国際社会のルール無視する中国に寛容であるべきなのか

数字で読む日本経済』シリーズとして掲載した昨日の『人件費上昇でコスト優位を失う生産拠点・中国の現状』では、中国における人材という視点で、おもに人件費に焦点を当てて、日本企業が中国とおつき合いする価値があるのかについて考察しました。本稿では冒頭にその議論の補足を掲載するとともに、後半では中国の金融における諸問題についても触れてみたいと思います。

人材の議論

昨日の議論の補足

本日は、昨日の『人件費上昇でコスト優位を失う生産拠点・中国の現状』の補足からスタートします。昨日、当ウェブサイトではこんな図表を紹介しました(図表1)。

図表1 中国主要都市・地域の月額最低賃金の変化と上昇率
都市月額最低賃金の変化上昇率とその年平均
北京市1,160元(2011年)→2,200元(2019年)89.7%(年平均11.2%)
天津市1,160元(2011年)→2,050元(2017年)76.7%(年平均12.8%)
石家庄市1,100元(2011年)→1,900元(2019年)72.7%(年平均9.1%)
上海市1,280元(2011年)→2,480元(2019年)93.8%(年平均11.7%)
蘇州市1,140元(2011年)→2,020元(2018年)77.2%(年平均11.0%)
南京市1,140元(2011年)→2,020元(2018年)77.2%(年平均11.0%)
杭州市1,310元(2011年)→2,010元(2017年)53.4%(年平均8.9%)
厦門市1,100元(2011年)→1,800元(2020年)63.6%(年平均7.1%)
深圳市1,320元(2011年)→2,200元(2018年)66.7%(年平均9.5%)
重慶市870元(2011年)→1,800元(2019年)106.9%(年平均13.4%)
ハルビン市1,160元(2012年)→1,680元(2017年)44.8%(年平均9.0%)
新疆ウイグル自治区1,160元(2011年)→1,820元(2018年)56.9%(年平均8.1%)

(【出所】三菱UFJ銀行・国際業務部作成『中国主要都市の最低賃金推移』の内容を抜粋)

じつは、この図表でいう「年平均」の部分、上昇率を単純に年数で割ってしまっています。これについて、昨日の稿では「上昇率を単純に年数で割ったもの」と明記しているため、議論としては間違いとは言い切れませんが、数学的にはかなりミスリーディングです。

通常、「年間X%の上昇率がY年継続した」と表現する場合、元の数値に「(1+X)のY乗」を乗じる必要があります。逆に言えば、この「X」の値は、図表1で示したものよりも小さくならなければおかしい、というわけです。これについて再計算した正誤表を掲載しておきます(図表2

図表2 中国主要都市・地域の月額最低賃金の年間上昇率
都市・地域単純平均正しい年成長率
北京市11.21%8.33%
天津市12.79%9.95%
石家庄市9.09%7.07%
上海市11.72%8.62%
蘇州市11.03%8.52%
南京市11.03%8.52%
杭州市8.91%7.39%
厦門市7.07%5.62%
深圳市9.52%7.57%
重慶市13.36%9.51%
ハルビン市8.97%7.69%
新疆ウイグル自治区8.13%6.64%

(【出所】著者作成)

大変に失礼しました。

ただし、「中国各地で最低賃金が大きく上昇していて、中国に進出することのコスト優位が損なわれている」という意味では、昨日の議論については本質が大きく変わるものではありません。

人件費のコスト優位は失われている

さて、昨日までの議論では、次のような点について、具体的な数値をもとに検証しました。

  • 少なくとも日本側の統計に基づけば、日中両国の経済的な関係は近年、ますます深まっている
  • ヒト、モノ、カネという3要素のうち、とくに人的交流と貿易において、日中関係は非常に深い
  • ただし、日本企業の対中投資、日本の金融機関の対中与信は、世間のイメージほどは多くない

ただし、それと同時に当ウェブサイトとしては、某経済新聞などが「日本企業は中国に進出すべきだ」と主張した論拠のうち、大部分はすでに失われているか、もしくは虚偽であったのではないか、とする仮説を提示しています。

