「QFSブロックチェーン」「おとり捜査」説の信憑性

米大統領選を巡り、今朝の『過去4回平均と比べ、なぜ2割近くも得票が増えたのか』では、最も客観的に確認できる数字である「両候補が獲得した票数」をもとに、米大統領選の不自然な点を調べてみたのですが、本稿ではこれに加えてあと2つほど、気になる情報を紹介しておきます。ひとつは「選挙人ではなく州議会が大統領を選べるのか」という論点、もうひとつは「QFSブロックチェーンを使った透かし」というネット上の噂話の信憑性です。

トランプ氏が月曜日以降、訴訟を多発へ?

米大統領選では圧倒的多数のメディアが「ジョー・バイデン候補が勝利した」と報じているなか、ドナルド・J・トランプ米大統領は依然として、敗北を認めていません。こうしたなか、産経ニュースに日本時間の今朝未明、こんな記事が配信されていました。

トランプ氏「敗北容認」準備の報道 訴訟不発なら 決着めぐり神経戦

【ワシントン=塩原永久】米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利を確実にし、共和党のトランプ大統領の動向が焦点となっている。<<…続きを読む>>
―――2020.11.9 01:24付 産経ニュースより

「民主党のバイデン前副大統領が勝利を確実にし」、とありますが、これ自体、果たして信頼して良いのでしょうか。

今朝の『過去4回平均と比べ、なぜ2割近くも得票が増えたのか』では2020年の米大統領選を巡り、民主、共和両党の候補者が獲得した票を過去4回分単純に平均した数値と比べ、両候補ともに1000万票以上上回っているという事実を紹介しました。

また、おもにインターネット上では、(真偽不詳の情報も含めて)民主党側が大規模な不正を働いたのではないかとする情報が多数出回っており(たとえばトランプ票が大量に捨てられていた、あらかじめ「バイデン」にチェックがついていた、など)、それらを「全部フェイク」とバッサリ切り捨てるべきなのかは疑問です。

というよりも、米メディアの「バイデン勝利」報道を眺めてみると、まるでなにかにおびえているかにも見えます。ことに、『捏造、隠蔽、つまみ食い…メディアの劣化は止まらない』でも紹介した、トランプ氏の会見をNBCニュースが強引に打ち切ったという話題などは、その典型例でしょう。

日経電子版「選挙人選びの奇策は州議会が指名」

ただし、ここで産経ニュースの報道を紹介したのには、理由があります。それは、トランプ陣営が「9日以降も各地で法的措置を取る」方針だ、という部分に引っかかったからです。

これが単なる悪あがきなのか、それとも「確たる証拠」を握っていて、相手がカードを出し尽くした時点でそれを一気に出すという戦略なのかはわかりませんが、それでも法廷闘争をウダウダと続けていると、トランプ氏は思わぬ「奇策」を利用することができる、との報道もあるからです。それが、日経電子版に10月19日付で掲載された、次の記事です(同20日付で更新)。

選挙人選び「奇策」検討 共和多数の州議会が指名?

【ワシントン=芦塚智子】トランプ米大統領の陣営が大統領選の投票結果を無視する「奇策」を検討しているとの報道が波紋を広げている。<<…続きを読む>>
―――2020/10/19 23:17付(2020/10/20 6:03更新) 日本経済新聞電子版より

日経の記事の指摘は、こうです。

  • 米大統領選は合衆国憲法第2章第1条に定める「選挙人制度」という仕組で実施されており、各州の選挙人数はその州が連邦議会で持つ議席数と等しく、合計で538人いる
  • 大半の州では1票でも多くの票を得た候補がその州の選挙人をすべて獲得すると州法で定めており、その選挙人が12月14日に投票を行い、結果を同23日までに連邦議会に送付する必要がある
  • 2021年1月6日に上下両院合同会議で各州の結果を集計し、過半数を得た候補が1月20日に大統領に正式就任する
  • ところが、肝心の「選挙人の指名方法」自体、合衆国憲法の規定には存在していない

すなわち、ここで重要なポイントは、合衆国憲法の規定は「有権者の投票結果が選挙人を決める」、ではなく、「各州は州議会が指示する方法で選挙人を指名する」、となっているという点です。

極端な言い方をすれば、州議会が投票結果という有権者の意向を無視し、直接、選挙人を決めてしまっても、「合衆国憲法の規定上は」問題ないのです。

実際、日経の記事では「19世紀初頭までは州議会が選挙人を直接指名していた州もあった」などとしており、憲法の規定が変わっていない以上は、現在でも州議会が独自に選挙人を選ぶ余地がある、との解釈も成り立ちます。

もちろん、そんなことをしてしまうと、その州は全米からの強い批判を浴びるでしょうし、また、その州の有権者が納得せず、さらなる法廷闘争に持ち込まれてしまう可能性もあります。要するに、次期米大統領の選出が、遅れに遅れる、というわけですね。

さらには、日経記事にはこんな話もあります。

党の指名候補に投票しない『不誠実な選挙人』の問題も波乱要素だ。16年大統領選では、民主党の選挙人が候補のクリントン氏ではなくサンダース上院議員や先住民の活動家に投票し、共和党の選挙人がケーシック元オハイオ州知事らに投票するなど、史上最多となる計7人が造反した。

そして、一般的に混乱が長引けば長引くほど、政治の不確実性が増大します。そうなれば、どちらが勝っても負けても、結果的に中国共産党を利することになりかねません。

「QFSブロックチェーンを使ったおとり捜査説」の信憑性は?

