から18年にかけて、「HS2811.11-000」の韓国に対する輸出量が、数量、金額ともに大きく増大し、2019年7月以降に激減したにも関わらず、韓国において半導体製造に支障を来したなどとする報道は、ほとんど見られません。

このことから、当ウェブサイトとしては、やはり韓国が日本から輸入したフッ化水素などの劇薬を、なにか目的外に流用していたのではないか、という疑いが払拭できないと考えています。

朝鮮日報が報じたイランへの武器流出疑惑

さて、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に昨日、こんな記事が掲載されていました。

【独自】米国から制裁されているイランに韓国製兵器が…

―――2020/12/15 15:29付 朝鮮日報日本語版より

「独自」とあるため、おそらく朝鮮日報の独占スクープ、ということでしょう(※朝鮮日報の記事は数日経過すると読めなくなるようですので、原文を確認する場合は早めにお願いします)。

文章自体は400字詰め原稿用紙2枚にも満たないくらいの短いものですが、なかなか恐ろしいことが書かれています。韓国が開発した「K7消音サブマシンガン」と推定される装備がイランの兵器博覧会で展示されているのが14日までに判明した、というのです。

朝鮮日報はまた、「イランに対する通常兵器禁輸制裁は最近解除された」としつつも、「イランが通常兵器を輸入しようと思ったら、事案ごとに国連安全保障理事会の承認を受けなければならない」としているのですが、韓国製の兵器がイランに輸出されていたのが事実だとすれば、看過できません。

これについて韓国軍の消息筋がイランの博覧会に展示されたものが「複製品ではなく、本物とみられる」と述べたそうですが、「インドネシアなどに輸出されたものが隠密ルートでイランに流れ込んだ可能性がある」、とも記載されています。

ただ、個人的には「インドネシアから流出した」のではなく、「韓国から直接、イランに流出した疑惑」も払拭できません。『AFP「韓国からの硝酸アンモニウムをインドが押収」』などで述べたとおり、韓国を巡っては輸出管理体制が疑わしいのではないかと思しき事例がほかにもあるからです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

こうしたなか、「金融評論家」という立場からは、やはり、経産省が主張する「輸出管理を巡る不適切な事案」が何だったのかその実情について知りたいという気がしてなりません。

本件についても、続報などがあればまた当ウェブサイトで取り上げてみたいと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. りょうちん より:

    K7(MP5SDのパチモン)みたいなサプレッサー一体型の銃は一般市場には市販されないので、ロット管理は簡単なはずです。
    全数調べて、「潔白」を証明するのはできなくはないでしょうけど、それができれば「適正管理できている」と主張することも可能です。
    しかし、なんで自国生産兵器の展示場で韓国製兵器などというイメージダウンする様な展示をしたのかイランの意図を読む方が面白い。

    1. りょうちん より:

      金払いを渋っている韓国への小さなイラガラセとかですかねえ。

      1. 福岡在住者 より:

        他の展示会で フッ化水素も出してくれませんかね。

    2. 匿名 より:

      日本の輸出管理を緩和してもらう目的で、韓国が適正管理ができていると主張する手助けと思いますね。
      これで緩和されるなら今度は足がつかないよう韓国からイランにフッ化水素を輸出できてお互い幸せ。
      何かあれば日本のせいにすれば良いし。

    3. 引っ掛かったオタク より:

      ショーで展示…イランがノックダウン生産でも始めるのでしょうかね?
      その見本とか??

      なんにせよKの法則が発動されそうな悪寒…

  2. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    また「インドネシアが〜」とか他国のせいにする(笑)。K7消音サブマシンガンは、消音だけでなく「消弾(不発)」のトーイでは無いでしょうネ?

