王毅氏の日韓訪問から垣間見える「日>中>韓」の力学

先ほどの『菅政権、来日した中国外相に要求ばかりの「塩対応」』に関連し、もうひとつ、ふとした疑問があります。王毅氏、日本に24日の夕方から25日夜まで滞在したにもかかわらず、どうも茂木外相、加藤官房長官、菅総理の3人にしか会えなかった可能性があるのです。また、これにともない王毅氏の韓国訪問も昨日夜にずれ込んだようです。個人的には王毅氏が東京のコーヒーチェーン店で時間を潰している姿を想像してしまった次第です。

出張時の「訪問効率」と出張担当者の悲哀

東京の会社の営業担当者が大阪に出張した際には、多くの場合、できるだけ多くの顧客と会おうとするでしょう。

東京駅を朝7時台に出発する新幹線に乗れば、10時前には大阪の都心にたどり着けます。そこから1社1時間前後として、午前中1社、午後3~4社ほど廻り、夕方5時台の新幹線で東京に戻れば、8時前には東京駅に戻って来られる計算です。

個人的な経験で恐縮ですが、前職では、この手の出張をよくこなしました。行先は、大阪であったり、仙台であったり、福岡であったり、札幌であったり、名古屋であったり、はたまたそれ以外の地方都市であったり、とさまざまでしたが、どの出張でもできるだけ多くの顧客とのアポを詰め込もうとした記憶があります。

ただ、何らかの事情で、とある顧客とのアポがキャンセルになると、それはそれで微妙な時間が流れます。

出張で冬の札幌を訪れた際、午前10時から1時間、A社を訪問し、昼食後、午後1時からB社を訪問するはずだったのに、そのB社のアポがキャンセルとなり、午後2時半からのC社を訪問するまでに3時間半も空き時間ができてしまう、という事例がありました。

そのときはランチで美味しい札幌ラーメンを食べに行ったものの、そのあとはやることがなくなってしまいます。札幌観光をしようにも、スーツと革靴と重いカバンで雪の札幌は歩き辛く、結局、全国どこにでもある某有名コーヒーチェーン店にでも入って時間を潰すはめになるのです。

逆に言えば、効率よく訪問のアポを入れられるかどうかで、出張の成果がある程度決まってしまうのです。

あれ?王毅さんの「空白の時間」は?

それはともかく、先ほどの『菅政権、来日した中国外相に要求ばかりの「塩対応」』に関連し、本稿では王毅(おう・き)中国外交部長(※外相に相当)に関する話題をもう少し紹介してみたいと思います。

政府のウェブサイトをじっくりと眺めると、ひとつの違和感を覚えます。というのも、王毅氏は24日に来日し、夕方5時半から茂木敏充外相との会談・ワーキングディナーをこなし、また、25日の夕方5時から20分間、菅義偉総理を表敬訪問したそうですが、その間にブランクがあるからです。

この時間配分を見ていると、25日午前中から夕方にかけ、いったい何をやっていたのか、気になります。ためしにニューズサイト等をひとととり眺めてみたのですが、そもそも王毅氏の訪日時の行動に関する記事があまり見当たらず、少々困惑しています。

少なくとも外務省のウェブサイト上は、王毅氏は茂木外相と菅総理に会ったということくらいしかわかりません。王毅氏は極秘裏に日本の政治家(たとえば二階俊博・自民党幹事長あたり)と面会していたのか、東京観光でもしていたのか、それとも何もせず、ス●ーバ●ク●で茶でもしばいていたのでしょうか。

これについて確認できた情報としては、いちおう、時事通信の次の記事があります。

加藤官房長官、尖閣・香港で懸念伝達 中国外相「相互に尊重を」

―――2020年11月25日12時29分付 時事通信より

時事通信が昨日12時29分に配信した記事によると、王毅氏は25日、加藤勝信官房長官と首相官邸で約30分会談したのだそうです。記事の配信時間から逆算して、おそらくこの会見は午前中に行われたものでしょう。