それらの論拠については、おそらくは次の3点に集約できるでしょう。

  • ①経済成長著しい14億人の人口の大国・中国は日本企業にとって魅力的な市場だ
  • ②中国には安くて良質で豊富な労働力が存在している
  • ③日中は地理的にも歴史的にも非常に近く、未来に向けて手を取り合い発展していく関係だ

このうち①については、人口やGDPなど、中国が発表する統計をそのまま信頼して良いのか、という議論をい脇に置くと、たしかに人口自体は14億人弱だそうです(たとえば外務省『世界いろいろ雑学ランキング』では、2018年の中国の人口は13億9273万人と記載されています)。

しかし、現実の貿易統計を読むと、中国は日本企業にとって「14億人の市場」ではありません。というのも、日本の輸出品目は資本財や中間素材など「モノを作るためのモノ」が中心であり、また、日本はむしろ中国に対して貿易赤字国だからです。

また、中国の労働力が「良質」かどうかは別として、たしかに中国の人件費は安かったのですが、経済発展にともない、すでに「労働力が安いだけ」の国ではなくなってしまっています。

もちろん、一部では中国が少数民族などに過酷な奴隷労働を強いているのではないか、といった報道もあるようですが(著者個人としては事実だと考えています)、もしそれが事実であったとしても、そうすることが中国全体のコスト競争力を高めるのに大きく寄与しているとも思えません。

古今東西、いかなる国であっても、「キャッチアップ期」を終えると、経済成長は停滞局面に入ります。おそらく中国もそれから逃れることはできないのです。

「千人計画で優秀な人材を確保せよ」

ここで基本に立ち返ると、中国経済には深刻な矛盾が内在しています。それは、基本的には「中国共産党一党独裁国家」でありながら、西側民主主義国の自由主義経済を採用している、という点です。

自由主義国のルールと共産主義国のルールは、基本的に相容れません。

人件費という視点でひとつ補足をしておくと、以前の『「千人計画」阻止?やっと技術管理強化に乗り出す日本』でも触れたとおり、どうも中国は国を挙げて、「千人計画」と呼ばれる、「日米欧のハイレベルな技術者・人材ら」の積極的な招聘計画」を実行しているようなのです。

ちなみにこの「千人計画」、べつに陰謀論でもなんでもありません。条件は公表されており、詳細については、なぜか国立研究開発法人科学技術振興機構(JSTA)が運営する “Science Portal China” というウェブサイトの『千人計画』というページに掲載されています。

これによれば、「千人計画」とは中国共産党中央組織部の「中央人材工作協調チーム」が実施しているもので、外国人または外国で就労している中国人が「海外招致人材」として中国で就職した場合、たとえば次のような処遇を受けるそうです。

  • ①中央財政から海外招致人材に1人あたり100万元一括補助金を与える。また、これは国家奨励金とみなし、個人所得税を免除する
  • ②海外招致人材が外国籍の人物の場合、本人や外国籍の配偶者、未成年の子女が「外国人永久居住証」および2~5年期間付きの数次再入国ビザを受けることが可能
  • ③海外招致人材が中国国籍の人物の場合、出国前の戸籍所在地の制限によらず、国内の任意1つの都市を戸籍所在地として選択することが可能
  • ④招致人材及びその配偶者・子女は中国国内の各種社会保険制度を受けることが可能
  • ⑤5年以内の中国国内収入のうち、住宅手当、飲食手当、引越費用、親族訪問費、子女の教育費などが免税となる
  • ⑥招致人材の配偶者についても、招致人材の就業先機関から仕事を手配するか、生活補助金を出すほか、招致人材の子女の就学については本人の志望に応じて関連機関が対応する
  • ⑦招致人材の雇用期間は本人の帰国・入国前の収入水準を参考に、本人と協議し、合理的な賃金額を決定する

また、この招致人材は高等教育機関や研究機関、中央企業などの上級管理職、専門技術職に就くことができるほか、政府機関の科学技術資金、産業発展サポート資金などの申請が可能なのだそうです。使い放題の予算、厚待遇という意味で、研究者にとってはたしかに魅力的な環境です。