    冗談はそれぐらいにして、韓国軍の正規採用品なら、韓国からダイレクトでイランに密輸、輸出されている可能性があります。日本が武器に転用される恐れありと、輸出管理したのは当然!こんな奴らです。もっと厳格化すべきです。ま、韓国製なんで銃身が熱を持つと暴発するかも、、(笑)

  3. 農民 より:

    朝鮮日報「~~K7は2000年に純粋な韓国国内技術で開発が完了した。」

    『アメリカ”M16″をベースに改悪した”K1自動小銃”を流用して拳銃弾口径化と作動方式を変更し、発射レートを抑えられずに暴れ馬になっているけど見た目はベストセラーH&K(ドイツ)MP5に寄せてみた』
    純 粋 国 内 技 術 名品兵器ですね。

     イランでの展示はなんでしょう…
    「この席には、ロシア製装備の改良・複製タイプをはじめイランで独自生産したAR15、AK103小銃などが展示された。」
    とあるので、イラン兵器開発史に触れる展示でもあったのかな。その中で「某国はこんなヒドイの作って独自ぶってるけど、ウチは堅実にやってるぜ」みたいなサンプル(公開処刑)で展示したのかもと想像しますが、如何せん情報が無い。

    1. りょうちん より:

      我が国にも9mm機関拳銃という迷品がありまっせ。
      (まあ、あれは「拳銃しか持っていくのはまかりならん」というお上の意向により生まれた鬼子でしたが・・・。せめてUZIなみにならなかったのか。)

      後に実際にSMGをまともに運用する部隊は警察も含め、ちゃんとH&K MP5を買って貰えましたとさ。
      ただMP5はSMG界のロールスロイスでクソ高いんですよね。
      だから韓国製で安いの作れば売れるだろうと開発したんじゃないのかな。
      関係ないですが、H&Kの経営危機にはビックリ。

      1. 農民 より:

         まぁ日本は兵器開発に加えて運用も調達価格も、結構ヤバいんですよね…あまりに徹底した文民統制(現場無視)と平和主義(制限と販売困難)の副産物でしょう。
         憲法改正と自衛隊を国軍にすべきだという論も、べつに中韓をやっつけろとか厨二的発想とかなわけでなく、国防の実情がかなり厳しいのだから改善すべきという純粋な話でもありますね。
         ただまぁ買ってきたものを自分で作ったなどと言ったり、欠陥品を売りつけたり、こそこそ横流し←New?するよりはってところですか。

        >H&K
         お膝元ドイツ軍も日本自衛隊も新小銃に採用しなかったのは影響大きいんですかねー。

  4. 心配性のおばさん より:

    私ね。トランプさんがいいとは思っておりませんが、ただ、誰が見てもそれと分かるような不正を行って、それを平然と通してしまおうとする民主党とアメリカに対しては、強い警戒を覚えております。

    アメリカは民主主義陣営ではなく、共産主義陣営に移ったみたいですわ。一党独裁と選挙が選挙でない選挙。

    何時から?多分、中共の老獪な政治家、鄧小平氏により、アメリカの民主党とメディアが懐柔された頃から、C国によるアメリカ侵略は粛々と進んでいたのじゃないかしら?情けないのは、民主党とメディアもいまだにそれに気付いていないことですの。そしてアメリカ市民ですら、この異常を気にも留めない。

    同盟国との協力体制??お笑いです。その同盟国がアメリカの異常に警戒心を抱き、信を置かなくなっている。豪州、カナダ、イギリス・・。そりゃそうですよね。民主主義陣営の雄、アメリカだと思ってスクラムを組んだら、その顔が習近平氏になっているのですもの。ちょっとしたホラーですわ。

    さて、韓国製の兵器がイランの博覧会にあったという珍事ですが、常時であれば完全なる制裁違反であり、韓国はセカンダリサンクションの対象となるハズですが、アメリカの民主党政権は、民主主義陣営とのスクラムはどうでもいい。

    思い出して下さいな。オバマ政権により、中東地域をイスラム武装勢力やイランの影響下に放置し、イスラム国を誕生させました。民主党政権は基本、中東地域や東アジアに関心が無い。関心があるのはアメリカ国内での権力だけです。

    イランも北朝鮮も、どうでもいいことです。いえ、世界に関心が無い。C国に「世界をC国とアメリカとで2分しましょう。」と声を掛けられ、うっかり、「うん。」と言ってしまいそうでしたね。

    イラン制裁も、北朝鮮制裁も、対中戦争も、民主党政権は投げ出す可能性が高い。こういった、アメリカの無関心を奇貨として、あの国は生き残るのでしょうか?