そして、時事通信の記事にもあるとおり、加藤官房長官との会談でも、尖閣諸島周辺海域における中国公船の侵入問題や香港情勢などが取り上げられたそうであり、王毅氏は会談後、「隣国としてさまざまな問題があるが、互いを尊重する態度に基づいて適切に対処すべきだ」と述べたそうです。

つまり、24日夜に茂木外相、25日午前に加藤官房長官、夕方に菅総理と会い、それぞれ「要求」ばかりされておしまい、ということでしょうか。なんだか気の毒ですね。

もっとも、王毅氏が私たちのような一般サラリーマンに混じって赤坂見附のド●ールあたりで昼過ぎから夕方5時までコーヒー1杯で時間を潰しているような姿を想像すると、それはそれでとても愛嬌があって良いと思う次第です。

新華社通信の自画自賛

さて、先ほどの『菅政権、来日した中国外相に要求ばかりの「塩対応」』では、日本政府のウェブサイトの記述をもとに、王毅氏が要求ばかり突き付けられるという塩対応を受けた、という話題を書き連ねたのですが、これを中国側から見ると、こんな具合です。

王毅氏、日本の茂木敏充外相と会談 五つの重要な共通認識達成

―――2020年11月25日 10:31付 AFP BB Newsより【新華社配信】

新華社は王毅氏が茂木外相との会談を通じ、「5つの重要な共通認識と6つの具体的な成果を達成した」と絶賛しています。

しかし、その「具体的成果」とやらには、日本の外務省の報道にはない項目も含まれていますし、茂木氏からの中国に対する少なくとも8項目の要求については、記事では完全に無視されています。やはり、国営メディアがこんな記事を配信するくらいですから、中国も「ウソツキ国家」なのでしょうか?

ただ、こうやって「具体的成果」を一生懸命に強調しても、日本の外務省からも情報が出てきてしまっている以上、こんな記事を配信したところで、その気になれば日中双方の発表を見比べるということもできてしまいます。

もっとも、「見たいものだけ見る」というのはいつもの中国政府の特徴でもあるため、今回の新華社通信の記事についても、「普段どおりの中国」ということなのかもしれませんが…。

夜遅くに韓国に到着

その王毅氏は昨日夜、専用機で韓国に到着したようです。

王毅氏が来韓 26日に韓中外相会談=文大統領とも面会へ

―――2020.11.25 23:12付 聯合ニュース日本語版より

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によれば、王毅氏は仁川(じんせん)国際空港に到着し、27日まで滞在するそうです。滞在日数は日本より長いのですが、その理由はおそらく、日本でほとんど面会のアポが取れなかったためではないかという気がしてなりません。

それに、もしも菅総理が午前中の表敬に応じてくれていれば、王毅氏は昨日の昼過ぎには韓国に到着できていたのかもしれません。そのように考えると、わざわざ日本政府は菅総理の表敬について、夕方まで王毅氏を待たせたのではないか、といった疑問も浮かびますね。

もっとも、菅総理自身、国会の会期中は国会に縛られているため、どうしても外国要人の表敬を受けるだけの時間がないという事情もあるのかもしれませんが…。

韓国ではそんな王毅氏を心待ちに!

いずれにせよ、王毅氏が韓国の活動を行うのは、26日にずれ込んでしまいました(結果的に、日本のせいなのでしょうか?)。そんな王毅氏は本日、文在寅(ぶん・ざいいん)大統領自身を含めたさまざまな要人と会談をこなすようです。

文大統領、中国外相とあす会談…習主席の訪韓など議論か

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が26日午後、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)で、中国の王毅国務委員兼外相と会談すると、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)が25日明らかにした<<…続きを読む>>
―――2020.11.25 14:42付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の昨日の記事によれば、本日午前、康京和(こう・きょうわ)外交部長官と中韓外相会談を行い、昼食会を実施。その後、午後には文在寅氏と会談するほか、文正仁(ぶん・せいじん)大統領統一外交安保特別補佐官などとも会談を実施するそうです。