これも、人工知能や量子コンピュータなどの先端分野の技術漏洩や、高度人材の中国などへの転職を防ぐことができないという問題点を突いた、中国なりの技術簒奪手段なのでしょう。だからこそ、対策を講じなければ、中国などへの技術漏洩を、指をくわえて眺めていることになりかねません。

金融分野での中国

IMFはなぜ、人民元をSDRに加えたのか

さて、自由主義国と共産主義国のルールが正面から衝突する分野として、もうひとつ重要なのが、通貨と資本規制です。

自由貿易の世界では、基本的に国が輸出競争力を強めるような試みは望ましくないとされており、たとえばルールに基づかず、為替相場を一方的に一定水準に誘導するような操作は、他国の利益を一方的に侵害することが多いとされています。

中国の場合、公式には自国通貨・人民元については変動相場制に移行したとされていますが、現実には中国の中央銀行である中国人民銀行が人為的に為替相場を決定し、誘導するという、非常に不透明な慣行が続いています。

その人民元は、2016年10月に国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)の構成通貨に指定されました。

SDRに指定されるためには、基本的には「自由利用能通貨」(Freely Usable Currency)であることが必要ですが、2016年10月の時点で、人民元がIMFの定義する「自由利用可能通貨」の要件を満たしていたのかは微妙でしょう。

自由利用可能通貨
  • 国際取引での支払いに広く使われていること
  • 主要な取引市場で広く取引されていること

(【出所】IMFウェブサイト日本語版『特別引出権(SDR)通貨バスケットの見直し』)

実際、銀行などの大口の為替市場は、貿易などの実需の取引よりも金融取引や資本取引のほうが市場規模として遥かに大きく、また、直物(スポット)市場のサイズは、外為市場全体において3割前後に過ぎません。

この点、なぜIMFが人民元をSDRに指定したのかについては、個人的には大いに謎だと感じていましたが、『いったいなぜ、IMFは人民元をSDRに加えたのか』でも取り上げたとおり、おそらくIMFや西側諸国には、そうすることで中国側に国際ルールの順守を促す狙いがあったのでしょう。

金融専門誌である『週刊金融財政事情・2020年1月13日号』(P22~25)に掲載された、「田中泰輔リサーチ」代表の田中泰輔氏の論考では、次のように指摘されています。

人民元が16年に、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)の構成通貨に採用されたのも、西側諸国の寛容政策のあらわれの一つといえる。SDRはIMF加盟国のための国際準備資産で、人民元採用以前は米ドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨で構成されていた。(中略)そもそも人民元は、取引規制、為替管理など、SDRを構成する国際通貨の要件を満たしてはいなかった。ところが、欧米主要国は、実質的機能の乏しいSDRに人民元を加えても実害は少なく、むしろ中国に恩を売ることで国際ルールの順守を促そうと考えた。」(同P24)

人民元のSDR入りを巡って、さまざまな人がさまざまな説明を試みていますが、個人的にはこの田中氏の説明が、最もすんなりと納得できるものだと思います。

つまり、西側諸国は中国を自分たちのルールに引き入れるために、さまざまな優遇措置を講じてきたのですが、人民元のSDR入りはその優遇措置のひとつだった、というわけですね。

中国はその恩恵にどう反応したのか

では、現実の中国は、IMFが自国通貨・人民元をSDRに組み込んでもらったという「恩」を感じ、その「恩」に対し、何らかの報いをしたのでしょうか。

結論的にいえば、中国当局はいまだに国際的な資本取引規制を続けていますし、上海など中国本土の金融市場は未成熟なままで、改革開放は小出しであり、いまだに世界各国の投資家に対し広く公開されていません。

もちろん、人民元は近年、とくに香港などのオフショア市場では、(見た目は)自由で闊達な取引がなされていますし、国際的な外為市場や外貨準備資産などとして、少しずつその存在感を増していることは事実でしょう。