    まあ、日本自身が、頼りにするには危険な日米安保から自立し、アメリカをあてにしない民主主義陣営の再構築ができれば、あの国のことなぞ、どうでも宜しいのですが、菅政権にはムリかも。

  5. 匿名 より:

    k1もk7も存じませんでした。
    まず元になったk1が小銃弾を用いた短機関銃で謎過ぎるんですが、
    それを無理やり9mm仕様にしたんでしょう。
    マガジンとマガジン受けのサイズが全然合ってなくて違和感半端ないですね。
    ちょっと調べただけなので性能がどうとかいえませんが、珍兵器臭がスゴイ(笑)

    1. 農民 より:

       そもそも「短機関銃」「機関短銃」「突撃銃」などの銃の分類に世界共通定義は無く、各開発者や採用組織が設計思想や使用目的により独自に名付けるため、小銃弾を使う短機関銃でもナシではありません。韓国軍の場合はサブマシンガンの後継に小銃弾を用いた銃を開発したのでこの名前があてられた、という書類事情のようですね。
       上ツリーで私も記憶ベースで、「元がK1自動小銃」などと書いてしまいましたが、正しくは、名称は「K1」のみ、書類上の扱いは「機関短銃」、使用弾薬は所謂「小銃弾」でした。こちらでお詫びして訂正致します。(なお、純粋国内技術(笑)に関する評価に変更はございません。)
       ちなみに「機関短銃」は旧日本軍がサブマシンガンを和訳した造語です。NO JAPAN。

      >サイズが全然合ってなくて違和感半端ない
       COLTがちゃんと作った「RO635」という銃もご参照ください。採用もされていますが珍兵器の部類ですね。「使用者はM4で訓練してたけど拳銃弾で運用させたい」といった需要もあるのでしょう。

      1. 福岡在住者 より:

        農民 様

        農民様がここまで「軍事オタク」だったのが、嬉しい。 もしかして、自衛隊出身?
        私は「航空オタクだったー失笑」者です。

        1. 農民 より:

          福岡在住者 様
           漫画・ゲームから入って、ググれば当たる程度の知識までの「ファン」程度で、オタク名乗れるほどではないですよ。空も海も一通り好きですが。
           自分はただのモヤシですが、知人には元普通科で64式撃ってた現花農家のおっさんなら居ますね(笑)

      2. りょうちん より:

        K1は、XM177あたりを想定して作ったんでしょうね。
        ストックのコスト削減感がスゴイw

        1. 農民 より:

          「肩付けできりゃ文句ないやろ、どうせ実戦なんか起きないんだから軽くて安い方がええわ」
          とか言ってそう。

  6. きたたろう より:

    日本の国防費を0.1%でも増やそうものなら、やれ再び侵略の準備だ、軍国主義の復活だとギャーギャー騒ぐ癖に、自分達はポンコツ兵器で金儲けかな?
    どうせひとつも売れないだろうけど⋅⋅⋅⋅⋅

  7. ぱぱいや より:

    もう、グズグズじゃねーか!
    と考えるのは早計で、
    そもそも、トランプが動けなくなったタイミングで、これが出てきた時点で超怪しい

    イランを軸とした、武器シンジケートへのアクセスは出来るからね
    小銃をイランに出せるって事は、北朝鮮の核ミサイルも、イラン経由で韓国に運び入れるのも可能だからね。

    分かってるよね?
    っていう、日米への警告でしょう。

  8. 米国から制裁されているイランに韓国製兵器が…
    https://ameblo.jp/yukibakda/entry-12644292273.html
    http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/12/15/2020121580043.html
    https://www.chosun.com/politics/2020/12/14/3BXBKA3H7REBPGIWW3ZXDUMC7A/
    원선우 wonseon-u ウォン・ソンウ

    朝鮮語を翻訳したので写真もあります
    宜しければ御覧ください

    1. りょうちん より:

      イランの軍人さんもちゃんとマスクしてるんだとほっこりしましたw

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。なお、コメントに際しては当ウェブサイトのポリシーのページなどの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。