日本政府の塩対応とは、えらい違いですね。

しかも、この中央日報の記事は昨日の午後3時前に配信されたものですが、この記事では王毅氏が「25日午後、日本から(韓国に)到着する予定」などと書かれていますが、実際に韓国に到着したのは25日夜だったという事実を踏まえると、よりいっそう味わい深い記事です。

中央日報は今回の会談を巡り、中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席の訪韓、日中韓サミット、米中関係や朝鮮半島情勢などの懸案について取り扱われるとの予想を示しています。

とくに、韓国が気をもんでいるのは日中韓サミットと南北和平プロセスの再開ですが、これについては今月上旬から中旬にかけて朴智元(ぼく・ちげん)国家情報院長や金振杓(きん・しんひょう)韓日議連代表らを相次いで日本に送り込んだにも関わらず、日本から色よい返事はありません。

だからこそ、韓国はこの王毅氏との会談に期待を込めているのでしょう(もっとも、その肝心の王毅氏自身が日本からかなりの「塩対応」を受けたという点を踏まえると、王毅氏が日韓間の「メッセンジャー」としての役割を果たせるとも思えませんが…)。

いずれにせよ、韓国政府が本日と明日、王毅氏をどう「おもてなし」するかというのも、本件を読むうえでは興味深い視点なのかもしれない、と思う次第です。

読者コメント一覧

  1. でゅーぷす より:

    25日、昼食会があったようです。

    自民・二階幹事長、中国の王毅外相と会食 懸案解決に向け協力確認
    ・・・会食には、平沢勝栄復興相や林幹雄幹事長代理、野田聖子幹事長代行らも同席した。
    https://www.sankei.com/politics/news/201125/plt2011250015-n1.html

    1. でゅーぷす より:

      人民網日本語版(2020年11月26日)にも報道がありました。

      王毅部長が二階幹事長と会談、コロナ落ち着いた後に中日の人員往来拡大へ
      http://j.people.com.cn/n3/2020/1126/c94474-9791233.html

      二階幹事長と王毅外相のツーショット写真の笑顔が印象的。

    2. でゅーぷす より:

      さらに追加
      王毅氏、日本の福田康夫元首相と会見(2020年11月26日)
      ・・・新たな情勢の下、中国は日本と共に努力し、中日間の四つの政治文書と4項目の原則的共通認識の精神の厳守を踏まえ、両国指導者の重要な共通認識を実行に移し、相互信頼を増進し、新時代の要請にかなう中日関係の構築を進めることを願っている・・・
      https://www.afpbb.com/articles/-/3318003

      ・「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する中日共同声明(2008年5月7日)
      http://japanese.china.org.cn/jp/40nen/2012-04/01/content_25045869_4.htm

      ・日中関係の改善に向けた話合い(平成26年11月7日 外務省)
      https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page4_000789.html
      (故若宮啓文氏の論評 https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=596)

  2. だんな より:

    「日>中>韓」では無く、「日>中∋韓」なんじゃない(確かこの向きのはず)。宗主国様の外相の方が、大統領より偉いのです。
    ハンギョレから
    文大統領、きょう王毅外相と会談…習近平の訪韓時期の確定は未知数
    https://news.yahoo.co.jp/articles/425944e60aca40329f28239e396baaef863ba846
    >王部長の今回の訪韓で目を引くのは、詰め込まれた非公式日程だ。与党内の代表的な「中国通」にすべて会うかたちだ。
    という事で、拝謁するのに列を成す状況の様子。

  3. はにわファクトリー より:

    会計士どの

    >個人的には王毅氏が東京のコーヒーチェーン店で時間を潰している姿を想像してしまった次第です

    いや、笑いました。
    次の訪問先会社近くで時間調整のためぼおっとするのは、自分もよくやってますので。ビジネストークのシャドーボクシングをやっているので無駄じゃないんですけど。

    1. タナカ珈琲 より:

      はにわファクトリー様

      ワタシは東京の珈琲チェーンは敷居が高いデス。ミンナ金持ちに見えます。
      因みに私はミスドです。11:00迄に注文すればポンデリング付で325円です。昨日は珈琲4杯、ポンデリング付きで325円です。今日は3杯で325円です。コスパが良いでしょう。味の方は好き嫌いが有るでしょうが、慣れればドンナ珈琲でも美味しいデス。