しかし、『国際的な債券市場と人民元:2015年を境に成長停止』でも指摘したとおり、人民元建てのオフショア債券市場は、2015年を境にピタリと成長が止まり、その後は実質的に停滞しているという状況が続いているのです。

つまり、金融の世界では、中国は自由に外国の金融資産に投資することが可能なのですが、外国人投資家は中国の金融資産に自由に投資することはできない状況が続いていますし、オフショア債券の市場規模も、IMFのSDR構成通貨にふさわしいものとは言い難いのです。

要するに中国という国は、西側諸国の自由で開かれたルールに乗っかりながら、相手国に対しては自国市場を閉鎖するという非常に一方的な措置を講じている国であり、しかも、国内的には中国共産党の一党独裁が続いているのです。

G7「相手国を債務で縛るな」

そのうえで、金融という視点で中国に大きな問題があるとすれば、相手国を債務で縛るという開発途上国援助の在り方でしょう。これについてG7財相会合は2020年6月3日付で、こんな声明を公表しています。

債務の透明性及び持続可能性に関するG7財務大臣声明 (仮訳)

我々は、最貧国及び最も脆弱な国に焦点を当てた、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックへの国際的な経済対応を前進させるために、引き続き協働する。新型コロナウイルスは、多くの低所得国における既存の債務脆弱性を悪化させ、長期の開発金融にかかる債務の持続可能性及び透明性の重要性を強調している。我々は、最も脆弱な国々に対する支援を拡充する国際金融機関(IFIs)の取組を歓迎する。<<…続きを読む>>
―――2020年6月3日付 財務省HPより

同じく中国を名指ししていませんが、これも中国に対する牽制と読めます。G7は、武漢コロナの世界的蔓延に伴い、開発途上国が借り入れている資金の返済負担が重くなることを警戒しているのですが、そもそも論としてコロナ以前からこの債務問題は西側諸国で問題視されてきました。

というのも、最貧国に対し、返しきれないほどのカネを貸し付け、相手国がデフォルト状態に陥った際、借金のカタとして港湾の利用権などを差し押さえてしまう、という外交が、多くの国で見られるからです(たとえば『AIIBと中国に開発援助の資格はあるのか?』等も参照)。

当然、こうした中国の姿勢は、国際的な支援のルールから逸脱するものでもあります。

G7、デジタル人民元を強く牽制

これだと、中国は西側諸国の制度などをうまく利用しつつ、金融という手段を自国の軍事的覇権などの実現のために悪用していると見られても仕方がありません。

こうしたなか、その中国が現在、推し進めようとしているのが、デジタルカレンシー(中央銀行の電子通貨化)です。

電子通貨はそれ自体、非常に便利なものではありますが、個人データが中央銀行に筒抜けになってしまいかねませんし、それを悪用すれば、さまざまな企業・個人の取引を独裁者である中国共産党が把握する、ということにもつながりかねません。

G7は10月13日の財相・中央銀行総裁会合において、こんな声明文を出しました。

デジタル・ペイメントに関する G7 財務大臣・中央銀行総裁声明

―――2020/10/13付 財務省HPより

簡単にいえば、「デジタル・ペイメント(電子決済)が普及すれば、決済コストが低下するというメリットもあるが、課税逃れやマネー・ロンダリングなどに対処するため、①透明性、②法の支配、③健全な経済ガバナンス、という視点から、公的セクターがきちんと関与すべきだ」、という声明です。

中国を名指しこそしていませんが、「①透明性」については「中国共産党支配の不透明さ」、「②法の支配」については「法の上に中国共産党が存在している中国の問題点」、「③健全な経済ガバナンス」は「経済に対する中国共産党の支配力」と読み替えれば、これが対中牽制であることは明らかでしょう。

G7声明は、次のように述べています。

G7は、いかなるグローバル・ステーブルコインのプロジェクトも、適切な設計と適用基準の遵守を通じて法律・規制・監督上の要件に十分に対応するまではサービスを開始すべきではないとの立場を、引き続き維持する。