さて、インターネット上で流れている「うわさ話」のなかで、気になるものがもうひとつあります。

それは、今回の米大統領選では投票用紙に「QFSブロックチェーン」の技術を使った透かしが用いられていて、「選挙を盗む彼ら」を捕まえるための、一種の「おとり捜査」が行われている、とするものです。その一部は、これです。

Watch! “Pres Trump Setup Dems In “Sting Operation” To Catch Them Stealing Election!”
Dr. Steve Pieczenick claims that election ballots across America have been watermarked w/ QFS Blockchain to track cheating.
Arrests starting tonight!
“Let’s see what happens”
―――2020/11/06 13:18付 ツイッターより

「QFSブロックチェーンを使った透かし」!

なんだか凄い話ですね。投票用紙に何らかの連番でも刷り込んでいたというのでしょうか?

一般に「QFS」とは、「量子金融システム(Quantrum Financial System)」のことを指すのでしょう。また、ブロックチェーンは仮想通貨などにも用いられている暗号化の方法で、帳簿などの偽造を困難にする、といった活用法があることは、以前から指摘されて来ました。

ただ、この話題については気になるのは、その信憑性です。

一部の「まとめサイト」などで拡散されていて、「中国から発送された偽物の投票用紙とは一発で見分けがつく」、「バイデン陣営の不正は大規模に摘発される」、といった尾ひれも付いているようです(あえてそのブログの名称は名指ししませんが…)。

しかし、結論的にいえば、現時点においてこの話については、どうもかなり信憑性に欠けます。というのも、そもそもの情報源自体、どこまで探しても、結局は「ドクター・スティーブ・ピチェニックがそのように話した」といった具合に、確たる一次ソースにまで遡ることができないからです。

ちなみに「スティーブ・ピチェニック氏」について、ネットで調べてみると「今年76歳になるキューバ生まれのユダヤ系米国人」だそうです。ただ、この人物、米国務省での勤務経験はあるようですが、ブロックチェーンの技術に詳しい人物なのかはよくわかりません。

というよりも、「スティーブ・ピチェニック氏がそう述べた」というわりには、同氏の発言を一次ソース(報道、ツイッター、ブログなど)で探してみたものの、ついぞ見つからないのです(※探し方が悪いだけでしょうか?)。

このことから、現時点ではこの内容が事実なのかどうか、判断がつきませんし、「適当な内容を主張している人が、自説を権威付けるために、この人名を持ち出した」という可能性も高そうに思えてなりません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ちなみに個人的には、この「QFSブロックチェーンを使った透かし」という用語は先週末の時点で発見していたのですが、いくら調べても一次ソースに遡れないため、当ウェブサイトではこれまで紹介するのを控えていました。

この点、「ページビュー(PV)」だけを稼ぎたいのであれば、当ウェブサイトも先週の時点で、さっさと「トランプ陣営は不正を予見して『おとり捜査』をやっていた!本物の郵便投票にはQFSブロックチェーンを使った透かしが入っていた!」などとする記事でも書いておけば良かったのでしょう。

しかし、やはり情報に信憑性があるかどうかについて判断がつかないものを慌てて紹介するというのは良いことではありません。それをやってしまうと、結局は一部の捏造メディアと同じことになってしまいます。

その意味では、当ウェブサイトとしては、PVが稼げなくても、時間がかかっても、ちゃんと情報源が確かめられているものを中心に紹介する(情報源が確認できない場合には「現時点では確認できない」と明言する)というスタンスを改めるつもりはありませんので、この点についてはご理解くださいますと幸いです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. だんな より:

    投票用紙の偽造が解るのであれば、早い時期にトランプ大統領側から、公表されると思います。

  2. イーシャ より:

    QFSブロックチェーン?
    その話は怪しいですね。
    そもそも論として、量子なんちゃらである必然性がない。
    ブロックチェーンで流通経路は把握できるかもしれないが、郵便物などの物理媒体との親和性は ?
    透かしを入れるなら、例えば磁気インクのようなアナログ技術でいいんじゃない ?
    難しそうな単語を並べ立てて素人を騙す手口にしか見えませんね。

    1. イーシャ より:

      投票用紙に何らかの透かしが入っていた可能性は否定しません。
      むしろ入れるべきですね。

    2. だんな より:

      イーシャさま
      日本の「薄っぺらい紙に、鉛筆で手書き」は、意外と不正しにくいのかもしれませんね。

      1. イーシャ より:

        だんな 様
        手書きで名前を書くっていうのは、不正しにくいかもしれませんね。
        住民登録に基づいて選挙人名簿が作成され、投票所で(地元の人に)チェックされるのも大きいと思います。

  3. より:

    > それらを「全部フェイク」とバッサリ切り捨てるべきなのかは疑問です。
    現時点ではなんとも判断のしようがありません。切り捨てるにも切り捨てないにも、判断材料がない以上、今のところ「そういう噂も流れている」以上のことを取りざたすべきとも思いません。

    確かに、票の出方からして、「何かおかしくないか?」と思わなくもないですが、確証がない以上、当面は静観するよりないと思います。ただし、アメリカ大統領選挙の結果は各国にとって重大関心事ですから、当然各国の情報機関は入念に調査・分析した結果を各国指導者に上げているはずです。それを踏まえた上で、各国指導者からバイデン氏あてに祝意が伝えられているという事実は、結構重いものだと考えます。単に米メディアの報道を鵜呑みにしたわけではおそらくないでしょう。
    まあ、情報機関の判断も往々にして間違えることもあるようですが。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      そのあたりに関しては中国のリアクションが興味深く…でアリマス

  4. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    どう考えても両陣営で2,000万票も前回より増えたのは、ちょっと信用出来ないですね。部外者だから憶測と風聞でしか判断出来ませんが。

    ある州では後半になって異常なピッチでバイデン候補が集票し、逆転勝ちしたり。郵送なんてのも怪しいし、時間過ぎてからの票が有効になるなんて、、。事前投票だけで十分でしょう。手書きで姓だけでも有効の日本の方が疑惑投票は少ないでしょう(笑)。あ、一番不正しにくいのは、北朝鮮だな(爆笑)。なにせ目の前で書かされるから。

    QFSブロックチェーンの技術を使った透かしは入れて正解。「選挙を盗む彼ら」とは、果たして何処の息がかかった奴等でしょうか。そういや菅総理はバイデン氏とハリス氏には「祝福のメッセージ」を送ったものの、大統領、副大統領とは書いてないですね。意味深な(笑)。

  5. イーシャ より:

    ここの読者の方々なら、ブロックチェーンは理解していると考えていいのですね。

  6. れんげ草 より:

    また煮え湯を飲まされないように、それでも業腹な事は起こり得るやもしれませんが…、なるべく喉の火傷が軽く済むように相性の良くない民主党への対応を考えていくしかないですね。
    あ、無論、日本政府が…

  7. 匿名 より:

    米国の大統領選挙の最終段階で「単なる儀式」として各州の単位で其の州に割り当てられている選挙人団(例としてニューヨークは29人、バーモント州は3人)をワシントンに集め、その「選挙人団」が大統領を多数決で選びますが、州によってはその選挙人が個人の自由意志で投票する大統領候補を選ぶ事が可能です。

    だからテキサス州、ジョージア州、イリノイ州等からの選挙人団の一員である個々の選挙人は理論的にはその州で負けた大統領候補に投票する事が出来ます。

    そのようない逆投票をする「自由意志選挙人」は滅多にいませんが、歴史上では幾人か存在します。

    アメリカの大統領選挙は原則的に「間接選挙」であるし、部外者には分かり難い制度です。

  8. ひろた より:

    私はテレビ番組のインタビューで彼自身の発言で確認しました。
    Twitter の引用そのインタビューでの発言であると思われます。
    氏は国務次官補も務めた保守派の重鎮のような存在のようです。

  9. はにわファクトリー より:

    インターネットは RPG (roll playing game) と化している。意図的に埋め込まれた小さな陰謀をググって発見する利用者参加型ゲームである、という意味の発言を池田純一氏が現代オンラインでしてました。
    今回のようにメディアが全世界同時にバイデン候補当選追従を喧伝している現状は当方たいそう違和感を感じます。現職が自殺点を選ぶのはしかたありません。

  10. 匿名 より:

    https://www.google.co.jp/amp/s/coinpost.jp/amp/%3fp=192201
    私はこの話が伝言ゲームで変わっていったと見ています。

  11. 匿名 より:

    「QFSブロックチェーン透かし」と聞いただけで腹筋崩壊レベルの程度の低いデマなのは明らかでしょう。

    そもそも、QFS自体が技術的に実装レベルにはない。
    ブロックチェーンを用いたセキュア投票システムというアイディアはあります。
    しかし、それは今、拡散されているデマとは似ても似つかないものです。
    これは、まず有権者は選管から送られる認証コードを入力する必要があります。
    そうするからこそブロックチェーンで履歴が追えるのですし、公であるのにに偽造ができないことに意味がある技術。秘密裏におとり捜査としてこれを行うなんて全くあり得ない。真逆の技術です。
    ましてや、紙そのものに加工する「透かし」と「電子透かし」の区別が全くついていないもう、笑うしかないお話です。

  12. 匿名 より:

    QFSとは、量子金融システムのことだと思っていましたが
    実は、Qアノン・フェイク・システムだったのですねw

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