      東京の珈琲屋さんやったらルノアールが好きだなぁ。現役時代の思い出です……。
      此れもチェーン店だなぁ。新宿さんはルノアールのコトですか?
      此処は昆布茶が出て来たら、お尻が痒くなります。

      1. ぷー より:

        ルノアールは、コーヒーの味は覚えていないけど、ソファが良いですよね。新入社員時代に先輩から教えてもらいました、あそこは寝れる。

  4. ボーンズ より:

    更新ありがとうございます。
    待ち惚けをイメージすると、笑ってしまいます。
    韓国では、三跪九叩頭の礼でお出迎えされているのかと考えてしまいました。

  5. 匿名 より:

    そもそも約束守らないのにやたらと会いたがりますけど、気まずいとかなんとかそういう感覚はないんですかね?どうでもいいけど。

  6. お虎 より:

    「先に手を付けたぞ」というマーキングだろうね。
    アメリカ新政権のアジア政策がはっきりしないうちに、「RCEP諸国の地固めをしたぜ」ということさ。

  7. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    世界からの信頼度を不等式で言うと、日>>中>>>韓。

    国の品位で言うと、日>>>中>韓。
    (異議を認めます。)

    さて、25日の自民媚中派と王毅氏の昼食会はどんな話があったのでしょうか?裏ワザしか出来ない二階はじめ、国を売る連中ですから少しは興味あります。

    王毅氏はさぞかし溜まっている(失笑)。韓国でどれだけ鬱憤晴らすか、見ものです。

  8. 理系初老 より:

    いつも拝見させていただき、一読者として応援しています。
    が、今回の中国外相来日に関しては、日本の外相・首相等は中国に塩対応であったどころか、腑抜けであったと私は個人的に思っています。維新を除く野党はクズなので次の選挙で野党に投票するというような事は絶対しませんが。
    記者会見で、日本語の分かる王外相が、「日本の漁船が悪い」と中国語で述べて通訳者にシェーシェーと言った後、茂木外相はそれに反論せずにニコニコとシェーシェーと言ったとさ。茂木外相も岩屋元防衛大臣とさして変わらん。ぬらりひょん二Fの指示にさからえない菅首相も、あーなさけない、なさけない。
    以上私見失礼いたしました。

  9. より:

    その昔、中国によく出張していたころのことを思い出しました。
    何しろ中国は広く、ある一社に訪問するためだけにその都市を訪問するということがよくありました。ところが、中国の会社は事前にアポを取っていても、しばしばドタキャンをかましてくれます。多くはアポを取っていたはずの担当者が急遽出張に行くことになったのでということでしたが(事実かどうかは不明)、あまりに頻繁に起こるので、もはや腹も立ちません。
    しかし、問題は、その一社を訪問するためだけにその都市に行ったのに、訪問がキャンセルされてしまうと、何もすることがなくなります。飛行機は手配済みなので、じゃあ次の都市にというわけにもいきません。さて、困りました、どうしましょう?
    というわけで、致し方なくその都市で”市場調査”と称して、その都市の観光地を”視察”することに相成ります。おかげさまで、成都の武侯祠(諸葛孔明のお墓)や武漢の黄鶴楼など、幾つかの名跡を”視察”することができました。その他にも、空き時間に上海の豫園を”視察”したりなどしましたので、中国では空き時間ができてもそれほど困りませんでしたねえ。

    一方、韓国でもドタキャンが頻発したもんですが、韓国では本当に困りましたねえ。なにしろわざわざ見に行くほどの旧跡がな~んにもないので。しょうがないので、喫茶店で駄弁るくらいしか時間の潰しようがなかったのでした。

    1. お虎 より:

      お店で、「ビール何にする? 青島? 三得?」って聞かれなかった?

      1. より:

        不対。那時、你要説再来一杯燕京啤酒。

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