著者個人はこれを、「中国共産党に筒抜けになるような仕組みを作るのは許さないぞ」、という意思表明ととらえました。

もちろん、中国が現在の厳格な資本規制を維持したままで、人民元の支配力を強められるかといえば、話は別でしょう。しかしながら、遅まきながら国際社会は、人民元をSDRに加えたという「寛容さ」の対価を支払わなければならなくなり始めています。

その第一歩がデジタル人民元であるのだとすれば、これはなかなか興味深い現象といえるのかもしれませんね。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    ソフトウェア開発・BPO (business process out-sourcing) のオフショア展開については当方は大いに疑問を感じています。上海およびその後背地域(海側から見て)におけるオフショアは価格競争力の面でもはや正当化できない情勢です。コンピュータ技術者はよりおいしい草を探して職場を移動する羊のようなもので、サラリーのより良い別な会社に移ってそのうち居なくなってしまう存在と割り切るほかない。給与上昇カーブ急峻な発展途上国においてはこれは普遍事実の一部です。
    転職理由には、自己の成長に与するものが職場にあるのかないのかも問題視されます。技術進化の早い産業分野に身を置いている現実を皆よく分かっているのです。すなわち手持ちのスキルはすぐ陳腐化しますから、どんどん最新テクノロジーへ脱皮し続ける強いインセンティブがある。だからこそIT産業は爆速速度で進化してきたのです。その息吹きを呼吸しているオフショア人材は、進化しないニッポン、つまらない仕事しかよこさないニッポンに愛想をつかしている。それが外から見た日本産業界の残念な一面なのでした。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      サラリーマン感覚経営者の蔓延と自称物言う株主の台頭、「みんなでシアワセになろーよ」が(経済成長的視点からは)悪い方に転んだ…ってコトすかね?

  2. はにわファクトリー より:

    千人計画の具体的な要綱については本記事で初めてそれを知りました。大変勉強になります。
    H1Bビザというものがアメリカにあります。高度人材就労ビザとして有名です。千人計画の条項をみて自分はピンと来てしまいました。そこに掲げられている国家の未来に貢献する高度人材の定義および「ベネフィット」には、見覚えがあるような気がするのです。
    法務省「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」
    http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_3/
    この制度には興味をそそられてきました。近い将来外国高度人材を日本へ呼び寄せることを真剣に検討し続けているからです。法務省の制度はアメリカ欧州における同様の社会実践を参考にしているのだろうと当方は判断していますが、方向性は中国の千人計画も同じですね。中国はよく研究しています。

    1. 名古屋の住人 より:

      はにわファクトリー様

      >中国はよく研究しています。
      これについては同感です。
      中国で再三にわたって問題になっている知的所有権の侵害に関する件ですが、中国では商標法が1982年、特許法が1985年に相次いで制定され、現代に至るまでに幾度も改正・施行されてきました。
      中国はまず米国・日本をはじめとする諸外国の知的財産に関する法律を徹底的に研究し、中国版の特許法や商標法を制定しました(かつてその知的財産権の法律制定に関わった方から直に聞きました)。
      しかし、「上に政策あれば、下に対策あり」という数千年にわたり戦乱の歴史に弄ばれてきた中国人の長年の知恵(と言っていいのかどうか・・・)により、法律の穴をすり抜ける遵法精神の欠如が仇となり、いまだに知的財産権の保護は有効な手が打てていません。
      日本にいて中国のコピー製品の横行を疎ましく感じている私たちにはあまり気が付きませんが、中国企業は外国企業からのみ技術をを盗み、コピー製品を作っているのではありません。明確な数字の根拠はありませんが、中国ローカル企業間の技術の盗み合いや意匠権の侵害こそ深刻であり、外国企業の被害はそのほんの一部であるようです。

    2. はにわファクトリー より:

      名古屋の住人さま

      電子部品基板をオンライン発注できる会社があります。従業員は自分を合わせてわずか2名の町工場社長氏がこう言ってます。価格の魅力、納品スピード感、どちらも大満足である。中国だから安かろう悪かろうではもはやない。彼らは最先端の製造装置と検査装置を駆使している(ほらこれだと現物を見せてくれる)国内製造は小規模少量生産は相手にしてくれないし、うちの会社にはちょうどだ、と感嘆してほくほく顔でした。工場主さんはかつてはずっと大きな会社で経営者していたのだそうです。しろうと発言じゃないんですね。
      中国国内では技術窃盗が横行しているのかも知れないと当方も感じてもいました。Twitter で見かけたのか facebook で見かけたのか、こんなホラー話があります。いわく、3Dプリンタ出力をオンライン発注をした。作らせたものはフィギュア=人形であった。自分がマウスでデザインし外注したそれと同じものがアリババで売りに出されているのに出くわして顎が外れるくらい驚いている、同好にか受けないような品がなぜ中国サイトで売りに出されているのかイミフだ。という投稿でした。

      1. より:

        半導体業界でまことしやかに囁かれていた噂(真偽不明)ですが、中国では日米欧の半導体の回路をコピーするために、チップを一層ずつグラインダで削り、各レイヤを高精細写真に撮って「研究」していたとか、しているとか。
        昨今のLSIでそんなことがそもそも技術的に可能なのかよくわかりませんが、中国ならばやりかねないということで周囲の意見は一致していました。
        偽タマゴの話とか、「それだけの技術と執念があるなら、正しい方向に向けろよ」という話が中国にはままあるようです。

      2. 名古屋の住人 より:

        はにわファクトリー 様
        あくまで業務の傍らで聞いた四方山話の類ですが、中国の遵法精神の欠如っぷりが分かるエピソードがあります。

        日本企業は品質や納期等に対してあまりに厳格であり、どこかがすこし歪んでいた、色が微妙に薄かった等の理由で全量返品になってしまう。仕方がないので、日本企業の取引先による検収合格したものだけは輸出したが、もったいないからB級品(といっても、中国国内なら十分にA級品)を中国国内でさばいて一儲けした・・・。
        もちろん、契約条件で「検収不可となったものの転売は禁止」しています。大陸の「恭喜発財」の世界では、結局のところ「何でもあり」なんですよね・・・。

      3. 名古屋の住人 より:

        はにわファクトリー 様
        連投ご容赦ください。
        中国の人口は14億人、単純計算で日本の1.24億人の10倍以上も人がいます。日本の1.24億人のうち、オタクと自認する皆様が何%いるのかは知る由もありませんが、大陸にはその10倍のオタクがいるのかもしれません。
        数年前の「爆買」華やかりし時の回想録ですが、本業の傍ら、当社に短期業務研修のために来日した中国人の研修通訳兼ガイドを兼任していた時、本人が友人から頼まれた商品の一つにあるアニメの「フィギュア」がありました。WeChatで画像と中国国内での販売価格が届いており、日本でMade in Japanの「本物」を探して購入してほしいとのご要望。当方、その「フィギュア」が何者かさっぱりわかりませんでしたが、名古屋・大須のまんだらけ名古屋店にご案内しました。
        翌日改めて聞いてみたところ、店員さんにWeChatの画像を見せて問い合わせたが、残念ながら該当商品は在庫がなかったそうです。

        1. りょうちん より:

          もし興味があれば「中国工場の琴音ちゃん」を読むとイイデスヨ!
          ってWeb公開が終わってましたネ・・・。

      4. はにわファクトリー より:

        名古屋の住人さま

        中國あるある逸話、ですね。
        模造品が流通しているのではなくてホンモノだというところがポイントです。B級品の販売を禁止するのではなく、逆手を取って国外販売は禁止するが国内においていはライセンス販売形態を許しアガリを上納させる発注携帯・契約形態もあるそうです。そうやって設計能力・製造能力を実力を養ってきたのは、実は日本のやりかたでもありました。今は昔 DEC 社の有名ビデオ端末のそっくり製品に VTI01 というものがありました。模造品ではありません。部分品を製造委託されていた日本企業が、不足部品を集めて「同じもの」を作って売っていたのです。同じやりかたで V780 という保守部品・互換部品で組みあがったスーパーミニコンがありました。自分はそれをつかってプログラミングの勉強をしましたので、筐体に貼ってあったシールまでよく覚えています。

  3. 名古屋の住人 より:

    本日も中国に関する考察をいただき、大変興味深く読まさせていただきました。
    標題の「国際社会のルール無視する中国に寛容であるべきなのか」については、私は「もはや寛容であるべきではない」という考えております。学生時代に中国とのかかわりを持ちはじめ、現在に至るまで何らかの形で中国に係る仕事に就いてきた者(とは言っても、今は内部監査部門ですが・・・)として、某経済新聞などが『日本企業は中国に進出すべきだ』と主張した論拠については、「その大部分はすでに失われてしまった」及び「壮大な誇張か、さもなくば中国のプロパガンダに踊らされた」というのが実感です。

    余談ですが、冒頭の人件費上昇に関する件、現地ではこのような形で公布されています(原文中国語)。

    ・上海市人力資源和社会保障局
     当市の最低賃金基準の調整に関する通知(2019年3月22日)
    http://rsj.sh.gov.cn/tgzzlgl_17309/20200617/t0035_1390582.html

    ・江蘇省人力資源和社会保障庁
     江蘇省内における最低賃金基準の調整に関する通知(2018年9月3日)
    http://www.js.gov.cn/art/2018/9/3/art_64797_7803548.html
     ※各都市の最低基準に関する表のうち、類別(都市のランク 1類>2類>3類)、月最低賃金基準(元)(月給ベースの最低賃金)、小時最低賃金基準(元)(1時間当たりの最低賃金)を指しています。

    ・蘇州市人力資源和社会保障局
     蘇州市の最低賃金基準の調整に関する通知(2018年7月20日)
    https://www.tcrcsc.com/management/upload_news/month_1807/20180721084435_201813.pdf
    ※江蘇省がまずガイドラインを公布し、江蘇省内の各都市は江蘇省のガイドラインに沿ったそれぞれの都市における最低賃金の詳細を発表するのが一般的です。

    ・江蘇省連雲港市
     連雲港市における企業給与ガイドラインの交付(2018年11月19日)
    http://www.jiangsu.gov.cn/art/2018/11/19/art_46502_7885065.html
     これによると、連雲港市人力資源社会保局、連雲港市総工会(労働組合に近い組織)、連雲港市経済情報化委員会(経産省の地方組織に相当)、連雲港市起業家協会、連雲港市工商行政管理局(法務省の地方組織に相当)、連雲港市工商業連合会(商工会議所に近い組織)による連合で「ベースアップ率は7.5%を基準とし、最低ラインを3%とする。但し、上昇幅の上限は設けない」と発表しています。
    日本では毎年春闘がありますが、中国では地方行政から昇給に関するガイドラインが1~2年に1度のペースで公布されることが特徴です。現地法人はこの省や市から不定期に公布される昇給に関するガイドラインを確認し、毎年のベースアップ率を決定しています。

    ■中国の厚生労働省にあたる国家機関とその地方組織
    日本の厚生労働省にあたる中国の国家機関である「人力資源和社会保障部」を筆頭とし、各省市自治区および各都市、各県・郷・鎮などのあらゆる行政機関にその下部組織があります(下部組織は●●局、●●庁と言いますが、局と庁に上級・下級等の意味はなく、特段の違いはないようです)。

    以上、ご参考まで。

  4. カズ より:

    通貨による支配を浸透させたい中国は、足掛かりとしてのSDR入りを念頭に人民元の規制緩和・国際化を漸進させてたのに、目的を果たしちゃったものだからその必要が無くなってしまったのかもですね。

    *せっかく国際化の土俵に上がらせたというのに・・。
    *もしかしなくてもIМFの”とんだ勇み足”なのです。

  5. 匿名29号 より:

    欧米の対中国観、特に米国などは能天気に中国人民が豊かになれば民主主義も育ち先進国並みの民主国家になると考えていたようです。
    中国は欧米よりはるかに長い4千年の歴史を持ち、その大部分の期間は皇帝という超法規的な存在の元に中央官僚群と地方政府からなる政治体制でした。人民もこの方式に慣れており、今さら欧米式の民主主義など無理です。
    現代においても習近平皇帝の元、中国共産党による官僚と、地方政府という構図は全く昔のままです。
    何が言いたいかというと、外交に関しては皇帝時代の中国から変わらず膨張侵略志向、国際ルールなど中華思想からみればないに等しく諸外国こそ中国のやり方に従うべきと考えているはずです。
    民主国家になるなんて信じていた米国人ってホント単純ですね。

    1. 匿名29号 より:

      追記:
      何のことはない、清王朝から共産党王朝に代替わりしただけで、中身は変わっていないと言うのを忘れていました

    2. 阿野煮鱒 より:

      > 民主国家になるなんて信じていた米国人ってホント単純ですね。

      欧米にはスペンサー以来の社会進化論が根強いのかもしれません。

      その割には、日本の近代化は「俺が育てた」との認識ばかりで、日本の中世から近世にかけて、資本主義の萌芽が育っていたことに注目せず、近代化と民主化は欧米固有のもの、という傲慢な考えも持っています。

      進化論という建前のもとで偽善的に後進国を支援し、本音は先進国の傲慢さで後進国を差別するということなのでしょう。

      1. 引っ掛かったオタク より:

        おのがいち
        時所変われどまた発現のカタチ変われど人間の本質なんてそう変わらんのかもしれんですナァ
        古代の文明人も「最近の若いヤツは~」なんてのたまい…

      2. より:

        > 日本の中世から近世にかけて、資本主義の萌芽が育っていたことに注目せず
        この辺の話は以下の書籍によくまとまっています。対談形式で気楽に読める本ですので、興味のある方はどうぞ。

        https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-83710-9

        なぜ日本が「近代化」に成功したのか、この本を読むとかなりすっきりと腑に落ちます。

        1. 阿野煮鱒 より:

          欧州と日本が地理的に隔絶していながら、収斂進化的に資本主義の形成と近代化を達成した理由を簡潔にモデル化した例としては、梅棹忠夫の『文明の生態史観』が嚆矢ではないかと私は見ています。

          今から見ると時代的に古く、現状に即なさい点が多々あります。主に現地取材に基づく直感に頼り、文献的裏付けに乏しく、熱い支持と冷笑的批判を浴びた「問題作」でした。日本以外にはほとんど顧みられていない現実が、彼の説の説得力の低さを物語ります。

          この本に関しては思うことが色々あり、他者の論説も読みながら自分なりの批判と肯定を作り上げたいと思っています。ここに発表できるかどうかはわかりません。

          ご紹介いただいた本は、著者の一人が猪瀬直樹氏というところに不安を覚え敬遠していましたが、もう一人の著者が『武士の家計簿』などのエンタメ作品をものした磯田道史先生ですので、臆せず読んでみようと思います。

      3. 名無しのPCパーツ より:

        > その割には、日本の近代化は「俺が育てた」との認識ばかりで
        まあそう思ってるならそれで
        日本みたいに「一回は武力で張り倒す必要がある」ぐらいの認識が欲しい所。

  6. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    中国がIMFのSDR引き出し権を得たのは、当時専務理事だったラガルド女史の強い推しがあったからだと思います。この方、日本は徹底的に嫌いなフランス人。

    日本の事はマスコミ使ってクソミソに言ってた。「日本の実質GDPは、40年後に25%減少する」と。一体幾ら貰ったんだ中国に。コイツと言いゲデロスと言い、国際機関ってロクな奴いない。潘もか(笑)。

    タダの阿呆じゃないから、金や利権貰って便宜を諮る。もう国連やWHOやIMFやWTOは、全部やめちまえ。

    1. より:

      ラガルドさんは、現在ECBの総裁ですな。
      ヨーロッパの未来は明るい……かもしれない。

  7. たい より:

    欧米諸国の考えが甘すぎた、という事ですか。

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